一般社団法人京都府木材組合連合会

令和4年度 顔の見える木材での快適空間づくり事業

一般社団法人京都府木材組合連合会

事務局所在:京都府出材地:京都府

事業計画

事業計画(pdfで表示されます)
 

実施概要

実施団体の説明
(一社)京都府木材組合連合会(以下、「府木連」と表記)が事務局となり、次のとおり分担して本事業を進めた。
実大曲げ試験の実施: 京都大学、京都府立大学
試験結果の検討 : 府木連、京都大学、京都府立大学
啓発用資材作成 : 府木連
講演会、セミナー、検討会 : 府木連
 また、京都木材加工ネット、京都府産木材利用推進協議会、行政から流通体制の整備等について助言をいただいた。

京都木材加工ネット
 京都府内を4ブロックに分け、京都府産木材を提供するネットワーク。素材、製材・加工、流通26社で構成される団体。
京都府産木材利用推進協議会
 京都府が実施する京都府産木材認証制度に登録する取扱事業体・緑の事業体で構成される団体。(取扱事業体209社、緑の事業体229社)

 
事業の目的
 令和3年の木材不足・価格高騰(いわゆるウッドショック)が海外依存度の高いサプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにし、国産材への転換を図ることが喫緊の課題となった。
 京都府での木造住宅建設では、一部の工務店を除き、横架材にベイマツ製材やオウシュウアカマツ集成材を使うのが一般的になっている。
 部材断面の決定に強度計算を行えばスギ材でも十分であることが分かるが、4号建築物では壁量計算と実務者の経験値で決定されることが多い。
 スギ横架材への転換には、それに対する不安感を拭い去る必要があることからスギ横架材の実大曲げ試験を公開で行い、そこから得られたデータが強度計算結果を裏付けることを示し、A材丸太の需要拡大と大径材利用を推進する。

 
事業内容・結果
①協議会開催
令和4年8月18日(木) 京都大学生存圏研究所木質ホール
京都大学 五十田(Web参加)、林、南
京都府立大学 古田、柳川
京都府 明石、片岡
府木連 愛甲、栗山
実大曲げ試験の内容、スケジュール調整及び講演会の内容、スケジュールなどを協議。
令和4年10月12日(水) 府木連事務所
京都大学 南
京都府立大学 柳川
府木連 愛甲、栗山
実大曲げ試験結果の内容を協議。
令和4年11月1日(火) 京都大学生存圏研究所木質ホール
京都大学 五十田、林、南
府木連 愛甲、栗山
普及冊子「京都府産木材の利用を拡げる-スギ横架材の活用-」の内容等を協議。
令和4年12月20日(火) メールによる協議
京都大学 五十田、林、南
京都府立大学 古田、柳川
普及冊子「京都府産木材の利用を拡げる-スギ横架材の活用-」の原稿案を学術的な観点からチェック。
令和5年1月17日(火) メールによる協議
京都大学 五十田、林、南
京都府立大学 古田、柳川
京都府 明石、村山、菊谷
 令和4年度事業総括および令和5年度活動について協議
令和4年8月18日(木)

京都大学生存圏研究所
木質ホールでの様子
 
 
②講演会、セミナー、検討会
ⅰ 講演会『京都府産スギを使用した横架材の活用』
令和4年11月16日(水) ホテルルビノ京都堀川
京都府内の木材加工業者、建築士、工務店、行政
参加者数57名
 実大曲げ試験から得られたデータを中心に日本建築学会理事でもある五十田博教授からスギ材がベイマツ材の代替が可能であることを説明していただいた。
 また、建築士等をパネラーとしてスギ横架材に期待することをテーマにパネルディスカッションを行い、参加者からスギ横架材の質問を受けた。
 
講演中の五十田博教授
パネルディスカッションの様子

ⅱ セミナー
令和4年11月9日(水) (一社)京都府建築士会
同会に所属する建築士
参加者数42名
 同会の総合研修の場をお借りして、京都府産スギ横架材の取り組みについて説明した。

令和4年12月9日(金) あやべ・日東精工アリーナ
京都府北部の木材加工業者、建築士、工務店、行政
参加者数18名
 京都市内で講演会等を開催しても府北部から参加するのは地理的な条件で難しいことから11月16日に開催した講演会の内容を説明した。

令和4年12月15日(木) 京都大学生存圏研究所木質ホール
京都府南部の木材加工業者、建築士、学生、行政
参加者数29名
「山城産木材の利用を進める研修会」で実大曲げ試験の内容とスギ横架材での代替について説明をした。
令和4年12月9日(金)
あやべ・日東精工アリーナでのセミナーの様子

 

ⅲ 検討会
令和4年8月30日(火) 京都木材加工ネット、京都府、ルビノ京都堀川
令和4年9月15日(木) 製材、プレカット*、府木連
令和4年11月7日(月) 製材、プレカット、府木連
京都府産スギ横架材の供給体制、供給部材を協議。
令和4年8月30日(火)
検討会の様子
 
令和4年9月15日(木)
検討会の様子
 
* JAS認定工場、プレカット事業者で構成。

【その他検討会】
令和4年8月23日(火) (一社)京都府建築士事務所協会 事業説明
令和4年9月 8日(木) 大雄木材(株)    2社において乾燥工程の検討会
令和4年9月23日(金、秋分の日) 綾部市役所 事業説明
令和4年10月3日(月) 京都府議会森林・林業活性化議員連盟 事業説明
令和4年10月6日(木) 京都府立大学 乾燥工程の見直し
令和4年10月12日(水)山と木文化の研究会 事業説明
令和4年10月14日(金)ホリモク(株) 生産体制の打ち合わせ
令和4年10月19日(水)京都府立大学 乾燥工程の見直し
令和4年12月8日(木) 未来につなぐ京の木府民会議幹事会
令和5年1月12日(木) 京北プレカット(株) 管理システムの検討会
令和5年1月24日(火) 京都市 建築物の木造・木質化の検討会

ⅳ曲げ破壊試験の実施
 京都府内の設計担当者に京都府産スギ横架材の強度がベイマツ材と変わらないことを知っていただくために実大曲げ試験を公開方式で実施し、業界紙だけでなく一般紙にも取り上げていただいた。
令和4年8月31日(水)坂矢木材(株) 試験体の乾燥状況確認
令和4年9月1日(木)坂矢木材(株) 試験体の選定
令和4年9月12日(月)奈良県森林技術センター 予備試験
                (異常破壊の有無を確認)
令和4年9月14日(水)京都大学生存圏研究所 予備試験
                 (公開試験リハーサル)
令和4年9月20日(火)京都大学生存圏研究所 本試験
                 (ベイマツ180、スギ180データ取得)
令和4年9月21日(水)京都大学生存圏研究所 本試験
                 (スギ210データ取得、公開試験)
令和4年9月22日(木)
産経新聞ウエスト
 
ⅴその他製作物

①普及用冊子「京都府産木材の利用を拡げる ―スギ横架材の活用―」
 強度面ではベイマツ材と遜色がないスギ横架材を使用していただくための解説書を作成。
 全てをスギで代替するのではなく、サイズを限定し、ベイマツ材の使用経験を活かす形に取りまとめ、断面検定を行えばより多くの部材がスギ横架材での代替が可能としてまとめた。
 製作部数3000部。(A4、16ページ)
 建築士や行政に配布したほか、各種研修会で使用する。
 
②普及用動画「輸入材からスギ横架材への転換に向けて」
 
 上記冊子の内容を動画形式でまとめたもの。(約6分30秒)

 実大曲げ試験の様子を見ることができることから視覚的にスギ横架材の強さを理解できる。

 YouTubeで配信。
 
 

事業実施により得られた効果

1 梁幅105ミリ、梁せい150~240ミリ、長さ4メートルのベイマツ材の代替には、1サイズ(30ミリ)アップしたスギ材で可能であることが破壊試験で実証された。
2 講演会、セミナー開催のほか、普及冊子配布及び普及動画配信により設計担当者にスギ横架材の利用拡大について普及を図れた。
3 府内の製材JAS5社とプレカット4社で横架材利用に向けた検討会を開催し、梁せい120~240ミリの長さ3m、4m材についてターゲットを絞って供給することを目標とし、スギ横架材に係わる事業者による製造・流通体制を早急に整備・構築する必要があることを確認した。
4 スギ横架材普及の課題として、品質の向上が求められる。府立大学の協力を得て、乾燥プログラムを再検討し、乾燥工程の見直しを図った結果、製材5社ともに内部割れ等の品質改善の向上が図れた。
5 ベイマツ材の輸入が正常化されれば、スギ材との価格差が生まれ、スギ横架材普及の障害になることが見込まれるため、京都府と連携し、新たに「横架材利用」にポイントを加算する助成制度の新設を検討していただいた。
 
 

今後の課題と次年度以降の計画

スギ横架材の普及を図る主な課題は以下の4項目である。
Ⅰ 品質の担保
Ⅱ 安定供給
Ⅲ 価 格
Ⅳ 建築士等向けの普及方法
 課題Ⅰについては、各社乾燥工程の見直しで品質改善が図られているが、今後も品質改善の努力を継続する。また、乾燥施設が不足していることから、当該施設の充実に取り組んでいく。
 課題Ⅱについては、製材各社とプレカット各社の供給(生産・ストック)・需要情報や配送方法等、データベース等の構築が必要である。安定供給を図るため、R5年度の課題としてデータベースソフトの構築を検討する。需給情報と生産情報とのマッチングによる情報共有とコストダウンに取り組んでいく。
 課題Ⅲについては、京都府と府内産材の確実な供給体制強化を図るため、R5年度から新たに「京都府産スギ材の横架材利用」にポイントを加算する助成制度を新設することを検討する。
 課題Ⅳについては、建築士会、建築士事務所協会等との連携により、本事業による曲げ破壊試験の結果の講演会をはじめとして、今年度中に発注者、建築士向けの木造建築技術講習会(本年度はスタートアップ講習を開催、来年度からも継続して開催予定)の開催や、建築士向けの製材所、集成材工場等の現地見学会も予定(来年度以降も継続)しており、スギ横架材の普及に向けてあらゆる機会をとらえて普及を図る。

 また、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(通称:都市(まち)の木造化推進法)」の施行により、京都府や府内市町村での木材を使う機運は高まっている。しかしながら、木造設計に長けた職員がいないことから、設計内容に無理があったり、市場に流れない材を使用したことでコスト高になったりすることがあり、計画段階から木材コーディネーターが関わること、また、必要により「分離発注」等の助言を行っていく。

 以上の取り組みにより、森林所有者へ利益が還元され、山村の経済が潤うことを期待する。