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「企業活力再生研究会」中間とりまとめについて(経済産業省)


   

 

 経済産業省は、平成16年12月から経済産業政策局長の私的研究会として「企業活力再生研究会」を設置し、民間ベースを基本とする事業再生が円滑に進むための環境整備の在り方について検討を行ない、5月12日、これまでの議論を中間的にとりまとめましたので、お知らせいたします。

 

〔情報掲載URL〕

http://www.meti.go.jp/press/20050517004/kennkyukai-set.pdf

 

 

中間とりまとめのポイント

(1)早期再生

経営悪化の兆候に対して、これを早期に認知して、対策に迅速に着手するために、企業内部での早期認知等のためのメカニズム、外部からのガバナンス、早期再生に資するファイナンス手法が重要であること。

 

(2)私的整理及び法的整理

経営悪化が進んで、過剰債務の整理が必要になった場合に、私的整理では、金融債権者間の調整が容易にまとまらないという問題がある一方で、法的整理に移行すると事業価値が毀損するという問題があることから、私的整理と法的整理の間隙を埋める仕組みを検討する必要があること。

 

(3)事業再生市場

民間の事業再生ビジネスなど事業再生市場が成長しつつあるが、事業再生に携わる人材の育成・確保(特に、地方)が特に課題であること。

 

(4)地方・中小企業の事業再生

地方・中小企業の再生への取組みは今後の大きな課題であり、早期再生のために、経営状態の的確な把握等ができる中小企業内部のメカニズムや地域金融機関等の取組みが重要であるとともに、中小企業における債務整理・事業再生を円滑化するために、中小企業再生支援協議会の機能について強化すること等が重要であること。

 

 

〔参考:地方・中小企業の再生における課題〕

 

(1) 地方・中小企業の早期再生

中小企業の早期再生のためには、企業が事業や財務の健全性における課題を認知し、解決するために対策に着手するメカニズムが必要である。しかし、地方や中小企業は、自らの経営状態を把握していないケースが多く、今後、企業自らの、また地域金融機関等の取組みによって、このような状況を改善していく必要がある。

 

@中小企業内部のメカニズム

中小企業においては、規模が小さく人材が不足している、時間的な余裕がない等の理由により、自社の経営状態を把握するための取組みがおろそかになっていることが多い。また、税法上の処理の適切性のみを考慮し、企業会計についての問題意識が低いため、経営管理の観点からは決算書類が不十分なものになっているなど、自社の経営状態を正確に把握してないケースが多い。このように、そもそも自社の具体的な経営課題が認知されにくいという問題点がある。財務状況を把握することの重要性については、相当程度の経営者に認識されているとの調査結果もあるが、これが具体的対応に結びつくためには、中小企業の経営者の意識向上が更に図られるとともに、現在検討が進められている「中小企業の会計に関する指針」や会社法の改正による「会計参与」制度の創設をきっかけに、中小企業に関わる税理士・公認会計士による更なる支援が期待される。

また、経営課題を認知したとしても、対策に着手できないという地方や中小企業に特有の問題点も指摘されている。例えば、中小企業の場合、従業員がオーナー経営者に対してモノが言いにくい、地方企業の場合、その経営者が地元の名士で、その面子から経営者自ら事業再生に着手できない場合があるといった指摘がある。こうした場合には、地域金融機関や公的機関である中小企業再生支援協議会の積極的役割が期待される。

金融機関は、保証人に過度に依存した融資慣行から脱却し、中小企業の実体に応じたきめ細かい「目利き」を行った上で融資を行うことが重要であるが、中小企業の場合、金融機関に対する債務に経営者本人による保証(本人保証)や取引先等の第三者による保証(第三者保証)を行っている場合が多

く、保証人付き融資の存在により経営者が早期着手に踏み込めず、先送りに繋がっているという点が指摘されている。一般的には、保証人をつける融資形態は、中小企業と金融機関の情報の非対称性を埋めるものとして認識されているが、今後上述のとおり中小企業の会計の改善等が進み、情報の非対称性の問題が解消に向かえば、それに合わせて金融機関の融資形態も変化していくことが期待される。

他方で、中小企業においては、企業資産と経営者の個人資産が一体化していることが多く、会社の信用のみならず、経営者本人の保証を取ることが、中小企業のモラルハザードを防止する観点からも一定程度の役割を果たしている面もあるため、引き続き制度面を含めて議論が必要である。

なお、個人保証については、破産法改正による自由財産の拡大や民法改正により保証期間・保証額に制限のない「包括根保証」の禁止などの見直しが行われている。

 

A外部からのガバナンス

経営者が早期に自社の課題を認知し、対策に着手するためには、外部のステークホルダーによるガバナンスの強化も必要である。この点について、非上場企業の場合には、上場企業のような株式市場によるガバナンスが存在しないため、特に、債権者である地域金融機関によるガバナンスの発揮が重要となる。ただ、地域金融機関としても、早期再生への取組みを促す意識が薄い場合や、金融機関自身の体力の問題として引当金を十分に積んでいないために、思い切った処理ができない場合が多い。地域金融機関が取引先企業の早期再生に対して積極的に取り組む意識を持つこと、資本の増強や再編・統合等の取組みによって経営体力を増強し、引当金の水準を引き上げることが、地方・中小企業の再生の前提条件となる。

その上で、地域金融機関のリレーションシップバンキングの機能強化による取引先企業の早期再生の取組み促進が期待される。具体的には、地域金融機関が長期的な取引関係により得られた情報を活用し、対面交渉を含む質の高いコミュニケーションを通じて、決算書類の改善、個人保証や担保に依存しない融資形態、コベナンツの推進等により、取引先企業の財務状態を的確に把握するとともに、その早期再生の取組みを促進することが重要である。

また、中小企業者の約4割が利用している信用保証協会の保証付融資について、保証割合が基本的に全額保証であること等から、金融機関が中小企業をモニタリングするインセンティブが働いていないという指摘がある。これについては、金融機関に対して相応の責任分担を求めること、信用保証協会の経営支援を充実させることにより、両者が連携して中小企業のガバナンスを行うことが重要である。

 

 

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