木材・木製品製造業を取り巻く経営環境は、総需要の低迷、海外製品との競争が激化する中で、コストダウン、品質・性能の向上等の要請など、構造的な問題に起因した非常に厳しい状況が続いている。加えて、零細事業場が多い実態の中で、廃棄物の適正処理等の環境負荷の低減やシックハウス対策の推進など、コストアップ要因の克服を図る必要があり、活力回復に向けて解決すべき重要課題が山積している。
このような中で木材・木製品製造業の労働災害は、傾向的には減少となっていたが、平成15年の死亡災害は21名と前年より7名の増加となり、由々しき状況となっている。また、死傷者数は傾向的には減少を続けていたが、平成15年は前年比0.8%増の3,093人となった。事業量が減少している中で微増ではあるが災害が増加したということは、気を引き締めて災防活動の再構築を図る必要がある。
一方、安全で快適な職場環境の形成は、職場は魅力ある産業として位置づけられる上で最低限必要な要素であるが、木材・木製品製造業の労災保険料率は製造業の中ではワースト3にランクされている。 引き続き、災害ゼロを目標に強力に取組むため、次の事項を基本に推進することとする。
- 平成7年3月28日の本協議会臨時総会において決定された「林材業ゼロ災運動の推進」の趣旨に基づく諸対策の着実な推進を基本とする。
- 併せて厚生労働大臣が策定公表した「第10次労働災害防止計画」(平成15年度〜19年度)」及び平成10年度に改定された「木材加工用機械災害防止総合対策」等に定められた諸対策の徹底を図る。
- これまで加盟団体が一致協力して労働災害の防止と労災保険の収支改善に取り組んできた成果を踏まえ、2.の改善目標の実現に向けた重点事項の励行・定着に努めるものとする。
木材・木製品製造業の労働災害は、減少傾向となっていたが、需要の不振による事業量の落ち込みがある中で、平成15年の死傷者数は3,093人と前年比0.8%増を示した。
一方、木材・木製品製造業の労災保険収支率は、平成3年度の86.5%から、年々上昇傾向で推移し、平成14年度は労災保険収入額が123億円、支出が173億円と50億円の赤字となったことから、収支率は141.1%と前年の132.0%より悪化し、依然として危機的な水準となっている。もっとも、木材木製品の労災保険収入は平成9年度までは200億円を上回っていたので、収支改善には、ゼロ災の推進に加え、経営改善及び労災保険の納付率の向上を図ることが重要である。
労働災害保険の料率についても千分の21と製造業の中ではワースト3にランクされ、製造業で最も低い業種の千分の5に対し、4倍強の料率となっており、危険な業種の実態にある。死亡災害が1人発生すると、労災保険の会計から約5千万円が支出され、保険収支に大きく影響する。
木材木製品製造業の労災保険料率は、本部会の活動が評価され、昭和56〜平成6年度の 千分の26から、
平成7〜9年度 千分の24〔2ポイント引下げ(年間15.2億円の負担軽減)〕
平成10〜14年度 千分の23〔1ポイント引下げ(年間7.6億円の負担軽減)〕
平成15〜17年度 千分の21〔2ポイント引下げ(年間12.1億円の負担軽減)〕
となっている。
しかし、逆にいえば、保険収入がその分減少するので、収支率は悪化する。事実、平成11年度以降の収支率は、130%を上回る水準にあり、平成15年度の収支はさらに大きく悪化することが予想され、極めて憂慮される。
ゼロ災を実現させれば当然、保険料率が大幅に引き下げられ、個別事業所の負担が軽減されることになるので、木材・木製品製造業の労働災害防止の観点から、木材・木製品製造業界が一致団結してゼロ災運動・収支改善対策の推進等、抜本的な改善を図り、魅力のある産業としていくことが重要である。
このようなことから、今年度の林材業ゼロ災運動、労働災害防止対策、労災保険収支改善対策は、末端事業場まで含め、気を引き締めた災防活動を強力に実施することが極めて重要である。
なお、労災保険料率の次の改定は平成18年4月に予定されており、料率算定の計算データは、14〜16年度となるので、特に、平成16年度の事業活動は、ゼロ災に向けて真剣に取組むことが極めて重要である。