小田原地区木材業協同組合

平成28年度 工務店等と林業・木材加工業の連携による住宅づくり等への支援事業

小田原地区木材業協同組合

実施概要

 小田原地区木材業協同組合では、小田原市内をはじめ神奈川県西地域の木材の流通が円滑でなかったという状況を踏まえ、平成23年より、地元の行政(小田原市)、森林組合、木工業者(箱根物産連合会)、大工職組合、工務店、大学及び学識経験者等の地域の川上から川下までの団体等と連携し、地域材の利用を普及・拡大し、森林・林業・木材産業の再生を目指す取組を進めてきた。
 そのような中、当協同組合では、地域材の利用拡大をめざし、大手住宅メーカーの取組を参考にしつつ、我々の特性を活かした作り手の顔が見える地域ならではの家づくりを普及・提案していくため、地元工務店20社や住宅資材メーカーとともに「チーム住くら夢」を結成し、地元の行政、森林組合、建築士事務所協会、大学等とも協力して、一昨年より住宅新築・リフォームフェア(展示・相談会)を開催している。
 展示・相談会については、これまでの開催を通じて増加してきた来場者に対応するとともに取組を深化させていくため、展示内容の充実や相談ブース等の拡充を図り、会場規模を拡大した上で昨年12月に開催した。
 将来的には、こうした展示・相談会の常設化が、木材関係者と工務店との連携のプラットフォームになりうる。その前段として、パンフレットやホームページを活用した木の家づくりに向けたプロモーションやPR活動を展開していくためのツールを構築するための検討を行った。
 
(1)事業目的
○地域の川上から川下までの団体等と連携し、地域材の利用を普及・拡大し、森林・林業・木材産業の再生を目指す。
○地域の森林・林業関係者、工務店、住宅資材メーカーと連携した住宅関連展示・相談会を行うとともに、地域の特徴を活かした「木の家づくり」に向けたプロモーション・ツールを構築する。
 
(2)実施体制
○住宅関連展示・相談会:主催チーム住くら夢(地域の工務店20社、住宅設備メーカー等10等)
○協議会(取組の方針、具体の内容検討):地元森林・林業関係者、学識経験者等
○事務局(実施項目の総括、総合調整):小田原地区木材業協同組合
○後援(展示会人的補助、PRの連携):小田原市役所ほか
 
(3)事業の実施
(i)協議会等の開催
 地域材住宅の相談・展示会に向けた検討、木材機能調査の内容についての検討、地域材住宅のプロモーションの展開とその方法の検討のための打合せ会議を実施。あわせて、伊藤陽子yohdesign代表、杉本洋文東海大学教授より、これらの検討に係る技術的な助言を得るための打合せを実施。
小田原地区木材業協同組合での打合せ状況
 
(ii)地域材住宅の相談・展示会
 地元工務店20社、住宅資材メーカーとともに「チーム住くら夢」を結成し、小田原市、地域の森林組合、建築士事務所協会、大学等とも協力して、平成28年12月10日(土)、小田原アリーナ(メインアリーナ)を会場に「小田原の住まいと暮らしフェア」(新築・リフォームフェア、展示・相談会)を開催した(今回で第6回目の開催)。

←チラシを作成し、展示・相談会の開催をPR。
 
 来場者数1,280人、木材を活用したリフォーム等の成約数は47であった。これまでの2日間開催から1日開催としたため、昨年の来場者1,686人に比べて若干数減ったものの、1日当たりでは、過去最多の来場者数と成約数となったことから、成果に進捗があった。
 地域の工務店と連携したイベントの開催とすることで、現実の住宅ニーズに、より即した形での情報提供等が可能となり、木材需要の効果的な掘り起しが可能となった。また、取組をより、エンドユーザーに物語を伝えるため、子育てに関するNPO(NPO法人チルドリン等)などとも連携して木育を積極的にPRし、地域住民等の来場意欲を高めることに成功した。
 
会場の設営状況(森林・林業を中心に、関わりのある地域の産業関係者も参画)
 
 展示・相談会においては、地域の森林・林業・木材関係のみならず、工務店、設備関係、住宅ローン関係等、家づくりに関わる関係者による取組を説明し商談できるブースを設置。直接消費者、ユーザーとのふれあいができるように工夫した。
 
工務店等も含めたPR(左、中央)と商談ブースの設置(右)
 
 木造住宅の軸組モデルや床材などを展示し、参加するユーザーの方々に直に触れてもらう場を設営。
 
 柱材の展示をはじめ大工の仕事の紹介、体験会を実施(左、中)。木造住宅に住むことの意味を木育を通じて、子供たちに伝える取組を実施(右)。
 
(iii)地域材住宅のプロモーションパンフレット及び事例集の作成
 地域材住宅のプロモーションを円滑に行うツールとして、ホームページとパンフレットを作成し、地域材住宅に係る情報、地域ならではの木材の由来や加工状況、木材の使われ方を紹介。また、木の家づくりに関わりの深い関係者、エンドユーザーへのインタビュー等のコンテンツを紹介し、家づくりのコンセプトを伝えるものとした。
 上:ホームページ、下:パンフレット等によるPR。木の家づくりのプロモーションに向けた、木材関係者、工務店、ユーザーとのプラットフォームを構築(施主、施工者、生産者などの観点で「木の暮らし」などを紹介)。
 
(iv)木材機能調査
 地域材の状況を定量的に示していく為に、木材の性能をサンプル評価した。木材の加工状況に応じ、生木、バイオ乾燥、天然乾燥による強度や水分状況を把握した。その結果、地域における製材工場による加工はJAS相当の性質であることが証明され、総体的に、安心してユーザーに提供できる地域材製品であることが証明された。
 

事業実施により得られた効果

 本事業により得られた成果は以下のとおり(再掲含む)。
○平成28年12月10日(土)、小田原市内において「小田原の住まいと暮らしフェア」(新築・リフォームフェア、展示・相談会)を開催(第6 回目、来場者数1,280人、木材を活用したリフォーム等成約数は47。1日当たりでは、過去最多の来場者数と成約数)。
➢ 地域の工務店と連携することで、現実の住宅ニーズにより即した形での情報提供等が可能となり、新築・リフォームに係る受注機会が増加し木材需要の掘り起しに貢献。
➢ 川上から川下までの関係者同士の連携も深まり、地域でのさらなる森林・林業・木材産業の振興に向けた取組の再確認ができた。
○従来より利用している地域材の木材性能の評価として、生木、バイオ乾燥、天然乾燥による強度や水分状況を分析し、地域製材工場による加工はJAS相当の性質であることが把握され、安心してユーザーに提供できる地域材製品等であることが証明。
○地域ならではの特徴を活かした、工務店と連携した「木の家づくり」について、施主のインタビュー、施工者や物件等を紹介するパンフレットやHPを作成し、家づくりのプロモーションツールを作成。
 

今後の課題と次年度以降の計画

 次年度以降は、引き続き、地域材家づくりに係る相談会・展示会イベントを開催していくとともに、今回作成したプロモーションツールを活用して、より取組みの進展を目指していきたい。主に、以下3点を重点的に取組を展開していくこととしている。
○将来的には、今回実施した相談・展示会の「常設化」を目標とし、パンフレットやホームページ等を活用したユーザーとのプラットフォームを構築する。
○今回作成したプロモーションツールにより、川上から川下に至る関係者の連携とエンドユーザーへの提案、受注頻度増加に向けた取組を展開する。
○地域の特徴を付加価値とした地域全体のライフスタイルを、木をツールとして創出し、木材関係者をはじめ地域全体の利益への貢献を目指す。