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中小企業地域資源活用プログラムの創設について


 

 地域の応援に向けて、経産省は「中小企業地域資源活用プログラム」を創設する。地域から大都市へ。そして、世界へ。「市場」を強く意識した支援メニューを用意する。
 地域資源を活用した新事業に対する支援の意義は、地域間の格差が背景にある。大企業を中心とする景気の回復感は地方の中小企業にまでは届いていない。大都市圏以外での回復の遅れが目立っており、公共投資に依存しない自立型の経済構造への転換が急務になっている。
 そこで、価格競争に巻き込まれない、消費者に強く支持される新商品づくりなど、地域の創意工夫が求められてくる。その一つの有効な素材になるのが地域にある優れた地域資源だ。これをいかに地域の熱意で磨き上げるか。国は地域経済への波及効果の大きい取り組みを、消費者などに結びつける「出口」まで導くスタンスだ。
 「中小企業地域資源活用プログラム」の創設により、国は地域資源を活用した新事業を強力に支援し、5年間で1000件の新事業創出を目指す考えだ。同プログラムは地域の"やる気"に火をつける仕掛けともいえる。経産省は07年度の予算要求で総額101億円を計上している。

地域資源とは
地域資源の具体的な形は多岐にわたる。それぞれの視点により地域資源の考え方は異なる。国は地域資源の定義を柔軟に考えていく方向だ。例えば、地域で生産されてきた農林水産品、産業集積地の特徴的な素材・技術、自然や伝統などの観光資源など有形無形の資源が浮かび上がる。地域資源のとらえ方は幅広い。地域の中小企業が有効に活用する素材であり、地元での再発見が期待される。
地域資源を活用した中小企業の取り組みは、大きく分けて(1)産地技術型(2)農林水産型(3)観光型−の3類型となる。全国にはこの3類型に当てはまる地域資源を活用した果敢な挑戦がすでに動いている。

〈具体的事例1・産地技術型〉
山形カロッツェリアプロジェクト(山形県)では、世界的な著名な工業デザイナーが中心となって、03年度に鋳物、木工、繊維などの県内の優れた職人が高品質の商品化を図る「山形カロッツェリア研究会」をスタートした。06年1月には選抜した5社の製品群を「山形工房」のブランド名で、海外の国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」に出展。多数の商談が進行中だ。

〈具体的事例2・農林水産型〉
 青森県はブナの蓄積量が日本一を誇る。県の工業試験場でブナの薄板を積層する技術「ブナコ」が開発され、新分野への進出が模索されていた。ブナコ漆器製造(青森県弘前市)は、首都圏のデザイナーを起用し「ブナコ」照明器具を開発した。東京の六本木ヒルズや青森県立美術館など県内外の先進的な建造物の照明に採用され、自社ブランド「BUNACOLAMP」を確立した。

〈具体的事例3・観光型〉
新潟県南魚沼市にある温泉宿の龍氣と地域の医療法人萌氣会は、地酒の製造・販売を行っている地元の八海山と連携。魚沼の自然、伝統的食文化や温泉を素材として、メンタルヘルスを重視した独自の健康プログラムの事業化に取り組んでいる。これまで見過ごされていた地域の良さを引き出している。

支援の枠組み
 地域資源を活用した中小企業の取り組みの分析では、事業を成功に近づけるには市場に精通した専門家との"偶然"の出会いがきっかけとなるケースが多いという。そこで、それぞれの専門家と地域がうまく出会い、新事業に乗り出す環境の整備が重要になってくる。 07年の通常国会に提出予定の「中小企業地域資源活用促進法」に基づく支援の大枠は、国が基本方針を策定。それを踏まえ、都道府県の意見を聞き、基本構想(地域資源)の指定を行う。次の段階で、国は基本構想に沿って中小企業が作成した事業計画(地域資源を活用し新商品開発を行う計画)を認定する。国は認定事業に対して、各種支援措置を設ける方向だ。

支援措置の方向性
 「中小企業地域資源活用プログラム」の基本的な考え方は、ビジネスアイデア構想の段階→具体化の段階→事業実施段階→事業化の成功・ブランドの確立を目指す。各種の支援措置は各段階ごとに用意される方向だ。補助金はじめ政府系金融機関による低利融資、設備投資減税などは法律の認定を受けた中小企業が対象になる見通し。

〈1、ビジネスアイデア構想段階の支援〉
地域資源を活用した新たな取り組みの"芽"をつくるため、地域の中小企業と外部のビジネスパートナーをつなぐコーディネート活動などを支援する。こうした活動はすでに中小企業基盤整備機構が全国で地域ブランドアドバイザー事業・フォーラムなどの取り組みが先行しており、今後は地域資源活用プログラムの枠組みの一つに取り込み、拡大する見通し。新施策の普及啓発が土台になる。また、国は地域資源を活用した新商品開発を見据えた企業と大学などとの実用化研究開発を委託費で支援する。

〈2、ビジネスプラン具体化段階〉
 市場志向型ハンズオン支援事業(委託費)が新たに始動する。05年度にスタートした「新連携」事業を一つのモデルとし、全国9地域に支援事務局を設置。市場に精通した専門家が市場調査、商品企画、販路開拓に対するアドバイスや事業性評価など商品開発から販売まで継続的にハンズオン支援を行う考え。07年度予算要求で20億円を盛り込んでいる。

〈3、事業実施段階〉
 専門家派遣で具体化したプロジェクトに対しては、その計画性を踏まえて試作品開発、展示会・商談会の開催、アンテナショップの開設などにかかわる一部の経費を補助する方針。法律による事業計画の認定が必要になる。07年度予算要求では41億円を盛り込んでいる。一件あたり数千万円程度の支援を見込む。

支援のあり方
 支援対象となる事業計画は5年程度になる見通し。地域資源を活用した中小企業の新たな取り組みの仕組みは、専門家などとの連携により、いかにマーケットに結びつけるか。ここが焦点になる。年商数億円規模の新事業でも地域にとってはかけがえのない財産になる。そのためにも新連携事業で成果を上げている徹底的に認定プロジェクトを後押しする「戦略会議」の応用が期待される。地域の"やる気"がどれだけ日本に存在するのか。国の仕掛けをテコに、新しい"祭り"が始まろうとしている。みこしを背負うのは地域である

〔情報掲載URL〕
中小企業地域資源活用プログラム
  http://j-net21.smrj.go.jp/knowledge/shigen/index.html

中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律案(経済成長戦略大綱関連3法案)
  http://www.meti.go.jp/press/20070206002/20070206002.html

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