持続可能な社会の構築は人類が直面する21 世紀最大の課題であるが、なかでも人類の生存に不可欠である森林は、その象徴ともいえる存在である。ところが、わが国森林は人工林を中心に荒廃が進展しており、生物多様性の保全・水土保全等の森林本来の機能が大きく損なわれるとともに、再生可能資源である木材・バイオマスエネルギー利用が滞っている。
人工林の荒廃は林業近代化の遅れ、戦後の行き過ぎた人工林化が主因である。森林の再生は可能であるが、そのためには、皆伐・再造林を繰り返す単層林中心の森林経営を抜本的に見直す必要がある。この方式では、森林の様々な機能を十分に引き出すことが出来ず、林業の採算性向上を図ることも不可能である。
21 世紀型森林経営への抜本的な改革としては、樹種・樹齢の異なる複層林の非皆伐(循環的)施業への移行が中心的課題となる。これには、相当長期に亘る綿密な計画とその着実な実行を要する。
また、複層林施業を支えるためには、近代林業システムを確立する必要がある。わが国のように森林所有形態が小規模な場合、所有者に対する啓蒙や専門的アドヴァイスを通じて小規模所有をまとめ、合理的な森林整備を行なう担い手が不可欠である。本来なら森林組合がその機能を担うべきであるが、現実には森林組合はそうした役割を果たしていない。先ず森林組合を改革し、その業務を森林所有者に対するコンサルタントビジネスに特化させなければならない。
それに加え、専門的な人材(フォレスター、林業技能者)の育成、林業研究機関、路網、森林データベースの整備など近代林業サポート体制を築き上げることが急務である。
なお、急峻な地形や奥地など最終的に林業不適地とみられるところは、天然林に戻す。
以上を踏まえ、「森林再生とバイオマスエネルギー利用促進のための21 世紀グリーンプラン(30 年計画)」を提案する。
先ず第1 段階(最初の10 年)では、皆伐停止とした上で、公的資金で人工林の間伐を行なう。
同時に森林組合の改革に着手し、それと並行して近代林業サポート体制を構築する。また間伐材をバイオマスエネルギー利用に振り向けるよう助成措置を導入する。第2
段階(次の10 年)では、補助金なしで全人工林の間伐を行なうとともに、複層林化へ向けた植え替え作業を開始する。第3 段階(最後の10 年)では、複層林への移行作業を本格化させる。また、森林資源のカスケード利用、バイオマスエネルギー利用についても、これを徹底的に推進する。
本プランを実現するには、第1 段階で約2.5〜3 兆円、第2、第3 段階でも相応の公的資金が必要となる。これを国家予算全体の中に正しく位置付けなければならない。そのためには、本プランは、わが国が持続可能な社会の実現へ向けて21
世紀中に展開すべき基幹的プログラムの一つであること、本プランへの支出は、社会的コストではなく、持続可能な社会という将来価値実現のための投資と認識さるべき性格のものであること、について、国民的理解を高める努力が大切である。
本プランに国民の総意を結集することが出来れば、今世紀中に複層林化は完了し、わが国森林は持続可能な社会の象徴として輝き続けることとなろう。