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木質資源リサイクルの現状と展開の方向〔Ver2001.06.07〕


   

 

1.木質資源リサイクル化の現状

木材産業において、木質資源のリサイクル化については、平成3年1月に木質廃棄物リサイクル研究会(本会参加。事務局:(財)日本住宅・木材技術センター)が設置され、数次にわたり研究会が開催され、同年9月に木くずを「ごみ」にしないためにという中間報告が行われました。その後、同センターで、平成4年度〜8年度まで、農林水産省の助成を得て、木質廃棄物の発生抑制及び再資源化を促進することをねらいとして、木質廃棄物の発生抑制・再利用の実態調査及び発生抑制並びに再利用技術に必要な関連技術の開発に取組み、各年度毎に報告書を取りまとめ、平成9年3月には「木質廃棄物再資源化技術開発総集編」として集大成されました。

また、平成3年9月には関係省庁が協調して、リサイクル推進協議会(本会参加。近藤次郎会長、事務局クリーンジャパンセンター)が設立され、リサイクル推進のために各産業分野の関係諸団体、消費者団体が結集して、活動を行っています。

 

木質資源のリサイクル化の現状は、既に確立されたマーケットとして、

      1. おがこ(家畜敷料、きのこ培地等)〔単独〕
      2. バーク堆肥〔単独、共同〕

        →規模により投資額(一般的に敷地の確保が主体で、設備費のウエイトは小さい)は大きく変るが、一般的には周辺の環境や安全への配慮が問題(風による飛散、発酵臭、醗酵により温度上昇に伴う火災など)。品質についても堆肥としての性能の一定水準を確保する必要がある。一般的なマーケットの動向は、食品残渣や汚泥を始めとする各種リサイクルによる有機質の堆肥が増加したり、景気低迷による需要量の減少などで過当競争気味であり、市場価格は510円/20kg(東京における積算資料の価格)、工場の出荷価格は350〜390円/20kg程度(生産規模の大きな工場の例で、地域や品質により大きな差があります)と低く、安定的な販売先の確保及び物流コストの吸収が問題になる。

      3. 木質系廃棄物を原料とした燃料チップ〔単独、共同、需要先の開拓がポイント〕

        →一般的には木質系建築解体材の中間処理業と兼業している。広大な敷地、周辺の環境確保、原料の安定確保と同時に、安定的な販売先の確保をしておくことが前提であるが、石油エネルギーとの価格優位性がなければ、石油エネルギーに比べハンドリングがはるかに難しいため、安定的な操業の確保ができなくなるので、常に中長期的な視点からのチックが必要となる。今後、建築解体材のリサイクルがクローズアップされてくる中で、規模の大きな工業団地で共同で自家発電を行うなど、建築解体材の処理の一つの方向としては、可能性がある。しかし、現在、自治体がゴミをRDF化(一種の燃料ペレット等の固形燃料)して、自家発電用燃料として供給している例があるが、RDF化の生産コストのほかに、できたRDFの発電燃料として引き取ってもらう際に、自治体が引取料を支払う例があるなど、事業化に向けては様々な問題がある。

        地域資源循環システムの一貫として、地域が一体となってとしての位置づけることが重要。

      4. 木質系廃棄物をエネルギー源とした木材乾燥用エネルギー源、自家発電〔単独、共同〕

        →設備規模は容量により大きな差があるので、投資額も大きく変る。

         *参考:次頁下欄の新聞記事など参照

      5. 炭化処理(水質浄化剤、土壌改良材、床下調湿材、特殊プランとによる油吸着剤等)〔単独、共同〕

        →規模により投資額は様々。液状化した製品も開発されている。別紙参照。

      6. 木酢液(土壌改良用、葉面散布等の植物活性用、病害中駆除等)〔単独、共同、Dとの関連〕

        →入浴剤なども開発・販売されているが、販売ルートの確保は当然としても品質・性能の他に、クレーム処理体制などをどう構築していくかなどの問題がある。

      7. 木質廃材・樹皮を粉砕し、各種の処理をした植物の培養土〔単独、共同=異業種含む、品質競争〕
      8. 樹木抽出成分等(材や枝葉を粉砕しチップや木紛にして、樹木の成分を抽出するもので、ヒバのチップから有効成分を抽出。入浴剤、石鹸、シャンプー、芳香材等に利用)〔単独、共同=異業種含む〕

        →抽出装置を自作したメーカもある。設備費は、生産規模により様々である。

      9. 道路舗装材(エレメントをチップ状に細分化し、加熱硬化剤等でブロック状に再構成し、歩道、街路、遊歩道、公園等の広場、学校、老人ホーム等)〔単独、共同〕

        →規模により投資額は差があるが、簡易型装置を自作したメーカもある。販売先の安定的な確保が前提になる。

      10. パーティクルボード、繊維板、木質セメントボードに代表される木質系廃材等を原料(エレメントを細分化)とした木質ボード(廃タイヤ等と複合化したものもある)〔単独、共同〕

        →一般的に大規模プラント、マーケットは世界競争、安定供給と販路の確保がポイントとなり、規模的には10万@/年以上ないと競争力の確保が難しい。木質系建築廃材のリサイクルと併せて原料の安定的確保のためのシステムの構築が問題になる。木質系建築解体材についても廃棄物の流通が都道府県を超える場合、事前協議が必要なため、今後の都道府県・市町村の廃棄物の規制の動向によっては、広域的な集荷が難しくなる可能性もある。最近、稼動した月間生産能力1万トンのパーティクルボード工場(単独企業)の土地及び設備投資額は 100億円規模である。なお、この工場に木質廃棄物チップを供給する「つくば・ウッド・リサイクルセンター」の建設に約12億円を投資している。→別紙1頁参照

 等(紙・パルプ関係を除く)があります。

これ以外にも複合化技術により、新たな製品開発も検討できるといえますが、試験的に製品化できても工業製品化までを橋渡しするブリッジテクノロジーが必要になります。ベンチャー精神、イノベーションの実践が大切ですが、「もの」はできてもそれは必ずしも売れる商品とは限りません。また、売れる商品にするためのテクノロジーと同時に開発段階からのマーケティングが重要といえます。売れるまでの開発期間も長期化する可能性もありますので、その辺を見据えた周到な戦略をねり、状況の変化にも柔軟に対応していくことも必要ではないかと存じます。→3頁の下の図参照

事業化に向けての検討に際し、設備費については、事業家の創意工夫によりコストダウンは可能と思われます。一般的に、貴方任せ(研究者・メーカー等)で設備やプラントを導入しても「もの」はできますが、品質・性能が確保されているか、価格競争力があるか、安定的な販売が可能か、差別化が図れているか、独自性が図れているか などが問われてきます。常に、問題をニーズとしてとらえ、先送りしないで、前向きに改善していくこと、失敗の積み重ねは、逆に言えば、ノウハウの構築になります。軌道に乗せることは信念とやる気、不断の努力以外に優るものはないといえるのではないかと思われます。

新商品開発には県単・国等の各種の補助がありますので、それらを活用することも検討してはどうでしょうか。

異業種を含め共同で開発したり、地域全体として取組むことも検討できますが、役割分担、開発費の分担、商品化後の権利の帰属、利益が出た場合の配分等を開発当初に協議し、書類で取り決めておくことがトラブルを防ぐポイントになります。何はともあれ、事業家としての情熱や熱意なくして成功はないと思われます。

 

参考:サイト内文書リンク1999.04.10朝日新聞社説

 

 

 

 

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