平成28年度 地域材利用の木材関係者等への支援対策事業
NPO法人木づかい子育てネットワーク
実施概要
事業の目的
現状の認識
我が国の成熟した森林資源を活かしつつ、持続性のある森林・林業・木材産業の振興を図るためには、多くの市民が森林づくりや木づかい等に一層関心を高め、木材消費という行動が豊かさを実感できる社会、持続性のある環境の形成に資することに気付き、理解し、現代のニーズに応じた木材文化を育てていくことが重要と考えられます。また最近では、体験、経験が少ない若い子育て世代を中心に、木材への関心の高まりを示す兆候が現れています。こうした林業、木材業界への追い風を生かし、木材利用の持続性を確保するために、森林所有者から素材生産業者はもとより、製材所や材木店、建築設計者、工務店に至るまで、関係者がマーケットの状況、消費者の動向に応じた様々な取り組みを進めるようになってきています。最近注目されている木育のように、若い世代、子育て世代層をターゲットとした製品開発は、これまでにない活況を呈しており、木材の持つ感性的な特徴(アメニティ性)への関心の高い消費者への強い刺激となっています。
しかしながら、地域材製品が様々に開発されていく中、材料のトレーサビリティ、材料の品質保証、製品性能表示の妥当性、利用時の安全性能等に関する担保など、問題を感じさせる製品、販売状況も散見されるのが現状です。つい最近も、大手幼児教育教材メーカーが不正表示によって告発されております。
子どもや子育て世代の使う製品、遊具など、これまでにはみられなかった利用形態、製品が出現する中、安全で安心な製品の提供は、将来的な木材利用の在り方につながるものであり、木材関係者の理解だけでなく、地域材利用のステークホルダー共通の利益向上を目指す具体的な取り組みが必要であると考えられます。
事業のねらい
以上のような現状認識のもと、今回の事業においては、これまで我々が実施してきた木造住宅、木材利用の普及拡大事業、木育や子育て支援層に対する啓発活動の実績と蓄積された知見、スキル、そしてネットワークを活かし、地域材を利用した製品の基本ガイドライン(試案)と、これに沿った製品開発について検討し、消費者に向けたPR活動を進めましたので、報告させていただきます。事業実施概要
事業推進委員会の構成
本事業の実施にあたり、事業推進委員会を構成した。事業の事務、進行管理はNPO法人木づかい子育てネットワークとし、NPO法人西川森の市場(埼玉県飯能市:代表井上淳治)、一般社団法人安曇川流域・森と家づくりの会(滋賀県:代表宮村太)の協力のもと、委員会の実施、内容の検討を進めた。・アドバイザー
安田 哲也 (兵庫県・有限会社ウッズ一級建築士事務所)
・推進委員
井上 淳治 (埼玉県・NPO法人西川森の市場代表)
三輪 良恵 (東京都・MIWA Atelier)
宮村 太 (滋賀県・一般社団法人安曇川流域・森と家づくりの会)
西川 唱子 (滋賀県・一般社団法人安曇川流域・森と家づくりの会)
坂本 幸 (埼玉県・株式会社サカモト)
酒井慶太朗 (長野県・酒井産業株式会社)
古川 泰司 (東京都・アトリエフルカワ一級建築士事務所)
青木健太郎 (東京都・株式会社京和木材)
橋本 幹也 (千葉県・千葉県森林整備協会)
・事務局
三輪 良恵 (東京都・MIWA Atelier)
宮村 太 (滋賀県・一般社団法人安曇川流域・森と家づくりの会)
西川 唱子 (滋賀県・一般社団法人安曇川流域・森と家づくりの会)
坂本 幸 (埼玉県・株式会社サカモト)
酒井慶太朗 (長野県・酒井産業株式会社)
古川 泰司 (東京都・アトリエフルカワ一級建築士事務所)
青木健太郎 (東京都・株式会社京和木材)
橋本 幹也 (千葉県・千葉県森林整備協会)
浅田 茂裕 (木づかい子育てネットワーク 埼玉大学・教授)
安井 敏晃 (木づかい子育てネットワーク・安井技術士事務所)
多田 知子 (木づかい子育てネットワーク)
遠藤 智史 (木づかい子育てネットワーク)
徳永 一貴 (有限会社スピナッチ)
安井 敏晃 (木づかい子育てネットワーク・安井技術士事務所)
多田 知子 (木づかい子育てネットワーク)
遠藤 智史 (木づかい子育てネットワーク)
徳永 一貴 (有限会社スピナッチ)
事業推進委員会の開催
・平成28年1月28日準備会(埼玉・さいたま)議題 事業内容提案と委員会構成の検討
・平成28年2月7日 第1回委員会の開催(大阪市・新大阪)
議題 事業内容および方向性の確認
・平成28年3月6日 第2回委員会の開催(東京・銀座)
議題 事業内容の確認
ガイドライン案の検討
製品試作についての検討
・平成29年5月26日第3回検討委員会、研修会の開催(東京・銀座)
製品試作についての検討
議題 ガイドライン案の修正、検討
製品試作案の紹介、意見交換
専門家からの指導
講師 赤堀楠雄氏(林業ライター)
・平成29年8月3日 第4回検討委員会、研修会の開催(東京・渋谷)
専門家からの指導
講師 赤堀楠雄氏(林業ライター)
議題 ガイドライン案の修正、意見等
専門家からの指導
講師 佐藤 岳利氏(株式会社ワイスワイス)
講師 佐藤 岳利氏(株式会社ワイスワイス)
その他
①メール会議等ガイドライン最終案の確認、成果発表会の検討
製品試作の開始、製品カタログ作成
②2月~6月
製品試作の開始、製品カタログ作成
消費者向けアンケート調査の実施
③消費者向けPR活動(製品展示会等)
9月17日(土)~18日(日) きのかんしゃさい2017(飯能市)
9月25日(月)~29日(金) 農林水産省消費者の部屋(東京都)
9月25日(月)~29日(金) 農林水産省消費者の部屋(東京都)
事業実施内容
ガイドライン(案)の作成
本事業では、地域材を利用した製品の基本ガイドラインについて、産地、品質、加工、利用、販売などの視点から多角的に検討し、「地域材を利用した合ほ~む・合ゆ~ぐ製品ガイドライン(仮称)」の策定を目指し、種々の検討を行った。その結果、ガイドラインについて、①製品、プロジェクトの定義、②製品の理念を示す憲章、③生産者に向けたガイドラインに分け、検討を行った。また、製品およびプロジェクト名について、当初の「合ほ~む・合ゆ~ぐ製品」から、「PRIDEWOOD製品」へと名称を変更した。
本ガイドラインの効果的な活用と賛同者の広がりによって、安心で、安全な木材製品の提供が可能となると考えられる。一方、以下のような課題が推進委員会で示され、より一層の検討が必要であることが示された。
・製品の認定について、どのような体制で進めていくか
・製品の認定の第三者的評価、科学的評価を行う方法について
・事業継続と広がりに向けた方策について
製品の開発
策定したガイドライン(案)に基づき、PRIDEWOOD製品の開発を試みた。当該製品はNPO法人西川森の市場(埼玉県 飯能市)ならびに一般社団法人安曇川流域・森と家づくりの会(滋賀県 安曇川流域)から提供された認証材を使用するとともに、ガイドラインに賛同した生産者(株式会社サカモト、有限会社創林)によって加工、生産された。展示PR活動
・展示会等出品①きのかんしゃさい2017(飯能市虎秀36-4)
日時:平成29年9月17日、18日
来場者数:300名
・試作などの展示を行うとともに、来場者へのPR活動を行った。
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②農林水産省消費者の部屋
<特別展示>木づかい推進月間~身近な国産材製品と木育のご紹介~
場所:農林水産省 消費者の部屋 展示会場(東京都千代田区霞が関1-2-1)
日時:平成29年9月25日(月)~29日(金)
来場者数:900名
・森のまち、森のてなどの製品展示を行うとともに、来場者へのPR活動を行った。
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アンケート調査の実施
木材製品の安全性に関して、次のアンケート調査を実施した。内容は国産材製品の性能表示とし、埼玉、東京、長野、山梨の計4か所にて実施し、121名から回答を得た。事業実施により得られた効果・今後の課題と次年度以降の計画
木材製品の安全性に関して、実施したアンケート調査の結果、木材製品の性能表示が必要と考える消費者は9割に上ることがわかった。また、表示が必要と考える製品としては、建築材では床材を挙げる消費者が多く、生活用品では玩具・遊具が多かった。表示内容としては、樹種が最も多く回答され、産地、塗装方法、接着剤などが続いている。製品の特長に関する表示内容としては、健康への影響、効果に関する関心が高い。これらの結果は、自然由来の木材製品であっても確かな信頼を得るまでには至っていないことを示すものと考えられる。また、建築材に対しても生活用品と同様に、品質や由来に関心を持つ消費者が多いことを示しており、木材業界として対策が必要と考えられる。