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木屑等の適正処理に関する対応指針(中間報告)

   

木屑等の適正処理に関する対応指針
(中間報告)

〜 環境の時代へ意識改革 焼却依存からの脱却 〜

 (社)全国木材組合連合会は、木材産業から排出される木屑等の適正処理に関し、木材産業関係者を委員とする「木屑の適正処理・木質バイオマス検討委員会」を設置し、木材産業における木屑処理の基本的考え方及び対応指針について本年2月から3回にわたり委員会を開催し検討してきた。その結果をここに中間報告として取りまとめたので報告する。
 

1.はじめに

木材産業は、森林資源から産出される再生産可能な生物材料である木材を加工・流通・供給する産業であり、その森林の樹木は成長過程で二酸化炭素(CO2)を吸収し、炭素を木材として固定、蓄積することによって地球温暖化を抑制するなど重要な働きをしている。

このような機能を十分に発揮する健全な森林を育成し、活力ある状態に保つためには、秩序ある木材利用の推進を通じた次世代の森林育成への再投資が極めて重要である。

一方、木材の主要な需要先である住宅建築が、景気の停滞による建築意欲の低下などにより低水準で推移しているため、木材の需要、価格ともに低迷し、木材業界は厳しい経営状況に置かれている。

こうした中で、近年、環境保全、安全確保に対する社会的要求が高まり、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下「廃掃法」という。)の施行規則改定、「ダイオキシン類対策特別措置法」(以下「ダイオキシン法」という)の制定等、環境保全のための規制が強化されることとなった。これらのことが生産コストに直接影響し、木材産業は一層苦しい経営を余儀なくされている。

しかしながら、全木連では、従来から「木材は環境に優しい、安全な資材であり、究極の環境資源である。」と主張し、木材需要の拡大を積極的に推進しているところであり、環境対策における規制強化に対しても前向きに対応しなければならないと考える。

従って、木材産業は自ら木屑等の適正処理に関する意識改革を行い、環境問題の解決に真剣に取り組む必要がある。このような認識のもとで、全木連、各会員及び構成員においては、以下の基本的考え方と対応指針に基づく行動をとることが必要である。


2.基本的考え方

  1. 木材産業は、貴重な循環資源である木材を無駄なく、さまざまな用途に活用することによって、廃棄物として処分する木屑等の発生の減量化に努めなければならない。
    既に開発されている各種の用途に加え、日進月歩の技術革新により、木屑、木質系廃棄物等を再利用する技術が開発されてきている。こうした技術を活用して、廃棄物として処分する木屑等の減量化を積極的に推進することによって木材が環境資材であることを自らが示していくことが必要である。

  2. 環境問題に関し、木材産業だけが例外的扱いを受けることを期待してはならない。すなわち、現在適用されている諸規則をはじめ、本年12月1日に適用される廃掃法施行規則の新たな規制に対しても、各企業の責任において対応すべきである。
    木材産業は地域住民・消費者との相互信頼関係を醸成し、地域社会で共生できる態勢を作り上げることによって、初めて地域において活力ある企業活動が展開できるものと考えるべきである。このためには、木材産業も環境問題への取り組みが自らの企業活動の一部であることを認識し、地域社会で共存できる産業構造に変えていかなければならない。

  3. これらの取り組みにあたっては、個々の企業が単独で実行するには限界があるものもある。その場合は地域の同業種、異業種を含む関係者と協力し、行政、研究機関、NGO・NPO、地域住民等の理解と支援を得ながら推進することが必要である。

  4. 木屑等の適正処理、木質資源の有効利用に必要な各種の施設・設備の導入等に対しては、新たな助成措置を含め財政的、制度的支援を要望する。

3.対応指針

(1)当面の対応

  1. 廃棄物として処分する木屑等の発生抑制
    現状においては、製材工場等から排出される木屑等の処理は「焼却」という概念が固定化しているため、廃棄物として処分する木屑等の減量化が進まない面がある。そこでこのような発想を転換し、木材の特性を考慮した多様な再利用の方向を検討し、製品化の方途を探ることが必要である。
    このような工夫をしてもなお発生する木屑等の廃棄物については、産業廃棄物処理業者に委託するか、設置の届出義務やダイオキシン類の測定義務がない小型の焼却炉で焼却するか、比較考量することが必要である。
    注:木材販売業において発生する木屑等の廃棄物は、一般廃棄物に該当し、原則として市町村等が処理することになっている。処理の仕組みや費用は市町村等によって差があるので、担当部局に問い合わせてみること。

  2. 焼却炉対策
    焼却炉の規制については、本年12月1日から適用される改正廃掃法施行規則によると、これまで設置の届出義務やダイオキシン類の測定義務がなく、規制が少なかった小型の焼却炉を含む全ての焼却炉について、新たに構造上の規制が強化されることになる。すなわち、外気と遮断して廃棄物を投入でき、800℃以上で焼却することが可能で、助燃装置及び温度計が設置されていること等の構造規準に適合しなければならない。
      このような構造基準等に関する情報を末端事業所まで周知させるため、全木連は各都道府県木(協)連を通じて必要な情報を提供する。また、ホームページ等などを利用して、事業者の意識向上を図る。また、廃棄物として処分する木屑等の処理を今後とも焼却による場合は、既設焼却炉の改造または新設が必要であるが、この場合、
    (ア)既設焼却炉の改造にあたっては、それぞれ構造、仕様が異なるので個別に対応せざるを得ない。設置、購入したメーカーにそれぞれ定められた構造基準を満たすよう改造が可能かどうか問合わせる等緊急な対応が必要である。
    (イ)焼却炉の新設にあたっては、定められた構造基準を満たす焼却炉について、メーカー等と十分話し合う必要がある。全木連は焼却炉等のメーカーをリストアップし、ホームページ等を活用して出来るだけ多くの情報を提供する。
      
  3. ダイオキシン類の測定
    ダイオキシン法において年一回以上実施することが各企業に義務付けられているダイオキシン類の測定(排ガス、焼却灰、ばいじん)に要するコストは中小零細な企業にとっては、大きな負担となっている。(火床面積0.5u未満、又は能力50s未満/時の小型の焼却炉は今後とも適用除外。)
    このため、負担軽減の観点から、
    (ア)測定コストの低減については
    ダイオキシン類の測定を都道府県又は地域単位で一定数まとめて実施することによってコストダウンを図ることを検討する。
    (イ)ダイオキシン類の測定に関しては、
    ・簡易測定法の早期確立
    ・測定期間の延長
       ・測定項目の削減
    等について、環境省等関係方面に要請する。
    特に、簡易測定法の早期確立はダイオキシン法成立の付帯決議となっており、その実現を強く求めていく。

行政との対話
   地域の森林・林産行政、環境行政等に対しては、普段から積極的に対応し、必要に応じて情報の提供、施策の提言等を行うことが必要である。こうした対話を通じ、都道府県、市町村と協調、協力関係を築き、木材業界の実情に理解を求めるとともに、法の執行にあたって地域の実態に配慮したものとなるように要請する。

(2)資源循環型社会の構築に向けた対応

  1. 木質資源の多様な利用の推進
    上記(1)アの廃棄物として処分する木屑等の減量化の方向として、既に確立された用途である木材乾燥用燃料、バーク堆肥、おがこ(家畜敷料用、きのこ培地等)、木炭(水質浄化材、土壌改良剤、調湿材等)、燃料用ペレット、高次加工木材(MDF、パーティクルボード等)、抽出成分利用製品等への利用の推進さらには新たな製品開発、用途開発についても積極的な対応が必要である。その際、共同化による開発可能性を含め検討すべきである。
       また、このような取組を支援するため、全木連では木材利用の多様化に関連する事業の優良事例をホームページ等で紹介する。

  2. 木質バイオマスエネルギー化
    バイオマスエネルギーは、新エネルギーの一つとして国のエネルギー政策の中に明確に位置づけられ、今後地域におけるエネルギー循環型システムの構築を視野に入れた技術開発の進展が期待されている。木質バイオマスエネルギー利用にあたっては技術的及び事業的な可能性を見極めつつ、地域関係者の協力と参画を得て進めることが重要である。
    また、このような取組を支援するため、全木連では木質バイオマスエネルギーに関連する事業の優良事例をホームページ等で紹介する。

  3. 地域社会との共生
    廃棄物として処分する木屑等の減量化を推進するためには、個別企業だけでは解決し得ない事業が多い。その場合は同業種、異業種を含めた事業の協業化、共同化を積極的に推進し、自らその中心的役割を果たすことが必要である。また行政、大学、試験研究機関等との連携を図りながら地域の循環型社会の構築に協力することも重要である。
    さらに、この指針の実行に当たっては、地域社会の各層(NGO、NPO、地域住民、消費者団体等)との対話を促進し、相互理解と協力関係の強化に努める必要がある。

  4. 広報・啓発活動の推進
    自らの事業活動を見直した上で、木材産業が環境保全、生態系の維持、安全衛生等に関し社会的に評価できる産業であり、地域社会にとって欠かすことの出来ない経済主体であることを積極的に広報し、また消費者に対して木材の適正な使用方法や再資源化、廃棄の方法に関する情報を提供するなどの啓発活動を展開ことが必要である。

  5. 支援措置の拡充
    木屑等の適正処理、木質資源の有効利用の促進のため、各種の施設・設備の導入に対しては、必要に応じて新たな助成措置を要請するとともに、個々の企業単独でも助成が受けられるよう要件の緩和を要望する。また、木質バイオマスエネルギーについては、新エネルギーとして位置付けられていることから、太陽光発電などと同様に、助成措置の拡充等を要望する。


〔参考〕
木屑の適正処理・木質バイオマス検討委員会委員名簿

〔順不同〕

委員名 支 部 所  属  及  び  役  職
井 上 靖 男 北海道 北海道木材協会副会長、北見地方木材協会会長、井上産業椛纒\取締役
守 屋 長 光 東 北 宮城県木材組合連合会、仙台木材建材協会事務局長、守屋木材椛纒\取締役
岩 田 香 二 関 東 (社)群馬県木材組合連合会専務理事
岩 瀬 茂 雄 東 京 東京都木材団体連合会理事、東京南洋材製材協同組合理事長、三進木材椛纒\取締役社長
伊 藤 久 明 東 海 長野県木材協同組合連合会専務理事
前 田 義 夫(吉 井 三 雄 北 陸 石川県木材組合連合会専務理事 新任(H14.4.1)富山県木材組合連合会専務理事)退任(H14.3.31)
村 田 善 郷(鈴 木 孝 幸 近 畿 兵庫県木材業協同組合連合会専務理事 新任(H14.6.1)〃          )退任(H14.5.31)
○中 塚 淳一郎 中 国 (社)岡山県木材組合連合会会長
岡 部 利 秀 四 国 (社)高知県木材協会専務理事
立 田 寿 次 九 州 熊本県木材協会連合会、椎葉森林叶齧ア取締役
後 藤 隆 一 全木連 (社)全国木材組合連合会副会長・専務理事
     
角 谷 宏 二 事務局 (社)全国木材組合連合会常務理事
斎 藤 義 光 事務局 (社)全国木材組合連合会常務理事
細 貝 一 則 事務局 (社)全国木材組合連合会企画部指導課長
注:○印は座長

 

検討委員会開催(於:全木連会議室)

第一回 平成14年2月13日(水)
第二回 平成14年4月17日(水)
第三回 平成14年6月27日(木)

 

(社)全国木材組合連合会

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