平成28年度 地域材利用の木材関係者等への支援対策事業
群馬県地域材活用推進協議会
実施概要
- 群馬県地域材活用推進協議会は、川上の原木供給者から川中の木材・製材業、川下の住宅建築業までの関係者で構成する団体で、これまでも木材利用ポイント事業や木造住宅等地域材利用拡大事業などに取り組んできた。
- 本事業では、協議会の事務局を担当している一般社団法人群馬県木材組合連合会が事業実施主体となって協議会員と連携して次の(1)から(5)の事業を実施し、地域材の利用拡大を推進するとともに、合法木材への理解を深めた。
(1)地域材活用推進協議会の開催
- 川上から川下の関係者により1回開催し、地域材利用の拡大のための企画・普及方法等について協議した。
- 〇開催日:10月23日 木材振興センター
- ア)地域材利用の木材関係者等への支援対策事業の実施状況について
イ)地域材(県産材)の利用拡大方策について
ウ)その他(クリーンウッド法の施行動向について)
(2) 地域材の普及啓発の実施
- 県民に県産材を広くPRするため、新聞等の広告掲載をはじめ、冊子の作成、普及啓発資材の整備、モデルハウスに住宅相談員を置くなど、木材利用の普及啓発を図った。
- ① 新聞等への掲載
・地元紙、朝日、読売新聞などに「ぐんまの木で家づくり支援事業」を中心に県産材利用、合法木材等の広告を掲載(延べ17回)したほか、駅中広告やイオンモールでのデジタルサイネージ広告を行うなど、積極的な広報活動を展開した。その結果、県民の県産材への理解・関心が高まり、ぐんまの木で家づくり支援事業の申請件数は、10月まで過去最高の申し込みペースで好調に推移している。 - ② パンフレット、冊子の作成
・平成27年に木造住宅等地域材利用拡大事業で作成した県木連パンフレット「ふるさとの山の木を使おう」は県民に大変好評を博しており、補助事業内容を一部見直して5,000部増刷し、各種イベント等で県民に配布し、木材利用拡大の普及啓発を図った。 - ③普及啓発資材の整備
・木材利用普及啓発のための養生幕を作成し、住宅建設現場やぐんまリビングフェア等の各種イベント等で掲示し、木造住宅の良さをアピールした。
また、イベント等で使用する巣箱やコマ、木の名札プレートなど、様々な体験資材を整備し、これらを活用して県民に県産材の効果的な普及啓発を図ることができた。 - ④ぐんま優良木材認証工場の柱材品質調査
・ぐんま優良木材認証工場32社のぐんま優良木材(柱材)の含水率、寸法、強度を調査し、品質管理の状況を把握した。今回から強度を新たに調査した結果、県産柱材の強度は平均してE80以上あることが分かり、十分な強度を持つことがデータとしてわかった。これら調査結果を各工場に通知し、各工場が品質管理を徹底することで、「ぐんま優良木材」の品質の向上につながった。 - ⑤「つながる家」の相談員等の設置
・群馬県木造住宅産業協会で建設した「ぐんま型」モデルハウスに相談員を常駐し、地域材を使用した木造住宅について情報発信した(相談日数:35日)。
住宅建設のプロが直接、相談にのることで、来場者の信頼も増し、県産材住宅の良さをPR出来た。
(3) 研修会・講演会の開催
- ①新技術講演会開催
・27年度に開催したCLT講演会に続き、県内で実際にCLT技術を使った建築物が建設されたのに伴い、その現場研修会を開催し、CLTへの更なる理解を深めた。木材供給業者、建築・設計士、大工・工務店、行政担当者等100名が参加し、関心の高さが示され、今後の県産材を使ったCLT建設の期待とともに、利用拡大に取り組む機運が醸成された。
講師:エムロード環境造形研究所 小見山健次、小見山陽介
建築物:春名神社奉納額収蔵庫125m2
参加者:100名 - ②木育教室の開催
・幼少期から森林や木材への理解・関心をもってもらうため、幼稚園児を対象に、木とふれあう教室を開催した。自分だけのカスタネットづくりや木片材料を使って動物や乗り物などを自由な発想で作って遊び、園児に木に触れながら木の良さを体感してもらうことができた。 - ③ふるさとの木体験ツアーの実施
・木造住宅産業協会と連携し、ぐんまの木「森林伐採見学ツアー」を開催した。
これから家を建てたいと考えている一般県民の方を対象に山での伐採現場や製材工場での加工、モデルハウスを見学し、これらを通じ、川上から川下まで、顔の見える家づくりを推進した。間伐の必要性や県産材利用の意義などについて理解を深めることが出来た。
(4)イベント等の開催
一般県民を対象に森と木の祭り等の各種イベントにおいて、木工工作や木のネームプレートづくり等を通じ、楽しくて木材に直に触れながら木の良さや加工のし易さ等について理解促進を図った。特に今年は2年に一度開催される県内最大の住宅イベントの「ぐんまリビングフェア」に参加し、5万人を超える来場者に県産材の良さ、県産木造住宅の素晴らしさをアピールすることができた。
- ①森と木の祭り等 4カ所 参加者7,000人
- ②親と子の木工広場 8か所 参加者1,600人
- ③ぐんまウッドクラフト展 (5日間開催、来場者400人)
- ④ぐんまリビングフェア2017(3日間開催、来場者51,338人)
(5)展示施設の整備
木材振興センターは、スギの集成材を使用した先駆的モデル施設として、木材関係者への情報提供、研修施設、木材産業振興の拠点となっており、年間数千人が訪れる。今回、来場者に県産材の良さをPRし、より県民に親しめる展示施設となるよう木造住宅模型の展示台や管内の憩いのスペースにヒノキテーブルの整備を行い、効果的な地域材の普及啓発を図ることができた。
事業実施により得られた効果
- ①当事業も3年目を迎え、当協議会を母体として川上から川下までの関係者が連携して木材利用拡大に取り組む体制が整備された。
特にこれまで関係が薄かった建設業界等の川下との連携が密になったことは木材利用を推進するうえで、大きな成果といえる。 - ②県産材利用パンフレットや各種イベント等で使用するネームプレートや住宅養生幕等の普及啓発資材を整備することにより木材への関心が高まり、効果的な普及啓発ができた。
- ③CLT技術は、実大の建築物を見学研修することにより、建築上の問題点や今後の可能性などが実感でき、新技術への期待とともに、利用拡大に取り組む機運が醸成された。
- ④県産材を普及啓発するために、様々なイベントに参加・開催し、多くの県民に直接、地域材の良さをPRできた。特に子供たちに木工工作やキャラクターが木に描けるネームプレートづくりなどを通じ、木に触れながら木の良さを楽しく実感してもらい、森林や木材への理解・関心を高めることができた。
- ⑤群馬県木材振興センターの模型台やテーブルなど、木との触れ合いの場所を整備することにより、来場者に気軽に楽しみながら森林資源への理解と、木の素晴らしさを体感してもらうことができた。
3.今後の課題と次年度以降の計画
- ①県産材の利用拡大を推進するには、県民の県産材に対する理解促進が不可欠である。3年間実施した当事業で醸成された機運を次に繋げていくため、今後も同様な事業に継続して取り組んで行く必要がある。
- ②県産材利用拡大のためには、県産材を使うことの意義に対する県民理解が不可欠である。今後も木材利用が森林を守り、地球環境の保全につながることを県民に訴え、理解していただく運動を幅広く取り組んで行く必要がある。
そのために今後は、県民向けの木材利用セミナーなどを開催していくことを検討する。 - ③少子高齢化の中で今後は住宅分野だけでなく、公共建築物などの非住宅分野への木材利用拡大が必要である。そのためには、建設業者や建築設計士に木材についての理解を深めることが課題であり、木造建築物に関心を持つ建築設計士の要請や建築士を対象にしたシンポジウムの開催などを検討する。
- ④イベント及び広報について、規模、企画内容、効果などを吟味して、より効果的な実施方法を検討する必要がある。
- ⑤木材振興センターを県民が気軽に来所して木に触れることができるよう、HP等を利用してPRしていく。