このページを >保存 >お気に入りへ >印刷 (社)鉄道貨物協会 平成16年度通常総会における奥田会長挨拶の概要 |
日 時 平成16年5月25日(火)15:00 〜 16:10
私は、一昨年5月に日本経団連の会長に就任する際、「多様な価値観が生むダイナミズムと創造」並びに、それを支える「共感と信頼」という基本理念を進め、我が国の経済社会を再生する必要があると訴えた次第である。 その実現のためには多くの人々が問題意識を共有する必要があると考え、2003年の1月に新ビジョンを取りまとめた。このビジョンは、我が国が将来、当面するであろう少子化、高齢化の進展、あるいは世界規模の大競争を乗り越え、国民が将来に希望を持てる日本、あるいは世界を創り上げることを目標として掲げ、タイトルを、「活力と魅力溢れる日本をめざして」とした。この新ビジョンの中には、これまでいわゆるタブーとされていて、なかなか世間では口に出せなかった点も思い切って取り上げている。 私は常々、「変わらないことは悪である」と申しているが、様々なタブーを打破しない限り、これからの日本を変えるための真の改革は断行できない。少子化、高齢化の到来により日本経済には明るい展望は描けないという指摘も聞かれる。しかし、新ビジョンを取りまとめる際に行った試算によれば、2025年度までの期間において、6億の人口の減少が経済成長率を押し下げる割合は、年平均0.2%程度である。技術革新を通じて、イノベーションを着実に進めれば、これは十分相殺できるレベルである。 このためには何よりも企業がこれまでの守りのリストラから、新たな需要を目指す攻めの経営戦略に軸足を大きくうつしていかなければならないわけである。また、政府には企業の活力を最大限引き出す施策を是非、決定して実行に移していただきたいところである。 申し上げるまでもなく、経済成長のためには、3つの生産要素、すなわち、資本、労働力、この生産性を向上させるとともに、技術革新を促進する必要がある。中でも技術革新は日本経済を今後着実に成長させる上で最も重要な要素である。技術戦略に関する発想を根本から転換することが今、求められている。 新ビジョンの中では、それを「MADE "BY" JAPAN」戦略として打ち出している。この戦略の意図することは、従来までの「MADE "IN" JAPAN」」に代表される日本国内の資源だけを活用する方法ではなく、世界の様々な力を最大限活用し、科学技術創造立国として、また、世界のフロントランナーとして新技術や新製品を開発し、世界の消費者が買いたいと感じるような財とかサービスを創りだして、それを世に提供していくことである。 技術革新の推進に当たっては、日本企業の強みである環境技術に焦点を当てることも重要である。これは日本が資源小国であったハンディがあったという現実の中から培われたものであるが、日本の省エネルギー、省資源の技術やビジネスモデル、ノウハウは世界の最先端を走っていると自負して良いと思っている。 例えば、最近、温暖化対策の一つとして、燃料電池の実用化が期待されている。これまでのところ燃料電池の自動車が注目されているが、実際は家庭レベルの小型燃料電池を取り入れた分散型の電源が重要であり、これが既に実用化の域に達していて、市販されている。私達の生活がこれから大きく変わる時代が目前に迫ってきている。 日本はこうした環境技術を世界に積極的に発信して、グローバルスタンダード化していくと同時に、世界の環境保全に貢献していく。こういう戦略をもつ必要があるということである。 当協会は1950年の創立以来、50年余りに渡り、会員である荷主、利用運送事業者、鉄道事業者が一体となって、鉄道輸送の発展のために調査研究や知識の普及活動を行ってまいった。 鉄道による貨物輸送は、環境対策、エネルギー問題、物流効率化への貢献といった社会的要請に応える有効な手段として期待が高まっている。CO2の排出量が輸送単位当たり最も少なく、また、地球環境に優しい特性をもっているので、物流の鉄道輸送のシフトを図る、いわゆるモーダルシフトを推進する必要があると考えている。 いずれにしても、日本は、今、自ら社会や経済の構造を思い切って変えていくことが求められている時代である。改革は、この一年が正念場であり、正に峠であり、今その急坂を登りつめているところである。今、ここで改革を放棄するということがあっては決してならないわけであり、この峠を超えれば、その先に新たな展開は当然開けてくるということを信じて努力を続けていかなければならない。 改革を通じて、日本は国民が夢と希望をもって生き生きと活動できるまた、活力溢れる国となることができる。また、世界の人々から行ってみたい、住んでみたい、働いてみたい、投資もしてみたいというように高く評価される魅力溢れる国になるということもできるわけである。 当協会の会員の皆様方にもそうした目標をもって、今日の改革の環に主体的に参加していくというお気持ちを是非もっていただければと思う。最後に、会員各位のますますのご発展とご健勝を祈念して、今後とも当会の活動に対するご支援・ご協力を賜るようお願い申し上げ、私からの挨拶にかえさせていただきたい。」 [文責:企画部指導課 細貝]
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