木材流通における転換促進支援事業
令和5年度実施報告

兵庫県木材業協同組合連合会

1.実施概要

事業の目的

ア 背景
  • 兵庫県内のスギ・ヒノキ人工林は高齢化に伴い大径材化が進行しており、森林資源の齢級構成の平準化に加え、花粉発生源対策の観点からも主伐・再造林の推進が求められている。
  • 一方、兵庫県の令和4年次における木造住宅新設着工戸数は、対前年度比95.4%と減少しており、少子高齢化社会が進む中、新設住宅着工戸数は減少傾向にある。
  • 木造軸組住宅の部材の産地を部位別に比較すると、木造軸組住宅の約25%を占める横架材での県産木材(国産材)利用が低迷しており(下図参照)、当該部位における国産材への転換が課題となっている。
  • スギはベイマツ、RWに比べヤング係数が低いほか、仕口のせん断耐力が小さいことから、横架材では梁せい(梁高さ)が大きくなりやすく、材料コストが嵩んでいる。
  • これらに加え、調達に時間を要すること等が県産木材(国産材)の横架材での利用低迷の原因となっている。

イ 目的
①主伐・再造林の推進に不可欠な大径材の利用拡大を図るため、木造住宅において横架材での県産木材(国産材)利用拡大をすすめる。
②兵庫県が独自に開発した高強度梁仕口「Tajima TAPOS」(別添参考資料参照)は、以下のような特徴があり、
  • 仕口せん断耐力を大幅に改善する技術で在来仕口よりもスギ材の梁せいを小さくすることができる。
  • 「Tajima TAPOS」を用いたスギ横架材は、在来仕口のベイマツ並かそれ以下の梁せいに抑えることができる。
 「Tajima TAPOS」の普及により、横架材におけるスギ等県産材(国産材)のシェア増大をねらう。
③製材品の規格・寸法ごとの標準納期と生産量の一覧を明らかにし、ユーザーがスギ等県産木材(国産材)の調達計画を立てやすくする。
 

高強度梁仕口「Tajima TAPOS」

事業内容・結果

ア 高強度梁仕口「Tajima TAPOS」、心去り平角製材等の講習会

①日時
 令和5年12月13日(水)

②場所
 ヨドプレ株式会社会議室、プレカット工場

③対象
  • 木材製品流通事業者等木材関係事業者
  • 建築設計事務所
  • 工務店等

④参加人数
 85名



⑤結果
  • 福島県をはじめ全国各地から参加
  • 新技術の概要説明の後、構造計算上の利点の説明(4号特例の縮小の関連で関心が高い)
  • 石川県の木材会社が当該技術とパネルをパッケージにした「あさひMAX」という商品を開発し、実績を伸ばしている。(R4:13→R5:52棟)
  • 当該技術の概要と構造計算上の利点を合わせて説明することにより、より当該技術の優位性が確認された。
  • 当該事業で作成した冊子を活用し兵庫県内の横架材等の供給体制について説明し、供給について問題がないことを周知
  • 工場見学により新技術の理解を周知
  • 以上により、国産材への転換促進という課題解決にあたり効果的な講習会であった。

(参考)
https://www.youtube.com/watch?v=ja6J_tba46Y
 

イ「Tajima TAPOS」等普及啓発動画の作成と公開

①内容
  • 「Tajima TAPOS」の優位性が分かる強度実験の動画
  • 構造計算上の利点についての説明
  • プレカット加工機による「Tajima TAPOS」仕口加工の動画
  • 当該技術の木材利用促進を展開する上での意義等の説明
  • DVDの配布と「YouTube」の公開による不特定多数の関係者への普及
  • 「WOOD COLLECTION 2024」でのPR
 

②結果
  • 「WOOD COLLECTION 2024」では多くの参加者が視聴、興味
  • DVD、「YouTube」により講習会等に参加できなかった関係者への普及
  • 木材利用促進を図るうえでの新たな普及資材の提供(今後各種研修会等で活用)
 
ウ 第38回ひょうご木材フェアにおける新技術の普及

①日時
 令和5年9月17日(日)

②場所
 神戸市中央区ハーバーランド赤煉瓦倉庫通り
神戸市ハーバーランド

③対象
 一般県民

④内容
  • 例年兵庫県木材利用推進協議会(県内林業関係団体10団体で構成)が主催で実施している「ひょうご木材フェア」でブースを設置し新技術、木材利用の意義等を一般県民に普及
  • 木材利用相談、親子木工作教室、木製サウナ、木玉プール、木造軸組体験など体験型イベント、木製玩具の展示販売などのブースを設置し、都市部における木材利用促進について情報提供
 

⑤参加者
 約2万人

⑥結果
  • 多くの県民に「なぜ、いま木材利用か」という木材利用の意義を周知
  • 当該新技術による国産材(県産木材)を使った住宅建築の利点の周知


エ 横架材(平角)等の県産木材供給体制等の普及啓発用冊子の作成(改訂)・配布

①内容
  • 主に県産木材を取り扱う木材製品流通事業者等の取扱製品、連絡先等の一覧
  • 製材品(正角・平角)の規格・寸法ごとの標準納期と生産量の一覧

②結果
  • 県産木材の供給体制について周知
  • 県産木材の入手先等の周知
  • 一般流通材の規格、生産量等の周知
 

2.得られた効果

  • 講演会には兵庫県内だけでなく福島県、京都府、岡山県などからの参加者もあり、全国的に関心の高い技術であることが分かった。
  • また、当該事業で作成した動画を令和6年1月に開催された「WOOD COLLECTION 2024」で公開し、建築設計事務所を中心に関心の高い技術であることも分かった。
  • 講演会の実施内容についても、今回のような構成(新技術の概要、構造計算上の利点、実施事例、県産木材の供給体制)が効果的であることが分かった。
  • 上記により、今後の普及活動の参考となった。

3.今後の課題と次年度以降の計画

  • 全国的な普及展開を行うための予算確保
  • 多くの参加者が見込める神戸市内で講演会の実施等
  • 今回の講演会、動画の概要をまとめた普及用のパンフレットの作成、配布
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