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2.木の街・むらづくり基本コンセプト(概要)

   

 この基本コンセプトは、21世紀のまちづくり・地域振興のモデルとして、木の街・むらづくりを推進するための課題と取組方向を、先進事例等をもとに分析し、提言を行ったものです。

 この基本コンセプトを、今後の生活空間形成、そして地域材利用推進に関するビジョンづくりに活用していただき、各地で主体的・個性的な木の街・むらづくりが実施されることを期待しています。

1.なぜ「木」の街・むらづくりが必要なのか

  • 21世紀は、「循環型社会」を実現する生活様式(ライフスタイル)への転換が求められる時代です。近年のまちづくり・地域振興の取り組みを見ても、ハードからソフトへ、物の豊かさの追求から生活の質を高める施策への切り替えが進んでいます。

  • 現代日本を覆っている閉塞感を取り除くためには、「自立」と「個性」をキーワードにした新たなビジョンづくりに踏み出さなければなりません。近年において地域活性化に成功した事例を見ても、地域固有の歴史・伝統・文化等を活かし、現代の知恵や感覚をプラスしてオリジナリティの高い、オンリーワンの取り組みを進めています。

  • 「自立」と「個性」を重視したまちづくり・地域振興のビジョンをつくる際に注目されるのが、地域の森林資源と木材(地域材)です。森林の公益的機能発揮に対する国民の関心が高まる中で、地域材を住宅資材などに循環利用する新しいシステムづくりが必要となっています。

  • 木材は、人の健康に良い、強度が大きく加工しやすい、長期間炭素を貯蔵し地球温暖化を防ぐ、癒しや活力を感じさせる素材であるなど、多くの長所を持っています。また、地域材を活用することで、地場産業(林業・木材・住宅関連産業など)の活性化、就業機会の確保も図られます。地域材の有効利用を通じて、豊かさと安全・安心、そして活力のある生活空間を形成することができます。これが木の街・むらづくりの目指すものです。

2.「木」の街・むらづくりの現状と課題

  • 木造住宅の潜在需要は大きいものの、地域材を取り巻く状況(海外製品との競合、住宅部材の性能重視化への対応など)は激化しており、新たな事業展開のビジョンが必要です。

  • すでにいくつかの地域では、木の街・むらづくりのモデルとなる成果をあげ始めています。

  • これらの事例から、木の街・むらづくりを進める上では、住民参加の推進(ワークショップ方式の導入など)、伝統的技術と現代的先進技術の調和、地域工務店などの体質強化、住宅以外での地域材の活用(公共施設、ストリートファニチャー等)、異業種交流の推進などがポイントとしてあげられます。また、事業実施の前提として、地域の森林資源や整備対象街区の状況、木質資材再生処理施設の状況などを把握し、その活用方法を十分に検討することが必要です。

3.「木」の街・むらづくりを進めるために―課題と提言―
木の街・むらづくりに向けた課題と取組方向を整理すると、以下のとおりとなります。

1 「木を活かす」ために
地域材の活用を進める上での問題点(価格・品質・量の不安定性など)を早急に解決すべきです。また、地域材住宅の建築後もフォローアップを続け、どこまで「木を活かす」ことに成功しているのかを検証し、次のステップへつなげることが必要です。

2 「人を活かす」ために
地域リーダーの育成に加え、住民参加の促進や住民の自助努力を促す仕組みづくりが必要です。また、「木のコーディネーター」のような資格制度の創設や支援センターの設置なども検討し、設計者を含む地域関係者のネットワークを強化していくべきです。

3 「技術を活かす」ために
地域の町並みや伝統的木造住宅を築き上げてきた技術に、現代社会が要求している性能や安全性などを担保する先進技術(テクノロジー)を組み合わせ、いきいきとした生活の基盤となる居住環境の形成を目指すべきです。そのためには、木造住宅の研究開発(R&D)を強化する必要があり、人材、資金面での支援体制の整備が欠かせません。

4.「生業を活かす」ために
「生産者」=地域材住宅を供給する地場産業の活性化を図り、地域の生活を支える現代の「生業」として機能するように体質強化をしていく必要があります。そのためには、地域の市場=商圏の規模やニーズの有無などを十分に検討し、木材の専門家=プロが成立し得る多様な生き残り策を探っていかなければなりません。

5.「繋がりを活かす」ために
地域で産出された資材を地域内で利用し、適正に廃棄・再利用(リサイクル)するという、「繋がり」のシステム、ネットワークを構築するべきです。建築リサイクル法などに対応しながら、「循環型社会」の具体的なモデルを提示していくことが期待されます。