丸紅木材株式会社

令和4年度 顔の見える木材での快適空間づくり事業

丸紅木材株式会社

事務局所在:大阪府出材地:大阪府

事業計画

事業計画(pdfで表示されます)
 

実施概要

実施団体の説明
丸紅木材株式会社はLVLの輸入販売を中心に行う中で、国内の森林再生に生き残りの活路を見出し、国産材事業をスタートさせました。
檜の未利用材を活用し木製玩具や精油製品の開発・販売を通して、森林に対する理解を深めるとともに、木材利用普及活動を行っています。

大阪府内での木育の推進や国産材の価値を高めることを目的として事業を実施し、資材供給から普及事業の実施まで大阪府内で行うことで、地産地消の形を構成しました。

 
事業の目的
事務局にあたる丸紅木材株式会社では日本の森林が抱える課題解決の施策として、国産材利用促進、森林と自分自身の関わりを考える木育推進を行っています。
その中で、子ども達が木に触れる機会が少ないこと、コロナ禍により自然学習の実施数減少していること、学校教育での森林環境授業の構成が難しいこと等が課題として挙げられました。
まだ木育の認知度も低く、利用期を迎えた人工林も「伐採してはいけない」という認識を持っている子どもが多いため、まずは正しい森林の知識、森林サイクルの重要性について学ぶ機会が必要と考えました。
しかし、「木育」は小学校教育課程への参入が難しいため、学校教育向けに環境問題と関連づけた木育授業の展開を検討し、その中でも地球温暖化対策に必要不可欠な「日本の森林サイクル」をテーマに、小学生を対象とした環境学習プログラムの計画を立案しました。
 
1.デジタルコンテンツの制作
-長編動画の制作
日本の森林サイクルをテーマに子ども達がわかりやすく環境を学ぶことができるデジタルコンテンツの制作を行いました。
動画のストーリーになるシナリオや、各キャラクターのセリフ台本の制作、イラストから描くキャラクターづくりを行い、製材所・伐採現場、林業従事者インタビュー等、よりリアルに近い映像を組み込み、約30分の学習アニメーション動画を完成させました。

また、小学校教員から事前に頂いた意見や、小学校にて4回の実施を重ね、当日の生徒たちの様子やアンケート調査をもとに修正を重ねました。
 
デジタルコンテンツ 一部データ
 
-短編動画の制作
地域イベントでは対象を小学5・6年生に絞ることが極めて難しく、幅広い年齢層でも理解できる森林サイクルの内容で5分程度の短編動画も制作しました。
未就学児の子どもも多いため10分では集中力が持たず、子ども達のリアクションがあるところは残しつつ、自分たちが住む街の山の現状について知るきっかけになる動画を完成させました。
 
2.小学校学習指導要領に基づく木工教材の企画開発
日本でしか採取できない檜を大阪府内で調達し、一時的に使う製品ではなく、実用性を考え、今後長く利用することができるブックスタンドの開発を行いました。
 
ブックスタンド 写真

別途、イラスト付き冊子を配布しました。(現10ページ)
人工林の育て方、森林サイクルについてなど学習内容を振り返ることができます。
さらに、持ち帰り後は家庭でも学習内容について話ができ、授業を受けた子ども達だけでなく、ご家族にも森林について知って頂く機会をつくることも目的としています。
 
木育冊子 データ

 
3.環境学習の実施
①森林体験ツアーの実施
小学校での開催に難航していたため、事務局主催で、森林に触れて林業を楽しみながら学ぶことができる森林体験ツアーを企画しました。
  • 2022年10月16日 森林体験ツアーの実施 大阪府河内長野市
    (計5家族 小学生6名 中学生3名 保護者6名)
地域林業会社と連携をとり、伐採体験と自然を楽しむアクティビティを用意しました。小学3年生から中学生まで幅広く楽しむことが可能なプログラムでした。
 
森林体験 写真
 
②千早赤阪村立赤阪小学校 森林体験
千早赤阪村の地形特徴を絡めながら地元企業だからこそできる内容にて実施しました。
  • 2022年11月1日 千早赤阪村立赤阪小学校森林体験 大阪府千早赤阪村 5年生19名
大阪府森林組合木材総合センターの見学、伐採体験、製材所の見学を行い、木製品がどのように自分の手元に届いているのかを学習します。
 
林業体験 写真
 
③小学校環境学習
カリキュラム上の2時間分である1時間半(45分×2時間)をあけて頂くことが限界でした。そのため、2時間で終了できる構成に変更し、下記小学校にてプログラムを実施しました。
  • 2022年11月21日 大阪市立東中本小学校 5・6年生 158名
  • 2022年11月30日 千早赤阪村立千早小吹台小学校・赤阪小学校 5年生 39名
  • 2022年12月5日 大阪市立茨田東小学校 5年生 58名
  • 2022年12月13日 大阪市立瓜破西小学校 5年生 50名
【実施内容】
  • 完成したデジタルコンテンツを利用し、地球環境から森林問題について考える環境学習
  • 大阪府産檜を活用した木工教材の制作
  • 振り返り
  • 後日アンケート回収
小学校 写真
 
④イベントによる実施
下記日程で大阪市内のイベントに出展し、小学生以下の子どもを対象に環境学習を用いた木工体験を実施しました。
  • 2022年11月11日12日 Welcomingアベノ・天王寺 おおさかもん祭り2022 158名実施
  • 2022年12月3日4日 うめきた防災のチカラ うめきた外庭SQUARE 142名実施
イベント写真
 
⑤普及活動
2022年12月6日~8日 SDGs Week EXPO2022 エコプロ2022 東京ビックサイト 3日間累計来場者数61,541人
森林体験や小学校にてPR動画の撮影を合わせて実施し、展示会にて動画の放映・環境学習の普及活動を行いました。
小学校で行った環境学習は、2022年12月20日発刊の日刊木材新聞にて環境授業の内容を掲載頂きました。
 
普及活動 写真
 
⑥アンケート調査
-小学校生徒アンケート結果
開催した5校の生徒にアンケート調査をしました。
約97%の生徒が動画を視聴して森林の現状について理解できたと回答しました。
 

【生徒アンケート一部抜粋】
  • 日本の山は日本を守ってるんだなと思いました。木があったら、地球温暖化を遅らせることができるが、無かったら、暑くなって後戻りできなくなる。
  • 日本の山のことを他の人に伝えたいと思った。
  • 高いところは怖いけど林業従事者をちょっとやってみたい。
  • 林業従事者たちが私たちの生活や森で生きている動物たちを支えている。
  • 林業従事者は男女関係なくできる仕事ってことがわかった。
  • プラスチックのものもいいけど木の物を優先して買おうと思った。
  • 今日作ったブックスタンドを大切にしたい。
-小学校教員アンケート結果
5校の教員14名を対象に調査をしました。
満足度100%・学習内容の必要性ともに100%の結果でした。
 

【教員アンケート一部抜粋】
  • 社会科の学習をしていても、身近に森林が少ないことで、通常の学習ではなかなか日本に木が多いことを感じられない児童が多いため。
  • 森林への理解、地球への関心など、自分ごととしての理解が進むうえ、郷土愛にもつながる取り組みが素晴らしいと思った。
  • 内容がわかりやすく示されているので学習目標に素早く到達できた。子ども達にとってどうかはもちろんですが、大人が知らないことが多すぎると感じました。

生徒たちの変化については実施日の2週間後にお伺いしました。
【教員アンケート一部抜粋】
  • ブックシェルフは保護者にも好評で、妹弟の学年でもやってほしいという声が多く上がりました。
  • 木材に対して非常に興味を持ち、木の種類の質問をする児童が増えた。また、環境問題に関心を持った児童が増えた。
  • SDGsについて調べてきた生徒がいました。
 
-イベント子供向け保護者向けアンケート結果
体験してくれた子ども向けのアンケートでは約99%の子どもが楽しかったと回答しました。
同伴者に向けた調査での満足度は100%でした。
環境学習動画に対するコメントも多く、5分間ではありますが、動画の内容が伝わっていることがうかがえます。
 

【参加者コメント抜粋】
  • 前までは木でものを作ったら木が減ってわるいと思っていましたが、木で物を作っていいというのが初めてでびっくりしました。
  • 宮大工になるのが夢で、木に触れられたからよかった。
  • 最初のビデオで森のことが勉強できた。絵も可愛かった。
  • 森が大事なんだと思った。でも大変なんだなと思った。

【同伴者コメント抜粋】
  • 子どもたちがとてもいい表情を作っていた。
  • 自分たちで作ることで、物を大切にする気持ちを感じられると思ったので。何より子ども達が楽しそうでした。
  • 木を意図的に植えること、それを切ってもいいことは知らなかった。
  • キャラクターが可愛かったので、3歳でもがんばってみることができた。またやりたいです。

事業実施により得られた効果

-森林や環境問題への理解
動画を視聴する前に「木を伐ることはいいことか?悪いことか?」という問いを子どもたちに投げかけ、どの校でも大多数が「木を伐ることは悪いこと」に手を挙げていました。
そのような中で子どもたちは、木育授業や、山に入る森林体験を通して正しい森林に対する知識を身に着け「木を伐ることは森林破壊ではない」「人工林という管理が必要な木がある」ということを初めて認識します。
この認識の変化から、森林サイクルの重要性や、木材利用の意義が伝わったことがわかります。さらに、生活に木製品を取り入れたいという意見も出てきました。
少しずつではありますが、木材の利用拡大、山元への利益還元に繋げる事業構築を目指します。
 
-スキーム構築(森林体験・デジタルコンテンツの制作・木工教材の開発)
森林体験をするツアーのプログラムを構築することができました。林業会社との連携を行うことにより、よりダイレクトに資金を山に還元が可能になりました。
今回の事業で、小学校高学年向けコンテンツの充実を図ることができ、今後地域を限定せずに実施者が変わっても偏りなく今回の環境学習が実施可能になりました。学校では手の届きにくい森林問題の範囲を学校教員の意見も取り入れつつ、具体的かつ分かりやすく示すことで、小学校側も授業の理解度があがり、学校教員の負担軽減も期待できます。
未来を担う子どもたちの森林に対する関心を高め、木に触れることで森林と自分自身との関わりを考え学ぶきっかけづくりを今後も継続して行いたいと考えています。

 

今後の課題と次年度以降の計画

課題と計画
この事業計画を終え問題点は、多くの人が日本の森林における現状を知らないことであると、再認識しました。1歩ずつではありますが子ども達に、この事業を通じて日本の森林の現状を知る機会を作り、森林や木材に対する認識を変える周知活動をすることに意味があると考えています。
まずは府内小学校での継続実施、さらに実施小学校の拡大を実現したいです。
しかし、学校参入には予算が少ないため、木工教材費用だけでも赤字で採算が取れません。そのため、①卒業制作としての実施②森林環境譲与税を用いて地域の子ども達へ環境教育の実施の2つを起点に教育機関と行政に向けて提案をしていきたいと考えています。
更に今後の課題は、低・中学年、未就学児、さらに大人向けにも習熟度にあわせたデジタルコンテンツや木工教材の開発を行い、教育機関だけにとどまらず企業・団体に向けてもツールを充実させることです。
以上の課題を解決し、木材の需要拡大に努めて参ります。