とちぎ材利用拡大推進協議会

平成28年度 地域材利用の木材関係者等への支援対策事業

とちぎ材利用拡大推進協議会

実施概要

事業の実施体制
〇栃木県木材業協同組合連合会は、栃木県から条例に基づく「木材業者登録」制度における業務委託を受託し、木材業者の「地域的配置及び能力ならびに動態を明らかにする」「公正かつ安全な木材取引を促す」という条例の目的達成に寄与するなど、連携体制構築の中核を担う団体である。
〇登録業者は、川上(森林組合・素材生産事業体)、川中(製材工場、集成材工場等)、川下(木材流通業、プレカット工場等)に及ぶ465社が登録(平成28年12月時点)している。
〇当事業においては、上記の登録業者をベースに設計・建築業を含めた「とちぎ材利用拡大推進協議会」(下図)を創設し、川上から川下に及ぶ異業種間連携を密にするとともに、林業・木材産業・設計建築業関係の諸団体と協力し、さらには県行政・県研究機関とも連携しながら、官民一体となったとちぎ材利用に関するオールとちぎの体制によって、事業計画を効果的に実施していくこととした。
 
〇協議会は、栃木県木材業協同組合連合会(以下木協連)を中心にとちぎ木づかいプランナー協会(以下プランナー協会)、栃木県木材需要拡大協議会(以下木拡大)、とちぎの木で家をつくる会(以下家をつくる会)、えがおをつなぐとちぎ木育の会(以下木育の会)、とちぎの木を活かす女子の会 木輪(以下木輪)で構成した。また、各構成員の代表からなる事業部会を実動部隊として設置するとともに、事業の進行管理・予算管理を木協連事務局が担当し、事業を着実に実施した。
〇さらに、国産材・とちぎ材の利用促進・需要拡大に資する本取組について、官民連携の取組として相乗的に効果をあげるため、栃木県環境森林部の協力を得、事業実施体制を構築し事業の効果的な執行に努めた。
事業の実施内容
①とちぎ材の認知度向上のためのイベントへの出展
〇住宅用建物の展示(実大躯体)、県内の企業ブランド製品の展示など、とちぎ材を主役にした展示物を、県内地域特産品とコラボレーションしながら制作。各種展示会に出展し、オールとちぎの家づくりの魅力をPRする取組として、とちぎ材のスギ・ヒノキを使用し、一般流通材を活用したブースとして位置づけた。
〇ブース内においては、展示物を用い、県内企業(製材、流通業者等)による企業毎の特徴ある製品等を紹介するプレゼンを実施し、新たな出会いの場、すなわちビジネスマッチングの場としても活用した。
また、多種多様な地域産品を併用し、とちぎの魅力を再発見できるような遊び心ある展示により、エンドユーザーの“木づかい心”を刺激するため、2月に東京ビッグサイトで開催された「ナイス耐震博覧会」に出展したほか、8月に那須町で開催された「第2回山の日記念全国大会 歓迎フェスティバル」に出展し、県内外のエンドユーザーに魅力を発信した。
ナイス耐震博覧会 山の日記念全国大会

〇さらに、エンドユーザーへ木に気軽に親しんでもらうための機会を設けるため、3月に宇都宮市で開催された「もくりんフェス」で模擬上棟式用の躯体を出展し、近年ほとんど見られなくなった新築住宅の上棟式を模擬的に実施し、建前の意義や説明をしながらとちぎ材の利用拡大につながるPRを行った。
もくりんフェス もくりんフェス上棟式
 
②とちぎ材の認知度向上・魅力アップのための木育等の取組
〇エンドユーザーは、木材に対するばく然とした親しみや好感は持っているが、「国産材」や「外材」といった木材の産地に対する認識はあまり高くない。このような状況を打開し、とちぎ材の利用拡大を図るためには、森林資源の有効活用による環境保全への貢献をはじめ、木材の色々な有用性への理解を促進しながら、木材の主用途である建築用材としても十分な強度等性能を持っていること等をエンドユーザーへわかりやすく発信する活動が必要である。
〇工務店や木材販売業と連携して組織された「えがおをつなぐとちぎ木育の会」を基点とし、異業種連携による新たな発想やエンドユーザー目線によるとちぎ材の認知度の向上、とちぎ材の良さをPRする活動を行った。次世代の木づかい人となる子供たちはもちろんのこと、大人もさらには高齢者や障がい者など多種多様な人に対して、とちぎの木を使った親しみある教育活動、ふれあい活動を展開した。
〇このような状況を踏まえ「コミュニティカフェ」を開催し、木育活動に使用できる展示コーナーや木製玩具で遊べる場所を作ることにより子供が木に触れ・楽しみ・遊ぶことで、木の良さを“五感で感じ”てもらえる環境を提供し、とちぎ材の普及促進を図った。
木育ひろばの設置 木育ひろば
 
③冊子「もくりん森日記」(とちぎ材需要拡大PR冊子)の作成
〇昨年の10月から地元メディアの栃木放送(ラジオ放送局)で川上(森林組合・素材生産事業体)、川中(製材工場、集成材工場等)、川下(木材流通業、プレカット工場等)にまで及ぶ内容で「もくりん森日記」という番組を制作した。
〇このラジオ番組は木輪のメンバーが中心となり、エンドユーザーに専門用語などを使わず、誰にでも分かりやすい言葉で林業・木材産業の内容を説明した番組である。
〇このラジオ番組の内容を基に大人から子供まで分かりやすく林業・木材産業の内容を説明した冊子を作成した。また、木造住宅の購買意欲を高めるための木造住宅事例集や今後の木材利用を考慮し、リフォームを予定しているエンドユーザーの多様な要望に応えられるような冊子作りをした。
 
④とちぎ材の認知度向上を図るための建築士スキルアップ講習会の開催
〇無垢材を特徴とするとちぎの林業・木材産業を支える地域工務店、建築士(設計者)は国産材使用割合の高い建築・設計をしている。すなわち、とちぎ材の利用拡大に重要な役割を担っている。
〇栃木県では「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を受け、「とちぎ木材利用促進方針」を策定した。また、県内全市町においても木材利用方針が策定されるとともに、民間企業においても木造推進室等の部署が設置されるなど、官民ともに本法律への対応が進んでいる。
〇しかしながら、戦後の防耐火を要因とし、これまで主流であった鉄骨造や鉄筋コンクリート造から大きく方向転換した結果、木質材料を熟知した建築士不足が指摘されている。
〇今後、木造化が期待される中大規模施設(例:保育園など社会福祉施設、店舗、事務所等)の建築を促進するためには、高度な木質構造設計技術者の養成が不可欠であることから、大工工務店、建築士(設計士)行政機関担当者を対象としたスキルアップ講座を開催した。
 

事業実施により得られた効果

個別事業計画による効果
〇本県の主力製品である“無垢材”の最大の使用者である地域工務店の強化・認知度向上は、とちぎ材の利用拡大・販路拡大を進める上で非常に重要である。今回とちぎ県産材PR冊子づくりに取り組むにあたり、設計士や工務店からすでに増刷要望時の対応などが問い合わせされるなど、工務店の営業ツールの一つとして有効活用されているだけでなく、これから家を建てようとするエンドユーザーに対して「とちぎ材の家づくり」「環境への配慮」を積極的にPRするツールとしても活用されている。
〇従来の行政及び業界主体によるPR活動に加え、新たな発想による木育活動を年齢を超えて行うことで、短期的及び長期的な木材需要の創出・確保が期待されている。
 
異業種連携により事業に取り組んだ総合的な効果
〇川上から川下に及ぶ企業・関係団体が連携し、合同事業として展開することで、従来少なかった異業種間相互の交流関係の構築に繋がった。今後、安定的・長期的な商取引の実現が期待される。
〇異業種間連携による取組として、イベント出展などを通じて、とちぎ材の優位性・使用方法など技術的な共通認識を進めることが出来た。
〇とちぎ県産材PR冊子を制作することにより異業種連携によるPR体制構築に繋がるものであり、ひいては、とちぎ材を使用した木造建築物(住宅・非住宅)の建設が促進され、今後のとちぎ材の使用量拡大が期待される。
〇栃木県環境森林部の協力をうけ事業推進にあたったことから、これまで以上に官民連携したとちぎ材・国産材需要拡大に対する意識づくり・体制づくりが進んだ。県側からは、従前はどちらかというと川上に目が行きがちだった行政としても、川上から川下まで異業種連携した上で木材利用を推進することの重要性が、組織内部に浸透したとの声が聞かれている。
 

今後の課題と次年度以降の計画

〇とちぎ材利用拡大推進協議会により、複数の関係団体が連携して取り組んだ本事業では、様々な面で積極的な異業種連携が行われ、従来は考えつかなかったPRの実施や、冊子制作など、盛りだくさんの事業展開を進めることができた。
〇今後、異業種連携が進んだ体制を維持しながら、とちぎ材・国産材利用拡大を前向きに、そして積極的な取組を継続していくためにも、関係団体や行政との連携を前提とした、PR活動に必要な予算の確保や、既成概念にとらわれない販路拡大・需要拡大活動が必要になると考えられる。
〇次年度以降も、様々なイベントを通じエンドユーザー等へとちぎ材・国産材利用拡大を訴えていくが、本事業で取り組んだ内容が一度きりの打ち上げ花火にならぬよう、継続的かつ地道な普及啓発活動を続けて参りたい。