平成27年度 地域材利用の木材関係者等への支援対策事業
とちぎ材利用拡大推進協議会
実施概要
① アカデミックギャラリー事業部会
【移動式展示スペース「多目的ウッドキャビン」の開発・展示について】
〇H27年度にウッド・キャビンを初めて製作したが、設計から製作までに期間を要したこと、また、トラック荷台への積込み・積降しに積込用クレーンが別途必要なほど重量があったため、移動作業に人員・コストを要した反省から、今回は、トラックの荷台に載ることはもちろんのこと、トラック掲載の小型移動式クレーンで積込み・積降しができるよう軽量化を図り、手軽により多くの会場への移動を可能なものとした
〇前年度は「店舗タイプ」と「住居タイプ」の2種類を製作したが、今年度のコンセプトは、使用する人の目的に応じて利用できる「多目的スペース」の木質空間とし、店舗や各種イベントスペース、休憩施設等として多目的に利用できるものとした
〇とちぎ材の良さ、新たな用途への木材の活用を、日頃、木材にあまり触れることのない人々にも身近に感じてもらうため、県内で実施される各種イベントに出展・展示を行った。また、とちぎ材をふんだんに使用し、建築材料は県内の企業ブランド製品(桧粋、やみぞパワー、ドライαetc.)を使用することで、本県の豊富な企業ブランドのPRに繋げた
〇製作方法は、躯体から屋根・天井、壁、床・テラスまでとちぎ材を使用したユニット方式とし、使用目的に応じて家具や備品を後付できるように工夫した
外観
|
展示室内観
|
〇ウッドキャビンは、県内で実施されたイベントに出展展示。とちぎ材を手足で直接触れてもらいながら、移動式キャビンという新たな木材利用のあり方をエンドユーザーにPRした。出展したイベントは、8月の山の日制定記念フェスティバル、9月のもくもくまつり2016、10月のとちぎ住宅フェア2016、とちぎ協働まつり2016、栃木市秋まつりで、いずれのイベントにおいても多数の来場者にキャビンに上がってもらい、とちぎ材と触れ合う機会を設けることが出来た。具体的には、子供向けの木育活動の場の提供やバイオリンとピアノなどのミニコンサートの開催のスペースとして活用を図った
木育活動
|
ミニコンサート
|
② 認知度向上部会
【とちぎ材の認知度向上のためのイベントへの出展等】
〇住宅用建物の展示(実大躯体)、県内の企業ブランド製品の展示など、とちぎ材を主役にした展示物を、県内地域特産品とコラボレーションしながら制作。各種展示会に出展し、オールとちぎの家づくりの魅力をPRする取組とした展示会出展は、とちぎ材のスギ・ヒノキを使用し、一般流通材を活用したブースとして位置づけた
〇ブース内においては、展示物を用い、県内企業(製材、流通業者等)による企業毎の特徴ある製品等を紹介するプレゼンを実施し、新たな出会いの場、すなわちビジネスマッチングの場としても活用した
また、多種多様な地域産品を併用し、とちぎの魅力を再発見できるような遊び心ある展示により、エンドユーザーの“木づかい心”を刺激するため、8月に開催された「山の日制定記念フェスティバル」に出展したほか、10月に開催された「とちぎ住宅フェア2016」に出展し、県内のエンドユーザーに魅力を発信した。
また、多種多様な地域産品を併用し、とちぎの魅力を再発見できるような遊び心ある展示により、エンドユーザーの“木づかい心”を刺激するため、8月に開催された「山の日制定記念フェスティバル」に出展したほか、10月に開催された「とちぎ住宅フェア2016」に出展し、県内のエンドユーザーに魅力を発信した。
山の日制定記念フェスティバル
|
とちぎ住宅フェア2016
|
〇さらに、エンドユーザ-へ木に気軽に親しんでもらうための機会を設けるため、6月の県民の日記念イベント、9月のもくもくまつり2016に模擬上棟式用の躯体を出展し、近年ほとんど見られなくなった新築住宅の上棟式を模擬的に実施し、建前の意義や説明をしながらとちぎ材の利用拡大につながるPRを行った
県民の日記念イベント
|
もくもくまつり2016
|
〇もくもくまつり2016に於いては高性能林業機械の実物展示及びデモンストレーション実施や、伐採や造材体験コーナーを設け、森林・林業・木材産業をトータルで体感できる展示会とした。
高性能林業機械の実演
|
高性能林業機械の実演
|
【とちぎ材の認知度向上・魅力アップのための木育等の取組】
〇エンドユーザーは、木材に対するばく然とした親しみや好感は持っているが、「国産材」や「外材」といった木材の産地に対する認識はあまり高くない。このような状況を打開し、とちぎ材の利用拡大を図るためには、森林資源の有効活用による環境保全への貢献をはじめ、木材の色々な有用性を理解促進しながら、木材の主用途である建築用材としても十分な強度等性能を持っていること等をエンドユーザーへわかりやすく発信する活動が必要である
〇工務店や木材販売業と連携して組織された「えがおをつなぐとちぎ木育の会」を基点とし、異業種連携による新たな発想やエンドユーザー目線によるとちぎ材の認知度の向上、とちぎ材の良さをPRする活動を行った。次世代の木づかい人となる子供たちはもちろんのこと、大人もさらには高齢者や障がい者など多種多様な人に対して、とちぎの木を使った親しみある教育活動、ふれあい活動を展開した
〇展示会出展の際は木育活動に使用できるフリースペースを設け、子供が木に触れ・楽しみ・遊ぶことで、木の良さを“五感で感じ”てもらえる環境を提供した。また、木材についてのアンケートを実施し、回答者にはノベルティーグッズとしてとちぎ県産材のバッチやストラップをプレゼントし、県産材の普及啓発を図った
県民の日記念イベント
|
山の日制定記念フェスティバル
|
〇こども向けの木育活動をとおして、エンドユーザーの要である主婦層に対して木の良さや木づかい推進の意義についての理解を醸成した。それにより、主婦層の口コミによる短期的な需要拡大、さらには木育活動を体験した子供達による長期的な需要拡大(潜在需要の確保)が見込まれる。また、木造住宅・木育等に関するテーマで座談会を行い、県内の育児中のママ向け情報誌へ掲載した。ママ達によるSNSを活用した広い情報発信も期待ができる
【とちぎ材の認知度向上・魅力アップのためのラジオ放送制作】
〇当初の計画にはなかったラジオ放送制作は、とちぎの木を活かす女子の会~木輪~のメンバーがエンドユーザーに林業・木材産業の成長産業を分かりやすく簡単に説明し、さらに認知度を高めるために地元ラジオ放送局のメディアを活用して発信した。
雑誌「ママトコドモト」座談会 |
栃木放送ラジオ番組収録 |
雑誌「ママトコドモト」 |
③ カタログ作成部会
【冊子「とちぎの木で家建てる」の制作】
〇無垢材を特徴とするとちぎの林業・木材産業を支える地域工務店、すなわち国産材仕様割合の高い大工工務店は、とちぎ材の利用拡大に重要な役割を担っている
〇しかしながら、家族がくつろぐ場所である住宅本来の役割を損なうことなく、耐震性や耐火性、機能性を確保し、建築コストも配慮した、固定概念にとらわれない斬新で現代性を加味したデザイン力が弱く、特に若い世代への提案力不足が指摘されている。また、木造建築の加速化を進めるためには、設計者が木造建築に関する優良な情報を共有するとともに、認識度を高めることが重要である。
〇一方、県森連・県木連・建築士会等で構成される栃木県木材需要拡大協議会が中心となって実施してきた「とちぎ県産材木造住宅コンクール」は、平成27年度で第28回を迎え、優良な入賞作品が蓄積されている
〇そこで、これらの入賞作品から、最優秀賞を中心に15件を選抜して、住やすい木の家の間取り、暮らしの中の木づかいの工夫を盛り込んだ冊子「とちぎの木で家を建てる」を作成した
〇これら優良な入賞作品の情報を集約し、受賞工務店には今後の営業ツールとして、エンドユーザーには今後住みたい家づくりの参考図書として使ってもらうための作品集を制作した
〇また、工務店が切磋琢磨するための場として、とちぎ県産材木造住宅コンクールをさらに充実させ、受賞歴が工務店の営業力強化の一助となるよう取り組むほか、エンドユーザーにも工務店にも喜ばれる本冊子のような営業ツール作成活動は今後も継続実施が必要になると考えられる
【栃木県木協連ホームページのリニューアル】
〇最近の消費者の購買に至るまでの傾向として、住宅展示場・住宅雑誌等で情報を収集し、インターネットやスマートフォンを利用してハウスメーカー・工務店等のホームページでじっくり検討するということが一般的になっていることから、今般、全面的に栃木県木協連のホームページのリニューアルを行った。また、会員やエンドユーザーに情報をいち早く発信できるように事務局で簡単にホームページの更新ができるようになった。
■一般消費者を対象にしたイベントから、「木造住宅見学バスツアー」等の、より顧客獲得に近づいたイベントへの誘導を図るため、今までの各種イベントの実績について写真を中心に紹介
■「顔の見える家づくり」の情報も掲載し木造住宅を得意とする工務店等への誘導を図る
■H27・H28作成の「とちぎの木で家を建てる」の各種情報も掲載し製材品価格についても定期的に更新するとともに、とちぎ県産材木造住宅コンクール等の新たな情報も掲載
■栃木県内の公共建築物、民間建築物、住宅等の代表的な「とちぎ材のシンボル」となるような木造建築物をカラー写真で掲載し、建物概要や設計コンセプト、木材使用量、県産材利用量、CO2固定量、設計施工会社、木材提供会社等を掲載
事業実施により得られた効果
(個別事業計画による効果)〇ウッドキャビンについては、デザイン会社に依頼した先進的デザインと全面が無垢の木で覆われているというインパクトの大きさから、各方面から問い合わせが来ている状況。移動式展示スペースとして試作したところだが、今後関係者(デザイン者・施工者など)との調整次第で、商品化なども期待できる状況にある
〇本県の主力製品である“無垢材”の最大の使用者である地域工務店の強化・認知度向上は、とちぎ材の利用拡大・販路拡大を進める上で非常に重要である。今回事例集冊子づくりに取り組むにあたり、事例掲載工務店からすでに増刷要望時の対応などが問い合わせされるなど、工務店の営業ツールの一つとして有効活用されているだけでなく、これから家を建てようとするエンドユーザーに対して「とちぎ材の家づくり」を積極的にPRするツールとしても活用されている
〇従来の行政及び業界主体によるPR活動に加え、新たな発想による木育活動を年齢を超え行うことで、短期的及び長期的な木材需要の創出・確保が期待されている
(異業種連携により事業に取り組んだ総合的な効果)
〇川上から川下に及ぶ企業・関係団体が連携し、合同事業として展開することで、従来少なかった異業種間相互の交流関係の構築に繋がった。今後、安定的・長期的な商取引の実現が期待される
〇異業種間連携による取組として、アカデミックギャラリー整備や展示会出展、従来にない優良なとちぎの木の家事例集が作成されることにより、とちぎ材の材料としての優位性・使用方法など技術的な共通認識を進めることが出来た
〇業界全体として事例集等を持つことは、従来困難であった異業種連携によるPR体制構築に繋がるものであり、ひいては、とちぎ材を使用した木造建築物(住宅・非住宅)の建設が促進され、今後のとちぎ材の使用量拡大が期待される
〇栃木県環境森林部の協力をうけ事業推進にあたったことから、これまで以上に官民連携したとちぎ材・国産材需要拡大に対する意識づくり・体制づくりが進んだ。県側からは、従前はどちらかというと川上に目が行きがちだった行政としても、川上から川下まで異業種連携した上で木材利用を推進することの重要性が、組織内部に浸透したとの声が聞かれている
今後の課題と次年度以降の計画
〇とちぎ材利用拡大推進協議会により、複数の関係団体が連携して取り組んだ本事業では、様々な面で積極的な異業種連携が行われ、従来は考えつかなかったPRの実施や、冊子作成など、盛りだくさんの事業展開を進めることができた
〇今後、異業種連携が進んだ体制を維持しながら、とちぎ材・国産材利用拡大を前向きに、そして積極的な取組を継続していくためにも、関係団体や行政との連携を前提とした、PR活動に必要な予算の確保や、既成概念にとらわれない販路拡大・需要拡大活動が必要になると考えられる
〇次年度以降も、「もくもくまつり」などを通じエンドユーザー等へとちぎ材・国産材利用拡大を訴えていくが、本事業で取り組んだ内容が一度きりの打ち上げ花火にならぬよう、継続的かつ地道な普及啓発活動を続けて参りたい