〔文責:企画部指導課・細貝〕

 

日本木材加工技術協会創立50周年記念 第16回年次大会記念講演

〜 21世紀の資源・環境と今後の木材産業 〜

 

 

日  時                  平成10年10月20日 15:10〜17:00

場  所                  アルカディア市ヶ谷

 

コーディネーター        有 馬 孝 禮 東京大学大学院農学生命科学研究科教授

パネリスト             小 林 紀 之 住友林業

   〃                    速 見  亨   速見林業

   〃                    片 山  正   大建工業

   〃                    杉 山 恒 夫 セブン工業

 

概要 

30分間遅れて出席のためプロローグは聞き取り不可

 

住林・グリーン環境室 小林

 300年前四国で創業し、100年前に変革があり、これまで3段階のステップがあり、木材の流通加工、住宅、環境等の分野に事業展開している。世界にも生産拠点を保有している。

 当社の経営理念の中で、環境保全は重要な位置を占める。

  事業を通じて社会環境・自然環境に貢献する→山林経営から出発→現在 地球規模で展開

 特に森林問題→熱帯林、熱帯林再生

 事業全体を 1996年にシステム化 ISO1400 認証取得し、この4月に全国展開をはじめ、東日本ブロックでは 本日認証予定であり、全社で認証取得を予定している。

 事業の中で環境問題に何故取り組むかということは、社内でも住宅・木材営業が低迷している中で、ISO取得にしても環境よりも利益との話がでたりした。

 現場では建設廃棄物の削減を行い、75%がリサイクルしている。

 商品開発の面で出来るだけ天然素材を使うことは、価格が高いが効果が出てきている。

 熱帯林再生、地球環境に対する貢献では、インドネシアの山火事があり、山林経営(実験林)の中で、再建の声が地元から上がっている。住民参加が重要ではないか。世界銀行の環境技術移転で対応している。

 経営哲学、従業員の姿勢 環境ガバナンス?

 環境問題で経済レベル、経営の問題として、

 必要コストをどのように → 消費者が決める問題  → 出来るだけ多くの方に分かりやすく説明することが必要。補助でつながざるを得ない面もある。

 業界の責任範囲が広がり、→利便性との兼ね合い → プレカット、合板、パネル化

家電、自動車ではリサイクルは義務づけが行われている中で、住宅に置いても同様の問題がある → リサイクルを考えた家づくりを推進している。

 

林産課長

 温暖化防止関連で地球温暖化関連の法律が成立した。林野庁でも検討会をもうけている。

 推進大綱の閣議了解で、森林木材利用の所要の方策を展開。残念ながら一方でCO2問題で木材産業は4.3兆円の?

 木材産業の業況はこのところ芳しくなく、1〜8月まで544件の木材関係の倒産があり、昨年1年間分を超えている。需要の減退が最大の要因で、倒産の中身は、48%は販売不振である。

 21世紀に向けてキチットした森林管理→木材の利用を持続的な経営が出来るような形で維持することが重要。木材の需要構造は家づくりが短期間で変ってきたこと。木材の品質・性能の明示についても6月に建築基準法が改正されたことから、重要なポイントである。

 木材産業が早い機会に体制整備が重要である。

 

有馬 

 山〜木材加工〜住宅までの循環型社会の構築が重要である。 

 環境資源である木材は共存が可能。先の森林総研の研究発表で森は地球環境を救えるかというテーマがあった。

 木造建築フォーラムの研修で、森林都市宣言  → ?  沼田、天竜の3個所が宣言を行っている。

 環境と資源を同時に考え、循環は何か、本当に循環しているのか、連携は取れているのか、循環で何が問題なのかを考える必要がある。

 

セブン工業 杉山

集成材組合は、林野庁と建設省の共管。性能規定、性能表示、瑕疵保証、品質保証 等 基準法の関係で材料にも影響がある。構造体に起因するクレームで千分のいくつかの床の傾きがあると保証しなければならないなど厳しい内容である。3年後に集成材以外は使えないということも有り得る。

 現在の集成材の生産能力では、年間40数万戸の木造の建築物の需要をまかなうことは難しい。

 中高層建築物の木造化も課題。

国産材の集成材は、カラマツが長野、岩手で少し使われている。伐出コスト、乾燥コストを含め各段階で大幅なコストダウンが重要である。

 

有馬

 技術的な連携がポイント。林業の取り組みがどのくらいまで出てくるのか、ラベリングの問題を含めて。林業が 流通まで安定的にだしていかなければならない。

 九州でスギの集成材が出来ているとの話である。?

 

速見

林道端で木材を渡すと100ドルというのが用材の国際価格ではないか。九州のスギはそのレベルまできた。山側の責任として、切って植えるという努力、今までの慣習的な作業ではなく九州の森林をどう維持し、原料としてどう供給していくかが問われている。

森林の環境的役割という意味では、林業の作業における環境に与える影響は大きい。欧州では、森林のグランドデザインまで含めている。リゾート?

森林認証した場合、その木材を指示してくれる消費者がいなければらない。欧州では、グリーンコンシュマー が認証を受けた木を買っていく、森林認証を受ける経済的な担保がある。

企業の倫理観としての環境、差別化、コストを下げ、環境的なコストを下げるそのようなものを選択的に買っていくような仕組みがなければ、循環としての形が出来ない。

 

有馬

 ラベリングを市場経済にどのように組み込めるか、集成で言えばユーザーはハウスメーカかもしれないが、最終的に使うエンドユーザの問題がある。

 

片山

 木材が脚光を浴びているが、環境、産業廃棄物が大きな問題となってきており、リサイクル率のアップ

建設廃材40% → 90%

 建設排出木材  600万トン  その6割が最終処分場で処理され、利用は4割で、燃料チップやパーティクルボード等が主体、90%までもってくるためには、リユース、再利用が問題になる。繊維板の40%が建築廃材を混入している。 

 塩ビ VOC ホルムアルデヒドの問題  一般ユーザが問題意識

 木材の良さを環境と合せて、有利な材料であるということをPRする必要がある。

 

住林

 循環→炭素循環 ISO9000と14000、ラベリング、LCA、廃棄物の問題は新築系のものと解体系の2つのタイプがある。

プレカットの進展により、現場のゴミが減少した。解体→現場で分別処理することがコストが安いということがわかってきた。

燃料チップだけでなく、解体材は資源として構造材の柱として再利用することも必要ではないか。

問題は経済的なコストである。適正な料金を頂くようにしているがなかなか浸透しない。

100万円という家屋の解体料は150万円いただかないと競争力がない。誰がコストを負担するのか、木材のLCA 、炭素循環を考える上でも重要ではないか。

 

有馬

カーボンの負担、廃棄物 木材は資源であり、廃棄物として捉えていることが誤りではないか。捨てる仕組みになっているが、施主が原料代金として解体材の料金をもらえるような仕組みも考えるべき出はないか。

 

速見

100年住宅が話題になっているが、明治、大正、昭和、平成それぞれに建てた住宅に住んだ経験がある。

目指したいのは国民の森として、自分の山は美しい山に育てたい。たくさんの方が尋ねてきて、出て行く時は豊かな気持ちになるようなことを努力したい。

 

杉山

 集成材に対する期待に応えるため、品質の向上。コストダウンを推進したい。農地解放ではないかが、林地開放ができないのか。

 

片山

 リサイクルの立上を推進したい。解体材は経済性を考え、リサイクルとの視点からは重要で、国産材は有効活用に持っていく方向があるのではないのか。

 

住林

木造注文住宅はプレハブとの競争が厳しくなっている。本来の木造住宅の良さ、一部の地域では地域ブランドで地場材を使い特徴のある住宅を造っているが、工業化との兼ね合いがある。 

 アジアで美しい森林をどのように創っていくのか課題。

 

林産課長

 国有林の改革法 国民の森として改革することが理念、森林所有者の財産権、森林構造、経営のビジョン、国民生活で森が大切な役割をもっている。温暖化防止等森の役割が高度化してきている。

高齢級の森林は天然林と変わらなくなる。野鳥の保護を含め、森林整備は管理できる形で考える必要がある。

 

有馬

 森林は炭素の貯蔵をする。木材の生産でも同様に固定する。エネルギーを使っていた他の材料との比較 → 焼却のためだけに金を使うのは論外であり、木材を使うことにより化石燃料の減少を抑えることも可能である。 

 連携という面では、途中が切れていたともいえる。隣同士で互いに考え、自分の循環の位置づけを含め、考えることが大切ではないか。

内装に木材を使いたいと8割の潜在需要があっても、結果はその1割程度ということは、連携のどこかが切れているといえる。21関に向けて循環を考える必要がある。

 

〔コメント〕

 聞き取りにくい場所であり、肝心なプロローグが聞けなかったため、全体の流が最後までつかめず残念。

環境問題の関心の高まりは、森林・木材に追い風との認識があるが、なかなか風の流れに乗れないところに現下の木材産業・地域木造住宅産業の構造的な問題が背景にあるのではないか。

基準法の改正を見ても材料レベルで考えた場合、工業化の流れのなかでは、ファジーな材料はいくら「健康に優しい」とかのキャッチフレーズを叫んでみても、また、エンドユーザーが木を望んでもコマーシャルベースにはのってこないことが明らかである。

理屈をこねてばかりいたり、金がかかる、どうせやっても成果はない、どうにかなるの延長を続けてみてもこれまでの木材マーケットの沈下が示すように衰退の一途を辿るだけである。

企業家として、研究者として、事業者団体として、プロ意識を持ち、身の回りからできる限りの努力と改革をしていかない限りは、未来どころか明日は迎えられないことを再認識する必要を改めて実感した。

21世紀は木材の時代とはよくいうが、他の材料の技術革新は急速であり、例えば、化石燃料の枯渇とはいいながら、掘削技術のイノベーション、リサイクル技術のイノベーションが消費量を上回るスピードで進展すれば、永遠に木材の時代は到来しないともいえる。