株式会社仙台木材市場

令和5年度 顔の見える木材供給体制構築事業

株式会社仙台木材市場


事業計画

事業計画(pdfで表示されます)
 


実施概要

実施団体
・株式会社 仙台木材市場
・守屋木材 株式会社
・有限会社 寺島木材
・株式会社 佐藤製材所
・ヤマモト木材 有限会社
・宮城県森林整備事業協同組合
 
協力者(自治体・団体・企業)
・宮城県
・仙台市
・公立大学法人・秋田県立大学木材高度加工研究所
・仙台木材市場 売方組合・買方組合
・株式会社 北洲
・朝日ウッドテック 株式会社
 
実施団体の説明
製材品市場として川中に位置し、東北各地域を始め関東、遠くは九州からも仕入を行いながら他地域の情報収集をしている(株)仙台木材市場が中心になり川上から川下に関わる業種で検討を行う事を目的とした。

㈱仙台木材市場:宮城県を中心に青森県、秋田県、岩手県、福島県に取引先があり、月2回製材品のセリ売りと年4回の工務店向け展示即売会での情報収集、通常の営業活動の中でニーズを聞き仕入に反映している。
年1回国有林からの委託を受けて原木入札も行っている。
プレカット工場を持っており売方組合の製材品を使い、地元工務店の一般住宅の仕事をメインに、宮城県内の公共物件等への納材実績もある。
 
川下 材木店販売店がマーケット側の情報収集を行う。
守屋木材㈱・ヤマモト木材㈲・朝日ウッドテック㈱・㈱北洲
川中 情報収集をしたものを㈱仙台木材市場がまとめ、製材所と情報共有をしながら原木調達・製材を行い、それに必要な原木サイズなどの情報提供を素材生産者へ行う。
㈱仙台木材市場・㈲寺島木材・㈱佐藤製材所
川上 川中からの情報提供を受けて原木の情報収集や原木手配を行う。
宮城県森林整備事業協同組合・宮城県・仙台市・守屋木材㈱
 
事業の目的
令和4年度「マーケットインによる安定供給体制強化促進事業」に応募し、「大型木造物件への地域産材安定供給強化検討会」を立ち上げて約半年間活動を行った。大型木造物件への地域産材安定供給についてマーケット側(自治体)にヒアリングを行い、プロダクト側(製材工場・流通業者)で検討を行いました。

その結果、供給体制としては、安定的に対応出来る事を確認する事が出来た。一方で、マーケット側への情報提供(地域産材の準備期間など)が十分に出来ていない事も確認する事が出来た。このことから、地域産材についての情報不足が需要拡大の妨げになっていると考えられる。

また、自治体へのヒアリングの中で、街路樹や公園の樹木が植栽から数十年が経過して、大きくなり過ぎて近隣住宅からの苦情等による伐採があり、その伐採処理費用等の維持管理費が増大し、街路樹や公園の樹木更新が出来ない等の問題がある事が分かった。
プロダクト側からは、余り利用されていない杉大径材やナラ枯れ等で伐採処理された広葉樹の活用方法として、公共建築物の内外装材等に使用出来るように、マーケット側の意見を聞いて商品化の検討を進めて欲しいと言う意見もあった。

上記の事からマーケット側に地域産材等を使用してもらうための、情報提供を目的とした

①「自治体向け地域産材安定供給マニュアル」の作成。

自治体とプロダクト側から要望があった大径材、広葉樹(ナラ枯れ材含)を有効利用するため

②大径材を利用したツーバイ材の商品化の検討。
③広葉樹を利用した地域産材フローリング等内装材の商品化の検討。

新しい商品への取組みを行う事で、木材(地域産材)の需要拡大を目指すとともに、プロダクト側にも働きかけ地域産材安定供給体制の強化拡充を目指す。マニュアル説明会で大径材、広葉樹の取組みの報告をし、これまで活用されていなかった木材利用を目指す。

上記のことを「令和5年度 顔の見える木材供給体制構築事業に係る事業」を利用して活動することを活動目的としました。
 
事業内容・結果
①マニュアル作成・説明会開催
・「令和4年度 マーケットインによる安定供給体制強化促進に係る事業」の課題「大型木造物件への地域産材安定供給強化の検討」取組みから自治体向け説明資料が必要と考え「自治体向け地域産材安定供給マニュアル」の作成を行う。

主な内容:
①宮城県林業・製材業について
②木構造について
③調達スケジュール

等を盛り込んだ内容とし、宮城県とすり合わせを行い作成した。

作成:100部
対象:自治体・施工業者・設計事務所・木材業界

結果:
・1月26日マニュアル説明報告会開催

10:30~宮城県林業振興課、仙台市林務課、仙台森林管理署、市場買方売方様、買方売方様の取引先工務店様向けの説明報告会開催。(参加40名)
15:00~宮城県木材同友会(宮城県内木材林業経営者の45歳以下で構成された会)、機械メーカーに参加いただき説明報告会開催開催(参加20名)
設計事務所などから材木店販売店が相談を受けて、製材工場やプレカット工場との繋がりも多い木材市場に相談、各製材工場の能力(製材量、乾燥能力)を検討して製材品の手配を行い、大型物件の場合や工法を考慮のうえ、プレカット工場の連携も含めて対応する。
 
②大径材を利用したツーバイ材等の商品化の検討。
2x4材商品検討(北洲ハウジング株式会社)
打合せ内容
  • 製品グレードの確認、製品単価、使用量 等の聞き取りを行った。
  • 製材工場でツーバイ材サンプルを作成し、製品の検討を行う。
  • 建設現場、加工工場での勉強会を行う。
  • 加工工場では、使用箇所によって使い分けされていて、杉材とSPFの両方が使用されていた。
  • 縦材に杉材、横材にSPF。製材品の長さ、強度での使い分けが行われ、使用割合では30%~40%程度杉ツーバイ材が使用されていた。
  • 北洲ハウジング様に限らず、2x4を使用したハウスメーカーはウッドショック後に国産材使用割合を増やしていくような動きになっている。
  • 製材所において、建設会社立会いで製材を行いながらのサンプル製材を行った。
  • 実際は芯に近い部分もツーバイ材として受入できる。
  • 面取り加工は必要ない など、実際に納品するにあたって製材所が懸念していた点は、特段問題が無い事が確認できた。
  • 当社販売イベントで、建て方実演展示行った。
  • 輸入ツーバイ材よりの杉ツーバイ材の方が安価と言う事もあり、興味を持ってもらえた。


木製建具での使用検討
訪問日時2023年10月24日
アルス(株)へ訪問し、使用する材料品質のヒアリング及び打合せを実施
 

詳細内容
  • アルス(株)では、今までは外材である米ヒバを使用した木製サッシを制作していたが、国産材利用への転換を図っていく考え。
  • 今後は国産の杉の大径材を利用し、国内のもので一貫して制作していることを謳っていきたい。
  • 現状の米ヒバでは木目の間隔が細かく、見た目も美しいため、杉の大径材とした場合の木目の間隔の広さが懸念点ではあるが、国産材利用という点に重きを置いて、使用箇所に応じて臨機応変に選別しながら有効利用していきたい考えになっている。
 
  • 宮城県内製材所で大径材から巾柾材のサンプル製材を行い、納入を行った。
  • 現在はメーカー側で使用部材の検討等を行なっている。
  • サンプル製材品を確認してもらい、品質に問題が無いという事で、今後単価等の打合せを行い、継続して納品出来るようになるところまできている。
  • 年間で100㎥以上は使用する見込み

③広葉樹を利用した商品化検討
朝日ウッドテック訪問打合せ
訪問日時2023年9月11日
ナラ枯れ材を使用したフローリングの商品化・相談打合せ


補助事業期間では乾燥材を準備することが難しかったため、未乾燥材で納入出来る、突板でのサンプル作成を依頼。
後日、製材をしながらの検討会を行い製材品の納入グレードの確認をする事となった。

問題点
  1. ナラ枯れ材と健全な材を組合せたものでの商品化の検討が必要。
  2. 伐採時期と製材時期も限られるため年間を通しての納材が難しい。
  3. 継続していくためには乾燥材での納入が必要で、乾燥方法、乾燥設備を検討する必要がある。
メーカーでも国産材で商品を検討している。

宮城県立柴田農林高校 演習林視察
日時2023年10月23日
ナラ枯れ材の手配にあたり、伐採許可や原木移動制限等の問題もあり、宮城県林業振興課に相談し、実際に被害にあっている宮城県立柴田農林高校演習林の視察を行い、今回のサンプルフローリング作成の原木は演習林で伐採した原木を使用した。
宮城県内でもナラ枯れの被害は拡大しており対応が必要になっている。


製材検討会
日時 2023年11月10日
  • フローリングメーカーの担当者に来ていただき、実際に製材を行いながら、サンプル作成に必要な突板原板の製品検査を行った。
  • ナラ枯れ原木をわく挽きで製材を行った。
    原木径30㎝~38㎝
    原板サイズ1800×34×160に製材
    1本から6枚~8枚の製材を行った。歩留り20%弱
 

製材後の検品。
  • 芯に近い部分はフローリングの原材料としては使用出来ない。家具材では使用される、虎班(トラフ)はフローリング材では使用できない。
  • 実際に製材を行ってみると、芯に近い所まで虫が入っていた。
  • ナラ枯れ被害を受けた原木は初期段階で製材をすれば歩留まりが良い。
  • ナラ枯れ被害を受けて時間が経過している原木は辺材部分の腐れがひどく使用出来なかった。1本の原木から2~4枚程度しか製材出来なかった。
  • 腐れのひどい辺材部分をペレット燃料や炭などへ利用が出来れば歩留まりが上がる。
 

事業実施により得られた効果

①マニュアル説明会
宮城県、仙台市からの追加でマニュアルが欲しいとの要望があり、関心は高いと思われる。
実際に市庁舎の建替え予定がある仙台市からは、内装材の問合せがあった。

②大径材を利用したツーバイ材等の商品化の検討
ツーバイ材についてはマーケット側も国産材を使用していく方向に向かっているため、商品として扱っていけると思う。
マーケット側の国産材、地域産材への関心は高い。

③広葉樹を利用した地域産材フローリング等内装材の商品化の検討
実際にサンプルフローリングを展示して反応は良かった。
展示、説明が出来た事で、ナラ枯れ材を使用する事の意義を理解してもらえた。
宮城県内製材所から広葉樹製材を再開したいと問合せがあり、取組みを広げていける。
 

今後の課題と次年度以降の取組み

〇マニュアル説明会
説明会を継続して行い、地域の実情にあった木材利用を目指す。
マーケット側に情報提供を行い、プロダクト側も無理のない生産・納品ができるように取組みを継続していく。

〇大径材を利用したツーバイ材等の商品化の検討
ツーバイ材についてはマーケット側も国産材を使用していく方向に向かっているため、商品として扱っていけると思う。
安定供給するための取組みは継続していく必要がある。
今後は、大径材から正角類の製材を行い、商品化を目指す。
マーケット側が気にする強度などの試験行い、情報提供することで今までの芯持材でなければ使えないと言う意識を変えて使用してもらう取組み行っていきたい。

〇広葉樹を利用した地域産材フローリング等内装材の商品化の検討
チップ材として扱われる事が多いが、製品化する事が出来れば、適正な価格で原木を流通させ山側へ還元する。
今回は、ナラ枯れ材で突板フローリング作ったが、ナラ枯れ材を活用する事で、健全なナラ材も流通させる。
今後は、無垢フローリング、壁材の商品を検討することで広葉樹の流通拡大を目指していく。
無垢材商品を検討していくためには、虫の駆除方法を検討しなければならない。(薬剤を使用しない方法)
無垢材商品の検討、集成材化の検討をするにあたって、広葉樹の機械乾燥について検討を行う必要がある。

〇今まで、チップ材になっていた広葉樹、引受先がなかった大径材を有効活用する事で、山元へ還元が図られ、持続可能な森林経営になると思います。