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地域産業おこしに燃える人(一橋大学大学院教授 関満博) 現在、市町村合併が推進されていますが、今のところ、日本には約3100の市町村が存在しています。合併が話題にのぼると同時に、この数年、地方分権化も推進されています。自分たちのことは自分たちで、ということでしょう。特に、今後、少子高齢化が際立ち、また、私たち自身の「生活の質の向上」のための取り組みが必要とされています。そのためには、地域に十分な経済力が必要とされます。その際、特に重要になるのは地域の経営資源を見直し、独自かつ戦略的な「産業政策」を展開していくことです。 ただし、戦後五十数年を振り返ると、市町村といった基礎自治体のレベルで十分な産業政策が推進されてきたとはいえません。産業政策は国の政策として取り扱われ、都道府県や市町村はその受け皿として、融資の手続きなどに終始してきました。地域の実情を受け止め、独自な産業政策を構想し、実行した経験も乏しいのです。市町村合併の時代、地方分権化の時代には、ここが「自分の街」と思える「人の姿の見える地域」が独自な産業政策を実施していくことが求められているのです。 私の経験からすると、現在の約3100の市町村の中で、独自な産業政策を推進しているところは、全国のわずか1%程度の約30の市町村しか見当たりません。そして、そこには地域を愛し、力をふりしぼっている「人」がいるのです。こうした人たちの「思い」を受け止め、あとに続く地域が10%の300ほどになれば、日本も一気に変わっていくのではないかと思います。国や都道府県の政策も、市町村が独自かつ自分の責任で産業政策を実行していくための環境づくり、人づくりに最大限の努力を傾けるべきでしょう。 携帯電話の普及にみられるように、ものごと、1%から10%に広がるには膨大な時間がかかります。ただし、10%に達すると、一気に100%に向かっていくのです。こうしたことに関心を抱き、「地域産業おこしに燃える人」が一人でも増えていくことが、日本を変えていくことになるのです。 ※ 首相官邸ホームページ(地域産業おこしに燃える人) ※ 執筆者の紹介
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