〔文責:企画部指導課・細貝〕
第33回木材産業振興大会講演
木材産業・新時代への道すじ〜物つくりにこそ未来がある〜
日 時 平成10年9月24日(木)14:30〜16:00
場 所 北海道厚生年金会館ホール
講 師 東海大学総合科学技術研究所 唐 津 一 教授
概要
· 景気は2年で回復。
· 家は20〜30年であばら屋になることを勘案すると1年で住宅が回復。
· オイルショックの時は、インフレが急速に進み、仮需要も発生したところに、ぴたっと注文が止まり、在庫の山となった。午前中だけ出てきて工場を操業。従業員が売らしてくれとの話→電気屋が困るので派遣社員とした。
· 当時と比べると、今の不況は当たり前→ 当時は円高
〔日本は大丈夫か〕
· 日経の討論会でアサヒビールの樋口氏と話している中で、死にもの狂いでやること、石にかじりついてでもやることが重要との認識で一致した。
· 福島のプラスチックの整形をしている会社の例では、電卓の注文が殺到→技術革新が速く、小型化のスピードが直ぐ訪れたため大型のものは売れなくなり、社長が納豆を売りに行ったという事例もある。工場の片隅に建売住宅を建てたりもした。
· どのような努力をするかで来年、再来年が決まるといえる。
· 日本経済を考える上で、日本の数字を見てみると、
面積 378000平方キロ
人口 1億2617万人
GDP 506兆9771億円
で、日本の経済の足取りは経済成長率では、一昨年は絶好調であった。
内需のウエイトが高く、昨年は0.9で今年はマイナス0.1とかが予想され、もう一年位は横ばいが続き、それから伸びると予想される。
· 企業の昨年の3月決算は絶好調であった。過去5年間の増収増益の企業が多かった→名古屋の電装、ローム等
· 日本の鉄鋼業の技術は世界一で付加価値が日本の経済を創った。
1t当りの価格
鉄鉱石 2000円
鉄板 5万円
自動車 100万円
· 佐賀の造船は受注残が3〜4年あり、佐賀の地方銀行も業績はよい。また、長野の八十二銀行、静岡銀行も好調である。
· バブルの時、物を作り付加価値を生ませる→日本の技術力 →技術はものすごいスピードで代わる。重厚長大産業は駄目ではない。過去のものでもない。基礎的な数字を見ることが重要である。
· 基礎素材は100兆円で、窯業土石は半分が付加価値である。技術はものすごいスピードで代わり、
ラジオ→白黒TV→カラーTV→オーディオと10年毎に代わる
· 日本の製造業は30年で3倍、製品開発は10倍となった。米国は株主にどれくらい配当するかがポイントであるが、日本は永続性を重視した経営である。
· 胃カメラは直径3mmができた。血管の中に入れることも可能となり、映画であったような世界が現実のものとなりつつある。
・売上の15%が研究開発費? 設備投資→税金を無税にする必要がある。
・アメリカ特許取得件数を比較すると、
IBM 1724
キャノン 1378
NEC 1095
モトローラ 1058
であり、決して劣っているわけではない。技術貿易額の推移では、4年前から日本は技術の輸出国になった。
・今までどおりの家を建てていてはだめである。?
· 日本のやり方を米国は警戒しているレポートがあるが、その中に21世紀にかけての技術開発は、これからの技術開発は日本の技術とくっつかないと駄目との記述がある。このレポートは日本では報道されなかった。今年の5月の記者クラブで講演したが、この話をした。日本の新聞は話半分と見た方がよい。
・GDP 経済活動比較では、
日本の実質資本財、耐久消費財輸出金額は、耐久消費財は低下している中で、資本財輸出=部品等は大きく向上している。日本のロボットは4割?のシェアがある。日本が独占的に供給しているものも多い。例えば、自動車のエンジンのバルブのスプリングは7割を神戸製鋼が生産。
日本の貿易依存度は、
輸出 輸入
日本 8.6 8.4
海外生産が増加し、47兆円(ちなみに韓国のGDPは39兆円)である。
・国内だけでなく海外を見る必要がある。
海外で働いている日本人は、米国の会社の1割は日本? 北米産自動車の輸出台数
〔どうしたら物が売れるか〕
・キチットした数字を見ないと経営が傾く、円が下がると日本人の血糖値が下がっている。景気と血糖値の関係?、景気が悪いと ?
1世帯
金融証券 5% 24兆
個人290兆円
・成長するサービス産業 豊かさの指標 スボラ産業
・NTTの電話帳 2500の業種
・いろいろな資料を集め、並べて見ると別な視点が出てくる
・経営は世の中をどう見るかが重要
新技術の大爆発
情報革命
新交通、新運輸の実現
国際化・無国籍化
高感度消費
?
・通信は距離をゼロにする。画像処理→バーチャルリアリティ。この2つがポイント
· ミニディスクMDで、FM東京がラジオに文字を出した。タレントが何処に行くかを出しただけで200万台売れた?
・売れないものを売るから売れない
· デジタルビデオ、デジタルスチルカメラ、多チャンネルTV、ノートPC、カーナビ 3年間で350億円 ? 売上が2千億円ないとできない。
· 日立造船→トチュウ茶
・ゴミ処理のプラント 100億円 発電設備を付帯
・東京都の予算の使い方を絵にする→数字を見るから分からない
・交通と運輸が代わると 42ノット 時速72キロ
東アジアの国々と海でつながる 経済が代わる
・宅急便 フグ刺し
・第3次流通革命 コンビニ →産地直送
· 何をやるか。コストダウン、合理化の効果は2年かかる。
・日本は変化の速い国である。 不景気 地獄 極楽→往生
・プレスで油が不要なものが出来た→大津
・和歌山の滋賀精機
・革命的な技術はある。住宅が代わっている。環境問題は追い風といえる。
・新しいことに取り組むことが重要であり、何もしなければ衰退する。この不況は後2年で終わる。
〔企画部指導課コメント〕
唐津氏は、数年前に5%のコストダウンは難しいが、3割のコストダウンは達成可能→根本を変革する必要があるので新しい考え方で実践すればできる。東京の交通混雑は簡単に解消できる→規制のルールではなく、混雑をなくすことに主眼を置けば信号を操作すればよい。等の物事の本質をとらえ、既成概念にとらわれることなく、ユニークな発想の経営者であり、イノベーションを実践するエンジニアでもあったかと記憶する。
今回の講演で不十分な電子メモしかとれず、貴重な機会損失をしたと深く反省するが、要は、木材産業についても、不況を理由にしたり、人のせいにしたりすることなく、自ら努力をして、新しい展開をすることが生き残りのために必要な最低限の条件であるということではないかと思われる。