重要伝統的建造物群保存地区一覧 (伝統の町並み)

   

 

 昭和50年の文化財保護法の改正によって伝統的建造物群の制度が発足し、城下町、宿場町、門前町など全国各地に残る歴史的な集落・町並みの保存が図られるようになった。市町村は、伝統的建造物群保存地区を定め、国はその中から価値の高いものを重要伝統的建造物群保存地区として選定し、市町村の保存事業への財政的援助や必要な指導または助言をすることができるとされている。

 重要伝統的建造物群保存地区については、市町村が、条例で保存地区の現状を変更する行為の規制などの措置を定め保護を図っており、文化庁長官または都道府県教育委員会は、市町村に対し保存に関し指導助言を行うほか、管理、修理、修景(伝統的建造物以外の建造物を周囲の歴史的風致に調和させること)などに対して補助を行っている。

 また、重要伝統的建造物群保存地区は主に木造の建築で構成されており、防災、特に火災に対する対策が必要なため、市町村は景観に配慮した防災施設等の整備事業を計画的に進めている。これについても、文化庁長官または都道府県教育委員会は、市町村に対し指導助言するとともに補助を行っている。

 平成14年3月現在、重要伝統的建造物群保存地区に選定されている地区は、54市町村で60地区(合計面積約2,390ha)あり、9千件の伝統的建造物が保存すべき建造物として特定されている。

〔平成14年3月現在〕

重要伝統的建造物群保存地区

  番号 道府県名 地 区 名 称 種   別 コ   メ   ン   ト 選定年月日 選定基準 面積 ha
  1 北海道 函館市元町末広町 港町 異国の多様な建築様式が調和する開港都市 平 1. 4.21 (三) 0014.5
  2 青 森 弘前市仲町 武家町 サワラの生け垣に囲まれた武家町 昭53. 5.31 (二) 0010.6
  3 岩 手 金ケ崎町城内諏訪小路 武家町 各屋敷はヒバの生け垣、石積、エグネ(屋敷林)で構成 平13.6.15 (三) 0034.8
  4 秋 田 角館町角館 武家町 豊かな樹林の中に武家屋敷が佇む町 昭51. 9. 4 (二) 0006.9
  5 福 島 下郷町大内宿 宿場町 建物の規模、配置が揃った17世紀の開発地域 昭56. 4.18 (三) 0011.3
  6 埼 玉 川越市川越 商家町 江戸から昭和まで各時代の建物が共存する 平11.12. 1 (一) 0007.8
  7 千 葉 佐原市佐原 商家町 水陸の交通の要となった水郷の商都 平 8.12.10 (三) 0007.1
  8 新 潟 小木町宿根木 港町 船大工の技が高密度集落を実現した港町 平 3. 4.30 (三) 0028.5
  9 富 山 平村相倉 山村集落 養蚕と生活の場が共存していた山里の合掌集落 平 6.12.21 (三) 0018
  10 富 山 上平村菅沼 山村集落 雪深い秘境で変わらぬ生活が息づく合掌集落 平 6.12.21 (三) 0004.4
  11 富 山 高岡市山町筋 商家町 土蔵のような建物に洋風建築が残る江戸時代の町 平12.12.4 (一) 0005.5
  12 石 川 金沢市東山ひがし 茶屋町 通りの一階が出格子、二階に縁側と座敷を備える 平13.11.14 (一) 0001.8
  13 福 井 上中町熊川宿 宿場町 歴史と水の流れに息づく若狭街道の宿場町 平 8. 7. 9 (三) 0010.8
  14 山 梨 早川町赤沢 山村・講中宿 開放的な建物が自然と融合する山岳信仰の村 平 5. 7.14 (三) 0025.6
  15 長 野 東部町海野宿 宿場・養蚕町 中世の水路や路地が今でも機能する宿場町 昭62. 4.28 (一) 0013.2
  16 長 野 南木曾町妻籠宿 宿場町 江戸の趣を今でも守る、町並み保存の先駆地 昭51. 9. 4 (三) 1245.4
  17 長 野 楢川村奈良井 宿場町 深い屁と出梁。雪深い谷地で栄えた宿場町 昭53. 5.31 (三) 0017.6
  18 長 野 白馬村青鬼 山村集落 江戸時代、明治時代の茅葺の民家が建ち並ぶ山間の町 平12.12.4 (三) 0059.7
  19 岐 阜 高山市三町 商家町 格子や柱組に匠の技が光る、飛騨の小京都 昭54. 2. 3 (一) 0004.4
  20 岐 阜 美濃市美濃町 商家町 美濃紙で栄えた、防火壁"うだつ゛の上がる町 平11. 5.13 (一) 0009.3
  21 岐 阜 岩村町岩村本通り 商家町 大商家の家並みが残る山間の城下町 平10. 4.17 (三) 0014.6
  22 岐 阜 白川村荻町 山村集落 共同生活体制が支える合掌づくりの里 昭51. 9. 4 (三) 0045.6
  23 三 重 関町関宿 宿場町 関口の六倍の奥行きで地形に調和した宿場町 昭59.12.10 (三) 0025
  24 滋 賀 大津市坂本 里坊群・門前町 自然の石を巧みに使った石垣が広がる延暦寺の里坊 平 9.10.31 (三) 0028.7
  25 滋 賀 近江八幡市八幡 商家町 古代の条理制度が息づく景観が多様な商家町 平 3. 4.30 (一) 0013.1
  26 滋 賀 五個荘町金堂 農村集落 白壁、土蔵、船板塀が続く近江商人発祥の地 平10.12.25 (三) 0032.3
  27 京 都 京都市上賀茂 社家町 古代の空間構造を残し、水とともに生きる杜家町 昭63.12.16 (三) 0002.7
  28 京 都 京都市産寧坂 門前町 地形に馴染んだ多様な建築が共存する坂の町 昭51. 9. 4 (三) 0008.2
  29 京 都 京都市祇園新橋 茶屋町 和美と機能を兼ね備えた簾と格子が彩る花街 昭51. 9. 4 (一) 0001.4
  30 京 都 京都市嵯峨鳥居本 門前町 景観に溶け込む茅葺と竹垣の門前町 昭54. 5.21 (三) 0002.6
  31 京 都 美山町北 山村集落 環境共生をめざし、保存に力を注ぐ茅葺民家群 平 5.12. 8 (三) 0127.5
  32 大 阪 富田林市富田林 寺内町・在郷町 微妙にずらした交差点が個性を放つ商業町 平 9.10.31 (一) 0011.2
  33 兵 庫 神戸市北野町山本通 港町 ドイツ、イギリス等の建築の粋が残る異人館の町 昭55. 4.10 (一) 0009.3
  34 奈 良 橿原市今井町 寺内町・在郷町 堀を巡らせ高い自衛力を備えた寺内町 平 5.12. 8 (一) 0017.4
  35 鳥 取 倉吉市打吹玉川 商家町 川沿いに白壁土蔵が並ぶ商家の町 平10.12.25 (一) 0004.2
  36 島 根 大田市大森銀山 鉱山町 武家と町屋が混在し繁栄を築いた鉱山町 昭62.12. 5 (三) 0032.8
  37 岡 山 倉敷市倉敷川畔 商家町 川畔の利を活かした都市構想に基づく町 昭54. 5.21 (一) 0015
  38 岡 山 成羽町吹屋 鉱山町 町全体が赤色に染まる銅とベンガラで栄えた町 昭52. 5.18 (三) 0006.4
  39 広 島 竹原市竹原地区 製塩町 意匠を凝らした格子が文化と繁栄を示す塩の町 昭57.12.16 (一) 0005
  40 広 島 豊町御手洗 港町 風待ち、潮待ちの良港として栄えた港町 平 6. 7. 4 (二) 0006.9
  41 山 口 萩市堀内地区 武家町 萩城三の丸に広がる大身武士の屋敷町 昭51. 9. 4 (二) 0077.4
  42 山 口 萩市平安古地区 武家町 鍵手型道路と土塀が続く武家屋敷町 昭51. 9. 4 (二) 0004
  43 山 口 萩市浜崎 港町 切妻造り平入り屋根、真壁造りの町家建築が百棟以上 平13.11.14 (二) 0010.3
  44 山 口 柳井市古市金屋 商家町 商いと防火の機能を徹底した白壁の町 昭59.12.10 (一) 0001.7
  45 徳 島 脇町南町 商家町 藍の富で防火用の漆喰壁"うだつ゛を上げた町 昭63.12.16 (一) 0005.3
  46 香 川 丸亀市塩飽本島町笠島 港町 海を中心に扇状に構成された離島の自治集落 昭60. 4.13 (三) 0013.1
  47 愛 媛 内子町八日市護国 製蝋町 屁下を共有空間として活用する黄漆喰壁の町 昭57. 4.17 (三) 0003.5
  48 高 知 室戸市吉良川町 在郷町 浜から丘へ、風雨を防ぐ建物が調和する町 平 9.10.31 (一) 0018.3
  49 福 岡 甘木市秋月 城下町 江戸の地割がそのまま残る山麓の城下町 平10. 4.17 (二) 0058.6
  50 福 岡 吉井町筑後吉井 在郷町 漆喰と土蔵による重厚な耐火構造の町 平 8.12.10 (三) 0020.7
  51 佐 賀 有田町有田内山 製磁町 窯の排煉瓦を利用した土塀が趣を出し陶器の町 平 3. 4.30 (三) 0015.9
  52 長 崎 長崎市東山手 港町 外人居留地時代の面影を残す洋館と石畳の町 平 3. 4.30 (二) 0007.5
  53 長 崎 長崎市南山手 港町 港を見下ろす異国情緒豊かな洋館の町 平 3. 4.30 (二) 0017
  54 宮 崎 日南市飫肥 武家町 蛇行する川を境に見立てた石垣の武家町 昭52. 5.18 (二) 0019.8
  55 宮 崎 日向市美々津 港町 幅広い防火帯が町の東西を走る廻船問屋の町 昭61.12. 8 (二) 0007.2
  56 宮 崎 椎葉村十根川 山村集落 石垣を張り巡らして山の斜面を活用した集落群 平10.12.25 (三) 0039.9
  57 鹿児島 出水市出水麓 武家町 城山の麓に広がる地形を活かして整備された行政都市 平 7.12.26 (二) 0043.8
  58 鹿児島 知覧町知覧 武家町 石垣と生け垣が町全体の景観をつくる庭園都市 昭56.11.30 (二) 0018.6
  59 沖 縄 渡名喜村渡名喜島 島の農村集落 道より低く、防風木に囲まれた台風対策の集落群 平12.3.17 (三) 0021.4
  60 沖 縄 竹富町竹富島 島の農村集落 低い石垣が人の交流と防風を果たす個性豊かな集落群 昭62. 4.28 (三) 0038.3
合 計 35道府県54市町村60地区 2389.8


注:選定基準

(一)伝統的建造物群が全体として意匠的に優秀なもの。
(二)伝統的建造物群及び地割がよく旧態を保持しているもの 。
(三)伝統的建造物群及びその周囲の環境が地域的特色を顕著に示しているもの

資料:文化庁資料等から作成。

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