令和5年度 顔の見える木材供給体制構築事業
一般社団法人 国産材を活用し日本の森林を守る運動推進協議会/一般社団法人林業機械化協会
事業計画
実施概要
(1)実施団体の概要
一般社団法人「国産材を活用し日本の森林を守る運動推進協議会」は、国産材の利用促進活動を通じて、日本の森林・林業を再生することを目的とし、普及啓発・調査研究・各種イベント開催を行ってきており、この事業では活動の方向性を定め、主導する役割を担った。一般社団法人「林業機械化協会」は、事務局として具体的な活動の調整、情報収集、委託調査等の実施、調査結果の取りまとめ等を行った。
(2)事業の目的
人工林資源の多くが成熟期を迎えている中で、製材等の価格は上昇しても立木価格は低迷したままとなっており、立木取引においては再造林など持続可能な森林の経営に必要なコストが考慮されていない状況にある。こうしたことから、伐って使って植える循環サイクルを実現するため、立木取引を見える化し、木材需要者が持続性担保を確認した上で、森林所有者が納得する価格で購入する場の構築を目的として事業を実施した。
(3)事業内容・結果
(ア)有識者委員会
令和5年8月、11月及び令和6年1月の計3回の有識者委員会を開催し、以下の事項等について成果の取りまとめと次年度以降へ向けた検討を行った。- 持続性が確保された森林の立木取引の流れ
- ウェブサイトの構築
- 都道府県アンケート調査
- 持続性担保の確認方法
- 木材取引関係者からの聞き取り調査
第1回有識者委員会の様子(立花座長の挨拶)
(イ)インターネット上での立木取引システム構築
a.持続性が確保された森林の立木取引の流れ b.ウェブサイトの構築ウェブサイトの主な構成は以下の通りである。
(ウェブサイトの画面デザイン)
(ウ)都道府県アンケート調査
全都道府県を対象にアンケート協力依頼を11月10日に発出(12月15日締切)し、立木取引への支援等に関する考え方などを調査(回収率77%)した。【結果概要】
- 立木取引の場について関心はある(79%)
- 立木取引等の価格形成は民間が主体で決定するため、都道府県として関与することは難しい(57%)
- 各種森林情報等のデータ提供や情報交換できる場の創出等の支援は可能である(56%)
(エ)持続性担保の確認方法
買受者等が伐採後の再造林の状況を位置情報と衛星画像を活用して確認する方法を検討した。
(オ)木材取引関係者からの聞き取り調査
買受側の意向を確認するため、これまで情報が少なかった非住宅系の木材需要者を中心に流通事業者2社及びゼネコン2社、設計会社、住宅メーカーに対してヒアリングを実施した。【主な論点】
- 森林資源の持続性に向けた対策が必要なことはほぼすべての者が理解
- 上記の具体的な対策として立木取引を見える化することは効果的と考える
- (商社として)広域に立木調達を行う観点から積極的に参加したい
- 立木価格を引上げる分のコスト負担に簡単には応じられない
事業実施により得られた効果
(1)基盤整備具体的な取引の流れを踏まえた立木取引のためのウェブサイトの基盤が整備できたことから、今後の試行を通じて改修・改良を行うサイトの構築を図ることが可能となった。
(2)課題の抽出
立木取引に必要な森林境界と森林情報の整備・共有などが低位な状況にあることが把握されたことから、関係機関等への働きかけ等の方向性が明確になった。
(3)関係者の意見の把握
都道府県へのアンケート調査及び、川下側の幅広い関係者からの聞き取り調査などを通じて、立木取引システムに対する意見を収集することができ、全国展開に向けて貴重な情報となった。
(4)基礎情報の収集
今後の課題と次年度以降の計画
(1)マッチングの試行実施サイトを通じた取引事例の積み上げ、一連の流れを具体的に確認し課題の抽出を行うための全国数地域での実証実験を実施する。
(2)サイト利用者の拡大
説明会の開催、判りやすい資料の作成、実証実験結果等に基づくサイトの改修等を行う。
(3)将来に向けた働きかけ
サイト運営主体の検討、さまざまな関係者が必要な情報にアクセス出来る環境づくり、流通の場への出品数量の確保、サイトを通じて取引される森林の適切な取扱いに関する問題提起などを進める。