平成29年度 工務店等と林業・木材加工業の連携による住宅づくり等への支援事業
一般社団法人愛媛県中小建築業協会
事務局所在:愛媛県実施概要
1.林業応援団育成(工務店・設計事務所等)のための久万林業経営者との定期会議の開催
今年度は初年度のため木材需要者で組織される当協会と久万高原町関係者及び委託先㈱エス・ピー・シーにおいて今年度の事業実施内容及び本年度以降の川上―川下連携体制について「久万高原町産材利用推進連携協議会準備委員会」を組織し、協議を行った。本年の協議を元に、個別に森林経営を行う関係者(森林所有者、素材生産事業等)との協議を次年度から実施し組織の拡充を図る。
会議の開催
[第1回] 平成29年 7月27日 13:30~ (一社)愛媛県中小建築業協会事務所(以下、当会事務所)
[第2回] 平成29年 8月18日 15:00~ 森林管理センター(久万広域森林組合相談室)にて
[第3回] 平成29年 8月22日 10:00~ 愛媛県生活文化センター第3研修室にて
[第4回] 平成29年 8月28日 13:00~ 森林管理センター(久万広域森林組合相談室)にて
[第5回] 平成29年 9月26日 13:30~ 当会事務所にて
[第6回] 平成29年10月16日 10:00~ 当会事務所にて
[第7回] 平成29年11月13日 14:00~ 当会事務所にて
主な参加者
工務店団体 :(一社)愛媛県中小建築業協会
林業関係組織:久万高原町林業戦略課・久万広域森林組合
業務委託先 :(株)エス・ピー・シー
2.「久万材」利用拡大のための森林視察研修の実施
久万高原町産材(以下、久万材)の利用拡大に向けて、「久万材」の特徴(生産方法、品質、特性など)を普及すると共に、消費者、工務店・設計者及び消費者を対象に、久万材利用喚起を目的とした森林視察研修を企画した。本企画は、地域産材利用の動機づけ、さらには国産材利用促進を目的とした、持続的な木材利用者の獲得を目指した取り組みである。準備委員会での協議の結果、初年度事業として、住宅建築希望者及び工務店関係者を対象とした「林業現場視察研修」を行うこととし、後述の「3.森林セラピーや林業見学等の森林体験ツアーの実施」の取り組みと併せて実施することとした。3.森林セラピーや林業見学等の森林体験ツアーの実施
都市住民との交流や新たな観光資源として、整備された森林の景観を生かした森林セラピーや林業現場見学、木工体験など森林リクリエーションを経験できるツアーを実施。都市生活に慣れた住民に対して森林への「親しみ」を醸成し、またリピーターの獲得による森林の観光資源化を図った。また、本ツアーに建築関係者も帯同し、木材伐採作業現場の視察や久万高原町林業戦略課職員、久万広域森林組合職員による森林・林業に関するレクチャー並びに現地での質疑応答などを通じて川下と呼ばれる建築事業者が川上と呼ばれる木材生産事業に関する理解の醸成を行うことができた。加えて、一般的な市民に対する、林業・建築業への理解醸成の一助ともなった。
「久万高原町の木こりの森体験ツアー」実施概要
実施日 | :平成29年11月23日(木・祝)/日帰り |
募集方法 | :ポスター掲示及びチラシの配布で公募、応募者へ通知 |
参加方法 | :集合場所からチャーターバスで現地入り、最終は集合場所まで送致 |
体験メニュー | :森林伐採現場の見学、森林浴体験、木工品絵付け体験、久万高原町で昼食 ※昼食は“地域の食材を活かした料理”=『山ご飯』として地元協力のもと提供 |
参加者数 | :愛媛県内から48名 ※実施日前日には、愛媛県全域に降雪の予報あり |
4.久万材の消費者向け『アプローチブック』の作成
5. 県産材を使用した工務店による『地域材利用住宅事例集』作成
「久万材」をブランドとして確立するため、「久万材」の周知と理解を獲得するためのアプローチブック(冊子)を作成。冊子には、久万高原町の林業の歴史や、その育成環境・生産管理体制、ブランド材といえる理由などについても触れるとともに、久万高原町そのものの魅力をマップとして紹介するなど、久万高原町の魅力を総合的にアピールした。また「久万高原町 移住・定住ガイド」も盛り込み、町への移住者・交流希望者の拡大につながる取組を行った。また当ブックには、「久万材」を含む県産材を使用して施工された、県内の住宅・リフォーム(木質内装化含む)の事例を集めた『地域材利用住宅事例集』を合わせて収録し、消費者や県産材を利用したことのない工務店・設計者に向けて新たな木材需要を喚起も行い国産材利用推進に努めた。
アプローチブック仕様:A5サイズ、全16ページ、4c/4c、600部印刷
6.住宅フェア『マイホームフェスタ2017』への出店
毎年開催され1万人近い来場者でにぎわう、愛媛県内最大の住宅フェア「マイホームフェスタ2017」に、久万高原町と共に参加出店し、木造住宅の事例パネルや木材の基礎知識の紹介パンフ、「久万材アプローチブック」の配布を行った。また、ミニ建前キットを利用して子どもに大工の体験をさせた。更に、久万高原町からは、久万材で作ったベンチや遊具、楽器などを持ち込み展示し、消費者に木材の良さや木材に関する知識の普及を行った。加えて、会場内に久万高原町移住相談窓口を設置し久万高原町の紹介を行うと同時に移住希望者の相談を受け付けた。併せて、久万高原町への移住に関するアンケートも行った。「マイホームフェスタ2017」実施概要
開催日時:平成29年10月28日(土)・29日(日) 10:00~17:00(29日は16:00)
会場 :アイテムえひめ・大展示場(愛媛県松山市大可賀)
入場料 :無料
来場者数:5,608名(二日合計、主催者発表)
※うち「家づくりの計画あり」の世帯 648世帯
「リフォーム計画あり」の世帯 201世帯
主催 :愛媛県住宅建設振興協議会
7.林業・製材業等の地域産業を組み合わせた久万高原町への『お試し移住プログラム』開発連携
「お試し移住プログラム」の開発に当たって、住宅フェア及び林業体験ツアーにおいて「久万高原町に関するイメージ」をアンケートで調査した。また、これ以外の各取り組みにおいても、久万高原町の紹介を積極的に行うと同時に、ヒアリング形式で、久万高原町に町外の人間がどのようなイメージを持っているか調査を行った。この結果、久万高原町の名前は知っているが、それ以外は「自然が多い」「田舎」「秘境」といった漠然としたイメージしかなく、具体的なイメージとしての久万高原町はあまり知られていないことが明らかとなった。一方、林業体験ツアーに参加した者は、参加前と比較して久万高原町に非常に好感を持ったものが多かった。よって本年度事業では、木材セミナーにおいて、移住推進の前段階として、久万高原町の知名度向上と訪問人口の増加に向け、建築事業者を中心に久万高原町の各種情報を普及するためのネットワーク構築を行った。8.木材セミナーの開催
人口減少社会への突入により木造住宅需要も減少が予測される中、今後どのように、林業を主産業とする久万高原町をはじめとした中山間地域と建築事業関係者が木材利用を通じて連携をしていくか、をテーマとして、工務店・設計者を対象とした木材セミナーを計3回実施した。『木材セミナー「木と建築と社会を考える」』の開催
[第1回:持続的な住空間]
平成29年12月13日 14:00~16:30 (ウェルピア伊予 2階 鳳凰の間) 28名参加
[第2回:脱大量生産の木造建築]
平成30年1月17日 14:00~16:30 (ウェルピア伊予 2階 鳳凰の間) 27名参加
[第3回:エネルギーと地域コミュニティー]
平成30年2月9日 14:00~16:30 (ウェルピア伊予 2階 鳳凰の間) 11名参加
事業実施により得られた効果
当事業を通じて、木材需要者と林業関係者が密な打ち合わせを頻繁に行うことで、まずはそれらを結びつける「場」が生まれ、木材の利用活性化に重要な両者の連携体制の礎が構築された。また、建築事業者が山を知る機会を設けたことで、森や木への深い理解や共感を得られ、結果として、木材の需給情報の共有が活発化されるなど、新たな需要を掘り起こす可能性も見えた。また、一般消費者に向けては、「アプローチブック」の配布や「マイホームフェスタ」出店、そして「森林体験ツアー」の実施等を通じて継続した周知拡大を行ったことで、「久万材」というブランド、またそれが生産される久万高原町の環境・体制について認知を獲得するとともに、木材利用についても理解を得ることができた。
全体を通じて、久万高原町のまちとしての魅力やポテンシャルが感じられるPRにもなっており、当事業をきっかけとした久万高原町への観光リピートや移住促進についても期待できる。
久万高原町のもつ「久万材」ブランド、そして全国に誇る林業・製材業の機能を、しっかりと情報発信することで、新たな木材の価値・可能性を見出し、林業の活性化さらには地域経済の向上、雇用創出・移住者拡大へ繋がると期待される。
今後の課題と次年度以降の計画
- 当初予定していた木材需要者と林業関係者との協議会設置には至らなかったが、両者の連携体制を築くことができ、既に情報共有等が活発に行われている。協議会設置に向けては概ね準備が整ったため、今後は速やかに設立し、参加者の拡大を含めて今後より一層の連携強化を図っていく。次年度以降は、本年度形成したネットワークを基に、本年度の主たる事業の継続に加え、この連携を活かした森林認証材の建築用材への活用等にも取り組んでいく。
- 今年度、参加者からの反応や手応えが大変良かった「森林体験ツアー」や「マイホームフェスタ出店」「木材セミナー」は、この経験を活かして、次年度以降にも計画をし、その効果を拡げていきたい。
- 今回作成した「アプローチブック」は、住宅事例の掲載数や施工パターンを増やすなど、更新・改訂を加えていくことで、継続的なプロモーションツールとして活用したい。
さらに次年度以降では、今回構築した林業関係者との連携体制を利用し、久万高原町と共同で新しい木造住宅の開発にも取り組み、新しい木材需要の拡大に繋げていく。 - 当事業で久万高原町のまちの魅力も大いに発信できたが、今後は「お試し移住プログラム」との連携を強化し、移住者の“住まい”にも踏み込むなど、リピーター促進・移住者獲得にも繋げていきたい。