平成28年度 地域材利用の木材関係者等への支援対策事業
一般社団法人 宮城県建築士事務所協会
実施概要
実施団体の説明
本協会は建築士法に基づく建築士事務所の開設者を会員とする、会員358の建築士事務所で組織する一般社団法人である。本補助事業の実施にあたっては本協会が事務局を担当する「川上の原木供給の森林組合・木材加工生産の製材事業者並びに川下の建築設計・工務店等の木造住宅生産事業者による78グループのべ1241社で構成する「宮城県地域型復興住宅推進協議会」が推進組織である。
事業の目的
本補助事業において、地域における林業の成長産業化と地方創生に寄与する「復興住宅建設における地域木材の利用促進」「住宅復興のその先を見据えた地域木材の需要拡大」「雇用の創出」を目的としている。
事業内容・結果
1.地域住宅生産者の地域材利用にかかる技術力向上に向けた支援
- ① 地域材利用に係る技術力向上に資するシリーズで行う研修会
- ■実施期間:2月21日、2月22日、3月24日、4月28日、5月19日、6月9日
場所:宮城県建築設計会館 参加者数:各30名程度
■実施 住宅中大規模の木造建築の基礎から構造設計や防耐火、省エネまでシリーズを通じて、多様な中大規模建築について研修会を開催した。
第1回 林業・木材産業の現状、木質材料の知識 第2回 木造建築物や木材市場等の現場視察
第3回 木質構造の種類と構造設計、意匠設計と構造計画
第4回 木造建築物の展望と設計支援、集合住宅の設計と事例研究
第5回 省エネルギー建築の実践、地域資源活用と木造住宅
第6回 材料と構造の防耐火性能、防火設計のポイント - ②ゼロエネルギー等住宅講習会
- ■実施期間:4月18日 場所:宮城県建築設計会館 参加者数:49名
■実施 木造住宅建築に対する国の支援制度への理解は不可欠であることから、地域型住宅生産のグループ代表者を対象に、制度理解の習熟を図ることと地域材利用拡大に寄与するテーマで(一社)木と住まい研究協会の小池透氏を講師として招聘し、木材生産の動向、地域型住宅生産に対する国の支援制度等についてセミナーを行った。
■実施 地域の工務店・設計事務所を対象に時代に対応した技術支援を行い、今後の住宅建築と木材利用拡大を目指し、省エネの外皮性能に関する勉強会を開催した。 - ③住宅生産者及び企業関係者の森林・木材加工見学
- ■実施期間:6月13日(火)
場所:西北プライウッド、日本製紙石巻工場、山大ウッドミル工場 参加者数:26名 ■実施 近年推進されている中大規模木造建築や低層非住宅等の木質化に対応していくため、木材の加工施設の見学や木材の将来性をテーマにした座学を行い、今後の地域材利用促進および建築設計・施工技術の向上に寄与することを目的として、CLT・LVL工場の見学、木材を原料とする新素材セルロースナノファイバーの建築業界への展開、地域材を高品質で供給するためのシステムについて研修を行った。 - ④技術者の中大規模建築見学研修会
- ■実施期間:5月2日 場所:東松島市立宮野森小学校、野蒜市民センター 参加者数:46名
■実施 公共建築物等木材利用促進法が施行され、公共建築物等の木造化の動きが顕著になっている中、昨年竣工された木を現しにした木質感あふれる公共建築物を見学し、今後の建築設計に寄与されることを目的として、研修会を行った。特に東松島市立宮野森小学校は校舎・屋内運動場ともに木造の小学校であることは宮城県初であること特に東松島市立宮野森小学校は校舎・屋内運動場共に木造の小学校であることが宮城県初であったことから、知名度が高く、大学教授や行政機関、隣県の建築士事務所等々からも申込があり、魅力のある内容となっていた。設計・構造説明の他、被災地域であることから特に災害時に対する配慮や学習しやすい空間等の説明があった。参加者から大規模木造建築物の見学会の企画の要望がきていることから、今後も開催していきたい。 - その他視察研修
- ■実施期間:7月14日 場所:京都 参加人数:6名
9月12日 場所:東京 参加人数:8名
■実施 木造軸組工法の住宅が今後における競争力を持つ為に、高性能を有し、コストの低減を図り付加価値の高い木造住宅構法開発は、住宅生産事業者が求めている。これまでもロケット構法、まかべ工法、蔵構法等の開発及び普及支援を図ってきた。今後さらにボリュームアップを図るために、モノコック構造の連続性を考える上で参考となる京都大学のJ.Pod工法の視察研修を行った。また、非住宅分野においても、さらなる木造・木質化を推進していくために、東京で木造建築物およびLVL工場の視察研修を行った。
2.木材利用拡大に向けた地域材活用の木造建築普及事業
- ⑤展示会の出展「木と住まいの大博覧会」
- ■実施期間:7月8日~9日 場所:夢メッセ宮城 来場者数:18,287名
■実施 木と住まいの博覧会への出展は、地域材、特に優良みやぎ材「杉」の普及拡大を目的に出展した。展示会には優良みやぎ材使用の躯体の実物大模型や木造住宅事例パネルを展示し、ジモト工務店で建築した健康的で意匠性のある木造住宅を消費者に発信するべく、事例集を作成・配布し、みやぎ県産木材のPRを行った。 また、昨年度好評であった親子工教室を併設し、カンナかけの実演、木遊具遊び、スマホ台作りなど木育について木材協同組合の協力を得て実施した。木工教室には1日220組が参加し、会場では事例集や県産材PR資料等4,000部を配布した。 - ⑥消費者向け森林・木材加工見学
- ■実施期間:6月3日 場所:石巻市門脇、南三陸町 参加者数:34名
■実施 石巻市や南三陸町周辺地域および仙台在住で環境に関心のある一般市民や事業主。その他、これから住宅を建設、リフォームされる住民の方々を対象に「地球環境に優しい建物」の要素・仕様(県産材利用促進、省エネ住宅の促進等)が積極的に取り入れられるようセミナーを開催した。 石巻市の木造施設では、県産材をふんだんに使用した経緯や防災意識した配置等について説明があった。南三陸町の木造施設では南三陸杉の歴史や木材の説明等があった。講師らは参加者との意見交換や質疑応答で住宅再建、防災意識などについて話し合い、ヒントやアドバイス等を伝えていた。参加者は県産材、省エネ住宅だけではなく林業そのものにも興味を得て、多くの質疑があった。県産材が再認識され、アンケートでは満足の声を得られていることから、見学会・セミナーの継続開催が県産材の普及拡大に繋がると考えられる。
3.事業推進のための計画及び実施にあたっての会議の開催
- ⑦被災三県事務局連絡会議の開催
- ■実施期間:7月21日 場所:パレスへいあん 参加者数:67名
■実施 住環境の変化や住まい手ニーズの変化に対応する「次世代型木造住宅」に取組む為に、地域の担い手は復興の先を見据えた支援が求められている。その支援は林業・木材業の成長産業化に資するもので、次世代型木造住宅等の推進と木材利用拡大を図ることを目的とする。低廉で木の香る快適な住宅を供給できるよう地域型復興住宅供給体制の強化することや近年の木質化の流れに対応し、地域材の有効活用を図るため、地域の担い手である地域工務店技術者および設計者の人材育成を行い、地域の木材業関連団体と連携して今後の住宅生産に関する取組みを共有していくこと等について決議した。
事業実施により得られた効果
今後の中高層や非住宅分野での木造木質化が推進していく流れに対応するべく、今年度は住宅建築における木材利用拡大とともに中大規模建築物の研修会やセミナー・講演会を開催した。県内では公共建築物・商業施設等の木造化が徐々に促進していることから、地域の建築士事務所および工務店等の技術力向上が求められている。そのような中、本事業で行ったシリーズ研修会や中大規模建築見学研修は多数の申込があり、今後の開催についても要望が多い。参加者は意欲的に取組んでおり、今後の地域材利用拡大や木造建築の促進が期待される。
今後の課題と次年度以降の計画
建築主・消費者と直接向き合う建築士事務所や工務店技術者の技術的資質の向上と木に対する知識の醸成と知見の共有は、今後の木材利用拡大に欠かすことのできないテーマである。
また地域木材を活用した地域の工務店による建築の推進は、住民参加の地域経済の活力を生み、林業の成長産業化、健康長寿社会の形成に寄与することである。
次年度も引き続き研修会・セミナーや森林バスツアー、「木育」、工務店支援を行う他、住宅における木材利用拡大と非住宅の木造化の取組みとして、公共施設(民間福祉施設や交通機関の地域拠点及び仙台空港LCCカウンターの増設)・商業施設等の木質化について民間団体にPRを実施したい。