◆3つの事例紹介から学べるポイント
安藤 皆さんお話になる内容をたくさんお持ちでして,時間はどんどん過ぎてしまいます。これからトークする時間が短くなってしまいましたが,せっかくの機会ですから,3人のパネラーの方に壇上に上がっていただいて,会場の皆様からの質問,ご意見を頂戴したいと思います。
ここで,私なりにパネラーのお話のポイントをまとめておきますと,まず溝渕さんの事例紹介では,接着剤を使うところが,ある意味では奇異に感じられた方がいらっしゃるかもしれません。しかし,この事例では,接着剤を使うことで民家の再生ができるという技術の可能性を示されました。単なる文化財の補修というレベルではなくて,民家の活かし方,地域の建物の残し方を追求しているところが注目されると思います。
次に,大倉さんは,地域のいろいろな方たちと勉強をし,一緒になって取り組むことで,地域の建築物ができていくというお話をされました。これは住宅もしかり,大きな施設もしかりです。単なる発注者と受注者の関係ではなく,地域の人々と一体となったものづくりの大切さを述べられました。
最後の金子さんは,地元の木材を使っていく具体的な実践活動をについてお話されました。木材を普及させようという啓発活動はありますが,実際に取り組むとなると,正直言って「いつお金になるんだろう」「苦しい」という思いが先に立つこともあるかと思います。金子さん,いかがでしょうか。お話の最後で,技能者養成の木匠塾は苦しいと述べられましたが,どのくらい苦しいものなのでしょうか。
金子 木匠塾は30人の生徒さんで事業計画を組んでおりまして,授業料が月10万円,1年間で120万円をいただくことにしていました。つまり,30人で計3,600万円の収入を見込んでいたのですが,現在,生徒さんは15名しかいませんので,単純に1,800万円分はとりあえず苦しいという状況です。
◆成果が出るには時間がかかる,やったあとのフォローを
安藤 新しいことをやろうとすると,必ずそういうことにぶつかりますが,こうした取り組みが実を結ぶまでに,大倉さん,どれくらいの時間がかかりますでしょうか。例えば,ある地域にコンサルティングとして入っていって,そこの人とわかり合える時間の長さというのは…。
大倉 例えば,宮崎県の場合ですと,2年ほど前から木材関係の人達との話合いを始めました。つまり,設計の委託を受けた段階から,寿司屋さんが魚の出物はどこにあるかと探すような感じで,地域のいろいろな状況を聞いています。そういう積み重ねが,設計に反映させることになります。ですから,最低でも1年近くの時間は必要です。
富山県のケースでは,もう6年間も協議会を続けています。それでやっと自分達の住宅づくりを積極的にやろう,モデル住宅もできたから皆に見せながら頑張ってやっていこうという感じになってきました。こう振り返ると,やはり5〜6年という期間になりますね。
安藤 そういうことなのだろうと思います。私自身もいろいろな職業についてきましたが,だいたい3年というのが1つの単位になるように思います。1年目は何があるかわからないから,一生懸命まわりの人に教わる,2年目は自分に少し任されるようになり,3年目でマスターしていく,4年目で辞表を出す(笑)ということを続けてきたのが私です。人生はだいたい3年ごとにプロジェクトが片づいていくように思います。溝渕さん,こうした地域の方々との話し合いは,これからも増えると思いますか。また,いままでの住宅政策を受けてお仕事をされてきたことを振り返って,どのような感じをお持ちですか。
溝渕 東京から地方へ行って仕事をして,一番言われるのが,「仕事が終わると,東京に帰ってしまう」ということです。例えば,家を建てたら,そこに人が住むようになってからが本番なのですが,その時には東京のコンサルタントはもういないということをずっと言われてきました。
それが木造の設計に携わるようになってから,地域の方たちの声を聞いて,地域の生産者の方などとのつながりが深くなるようになり,そこが重要だなと思うようになりました。私としては,何かをつくった後,企画した後,いかにそれをフォローしていくか,その時に地域の方とどれだけ話をしていくことができるかが一番重要だと思っています。
1つのことが終わって成果が上がれば,その次の仕事がまたやってくるという流れがあります。例えば,どこかの地域に県営の木造団地をつくって,それがいいものだと思っていただければ,今度は町営でつくってみようというつながりが出てきます。お互いにわかり合える時間と,何かをつくった後のつきあいを大事にしていく必要があると実感しています。
安藤 ありがとうございました。どうぞ会場の方からも,おしゃべりしている感じで結構ですので,何かご意見をいただきたいのですが。
◆消費者の理解を得るにはワークショップが有効
松本 中部森林管理局で国有林の管理をやっている松本と申します。さきほど大倉さんから,地域の工務店さんたちがまとまって,その地域に合った住宅とはどんなものかを考え,取り組むことが大事だということと,実際に家に住まわれる方がどう感じるかが大事だという話がありました。「木の街」づくりと「木の家」づくりの違いは,景観かなと思います。景観を守るとなりますと,ある程度強制的にやらなくてはいけないところがあって,市町村の行政がどうかかわっていくかが,どうしても気になってしまいます。行政がやろうとしていることと,地域の住民とのコンセンサスをどうつくっていくのか,そのあたりのことをもう少しお話していただければと思います。
大倉 新しい団地等をつくる時には,居住者がいない時に建築協定などで最初からしばりをかけることがありますが,これにはいろいろ問題があって,最近はあまり厳しい建築協定等はやめた方がいいという方向になっています。私共が取り組んでいる地域でもそうなのですが,結局,行き着くところは消費者なのだろうと思います。消費者がどれだけのことを理解してくれるか。それをサポートするために,大工さんや工務店,設計者というのは,消費者に物事をわかってもらう努力をすることが必要になります。その1つのやり方として,私共はワークショップを取り入れています。町づくりとか町並みづくりをやったら,その結果が自分のところに戻ってくるのだという実感を持っていただきたいのです。木を使えば環境上の効果が自分のところに戻ってくる,このようなことを消費者にわかってもらうためにはワークショップが必要です。自分達から発議してやっていかない限り,やっぱり物事はできていかないのです。
有田町の事例も,自分達の問題として町並みづくりをするとよくなるという実感をもっていただいたから,10年近くをかけていろいろなものができてくるわけです。行政のサポートも必要ですが,消費者にどれだけのことをわかってもらうか,そのための手だてが必要です。まず私達が,木の大事さとか,木を使って町並みをどうするのかを学ぶべきです。そして,実際にどうやってやるのかというところまで提案していかないと,なかなか消費者には伝わりません。ハードルはたくさんありますが,具体的にやってみせることでしか理解していただけないし,これをやらないと地域の住宅はこれからますます厳しくなっていく気がします。その意味では,設計者と工務店がどれだけ勉強して,消費者に伝えていけるかがポイントになってくると思います。そういう取り組みを林野庁でもサポートする体制ができつつあると思いますが,もうちょっと頑張っていただいて,早くやっていただいた方がいいかもしれませんが。
安藤 そう願っているのですが,一人笑っていらっしゃる方がおられます。早速お話いただきましょう。林野庁の坂田さん,行政のお立場から解説していただきたいと思います。
◆住まい手が納得できる家を皆でつくる
坂田 林野庁の坂田です。一番痛いところを聞かれた感じですが,まさにこれから私共もそこを中心にしなければならないと思って,役所として今後やっていくべきことをいろいろと考えています。ただ,具体的にどういう絵を描くのかが非常に悩ましいところです。プロダクトアウトからマーケットインへということは前から言われているのですが,なかなか考え方は変わっていかない。その中で,これから住宅にどのようにして木材を供給していけばいいのかについて,いま考えている方向は,消費者に本当に納得される家づくりを目指すということです。いままでは,木材を生産される方と住宅を生産される方とのつながりを強化しましょうという話をしてきたわけでが,これからはさらに消費者の方が納得される家を皆でつくっていきましょうという大きな旗を掲げています。では,その具体的な中身をどう固めようかというところで,日々頭を痛めているところです。ただ単につくればよいというのではなくて,消費者のニーズをどう捉えるかで本当に苦労しているところです。ちょっと答えにはならないのですが,その重要性は痛感しているところです。
◆地域の環境,景観にふさわしい住宅を
安藤 難しい質問だったと思いますが,これからはまわりを見て家づくりを考えるということが必要だと思います。1軒の家を建てるときに,その周囲の環境,その場にふさわしいものを考える。自分だけ豪邸を建てればいいということではなくて,まわりに気を配って街をつくっていく。このあたりで,大手ハウスメーカーの住宅と地域の木造住宅との違いが出てくるのではないかと思うのですが,金子さん,いかがですか。
金子 私共も,木材だけでなくて,建築のことも勉強しなければならないと考えています。私共の地域のような農村部の築後70年,80年という住宅をみますと,西日が入らないように西側には窓をつくらないとか,木の植え込みがしてあるなど,どの家をみても自然条件に合せた建て方の工夫がたくさんしてあることに気づきました。昔は身代限りになる,つまり破産をすると,家を売ることになりますが,そのときに土地ごと家を売るのではなくて,建物を解体してよそへ持っていって建て替えるというをしていました。ですから,私共の地域には,100年,200年も経った家がまだ残っています。そういった街並みをよそから来られた人が見て,「まだここには家の景色が残っている」と言われるのですが,そこへ某ハウスメーカーの家がぽつんぽつんと建つと,もう街並みがだいなしになってしまいます。
私が岐阜県に来た20年前には,建て前になると近所の方,親戚の方が皆手伝いにきて,この土台の材料はクリの木でいいものが使ってある」とか「大黒柱は太くて立派だ」とか講釈をしながら,一杯飲み家づくりを手伝っていました。お手伝いさんの中に大工さんに負けないほどいろいろなことを知っていて,垂木の端を切る時も屋根の上にあがって鳶職のように仕事を手伝う人もいるぐらいでした。
先ほど断熱の話を申し上げましたが,いまは消費者が地域に合った家づくりに関する情報を得る場や機会がない。そこで,私共は「平成住まい塾」を続けています。私共の地域は太平洋側にあり,晴れると放射冷却するので,北海道のある地域よりも最低気温が低くなるほど寒い。だから,こういう建て方をしていくといいのではないですかと提案すると,家の形とか傾向とかがその地域に合ってきます。その結果,70年前の家とだいたい同じような傾向の間取りになっていました。私は,賢い消費者をつくるのがのが大事だということを実感しています。
カナダに行くと,有料放送で住宅をつくる番組が24時間流れていたり,消費者のためのリフォームセミナーがしょっちゅう有料で行われていて,家づくりの話をする。そのことを題材にして近所で話をしていると,家並みも街並みもだんだんそろってくる。その辺がキーワードかなと思っています。
◆「地域材」という言葉には疑問,行政の縦割りも問題
安藤 ありがとうございました。日本は,戦後,忙しく走ってきたような気がします。若い人達も,受験戦争などで,小さい頃からとにかく走ることを義務づけられてきました。家づくりもそうです。追い立てられるようにして家を建ててきた。戦後は質のよくない家が多かったという理由もありますが,ここまで来ますと,昔に戻るではなくて,もう1つレベルの高い地域の住宅が要求されはじめています。木材関係者から見ても,売る先が変わってきている,流通が変わってきているという時期にあります。先ほど金子さんがご紹介された,エンドユーザーからお金をとって住まいのことを教えているというのは,素晴らしいことだと思います。お金を払って家づくりのことを真剣に考える人達が増えてきた。そういう時代に日本が入ってくるような気がするのですが,池田さん,住宅も木材も手広くおやりになっているお立場からいかがでしょうか。
池田 岡山県で製材,建築をやっております池田です。よろしくお願いします。先ほどから,質問したいと思っていることがあります。今日の集まりは全木連主催なのでしかたないとも思いますが,「地域材」という言葉が私は嫌いなのです。堂々と「国産材」と言い切れないところに私は非常にもどかしさを感じています。私は,どこへ行っても「国産材」で通しています。これからも地域で「国産材」を使った家づくりをどんどんやっていこう機運が高まっていると思いますが,「地域材」という言葉は気に入りません。
それから,林野庁の政策についてですが,国土交通省が瑕疵保証とか性能保証とか,従来からいうと非常に厳しい法律と政策を進めている時に,緊急間伐で30年生,35年生の木をどんどん伐らせていることに,非常に矛盾を感じます。国土交通省は確かなものをつくれよという。一方,材料供給側は間伐材で対応せよという。どうなっているのか,もっといい方法はないのかと思います。緊急間伐の5年を10年くらいにして,例えば60年生以上の木をもう少し出せるようにしないと,国産材の信頼を失ってしまうという感じがします。
それから,これは明るいニュースですが,私共が協力している大手ハウスメーカーが,内装に木を使うようになってきています。もしご興味がありましたら,大阪の花と緑の博覧会跡地に建てられた住宅を見て下さい。入ると,ヒノキのかまちがある。大黒柱が2階までどーんと伸びている。そういう家です。そういう機運も出始めている。プレハブだけではいかんということが根底に流れ始めたという明るいニュースもあるわけです。
安藤 木材と建築は,一体のようでいて一体ではない。そこには駆け引きがあるし,値段もオープンにされていないので,消費者にはわからないということがあります。いま,池田さんは「地域材」と「国産材」という言葉の問題についておっしゃったのですが,私が嫌いなのは,地域材が「あふれる」という表現です。あふれてはいけないんで,適正に使われなければいけない。たくさん使ってほしいという気持ちが,あふれるという表現になっているとは思いますが。
また,池田さんは,材質面で悪いものが流通してもらっては困るとおっしゃられました。これも大事なことだろうと思います。
池田 結局,30年生の木は30年しかもたない,60年生の木は100年くらいもつということが根底にあるのです。それから,目粗の木材は,乾燥すると目減りします。例えば,30年生か35年生のスギを15%に乾燥して12cm角にしたものが,10年先でも12cmをキープしているかどうか非常に不安です。ハウスメーカーからは,こうした問題への対応を迫られると思います。これを私共のようなメーカーが保証するのは,非常にしんどい思いがあります。
安藤 住宅行政というのは,林野庁だけでなく,国土交通省や経済産業省など多くのところがかかわってきますから,林野庁だけをせめてもはじまりません。ただし,まわりとの協調を考えなければならない。これからの家づくりは,まわりを見て,自分の地域に合ったものを考えていく。自己主張はその中にあるけれども,そういう考え方が必要です。したがって,住宅行政も縦割りではなく,まわりを見ることが必要です。私達は,やっとまわりを見るゆとりができてきたのではないでしょうか。
◆木を知らない設計者が多い,地域材の情報ネットを求む
安藤 現代は,情報が欲しいという時代です。情報を解釈して,ものをつくっていきたい時代。情報といえば,雑誌で有名な『建築知識』の方がいらっしゃっています。鈴木さん,いかがでしょうか。
鈴木 個人的にはすごく木に興味があります。実は,実家が傾いてしまった数多くの製材所の1つなので,どんどん頑張って欲しいなということをすごく感じています。しかし,日頃,設計者の方にお話をうかがっていると,木について本当にご存じない。大学にも木に関する教育カリキュラムがなかったということで,木について知らない方が多い。
また,県産材を使って住宅を建てると補助が出るという県が出てきているのですが,それがうまく軌道に乗っていないという意見を現場の方から聞きました。なぜうまくいっていないのかというと,本当に県の木かどうかわからない,他県からきている木かもしれない,包まれているとわからないという話です。別の製材所に行くと違うブランド名が貼われているという話を聞いたりもしました。木のことを設計者の方がご存じない上に,このような実態がわかりにくさに追い打ちをかけていると思います。施主の方だけではなく,建てる側の方にもわかりやすい制度や説明とかがなされていけばと思います。ご質問への答えにならなくて,どうもすいません。
安藤 ありがとうございました。今日は休日にもかかわらず,長時間にわたってご静聴いただき,ありがとうございました。最後に,何かもう一言おっしゃりたいという方いらっしゃいますか。
参加者A 私も,ある意味では「地域材」という言葉には疑問があるのですが,安藤先生がおっしゃったように,その地域でつくられた木が近くで使われること自体を否定したくはありせん。私共も,県の協力もいただいて,地域材で地域の家をつくろうという取り組みをやったことがあります。
日本住宅・木材技術センターが「なぜ国産材は使われないか」というアンケートを2,000社くらいの工務店を対象に行ったところ,金額がちょっと高いという話と同時に,品質の安定したものが手に入らない,量が手に入らないという話が多くありました。私共の実感でも,工務店さんはせっかく木を使うのだから10%くらい高くってもいいから頑張るよ,全体から言えば大したことはないから木を使うよという話まではすぐに持っていけるのです。でも,例えば林政課を通じて,県産材を3棟分用意して下さいと言っても,タイミングよく集まらないのです。昔はゆっくりと家をつくっていましたから,木材もゆっくり供給していればなんとかなったのですが,今は家をつくるサイクルと地域で木材を供給するスピードが合っていないんですね。それをどのように調整していけばいいのか。これだけ情報システムが発達してきているのだから,インターネットを活用して,こういう材をこういうところにこれだけほしいと言ったらすぐに通じる,そんなネットワークができないのかなと思います。例えば,富山県ならその近辺で集めた材料であれば「県産材」だと言っていいと思うのですが,そうした木材の手配がつくようなコンピュータネットワークができないのか。今日は木材関係の方がたくさんいらっしゃいますので,ぜひそういうシステムをおつくりいただければと思います。
安藤 そうですね,量と質のバランスをとって供給するというのは,大手ハウスメーカー向けの話と地域の工務店などを活かす話とで,いろいろあると思います。地元で長年にわたって木材を取り扱っておられる丸良安藤の安藤友一さん―私のお父さんではないのですが(笑)―ご感想をいただければと思います。
◆ゆっくりと家をつくるか,乾燥材対策を急ぐか
安藤(友) 今日は非常に参考になるお話を聞かせていただき,ありがとうございました。名古屋は大都会ですから,いかんせん外材が圧倒的に多いのが現状です。名古屋だけで申しますと,外材が9割を越します。そんな状況ですから,名古屋にとっては,外材よりも県産材の方が遠いのです。外材の方がよっぽど近くにたくさんあります。
また,先ほどのお話にもありましたように,今は家を建てるのが非常にスピーディになっています。そのために,材料の方もスピードを出さなくてはならない。そうすると,いままでは時間をかけていたから生材でよかったが,乾燥材でなければ使えなくなってくる。しかし,乾燥をするとなると,乾燥賃はなんとか貰えますが,乾燥減りの分は全部メーカー負担になってしまう。これでは,メーカーはたまったものではありません。したがって,乾燥,乾燥とわあわあ言っているわりには,乾燥材は市場に出回りません。
これに対して,外材の場合は,輸送の距離がありますから,木材を軽くして持ってきた方が運賃が安くなる。コンテナ1個に入る量は60m3ですが,生材は40m3しか入りません。乾燥すれば約50m3入るので,運賃が2割くらい安くなる。つまり,外材は,乾燥材を積んだ方がメリットがある。
このような現状では,国産の乾燥材はいつまでたっても出回りません。結局は,時間をかけてゆっくり家をつくるか,乾燥材が必要ならば2割くらいのコスト負担をしてほしいと,それにつきるのではないかと考えています。お答えになりませんけれど,日頃感じていることをちょっと申し上げました。
安藤 今日の本題は乾燥材問題ではありませんが,建築と木材をつなぐ上で,木材が乾燥してあることは前提だと思います。それも,表面が乾いているだけで,中が濡れているものは乾燥材ではありません。例えば,乾燥機と脱水機がありますが,洗濯機で洗ったものをがらがらと回すと脱水できる,しかし乾燥はしていない。乾燥すれば中の水分が飛んで,着ることができる。この脱水と乾燥の違いが,木材を扱う上でもかなり大事なポイントになるのではないでしょうか。難しく言えば,自由水と結合水の問題になりますが,脱水と乾燥の違いをわきまえていく必要があると思います。
私は,建築と木材の真ん中いるような顔をして,両方を誹謗するような勝手な言い方を多々いたしまして,そこは謝りますが,これからは本当に両者をつないでいくことが必要です。木材産業と建築業が,嘘をつかない状態で結びつき,これからの社会をつくろう,木材がどうこうという話を超えて,日本の未来を担おうくらいの目標を大きく標榜したいと思います。
いずれまた,本シンポジウムのPart3の企画があれば,開催します。林野庁からもう危険だから止めろと言われない限り,またやりたいと思っています(笑)。今日は3人のパネラーの方には,多くの情報を出していただきました。パネラーの方に拍手をお願いいたします。どうもありがとうございました。
|