〔文責:企画部指導課・細貝〕
「新春に想う 〜改革の原点〜」(社)日本ロジスティクスシステム協会新春講演会
日 時 平成14年1月10日(木)15:00〜15:40
場 所 経団連会館 14階経団連ホール
講 師 弦 間 明 且草カ堂代表取締役会長
〔概要メモ〕
・ ロジスティクスは、この10年間で大きく様変わりしてきている。
・ このところ各種の「改革」が広く浸透してきている。日本の場合、全体のコンセンサスが形成されると一気に進む可能性がある。
・ 流行語で「改革」が選ばれ、当面、改革があらゆる分野で進む可能性があるが、何をどのように改革するか、整理する必要があるのではないか。
・ 当社は、設立後、130周年になったが、その歴史は、改革に次ぐ改革の歴史でもあった。時代の変化に合わせてきたから、企業の存続が許されたとも言える。
・ 企業は社会の変化に合わせて改革することが必要であり、東京大学の27代目の佐々木総長が言われたことに、今は時代の裂け目にいること、危機の根本原因を追求することなく、先送りなどをしてきたこと、時代認識をして、大学に求められている改革を行う必要があること、そのため基本に返ること、それは、学生が勉強し、一人一人の学生が本質を見極める能力を身に付けること、なぜ、この組織が存続するのか、自らのアイデンティティを追及することが必要であること、などを語っていた。
・ 本当の実力を身につけることは、企業経営についても同様である。
・ 米国流のグローバルスタンダードを取り入れることが改革になるのか?。変えていいものと、変えてはならないものがある。その整理がついていないのではないか。
・ また、改革の手段が目的になってしまうことがある。
・ SCM(サプライチェーンマネジメント)は進展してきている。
・ 改革は米国が進んでいる。日本は、20世紀の世界でも類を見ない高度成長をした。2度のオイルショックでも世界に先駆けいち早く立ち直った。ジャパンアズナンバーワンということから、ジャパンパッシングを受けた時代もあったりした。
・ 欧米人と違う価値観があり、資源もない日本は、海外との取引では貿易摩擦を生み、米国から改善を要求され、その時、米国からは買うものがないというようなことを反論したような時代もあった。
・ 日本の企業が浮かれている中で、米国は日本企業のよいところの研究を徹底的に進めた。当時、米国は財政赤字と貿易赤字で苦しんでいた時代でもあった。
・ 企業もリストラで改革、労使関係も冷え込んでいた。米国の学生は70年代までは、大企業志向だったが、現在では自ら起業家を目指すようになってきている。
・ 80年代は米国が痛みを伴う改革をした。当時、日本企業の強さの原因を米国は研究したが、米国は役職に応じた職務配分であった。米国のマスコミは、日本企業を紹介するときに、工場長から工員まで同じ食堂で同じ食事をとる風景などを紹介していた。会社というコミュニティーを何より重視するということである。
・ 日本が黄金状態の時代に、米国の改革は、マーケットキャピタリズムにより、徹底的な競争原理をして、日本企業の強さを勉強し、よいところを吸収した。例えば、トヨタの生産方式をITを活用しSCM、フリー・フラット・?な組織とし、社員教育に力を入れるようになった。
・ 日本はトップの理念の共有を図ったが、米国では教育は投資という概念である。
・ しかし、日本企業の強さの要因は結局見つからなかった。企業として当たり前のことを、徹底的に実行しているに過ぎないということであった。
・ 日本企業の強さがなぜ失われたのか。当社の事例で話をしたい。高度成長時代は、個人の活発な購買があり、当社も順調に売上を伸ばした。しかし、バブル期に、本来当たり前のことを見失った。それは、化粧品の原点を見失ったことである。本来、化粧品を使って美しくなるということがある。化粧品を顧客のニーズにあわせるのでなく、「もの」として販売してしまった。本来は、顧客それぞれに、サービスや機能もいっしょに付けて売らなければ満足してくれない。労せずして、売上が上がったことから、それを忘れ、大いに反省した。
・ 戦後は、あらゆる業界で産業保護、護送船団方式がとられた。化粧品は、1953年より再販制度が設けられ、97年?までそれが続いた。
・ 顧客、販売店、資生堂が化粧品の価値を共有しなけれならないものである。改革といっても基本を忘れてしまったら意味をなさない。顧客が満足するということを忘れてしまった面がある。
・ 基本に返り、当たり前のことをきっちりできなくなったことに不況の原因があるのではないかと思われる。
・ 改革の柱は、マーケッテイング改革、SCM、? の3つで、顧客のセブメンティー?を細分化し、商品開発を行った。また、90年代後半、特に、95年からは、ITツールにより、ロジスティクスの概念が変わった。
・ SCMが進展しても、各部門の本質的な役割は変わっていない。垂直統合型では役に立たない。全体最適と、部分最適を達成する全体の統合(水平統合)がSCMの課題である。
・ 今後は、あらゆる顧客のニーズに即応する必要がある。資産の運用効率を上げて、バランスシートの改善を行うことが重要である。
・ 需要予測が難しくなり、メーキャップ商品はSCMを難しくしている。需要予測の精度をあげることが重要で、BTO(D?)受注生産に近づくことが求められる。
・ 結論としては、今後も経済は厳しい状況が続くものと思われ,アジア特に、中国との競争が激しくなる。個々の企業の業績においてもマーケットキャピタリズムにより、極一部の勝ち組みと、多くの負け組みが共存するようになるものと思われる。
・ シンプルな企業理念とシーズが重要で、文房具のアスクル、デルコンピュータは顧客のニーズを常に意識している。
・ 勝ち組みに入るには日本型の経済システム、経営システムを創造することが必要ではないかと思われる。