住宅・木材セミナー(日刊木材新聞社主催)
〜住宅と木材の変化〜
日 時 平成8年4月15日(月)13:00〜17:50
場 所 木材会館 7階会議室
〔基調講演〕 「木材産業再編化の方向」
講師 西村勝美 森林総合研究所 東北支所経営部長
(概要)
住宅と木材をめぐる変化について、
@最近の住宅着工
A住宅の構造的変化
B木造住宅の工法の変化(匠・構造的な捉えかた)
C製材品を中心にどのように乗り越えていくか
D材料供給の流通業としてどう対応するか
の視点から考えてみたい、
これまで木造住宅は大きな変化がないまま推移してきたが、昨年の阪神・淡路大震災で膨大な老朽木造住宅の倒壊があり、それをきっかけにして、軸組みに対する捉え方が、メディア側が誤った報道をしたため、木造住宅全般に影響し、不信感をあたえた。この中で、プレハブ、ツーバイは好調であり、その後の調査で木造に対する認識が修正されてきている。しかし、軸組みに対する批判は批判としてとられ、耐久性、耐震性はきちっとした科学的データを基に示す必要がある。
昨年の木造の着工は、8%減の67万戸、その中で軸組みは8割以上の56万戸を占めるが10%の減、依然として軸組は工務店が主体であるが、生産供給体制が問題となっており、体制作りが課題である。
木造住宅生産供給の中身をみると、プレカットは3割程度のシェアがあり、それに使用されるものは、寸法制度の高い、乾燥した材料が中心で、生材は使われなくなってきている。構造のみならず、羽柄・造作でもプレーナ処理されたSS材(表面が1面加工は1S、4面は4S)が使用され、軸組みでもパネルとかそれに近いものが出てきている。
在来軸組みの生産供給体制の変化では、施主から口コミ、地縁血縁が主体の大工・工務店から、様変りし、都市部では営業活動が定着し、中堅以上の工務店、ビルダー、大手ハウスのシェアが伸びてきている。
郡部でもその傾向は徐々に強くなってきており、小規模の工務店のシェアはダウンし、大手が元請け、中小工務店が下請けという形態も多くなってきている。
元請けは、独自の設計基準をもち、使用材料も基準を設け、元から下請けにいく場合は、材料の仕様書があり、指定材、支給材として供給される。
この指定材・支給材はマーケットに存在しないか、あっても少ないので、元請けから、産地に直接発注されるので、問屋、市場を経由しない。中間を排除した流通であり、プレカットが浸透するにしたがって多くなる傾向にある。下地、野ものを含めて中間を排除した流通が多くなってきていることを考える必要がある。
一方、流通でも、工務店支援、プレカットを抱えたり、特定のプレ工場と契約したりしている。
製材業には、選別、きちっとした品質管理が重要であるが、問屋、市場を通した取り引きは、少なくなることは避けられないので、今までの製材工場の対応は許されなくなってきたといえる。
建築用は8割が外材で、現地挽は1/3を占め、マーケットニーズに合致した北米の乾燥、SS材のカスタムカットが急増し、要求寸法、品質管理された材料が主体になってきている。国内挽は対応できていない。価格ではなく、性能本位になり、言わば対応しできないうちに現地から入ってきてしまっている。業界ぐるみ、地域ぐるみで対応しなければ、国内製材はシェアを低下させていく。
〔工法〕
工法の変化では、大壁・乾式工法のみならず、プレカット工法、部品・ユニット化、P&P工法へ移行してきている。
使用材料の変化では、乾燥材、SS材、ユーザー規格材、安定供給材(品質・価格・納期)のシェア上昇、ツーバイフォー材を根太、まぐさ、枠材、間柱に使用され、胴ぶちがいらくなくなってきている。下地関係では、野地・ラス下地に針葉樹合板やOSB・MDFのパネルが使われるとともに、軸組みの中に集成材がどんどん入ってきており、管柱まで使用されている。これは国内に乾燥した精度の高い柱が少なく、あっても高価格であることが要因であり、柱サイズではここ1〜2年の間に15%程度のシェアになる。
木材産業として、マーケットや工法の変化に対応するには、これまでの挽きっぱなしから、商品の性能、供給体制を変えていく必要がある。工業である以上技術革新が必要である。しかしながら、内地材は特に多品種の場合、コストがどのように掛かっているかわからない面がある。 自社の得意商品をメインに据え、それに必要な技術、レイアウト、原木をきちっと体系づけ、生産体制を確立していくことを考える必要がある。
柱材をきちっと乾燥させるため、乾燥の位置付けやどのような材料をどのように仕上げるかを徹底的に考える必要がある。必要に応じ、材料を乾燥にむくものと向かないものに仕分けし、向かないのやロス材は別なマーケットにもっていくことも検討し、コストを低減させる必要がある。マーケットにない商品も多いが、それは産地に直接発注されるので、流通業としても対応していく必要がある
流通の再展開では小売、問屋、市場がマーケットの大きな変化の中で、流通業が位置付けされるためには、アッセンブル機能を付与することが重要である。
品揃え、配送だけでなく、どのような材料をどこに発注するか、仕入れの在庫管理、信頼される技術・品質基準の提示が必要ではないか。
工務店との強調の中で、プレカットを含め羽柄、造作等の販工化(販売と施工を一体化)等も取り組んでいくことが重要である。
パネルディスカッション
司 会 森林総合研究所東北支所 西 村 勝 美 経営部長
講 師 伊 東 弘 二 取締役部長
〃 佐々木 幸 久 代表取締役社長
〃 渡 辺 謹 治 代表取締役社長
(西村)
住宅と木材の変化について、各パネラーからそれぞれ伺いたい。
(伊東)
入社40年になるが、ここ10年間は特に大きな変化を経験した。その中で、木材が住宅の進化に果たした役割ということを考えると寂しい限りである。
一方で新建材は、昭和35年に新建材による乾式材料が生まれてから今日まで住宅の進化に役立った。最近では、浴室ユニット、システムキッチン、建具類、収納家具、外壁材=サイジング化等、住宅の変化・工法の進化に大きく役立ったことを考えるべきである。
このような守りの木材業界の体質に
より、最もおいしい部分であった構造材をプレカットやツーバイフォーに木材を構造材に使うことを否定され、高級化粧材(むく材)を化粧合板や二次加工合板にもっていかれた。これからはKD材、EW材でなければ、スペースパーツの世界からも否定されるのではないか。
住宅の進化や工業化を助けなかったばかりか、乾式工法の進化を阻害した木材であったともいえる。それは、生材であることと呼称寸法によることから、住宅の4大クレームである建てつけ調整、クロス切れ、タイル割れ、床鳴りは生材であることが原因である。呼称寸法は、精度がでないばかりか現場で大まかに組み立て採寸し、羽柄材を取り付けていかなければならず、名人芸を必要とした。
迷惑をかけているにもかかわらず、4大クレームに対応していないばかりか、未だ
105が105mmない商品を平気で市場にだして当たり前の世界が通用している。これからは当たり前ではすまなくなり、設計図どうりというのが常識になるので、建具、畳等の後工程に責任を転嫁することはできなくなる。
このようなことを全部変えるため、木材を工業用木材=乾燥し、S4Sとして、精度が設計図どおりのEW化木材を入手できるようになった。8〜9年前にこの話をした際、木材・製材業界からまったく相手にしてもらえなかったが、7年を経過し、尺上を超える梁材でも5社が対応している。
この狂わない設計図寸法とおりの木材を供給してくれるようになると状況は一変する。このように軸組みの近代化に取組み、柱のみならず、羽柄も対応し、狂わず、設計図どうりの住宅が建てられるようになった。
また、自由設計の軸組工法という日本の家づくりの基本を変えず、かつ、設計、プレカット、現場等それぞれバラバラだったものを近代化するシステムとして、オリジナルCADコンピュータシステムを相当な期間・費用をかけて開発した。
このCADは、重心・剛心・変心率も自動表示計算し、耐震構造設計まで行うことができるし、後工程に全て連動するようになった。
CADから、構造材プレカット生産指示情報、羽柄材プレカット生産指示情報、階段材プレカット生産指示情報、野地パネルプレカット生産指示情報が出され、この四つにより、必要なものが必要な形で1つ1つ生産され、使われる場所まで決まった材料になる。即ち、目的別商品、スペースパーツの世界である。
住宅構成木材の目的別生産を展開すると、必要なものしか作らないので、市場で扱うとか在庫するとかはあてはまらず、いわば新世代物流として、作られたところから直接必要な現場に流れる。
軸組の近代化は、結果として設計図どおり建築することができるので、大工の生産性を上げた。木材と建材は別れていたが分ける必要はなくなり、住宅に必要な材料として同一の場所から流れることになる。
住林の新世代木造供給システムは、イノスが地域の工務店と連携して、代理店70店、会員工務店が500社、平成6年度は623棟、7年度は3月で1,162棟、8年度は2,300棟以上を供給したい。一般市民にグループだからできるという展開をする。
この仕事の仕組みを覚えると新しい展開が生まれる。CADのシステムは30の代理店においてCADステーションが稼動している。スペースパーツには取り付け説明書がついており、現場で余計なことを考える必要がない。
大工技能者の収入も直接現場で出来高にかかわらない仕事をなくすことにより、600万円の収入が最低5割はアップする。木材が変われば現場の生産システムが変わるといことである。精度の高い工業化材料としての木材の使用は、ツーバイフォーを上回る生産性になる。木造軸組みは柱、梁が重要であるが、価格の高い部分に木材が使われなくなれば木材は衰退し、山がまもれない。
さらに、工法の普及と改善・改良に努力したい。
(西村)
現場の匠の技を工業化とシステム化により克服し、必要をなくすということではないか。
(佐々木)
当社は戦後、製材業からスタートし、家具、建築・土木、木材の4社のグループで展開している。8年前に木材部門を担当したが、企業が21世紀まで持たないと判断されたのでかなり強引に業態転換を実施してきたところである。そのようなことを踏まえて話をしたい。
国産材の苦境の原因は、円高と木材輸出国の強さにある。国産材が弱い原因は、
@資源は増えているものの絶対量が少ないこと、
Aその大部分が35年生の弱齢材であること、
B育林費が国際相場に比較して数倍高いこと、
C林業を担う業者が零細であること、
などである。
輸出国の林産業者は大規模で時間当たりの生産性が高く、かつ、システムのコンセプトがシンプルで、MSRのような商品開発が進んでいる。
我が国林業の課題は、人手余りから人手不足のコンセプトに転換し、それに合った技術的な手法を確立することが重要である。集成管柱の供給能力が柱需要の3〜4割にもなっている実態を考え、現下の実態に合った育林コンセプトを導入しなければ大変なことになるのではないか。
国の対応としては、山の問題を主流において、川下の加工に手を出すのではなく、林業・林産業が補助金なしで自立できる基盤・インフラ作りをここ10年間の間にしてほしいものである。もう一つは研究の効率化であり、国内で木材に関する研究が多く行われているが、非常に重複しており、無駄が多い面があるので、一元化する必要があるということである。
木材産業の課題としては、恐らくこのような状況はよくはならないと考えられるので、海外からの木材の入荷はより増え、ユーザーからの品質・価格面でのニーズが強くなり、国産材比率がしばらくは低下していくことをやむを得ないのではないか。
不景気にどのように対処していくかということになるが、小手先の方法ではなく、真剣に生きて行けるビジョンを考える必要がある。ビジョンとは予測、決断、ロマンではないかと思う。
予測とは、情報を収集しそれを分析することで、よく、木材の専門会社であっても目先は知っているが、根本的な分子レベルまで掘り下げた知識や技術はもっていないというのが一般的である。そこまでを身につけると共に、自社の経営資源をチェックし、ふさわしい規模と時代に適した業態を探すのが経営者の役目ではないか。
その、キーワードの一つは、すきまということである。EW材や乾燥材の需要が顕在化してきているが、それに対応していくにはかなりの経営資本力が必要である。顕在化しているニーズを探し、それに対応していくことが重要でないか。
二つ目のキーワードは、最終ユーザーに近づくことである。商売は製造+販売であり、ユーザーの側に身を置いて、つかまえておくことが必要である。
商品開発という面では、技術開発力は持っていないのに等しいので、公立の大学・研究機関を大いに利用する必要がある。
行政も同様に我々と一緒のシンクタンクと考えて、様々なニーズにともに考えるようになってほしいものである。
(西村)
木材部門は従来と同じ展開では21世紀までもたないと認識し、体質改善をすることが急務である。国産材は円高や良質な資源の絶対量が少ないということなど、現実をキチット見据え、すきまや最終消費にどう結びつけるかということになるのではないか。
(渡部)
新宿で工務店を経営しているが、施工側の実状を話したい。
当社は資本36百万円、50名の従業員で木造、鉄骨、RC等を建設している。当社では、建てたものがよくなければ次に発展しないと考え、口で宣伝するよりも建てたものを顧客や設計士に認めてもらうことに重点を置いている。全員が技術屋であり、営業マンであることから、専任の営業マンはおいていない。
でき上がった時点が最高でなく、時期が経過しても機能や特性がよくなくてはならないので、20年前のものでも対応することとし、責任施工を実施している。
芸術的にも機能的にもよいものを造るには、技能者の教育が重要であるので、企業内に都が認定する建築訓練校を開校し、中卒は3年、高卒は2年間の期間で教育している。木の教育は勿論のこと、全寮制で企業人・社会人として必要なものを含めて教育する。
基礎学科として、数学、国語等等、合宿訓練も行う。実技・図面は勿論、スポーツ、手紙を書くこと、国語も教えている。経済生活の指導も行う。
18歳で車を持つこと、25歳になれば結婚を奨励している。3年経つと技能オリンピックに参加させているが、昭和47年以降、東京都の代表に選ばれ、全国大会、バンコク大会に出場し、平成5年には全国1位になった。平成7年には訓練校の第1回目の卒業生の子供がフランスの世界大会で3位に入った。台湾では、15〜18歳の子供2,500人に対し、国を上げて職業訓練を行っている。国の繁栄は技能なくしては果たせないといえるのではないか。
現在、訓練生が13名、一級技能士が10名、二級が4名、技能士補が3名、合計30名のスタッフで木工部を編成し、主に在来軸組工法と耐火造りや鉄骨の木工事に対応している。他に1級建築士が9名、2級建築士が5名いる。木造の大工の養成は建築の主な仕事は大工であり、よければ板金、等の仕事がうまくいくことにつながることになる。
このような状況の中で阪神・淡路大震災が降ってわいたように発生し、直後の新聞報道で、木造在来軸組工法の住宅が倒れ、プレハブは倒れないとかのショッキングな報道があったことから、全員で現地を視察し、倒壊した建物を調べた。土壁の上に土葺き瓦家、筋違はなく、筋違と柱・柱と梁・柱と土台をごく簡単に釘を打ち付けたもの、同一開口部が大きいものなどであり、新耐震基準法以後の比較的新しい住宅は問題がない。要は、木造住宅の倒壊は工法でなく、耐震基準を守っていれば問題はない。
しかし、施工上のミス=鉄骨の柱のアンカーボルトが抜けていたり、鉄筋のジョイントがまずかったもの等 が見受けら、施工基準をまもっていないものがあった。
そこで、施工の基本を確実に守ることが必要と考え、公庫の仕様書を今一度見直すことを指示した。公庫の仕様だけでなく、木材の乾燥の問題を注意しなければならない。仕様書には木材の含水率が15とか20とか25%以下とかになっているが、木材を買って上棟し、ゆがみを修正し、金物を全部締め付け、造作に入る時、材木がやせることが多く、締めたボルト・ナットは手で回ってしまう。そこで、造作に入る前に再度締め直すことが必要となる。スプリングワッシャ?の活用があげられる。
もう一つは木材の寸法の問題で、土台は120mmの設計図を書いても実態は118とか、115mmとかになる問題がある。ベイマツの梁材や羽柄では一般にいう寸法がない。構造計算が必要な木造3階建てではこの寸法がないといけないので、設計屋から指摘をうけたことがある。PL法の施行ということもあるので解決しておくことが必要でないか。
震災時にプレカット工場を視察(大阪の渇ェ本銘木店)し、910mmモジュールで8,500円/坪、4t車で25坪を運搬するとの話であった。当社で刻むと坪当たり1〜1.5人工、2〜3万円掛かるので、プレカットは非常に安い。
もう一つの問題は、廃材処理の問題であり、年間に1千万円近く必要であるので、これをプレカットがやってくれることになると大変助かるので、取り入れることを検討したい。しかし、悪い面もある。通し柱4寸、管柱3.5寸で外ヅラをそろえたり、真四角でないない住宅、アールの屋根等ができない。
今後の課題としては、輸入住宅との価格競争、耐・免震、省エネ、高齢者対応、高耐久等に対応していきたい。山の視察をやっているが、それを小冊子にまとめることもしたい。人作り、単なる技能者でなく社会人として通用することが大切ではないか。
(西村)
軸組資材における国産材問題、国内挽き製材についてどのように考えているかについて、話しを進めたい。住林ではCADがポイントのようであるが。
(伊東)
住む人の命を守ることを最低限保証する必要がある。経験だけでなく耐震、作図機能、原価機能、プレカットへの連動を含め軸組みでは最高のコンピュータではないかと思う。
イノスの代理店は70社であるが、CADは2ヶ月当社で研修を受けてもらう。年間
12のCADステーションが誕生している。コンピュータでどこまでできるか挑戦である。
(佐々木)
軸組みに対する貢献、乾燥に対応できていない。1、2年で新しい乾燥手法が開発されることを期待したい。15%まで乾燥することが課題であるが、国内の大手では製材、乾燥、性能測定、性能表示まで一貫生産可能なラインを考えているようだ。経費的な面も含め解決できるシステムを事業化することが重要である。
(渡部)
公団の木造の設計を担当している方に相談を受けたが、国産材と輸入材、材種があり、等級があり、わかりずらい。断面寸法がキチットしていない。設計材が規格材であればよいが、仕掛材では問題がある。
(西村)
部材の寸法、乾燥をクリアすれば、例えば、住林ではCADにつながる。茨城の国産材製材の例では、間柱が集成材等に代わった例がある。集成材の使用が多いが、アトピーとか健康住宅等に対する問題は、ここ10年位である。
(伊東)
当社は山林会社、木材、住宅会社等、各種の顔を持つ。木材を担当した際、クレームを発生させないことに重点を置いた。ムク材を使用したクレームは住宅会社にとって資金的に多きな負担になる。
地域材を使用し、地域のスペースパーツ工場で加工していくことが課題。ベイマツの梁としての集成材はこれにかなうものはない。構造用の柱に使われている木材、北欧の材料が、長期間の間に腐朽に侵されないか、このような問題が起こればスギのチャンスがあるかもしれない。
(佐々木)
集成材はS62に大断面のJASができて本格的になったが、構造用は大型木造が主体で、住宅はここ3年位であり、小径木が増え、大架材は苦しい、乾燥も倍かかる。
(西村)
ホワイトパインの耐久性はどのように評価されるか。
(佐々木)
80から100年で伐期になり、ヤングは高い、曲げ強度もあるので材質的には問題がないようであるが、色の関係で白いことが問題であるものの悪い材料ではないようだ。(西村)
現在入ってきている材料は問題はないが、今後、80年以上のものが安定的に入るかは疑問である。
(質問者)
集成材の接着剤の耐久性は把握しているか。
(伊東)
構造は経年毎に強くなる、紫外線に分解する接着剤を使えば問題だが、経年毎に強くなるものを使うべきである。
(佐々木)
コンパネは経年変化に弱い。使われている状況が問題で、屋外であれば製材と同じように使えば同様になる。レゾルシノールは安定した接着剤で心配はない。柱に使う水性ビニルウレタンは有効ではないか。
(渡部)
内地材の国内挽きの評価は、施工屋の立場からすれば、集成材は30年経過しており、価格は2割高、柱はムクよりかなり安い。大断面の需要が増え、安くなることを期待したい。
集成材で設計した建物を建てたいが、柱材に等級とか強度が書いていないとの指摘があり、こまった。外国の3枚合わせの集成材を使った際、国産の5枚合わせは、それより1.5倍の強度があった。
(伊東)
国産材の方向は、新壁の時代のスギ・ヒノキがあり、その後、大壁が中心になぅった時代にスギ、ヒノキに替わり外材、EW材、さらに、大手ハウスはクレームを避けるため、集成材化して、化粧柱のみをスギ・ヒノキを使うという大きな流れの変化がある。
イノスでは、クレームがこわいため、通し柱はEW材に替えた。管柱はスギのインサイディングKD材、オプションでヒノキのKD材を使うが、これもEW化することは考えられる。土台は住林ではヒバに替えたが、これもEW化する可能性がある。
羽柄材で分かるように、国産材でなければならないという評価は難しい。価格競争力、品質がポイントである。
ヒバは殺菌力、ヒノキは心を静める働き、スギは軽くて強い、大脳の働きを活発にする働きがあるという夢のような話しをしたことがあるが、価格競争力と安定供給力が国産材に与えられた大きな課題ではないか。
(渡部)
東京で展開する場合、価格の問題があるが、あればヒノキの4寸角、和室の化粧柱は集成材で、ムクを希望すればその様に対応する。造作は国産材の張り物やスプルース、梁材は国産がないのでベイマツになる。仕上げによっても変えている。一軒の住宅では国産材も外材も使っている。
(佐々木)
国産材だからといって優位点がない。値段、コストが問題で、製材のコストのうち原木代が6〜7割を占めるが、その原木コストは育林費、金利、伐採経費で構成されている。仮に育林費をヘクタール当たり150万円とし、これを金利4%で45年借りると875万円になる。九州ではヘクタール当たりの蓄積が約360@なので、ヘクタール当たりの立木価格は約25,000円となる。これでは林業として成立し得ない。
そこで、立木価格を1万円として、金利4%で複利の逆算をすると、育林費が60万円なら何とか利回りを確保することができる。
住宅の施工合理化のような手法を育林の世界に導入し、経費を低くする必要がある。ユーザーがどうでもよく、要は価格ということになると国際的な原木価格に対応した上で、林業者がそこそこの利回りを確保しようとする場合、ヘクタール当たり60〜70万円の育林費を実現する手法を確立する必要がある。このようなことをしなけれな国産材時代はこないのではないか。
宮崎大学ではニュージーランドの育林研究を踏まえて、30年でそこそこの品質を保証できるスギの育林技術の糸口を見つけようとしている。このようなことが実現すれば、利回りの条件は満たすことができる。
いずれにしても山と国産材の加工の問題は切り離すことができないテーマである。
(質問)
岐阜の飛騨高山でのことであるが、山の悩みは戦後植林したスギが50年経って伐期を迎えたが、金にならない。緑を守るために間伐・伐採し、育林することが必要であり、そうしないと山が死ぬことになる。
スギ材の商品化で障害になったのは乾燥である。通常の2倍(2週間)掛かり、コスト高になる。そのため、山で付加価値を付けることから葉枯しを採用し、2〜3ヶ月寝かした後に造材すると30%程度の含水率となり、コストも低くなる。しかし、山元にコストが発生するので、間伐の補助のように、葉枯しの補助をお願いしているが、他に改善策はないか。
(伊東)
30%の含水率で乾燥材というのは止めるべきであり、木材の繊維飽和点は30%であることから、30%以下になると縮みだす、18%以下でないと狂わないとはいえない。
30%を乾燥材として販売すれば工務店は大きな間違いを犯すことになる。
(西村)
厳しい意見かもしれないがそのとおりであり、木材供給側が十分な乾燥を行わないとムク材の消費がさらに落ちることになるので、コストを皆で負担するしかない。熊本の人吉のように地域でコストを負担して、葉枯らしを行い、製材工場で20%前後に人工乾燥をしている産地の例もある。
(佐々木)
濡れたシャツを少し絞った状態が葉枯しであり、水分はあるので、きちっと乾燥したものでないと乾燥材とはならない。人工乾燥する場合も葉枯らしをしたものとしていないもの選別して乾燥すればコストダウンにつながるのではないか。
(伊東)
葉枯しは材質、色もよくなるのでよい方向であるが乾燥ではない。
(渡部)
北海道の高橋氏は、唐松材を造作材に使うため、材料の芯をぬき、穴に鉄筋を入れることをやった。水分がぬけて、木目もきれいになり、内装の壁材に使用した。
《今後の外材問題》
(西村)
現在の住宅・木材産業では輸入住宅がどうなるか、異業種の住宅産業への進出が話題になっているがどのように考えるか。
(渡部)
日本の風土にあったのは国産材ではないか、気候風土が違う中できたものより、梁は別にして、できれば国産材を使用したい。
(伊東)
円高が大きなポイントで、輸出産業の自動車・電気が世界に展開し、その産業の生産性と戦えるか。外材を買った方が商売になる。長い期間で見た場合、外国から持ってきたほうが安いということは是正されるのではないか。国内資源の蓄積は多くなるので、長期的に見れば期待が持てないわけではない。
(佐々木)
工業材料として比較すれば国産材、外材の差はないといえる。あるのは品種、材種である。
すきまの問題を考えた方がよいのではないか。大企業が不得意な分野、スギを湾曲化させれば競争力がでて、通直材ではできない展開が図れる。特定の部位を考えて、大企業と中小企業の住み分けを考えるべきではないか。農業の有機野菜のように、例えば、特定のユーザー層をターゲットにグループで住宅を展開し、年間300棟の実績をあげている例もある。
工業化住宅の展開では、木材で別なコンセプトで木材の好きな人向けの「ウッディスト」ホーム・パーツの展開を検討している。
(西村)
品質保証の方向が課題であり、苦しくても対応する必要がある。
(質問=石川の納材業者)
新工法では、乾燥材に対する要求が多いが、コストの面で苦しい。軸組み工法の見直しはどうようになるのか。
(伊東)
生産するコンピュータのシステムで、EWのコストダウンは強度が上がったことにより、断面寸法を落とすことも可能になる。下小屋のくずのコストを考えると、最低2トン車台4万5千円掛かるが、客にとってはそのコストは期待したものでない。無駄なコスト要因を無くし、50万のものを40万円で提供するというようなことは、品質の高い木材からスタートしないとできない。
(質問=鹿児島県の木材業者)
住宅の施工の無駄があるということを材木屋の側から提案するため勉強会を開催しているが、集団としての能力が遅れている。農協の広域活性化がある中で、木材業界のリストラをする必要がある。木材業界は数が多すぎるし、敬老精神的で若者が入ってこない。組織の一本化が必要ではないか。また、スギは品揃えが悪い、市場機能は売手側にプライドがない。震災の経験もいかされていない。
(伊東)
木材業界は価格問題のみで、品質、生産改革の話しを木材関係者から聞いたことはない。住宅の進化・木材の進化に貢献する企業が求められる。
S48年のオイルショックのように木材ショックがいつ起こるかもわからない。他の資材から比較すると木材の価格は安すぎる。
《輸入住宅、異業種の住宅への参入》
(西村)
現在の住宅・木材産業では輸入住宅がどうなるか、異業種の住宅産業への進出が話題になっているかどのように考えるか。
(伊東)
流行病のような結果を期待する。日本の気候風土にあった、しかも健康的で住みやすい住宅、かつ、コスト的にもあうものを提供しようとしている。輸入住宅は住みやすさ等ニーズのマーケッテングをしていない。円高と政府の輸入奨励の下で大量に輸入されているが、混乱を起し、これに手を出した企業は大きな痛手を負うことになるのではないか。
かつて、ツーバイフォー、プレハブ住宅に大手企業が参入し、成功したところもあるが、未だに軌道に乗ってないところも多い。家は作る技術、売る技術、管理する技術が必要であり、100棟売るためにどれだけの人間がかかわっているか考えたら分かるように、トータルでは非常に厳しい世界であり、簡単に輸入住宅をもってきて利益が出る世界ではないのではないか。
(佐々木)
米国のメーカと輸入契約をしていると、契約社会、合理主義の中では、集成材でも数頁の契約条項があり、契約後の設計変更や契約変更は厳しいペナルティが課せられる。我が国の建築業、請負業では設計者や発注者からの変更は当たり前の世界である。輸入住宅を手がけた場合、欧米の契約、合理主義の概念と我が国特有の非合理性との板挟みになるのではないか。
また、ドルが80円の時に輸入住宅を展開した企業でも現在100円を超えている中で採算性は悪くなっているのではないか。せっかくできたルートを手放したくないという理由で双方が取り組んでいるということもあるのではないか。
(渡部)
日本の気候風土に適しているのは在来の軸組みであり、色々なものが入ってきて
いるが、1千年の歴史がある中で、改造が容易にできる等の利点がある。輸入住宅の中には坪27万円というものもでているが、内容を調べてみたい、必ず困る点があるのではないか。軸組がよいということを証明したい。
(質問)
誤った植林、例えばスギが適さないところを変えるとかの必要性がある。乾燥の経費の問題は、今の原木価格で乾燥までやるというのは、山持ちは山を放棄する。流通価格から考えると山の原木が値上がりし、需要減から製品価格が値下がりしていけば、国産材の製材工場は成立し得ない。市売・小売についてもEW・集成材の採用、中抜き流通になると成立しなくなる。これが時代の流れで、その傾向がさらに強まるというが、5年先10年先の国産材、製材の需要はどれくらいまで落ちるのか見通はどうか。
(伊東)
進化の方向、顧客、働いている人が喜べば大工と話し合いながら、進化の方向に進んでいく。
(佐々木)
我が国の製材は年間3千万@で、カナダBC州と同じであるが、BC州は300工場で生産しているのに対し、我が国は1万5千工場である。同じ並材を挽いて同じ土俵で競争すれば当然縮小する。規模を拡大し1万とか5万@挽かなくては駄目かというとそうではなく、隙間をうまく捕らえて展開することができれば、2千@でも利益が出る可能性もある。
(質問)
住宅メーカーやプレカットに侵食されている製材・市場・小売が技術革新もおこなわず、このままのレベルで進み、5年先まで続いたとした場合、どのようなシナリオになるか。
(佐々木)
そのような考え方を経営者がする必要があるか疑問である。マクロではそのような動きがあるとしても、その中で生き残ることを考えるべきである。あえて言えば、シェアは20%を切り、10%台になる可能性もある。業者の数も減少していく。それは、円高の動向、木材業者の経営力・技術力の問題に起因することになる。
(西村)
的確なことは言えないが、乾燥や技術革新も行わずこのまま行くとすれば、国産材のシェアは現在の22%から半減する可能性もある。木材企業の戦略としては、これを何とか維持しようということになるのではないか。
《企画部指導課のコメント+@》
同じような話は、以前から業界紙、講演会等で何度となく見聞きするので、まとめるつもりはなかったが、セミナーの概要が日刊木材紙に掲載されたので読んで、正に「パラダイムシフト」が進行していることを改めて分かりやすく理解できるので、メモを見直してまとめた。
よい例示かどうか分からないが、パソコンのOS(基本ソフト)が根本的に替わっているのに、未だ古いOSの概念で仕事をしているようなものであり、同じことができるが、新しいOSを理解して使いこなすことができれば、生産性が飛躍的に増大しし、かつ、今まで考えつかなかった新たな展開が見開かれるのと同じようなことではないか。
しかし、OSを切り替えてもそうは簡単にはいかないのも事実である。それはなぜか、現在あるものを100%近く活用する能力があれば問題は最小限ですむが、そうでないことが余りにも多いし、加えて、今までの既成概念が邪魔して、同じ概念で進めようとしてもすんなりと理解ができず(モードが別な次元に切り替わっていることに気がつかず、以前のモードのつもりで対応しようとしてしまう)、逆に、無駄な時間だけが過ぎ去り、生産性が大幅に低下することがあるからである。
今の木材産業の例が正にそれではないか。本来であれば、時代の流れにそって、新しい動きにも的確に対応(パラダイムエッセンスを捕らえて)していれば、パラダイムシフトを予測できるし、シフトする前に準備万端整え、パイオニアとして展開することができるので、新しい道を先頭で進み、次の曲がり角にきても予め地図かできているので、目的とする方向に迷わず進める。
一方、時代がデジタルの方向に確実に向いていても、逆にアナログを極めればまったく別な世界が広がるということも考えておくことが必要である。
どのような方向に進むにせよ、立地条件と自社の能力・体力・資金力・マンパワー、変革対応能力等を考えて、最適のバランスで進めることが大切であるということを改めて感じさせられたセミナーであった。
因みに、このセミナーは1万円を徴収していたが、この内容で1万円が高いと感じるか、安いと感じるか、高いと感じる人は、結局、学習効果を自分の経営展開(行政等を含めて)に活かす努力をしないからそのように感じるのではないか。これは、ほかのことについてもいえるものである。
製材機械はシステム化が進展しているが、経営・商売のレベルではシステムとは程遠いレベルである。
金属加工の分野でも同様にME機械が金属材料を自動加工していくが、機械を導入するだけでは経営は成り立たなくなっている。しかし、中には、機械のソフトをカスタマイズして独自のソフトを作り上げ、かつ、加工音とか、加工の感触を加味して、他では絶対にできない加工をして果敢に進んでいく企業もある(デジタル+匠というアナログを融合化させたともいえる)。
無人製材の世界でも同様のことがいえるのではないか、メーカーが考えたものをそのまま使って生産経営が成り立つ時代はとっくに終焉したと考えた方がよく、独自の創造性を有機的に結合して機械の無人を「優人」にして、かつ、ベンダー機能を付与させることが重要でないかと思われる。単独、グループ化、融合化等各種の取り組み方はある要は如何にリーダーシップを発揮していくかである。
別な次元で考えれば、例えば、原木高の製品安ということはどこに原因があり、どのようにしたら改善できるのかということをゼロベースから徹底的に考え、アプローチの考え方を、
原木が高い→安い原木→安い樹材種、エレメントを小さく、廃材利用、省使用量、
製品が安い→生産コストダウン、販売価格を高く(高付加価値等含む)、代替商 品の開発、安ても採算があうシステム(物流コスト等トータルコス トの低減等含む)
等の要因をそれぞれ分解・分析し、新たなパラダイムを創造することも検討できる。