平成28年度 地域材利用の木材関係者等への支援対策事業
青森県木材利用推進協議会
実施概要
展示会等への出展
7月8日から9日にかけて、仙台市の夢メッセみやぎを会場に開催された「住まいのナイス耐震博覧会」に、青森県木材利用推進協議会が本事業を活用して青森ヒバで作成した躯体を持ち込み、県産材のPR活動に務めた。これまでも県産材の利活用については、法制度に基づき県内40市町村全てで木材利用の方針が策定されていたが、学校校舎や市町村役場等の公共施設、更に老人ホームなど民間施設を含めた木造・内外装の木質化への志向が高まっているにも関わらず、青森県内では依然として利活用が低位の状況にある。このような状況を打破するために、特に日本三大美林の一つに数えられている「天然青森ヒバ」を主体に本展示会に出展したもので、出展内容として、躯体のど真ん中にヒバを円柱加工した丸太を据え付けて存在感をアピールし、壁材に加えその周辺にまな板、箸、湯桶などヒバの小品を並べたところ、ヒバの香りに誘われるように多くの方々が来場し、買い求めていた。また、展示施設の中でのカンナ掛け体験コーナーの企画には、親子連れの申し込みが多く、1時間も待たされながらも順番が来ると、大工さんの手ほどきを受けながら、透き通るような超薄いカンナ屑がカンナ口から出てくる様子に大満足であった。プレカット全盛のなかで、昔ながらの丁寧な木材の扱いに感心しながら大いに興味を示した子供もいた。更に、青森ヒバの粉末を特殊な糊に混ぜて、漆喰のように壁に塗る体験コーナーにも、多くの来場者が額に汗しながら真剣に取り組んでいた。今後も地道にPR活動しながら県産材の普及拡大に努めていきたいと考えている。なお、この博覧会において、東北各県および茨城県から木材産業PRブースが出展されたなかで、青森県は木材ディスプレイ賞の銅賞を獲得した。
普及啓発イベントの開催(夏休み「親子木工教室」)
青森県には一軒の家を建てるのに必要な木がすべて育っている。日本三大美林の一つ「青森ヒバ」、人工林面積第4位の「スギ」、八甲田・白神山地に代表される「ブナ」、そして「アカマツ・クロマツ」などがあり、特に県木に指定されている青森ヒバは、湿気やシロアリに強く、耐久性に優れ、全国の神社・仏閣に多く使われている木材である。更に森林の美しい景観やきれいな空気は、人の心を和ませ、身体を健やかにしてくれる。青森県木材利用推進協議会では、この度、こうした環境にやさしく加工しやすい素材である「木」を使い、創造するよろこびと「木」のぬくもりを感じてもらうために、夏休みに入って間もない7月30日「親子木工教室」開催した。今年度は、最初の試みであったことから、協議会がある地元の小学校を主に案内し、3~6年生の親子25組を募集したところ、保護者を含め34名の参加を得た。
用意した材料は、青森ヒバとスギの板材・角材で、更に、のこぎり、金づち、釘などを補充して自由に使うことが出来るようにした。本職の大工さんのアドバイスを得られる体制のもとで自由課題とし、早速作品作りに取り掛かると、1時間もすると完成品が出来上がる子供もいれば、午後までかかり、やっと出来上がる子供もいるなどいづれも木に触れあいながら真剣に取り組んでいた。
大人の発想とは違う子供ならではのアイデアが盛り込まれた作品には、椅子、本棚、郵便受け、花瓶入れ等々があり、夏休みの宿題にも活用できると喜んでいた。これからもさらに周知を図り、本教室の継続等大人は勿論、子供達にも「青森の木」について興 味が持てるような企画をして参りたいと考えている。
県産材リノベーション製品の情報発信
東京ビッグサイトにおける「インテリアライフスタイル東京」展(6月)において、リノベーション需要をターゲットとした、青森県産材家具シリーズ「SOMA青い森」の第1号機(SOMAキュービック)を展示し、今後のシリーズ開発コンセプトも合わせてのPRと、意見取集を行った。配布資料としては、都会の生活空間にマッチするようにデザインされた高級感を伝えるために、パンフレットの制作には十分な時間をかけて行った。
また、展示においては、SOMAシリーズの空間にマッチするような木材ボードや、木製展示台、青森県工芸品などを飾り演出効果を狙った展示を行った。
SOMAキュービック本体と将来図CG
小上がり構造の2畳大個室 | 壁面は飾り棚に | 床はアカマツ、壁は青森スギ |
床下は収納ボックス | シリーズが完成すると、フルリノベーションに対応 |
インテリアライフスタイル東京 展示風景 | ||
事業実施により得られた効果
SOMAキュービックは、青森県の無垢材で構成される「2畳大の半個室家具」であり、将来的にシーリズが完成した暁には、マンション一室の空間を家具の配置だけで実現する、間仕切り機能を併せ持つ家具の象徴的な製品であり、木質空間のよさを五感で知ってもらう上で、大変よいPRにつながったと思われる。木の香り、肌触り、2畳大の狭さの心地よさなど、言葉や写真だけではなかなか伝わらない価値を来場者に体感してもらえ、大変高い評価を得られたと思われる。展示会という機会を使っての宣伝と、商品評価のフィードバックが得られたという意味において、大変大きな効果があったと感じている。
また、それらの声を聞くことで、制作サイドのスタッフもこのシリーズの市場可能性を確信できたことも大きな効果であった。
来場者からは、約100枚の名刺を預かることができ、会期終了後に継続的にコンタクトを取ることができ、ビジネスパートナーも現れはじめている。
展示会開催概要
名称:Interior Lifestyle Tokyo/インテリア ライフスタイル会期:2017年 6月 14日(水)– 6月16日(金)
開催時間:10:00 – 18:00 (最終日は 16:30まで)
会場:東京ビッグサイト(東京国際展示場) 西 1・2・3・4ホール + アトリウム
主催:メサゴ・メッセフランクフルト(株)
出展者数:787社/22カ国・地域(国内:645社 海外:142社)
来場者数:27,573/38カ国・地域(国内:26,587名 海外986名)
出展のトピック
今回の展示会は787社が出展を行っていたが、我々のブース「SOMA青い森」は、商品のユニーク性を評価され、展示会中央部の特別展示「EANTED!」に51社の1社として選ばれ、大変有利な条件で出展を行うことができた。ブースへの来訪者も三日間絶えることがなかった。今後の課題と次年度以降の計画
今回の展示によって、ユーザーの反応や値ごろ感などをリサーチすることができた。今後の課題の一つは、このSOMAキュービックを単体として販売する上で、どのような商流を選んで注力するかの営業方針の定め次第で、価格設定もかわってくるので、その商流の整備と、ユーザーの値ごろ感に合わせた、生産コストの圧縮などの工夫調整が課題になってくる。ただし、このプロジェクトは、そもそもが林業再生を目的とするものであるので、あまり原材料費を圧縮することは控えめとし、むしろ商流の調整による利潤の確保に注力したほうが良いかと考えている。
また、「SOMA青い森」シリーズは単体の家具としての機能はあるものの、シリーズが揃って初めて、空間のリノベーション用家具としての本領が発揮してくるはずであるので、今後開発予定の「ベッドタイプ」「収納ケースタイプ」「デスクタイプ」「ダイニングセットタイプ」「ベンチタイプ」などの制作を急ぎ、よりトータルに表現することで大きなユーザーメリットを訴求することができるとも考えている。開発のピッチをあげることと、それらを総合的に体感できる展示の機会や、常設の展示場確保などが課題となってくる。
さらに先の計画にはなるが、この「SOMA青い森」シリーズをきっっかえとして、リノベーション工事全体の受注を増やし、フローリング材や壁材の需要も同時に喚起させていくことで、大量の木材需要を生み出すことができると考えている。