平成24年5月

(社)全国木材組合連合会

木材産業に関連するカーボンビジネス制度の動向

平成20年7月に閣議決定された「低炭素社会づくり行動計画」で、「あらゆる部門の排出削減を進めるため、二酸化炭素に価格をつけ、市場メカニズムを活用するとともに、二酸化炭素排出に関する情報提供を促進する『国全体を低炭素化へ動かす仕組み』」が提唱され、排出量取引、カーボンフットプリント、カーボンオフセット、カーボンストック認証などの施策が導入されてきたが、政権交代後もさらにそれらを推進する動きとなっている。木材の環境貢献の普及、各種施設の木質バイオマス燃料ボイラーへの転換、電力各社の発電用燃料への木材チップ利用の本格化など、木材業界にとっても大きな影響が想定される。これらの最近の動向は以下の通り。

1 排出量取引の国内クレジット

平成20年10月より始まった「排出量取引の国内統合市場の試行的実施」に伴い、中小企業等が行った二酸化炭素の排出抑制のための取組みによる排出削減量を認証し、排出量取引の目標達成のために活用する仕組み。ボイラー燃料の木質バイオマスへの転換など中小企業等における排出削減の取組みを活発化、促進することにつながると期待される。

国内クレジット認証委員会において定められたモデルとなる事業の記載方法(方法論)に基づき3月末現在1336の事業が申請されているが、このうち「木質バイオマスを燃料とするボイラーへの転換、新設」については178件の事業が申請されており、160件が認証委員会によって国内クレジットとして認証されている(12.1万トンCO2)。(24年3月現在)

2 カーボンオフセット・クレジット

カーボンオフセットは、市民、企業、NPO/NGO、自治体などが、自らの温室効果ガスの排出量の、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等(クレジット)を購入するなどでその排出量を埋め合わせることであるが、国内における信頼性の高い認証制度を目指した「オフセット・クレジット(J-VER)制度」が平成20年11月より開始されている。

現在森林木材関係では、@森林経営活動によるCO2吸収量の増大(間伐促進型プロジェクト)A同(持続可能な森林経営促進型プロジェクト) B植林活動によるCO2吸収量の増大C化石燃料から未利用の木質バイオマスへのボイラー燃料代替D化石燃料から木質ペレットへのボイラー燃料代替 E木質ペレットストーブの使用F薪ストーブによる薪の使用の7の推奨事業(ポジティブリスト)が承認されており、これに基づき、119のプロジェクトが登録され、検証を受け70が認証されている(23年12月現在)。

3 環境負荷の見える化とカーボンフットプリント

カーボンフットプリントは「商品・サービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2量に換算して、当該商品・サービス等の単位で分かりやすく表示する仕組み。」

経産省は各省と連携し、21年3月「カーボンフットプリント制度の在り方(指針)」と、商品・サービスごとに排出量の算定ルールを作成するための「商品種別算定基準(PCR:Product Category Rule)策定基準」を取りまとめ、これが運用されている。現在オフィス家具、文具など73のPCRが認定され公表されている(平成24年2月現在)。

一方、林野庁では「木材利用に係る環境貢献度の「見える化」」について検討し、「木材利用に係る環境貢献度の定量的評価手法について(中間とりまとめ)」で木材の省エネ資材効果、炭素固定効果、間伐促進効果の3つの側面で定量的評価方法を提案。また、これらを受け「NPO法人才の木」によって木材・木質材料(製材、合板、集成材、パーティクルボード、繊維板、加圧式保存処理木材)を対象としたPCR原案が作成され23年3月認定委員会により認定公表されたところ。

4 バイオマスエネルギー電力の買い取り

経済産業省は電力会社による再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を拡充するため、「プロジェクトチーム」や総合資源エネルギー調査会の小委員会において、木質バイオマスも含めた再生可能エネルギーの全量買取制度について検討してきたが、その結果を受け4月5日「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」が国会に上程された。バイオマス発電も買取り対象とはなっているが、対象を「紙パルプなど他の既存産業に影響がないもの」に限定していく考えであり、その確認のための制度を検討する方向

5 木材の炭素固定を認証する地方自治体の動き

高知県では、県産材の使用量に応じて、CO2固定量の認証を行う「高知県CO2木づかい固定量認証制度」を平成20年度から実施。県内に新築する県産木造住宅の建築主に対して固定量が認証されている。

東京都港区では、23年10月から、国産材をビルの内装材等に活用することにより森林整備の促進と炭素固定によるCO2削減をめざし、区内で5000m2以上の建築を行う建築主を対象に「みなとモデル二酸化炭素固定認証制度」を実施。対象となる木材は、港区と協定を結んだ自治体で森林経営計画により管理された木材、あるいは合法木材などが条件。


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