令和5年 トドマツ枠組材の強度データ収集

目次

1.事業の目的

  • 実大材の強度試験を実施し、トドマツの樹種群検討に必須な強度データを収集すること
     
  •  2020年改正時の枠組材JAS原案作成検討委員会樹種群検討WGにおいて、実大材の強度データに基づくのが適当であるとの考えが示されたことが背景
 

2.事業実施体制

トドマツ枠組材の強度データ収集 検討委員会 名簿 (敬称略)

委員長 青木謙治 東京大学 大学院農学生命科学研究科
委員 加藤英雄 国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所
松本和茂 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構
大橋義德 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構
南田英樹 一般社団法人 北海道林産物検査会
内田敏博 北海道木材産業協同組合連合会
清野明 NPO法人 建築技術支援協会
オブザーバー 高木望 林野庁木材産業課 木材製品技術室
立花紀之 林野庁木材産業課 木材製品技術室
川原聡 農林水産省大臣官房 食品製造課
田村尭大 農林水産省大臣官房 食品製造課
事務局 一般社団法人 全国木材組合連合会
国産材製材協会
 

3.事業の内容

(1) 事業委員会の開催

有識者、地方公設試、認証機関、木材関係団体等による事業委員会を年3回開催した。
 

(2) 強度試験の実施

① 試験体調達・品質評価
② 強度試験
ア 曲げ試験
イ 縦引張試験
ウ 縦圧縮試験
  
① 試験体調達・品質評価
【試験体の品質評価(格付け)】
  • 試験体の調達は、道内4箇所(道北、道央、道東、道南)の製材工場から
  • 等級の判定は、北海道林産物検査会の担当者が実施各製材工場における試験体の選別作業
 
各製材工場における試験体の選別作業
 
2級試験体の等級決定因子ごとの枚数
  【トドマツ2×4材の特徴】
「あて」で2級となるものが多い
死節は穴とみなすため、小径の死節の合算で2級となるものが多い
 
穴で2級と判定された204材
 
② 強度試験
ア. 曲げ試験
  • エッジワイズ
  • スパン:材せいの18倍、3等分点4点荷重方式
  • 寸法型式204 : スパン 1602 mm
  • 寸法型式206 : スパン 2520 mm
  • 曲げ試験終了後、破壊の要因となったと考えられる節の径を記録
  • 曲げ試験終了後、試験体の未破壊部分から試験片を切り出し、全乾法により含水率を測定
  • 含水率測定用試験片を用いて、オーブン投入前に平均年輪幅を測定
206材の曲げ試験の様子
 
イ. 縦引張試験
  • 寸法形式204
    片側把持部長さ : 455mm
    チャック間距離 : 材幅の12.2倍 (1090mm)
  • 寸法形式206
    片側把持部の長さ : 600mm
    チャック間距離 : 材幅の9倍 (1260mm)
  • 縦引張試験終了後、破壊の要因となったと考えられる節の径を記録
  • 縦引張試験終了後、試験体の未破壊部分から試験片を切り出し、全乾法により含水率を測定
  • 含水率測定用試験片を用いて、オーブン投入前に平均年輪幅を測定

204材の縦引張試験の様子
(宮崎県木材利用技術センターにて実施)
 
ウ. 縦圧縮試験
  • 短柱の縦圧縮試験
  • 寸法形式204
    材長 : 225mm (λ=20.5)
  • 寸法形式206
    材長 : 325mm (λ=29.6)
  • 縦圧縮試験終了後、破壊の要因となったと考えられる節の径を記録
  • 縦圧縮試験終了後、試験体の未破壊部分から試験片を切り出し、全乾法により含水率を測定

206材の縦圧縮試験の様子
 

4.試験結果

(1)曲げ試験

  
曲げ強さの相対度数分布
 

曲げ強さの累積度数分布
 

(2)縦引張試験

  
縦引張強さの相対度数分布
 

縦引張強さの累積度数分布
 

(3)縦圧縮試験

  
縦圧縮強さの相対度数分布
 

縦圧縮強さの累積度数分布
 
 

(4)強度試験のまとめ

  • 密度 : 2級>特級
    《要因》 2級の試験体には「あて」を含むものが多いことによる
     
  • 曲げ試験・縦引張試験
     【特級と2級の強度の差】
        204 : 特級≫2級
        206 : 特級>2級
      【強度の寸法効果】
        特級:あり (204>206)  2級:なし (204<206)
     《要因》 206は204に比べ節が決定因子で2級となるものが少なかった
     
  • 縦圧縮試験
    強度の分布範囲が狭く、特級と2級の差、204と206の差とも小さい
 

5.今後の課題等

① 基礎資料として提供

本事業で得られた強度データについては、「枠組壁工法構造用製材および枠組壁工法構造用たて継ぎ材の日本農林規格」の基準検討の基礎資料として関係機関(JAS原案作成検討委員会)等に提供する。
 

② JAS 600号の樹種区分改正にともない確認が必要な事項

以下については、JAS 600号の改正と同時に確認がなされることにより、円滑な利用が図られることとなる。また、建築基準法告示第1452号(基準強度)の改正も同時になされることが望ましい。
ア 基準弾性係数、めり込み強度、せん断強度
イ 構造計算における接合部等の強度(枠組壁工法建築物構造計算指針に掲示)
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