富山の杉活用協議会

平成28年度 地域材利用の木材関係者等への支援対策事業

富山の杉活用協議会

実施概要

実施団体について

富山の杉活用協議会は、主に氷見市を中心に活動をしている団体で、林業事業体や製材所、工務店など幅広いメンバーが参加している。「ひみ里山杉」のブランド化を目的に立ち上げられた団体で、その良さを知ってもらうための普及啓発活動に取りくんでいる。

事業の目的

「ひみ里山杉」の活用方法や魅力を発信することによって、「ひみ里山杉」の利用拡大が図られることにより、「ひみ里山杉」のブランド力アップに寄与する。

(3)事業内容、事業結果

3-1.「富山の杉」の見える化
①伐採見学会等による見える化
8/11に氷見市内の里山で伐採見学会を開催。対象は主に親子連れ。参加者は51人(大人21人、子ども30人)だった。昨年度よりも10名以上参加者が増加。森林組合の協力を得てハーベスタとチェーンソーによる伐倒の実演や参加者に楔を打って伐倒してもらう伐採体験をしてもらった。
②見学会開催(施設)による見える化
6/27に主に建築関係者を対象に、富山の杉を使った各種施設の見学会とそれぞれの施設の設計者によるガイドと講演会を開催。見学したのは手崎ふれあいセンター(射水市)、富山県議会議場(富山市)、富山県美術館(左同)の3か所。設計者から直接説明を聞けるということで好評だった。
③見学会開催(住宅)による見える化
個別の住宅見学会ではなく、フェアという形で住宅等の相談会や木質空間の展示を実施。具体的には7/15-16にかけて富山県内最大のショッピングモールであるイオンモール高岡で「ひみ里山杉フェア」と銘打ちフェアを開催した。
週末に開催したこともあり、概算で2日間合計で300人以上の来場者もあり、昨年度やこれまで接点のなかった層にアプローチできた。
④ワークショップの開催
8/11に伐採見学会のあとに木工ワークショップを開催。富山の杉を材料に小さな引き出しテーブルを作った。参加者数は伐採見学会と同じく16組51人(大人21人、子ども30人)。親子で木工をする機会が少ないということで初心者の方も多かったが、メンバーの指導の下、全員が作り上げた。これでまた一つ暮らしの中に木のものが取り入れられることになり、また次も楽しみにしているという声もあった。
3-2.「富山の杉」で家を建てよう(実践編)
① 板小屋のバージョンアップ、積雪型の開発
前年度に開発した富山の杉で作った板小屋(床面積10㎡、伝統工法)は、雪があまり降らない関東での使用を想定していたものだったため、北陸の雪が多い地域ではその耐雪性があまり高くなかった。そこで今年度は北陸の雪にも耐えうるようにバージョンアップを試みた。具体的には柱・梁の断面を太くし、ほぞの長さを十分とり、貫の本数増やすなどの改良を施した。限界体力計算法による構造の検証を行い、極稀地震でも耐震性能が確保される構造設計を行った。また、桁行き方向面内せん断試験を行い計算値が正しいことを確認することができた。
② 展示会等への板小屋の出展
開発した板小屋を広く知ってもらい、木の空間の良さを知ってもらうために、各種イベントや展示会等に板小屋を出展した。出展した回数は4回で、特に5/28の全国植樹祭では、全国各地からの参加者にひろくPRすることができた。
3-3.「富山の杉」で家を建てよう(挑戦編)

建築関係者が持つ「杉は弱い」というイメ-ジの払拭を目的に、県木材研究所の協力のもと富山の杉の強度試験を行った。昨年度の試験では、曲げ強度とヤング係数分布が得られたが、今年度は①各供試体の比重(密度)、含水率、ヤング係数、②曲げ強度、③縦圧縮強さ、④縦引張り強さ、⑤めり込み強さについて試験を行った。

3-4.「富山の杉」を知らせよう

富山の杉を広く知ってもらうために今年度も広報活動や各種イベントにおいて富山の杉を使った箸作りコーナーを出展。また富山県内で30代によく読まれている地元雑誌『Takt』8月号にイベントの告知記事を掲載。また富山の杉をふんだんに使った富山県美術館が今年度開館したことを受け、その最新の情報を盛り込んだPRパンフレットを作成。HPをスマホ対応にするとともに、SNSでの情報発信も引き続き行った。

6/27 施設見学会 6/27 施設見学会 8/11 引き出しテーブル作りWS
6/27 施設見学会 8/11 引き出しテーブル作りWS
8/11 親子伐採体験・見学会 8/11 親子伐採体験・見学会 5/28 全国植樹祭
8/11 親子伐採体験・見学会 5/28 全国植樹祭
8/27 氷見市ボランティア祭り
8/27 氷見市ボランティア祭り
5/21 アースデイとやま
5/21 アースデイとやま
 
7/15-16 ひみ里山杉フェア 7/15-16 ひみ里山杉フェア
7/15-16 ひみ里山杉フェア

事業実施により得られた効果

前年度に引き続き見学会やワークショップ、全国植樹祭をはじめとする各種イベントでのPR、独自でのショッピングモールでのフェアの開催など、本事業に取り組んだことで、さらに多くの人たちに富山の杉を知ってもらうことができた。
今年度もエンドユーザー向けと専門家向けの見学会等を開催することで、地元の杉を使うことの良さや難しさなどを幅広い層に伝えられたと感じている。 特に今回は住宅見学会ではなく、県内最大級の大型ショッピングモールでのフェアを開催したが、幸いにもモール側の理解と協力が予想していたよりも大いに得られ、今後の展開においても良いパートナーシップを結べそうな関係となり、大きな財産となった。
また板小屋のバージョンアップでは地元北陸の雪にも対応したバージョンを開発でき、さらに木材研究所の協力を得て行った実験では、昨年得られたデータに加え、さらに多くのデータを得られ、今後、特に工務店等に説明していく際の貴重な材料となった。
さらには本事業で昨年制作したホームページをスマートフォン対応に整備できたことで、今後、よりたくさんの人に情報を届けられる体制を整備できたことも成果の一つである。

今後の課題と次年度以降の計画

課題① 公共物件以外への普及
今回の施設見学会で訪れた県議会議事堂や富山県美術館など、公共建築物には富山の杉は大いに活用されているが、民間の住宅等への普及はいまだ途上にある。
施設見学会に参加した工務店等の方々の中には、富山の杉を実際に使う際の難しさや施工の注意点など具体的なことをもっと知りたいとおっしゃる方もおり、こうした専門家にいかにして有効な情報を届け、具体的に使ってもらえるようにするかが今後の課題の1つである。
課題② 一般消費者との接点づくりとPR
本事業で行った各種体験会等を通じ、木に対するニーズはまだまだあることを感じ、今後もそうした活動を地道に継続することが必要である。今後の課題としては、そうした取り組みを続けながらも具体的に富山の杉を暮らしの中に取り入れてもらうためにはどうしたらいいか、という点を突き詰め、次の一手を考える必要がある。
今後の計画
次年度以降の計画としては、まずは本事業を経て出てきた課題について協議会として再度議論し、活動の方向性を具体的に確立する。そのうえで、体験会などは継続して行っていくとともに、富山の杉の使用量がさらに増えるよう特に専門業者に向けた取り組みも行っていく。