北鹿地域林業成長産業化協議会

令和5年度 顔の見える木材供給体制構築事業

北鹿地域林業成長産業化協議会


事業計画

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実施概要

(1)実施団体について
北鹿地域林業成長産業化協議会(旧:大館北秋田地域林業成長産業化協議会)は秋田県大館市、鹿角市及び小坂町の2市1町を範囲(図-1)として、地域の林業・木材産業の成長産業化の実現に向けた活動を行っており、行政機関(国有林・秋田県・市町)に加え、川上(森林組合・素材生産等)・川中(木材加工・木材流通・家具等)・川下(住宅事業・建築設計等)に至る各分野の事業者が参画する総勢96会員で構成される組織である。
当協議会は令和4年度に「顔の見える木材での快適空間づくり事業」の採択を受け、「秋田スギDLTの試作及び利用拡大・普及」をテーマに木材を木ダボで接合するDLT(Dowel Laminated Timber/木ダボ接合積層材/図-2)による打合せブース(図-3)及びWEB会議用ブース(図-4)を試作したほか、展示会出展(図-5)や説明会開催(図-6)などの普及活動を行った。
 
図-1 位置図
図-2 DLT

図-3 DLT打合せブース

図-4 WEB会議用ブース
  

図-5 DLT出展

図-6 DLT説明会
 
(2)事業の目的
協議会において森林資源の「循環の輪」の創造を目指し、地域の充実した森林資源の最大活用と資源循環の確立をもって林業成長産業化を実現させることを目的に、令和5年2月に令和4年度から令和13年度までの10年間を期間とする「グリーン成長構想」を策定し、構想では5つの取り組みの柱を設定している(図-7)。

図-7 グリーン成長構想(令和4年度~令和13年度)の概要

本事業においては、5つの柱のうち、住宅・非住宅分野や家具など生活関連分野での木材利用促進を目指す「森林資源の地産地消によるまちづくりへの貢献」及び都市部自治体・企業との連携化や森林認証材供給を目指す「地産外商による木材産業の競争力向上」を推進し、産学官連携による木材の地産地消および地産外商の取り組みを通じて、秋田スギをはじめとする地域材の需要拡大を目指すとともに、製品の優位性を向上させて、収益性を有する「地場競争力」を高めることで、山元への確実な利益還元につなげることを目的に、「ALL地域材でのDLT商品開発及び販売促進」を取り組みテーマに、シンプルな加工工程で木ダボのみで接合するDLTの特性等(図-8)を活かした事業を実施した。

図-8 DLTの加工工程イメージ図
 
(3)事業内容・結果
本事業においては、次の①~③を実施した。
①ALL地域材によるDLT商品開発事業

事業概要:木ダボの輸入材(欧州ブナ)から国産材(地域産広葉樹)転換によるALL地域材でのDLT商品開発
事業目的:前年度に試作したDLTブース・モクキューブに使用したDLTの木ダボは輸入材(欧州ブナ)を使用していたが、今年度は地域産広葉樹を材料とした木ダボを使用することでALL地域産材でのDLT商品開発を行う。

実施内容・結果:
■ALL地域材により開発したDLT商品

秋田スギDLTパーティション
寸法:W1200×D45×H1800(目隠タイプ)、W1230×D45×H1800(スリットタイプ)
材料:DLTパネル(秋田スギ)、脚(鋼製アクリル樹脂焼付塗装)、キャスター(ナイロン車輪ロック付)
台数:8台(目隠タイプ7台、スリットタイプ1台)


秋田スギDLT案内板
寸法:W510×D500×H1385
材料:DLTパネル(秋田スギ)、マグネット受け(ST FB t9 アクリル樹脂焼付塗装)、台座(秋田スギDLT)、キャスター(ナイロン車輪ロック付)、マグネットバー(秋田スギ ネオジム磁石)
台数:3台


DLT広葉樹テーブル
寸法:W1200×D750×H720
材料:天板(クリ・ケヤキ・ホオ・ヤマザクラ・ナラ混合)、脚・貫(ナラ)、込栓(ケヤキ)
台数:1台
備考:接合部に釘・接着剤不使用


■その他使用した地域産材料等

地域産広葉樹ダボ
材 料:ヤマザクラ
備 考:藤島木材工業㈱・材料支給


ひまわり蜜蠟ワックス
材料:釈迦内ひまわり油、小坂アカシア蜜蝋
備考:㈱沓澤製材所・製、全DLT商品に塗布済

■DLT商品設置状況(納品先:大館市役所 本庁)
本庁1F 市民ホール
本庁1F 市民ホール
 
本庁1F 西側エントランス
本庁4F 打合せコーナー
 
②DLT商品プロモーション事業
事業概要:ALL地域材使用DLT商品の展示会出展及び需要者向けプロモーション活動
事業目的:展示会出展によりALL地域産材使用のDLT商品の販売促進を図る。また、大館市(事務局)と協定等を締結し、大館市産秋田スギ等の利用を進めている渋谷区や同区内関係企業のほか、大館市が入会している関係団体(一般社団法人日本ウッドデザイン協会など)の会員や都市部企業等へDLT商品プロモーション活動等を実施する。

実施内容・結果:
■展示会出展
ジャパンホーム&ビルディングショー2023 ふるさと建材・家具見本市
会 期:令和5年11月15日(水)~17日(木)
会 場:東京ビッグサイト(東京都江東区)
主 催:一般社団法人日本能率協会
来場者:会場全体17,428名 ブース120名(名刺交換人数)
職 種:ゼネコン、ハウスメーカー、工務店、デザイン・建築設計、研究機関、行政、建材メーカー、流通商社、IT関連など
 
SDGs Week EXPO「エコプロ2023」:森と木で拓くSDGsゾーン
会 期:令和5年12月6日(水)~8日(金)
会 場:東京ビッグサイト(東京都江東区)
主 催:(一社)日本ウッドデザイン協会、(公社)国土緑化推進機構、日本経済新聞社
来場者:会場全体 計66,826名 ブース60名(名刺交換人数)
職 種:建材メーカー、広告代理店、小売、学生・児童、設計、化学工業メーカー、木材加工事業者、木材関連団体 など
 
みなとモデル二酸化炭素固定認証制度木材製品展示会2023
会 期:令和5年12月15日(金)
会 場:港区立エコプラザ(東京都港区)
主 催:港区
来場者:ブース 42名(名刺交換人数)
職 種:ゼネコン、林業事業体、家具メーカー、行政、研究機関、新聞社、建材メーカー、設計、金融機関、玩具メーカー など



■展示会用ポスター・リーフレット
本事業PRポスター(A1/1部)
秋田スギDLTポスター(A1/1部)
 
秋田スギDLTブース・モクキューブ
リーフレット(A3/1,000部)
秋田スギDLTパーティション等
リーフレット(A4/800部)


■DLTプロモーション活動
渋谷区や同区内関係企業のほか、大館市が入会している関係団体(一般社団法人日本ウッドデザイン協会など)の会員や都市部企業等へDLT商品プロモーション活動等を実施した。また、次年度以降の取り組み拡大に向けた企業面談や視察等を実施した。
活動期間等:3回(令和5年11月6~8日、令和6年1月17~18日、23~25日)
訪問場所等:東京都内、群馬県館林市
訪問企業種:ゼネコン、ハウスメーカー、内装・什器メーカー、設計事業者、内装デザイン事業者、ペット関連事業者、建材商社
訪問結果等:DLT什器については制限がかからないアイテムであるため引き続き設計に折込めるように対応を検討したい(内装デザイン事業者)/学校施設向けの商品としてDLT板の防球格子戸を試作した(内装・什器メーカー)/イベントの観客席を木造化する動きがあり、DLT活用を提案中(ハウスメーカー)など
 
DLTのプレゼン
DLT紹介(企業訪問)
DLT加工機の視察
 
③林福連携・DLT製造教育プログラム試行事業
事業概要:林福連携によるDLT製造トライアル及び作業学習プログラム化
事業目的:「秋田県立比内支援学校」において、生徒の卒業後の就業を目指すために実施している「作業学習」について、本地域でのDLT普及促進を図ることを目的に、学習プログラムの一つとして生徒によるDLT製造トライアルを実施する。

実施内容・結果:
■DLTワークショップin秋田県立比内支援学校
日 時:令和5年10月19日(木)午後1時10分~2時45分
参加者:秋田県立比内支援学校 高等部木工班生徒6人、教員3人
内 容:⑴林福連携・DLT製造教育プログラム試行事業(説明:大館市)
⑵ローテク・マスティンバーDLT紹介(説明:㈱長谷萬)
⑶DLT製造実演(講師:㈱長谷萬)
体験した生徒の感想:
少し難しいところもあったが、自らDLTを作ることができて良かった。将来自分の家を建てることになったらDLTを使ってみたいと思った。

 
ⅰ DLT製造実演
ⅱ 穴開け
ⅲ 木ダボ打ち
 
ⅳ 木ダボ端部カット
ⅴ DLT完成
ⅵ 生徒のみで実践


■秋田県立比内支援学校におけるDLTの試作状況
 
試作DLTパネル
試作DLTスツール
試作DLTミニスタンド
 


事業実施により得られた効果

(1)顕彰制度の受賞によるDLT事例の発信強化
DLTの知名度向上を目的に、本事業の成果等(令和4年度成果)について木材利用関連の顕彰制度へ応募し、以下のとおり受賞した。
■ウッドデザイン賞2023 受賞部門:ソーシャルデザイン部門/建築・空間分野
■令和5年度木材利用優良施設コンクール 受賞部門:優良施設部門 優秀賞
■第4回ウッドファーストあきた木造・木質化建築賞 受賞部門:木質化部門特別賞
 
(2)森林経営の持続性確保に向けたDLTの生産体制構築
当協議会が森林認証林(SGEC-FM)の拡大に取り組む中で、DLT製造・販売を行っている㈱長谷川萬治商店・㈱長谷萬においても森林認証(SGEC-CoC)の取得審査に向けて準備を進めており、今後は森林認証由来のDLT製品の供給が可能となる見通しとなった。
 
(3)協議会会員によるDLT商品事業の着手
当協議会の会員(製材業)が秋田スギ商品の高付加価値化を図る取組みとして、DLTによる家具・什器商品開発に着手している。


今後の課題と次年度以降の計画

(1)今後の課題について
課題1:DLTの認知度向上
DLTに関する取り組みの発信や顕彰制度受賞等により、関係者のDLTに関する認知度が高まっているものの、展示会等の来場者にはまだまだ認知が進んでいない状況である。これまでの事業成果等の発信や引き続きDLT利用事例の創出が必要。

課題2:DLT製造拠点整備に向けた合意形成
北鹿地域の木材(秋田スギ、広葉樹)でのDLT商品化が可能となったほか、当協議会の会員企業が独自にDLT商品開発を開始するなど民間への波及が進んでいることから、次年度以降は地域内での完全DLT化に向けて、関係者との合意形成が必要。
 
(2)次年度以降の計画について
計画1:森林認証由来の地域材DLT製品の商品化
・北鹿地域での森林認証林(SGEC-FM)の拡大と併せて、次年度以降はDLT製造までの森林認証材によるサプライチェーン構築の目途が立ったことから、森林認証由来の地域材DLT製品の商品化を目指すものとする。

計画2:地域材DLT商品カタログ等の作成
・当協議会の会員企業が独自にDLT商品開発を進めており、地域材によるDLT商品ラインナップが増加しつつあるため、これまで開発してきた地域材DLT商品のカタログ等を作成する。

計画3:DLTに関する関係者ネットワークの形成
・DLTについては北鹿地域だけでなく、他地域(宮城県、茨城県など)でも導入化が進んでいることから、取り組みの拡大や地域間連携に向けたネットワーク形成を目指す。