NPO法人みなみあいづ森林ネットワーク

平成30年度 A材丸太を原材料とする構造材等の普及啓発事業

NPO法人みなみあいづ森林ネットワーク

事務局所在:福島県

実施概要

事業計画


事業計画(pdfで表示されます)

 

実施概要

 A材丸太の新たな用途拡大のために木材を多様に活用した住宅設備(キッチン・洗面台)の開発及び木材利用活性化に向けた事業に取り組んだ。
 
試作開発
以下の3種の設備の試作開発に取り組んだ。
・ キッチン(WALL型)
・ キッチン(ISLAND型)
・ 洗面台
 
普及啓発
 以下の事業に取り組んだ。
・ 住宅展示会参加者へのニーズ調査(南会津町内)平成30年11月23日(金)〜24日(土)
・ 木製品展示会「モクコレ」への出展(東京都)平成31年1月29日(火)〜30日(水)
・ リーフレットの作成 500部
 
勉強会・研修会
 以下の勉強会を協議会定例会にて取り組んだ。
・ 8月29日(水)18時 「秋田県由利本荘市の事例について」講師:㍿レストーリエ 富永周平 氏
・ 9月27日(木)18時 「全国の木材活用の事例について」事務局より報告
・ 10月17日(水)18時「福井県福井市の事例について」講師:㍿レストーリエ 富永周平 氏
・ 12月4日(火)18時「全国の木材活用の事例について」事務局より報告
 また、以下のイベントへ参加し福島県内の木材活用の状況を学ぶとともに当法人の取り組みについてブースを持ち来訪者との意見交換を行った。
・ 10月20日(土)〜21日(日)「福島県林業祭」
 
事業の報告
 事業の報告を以下の日程にて行った。
 ・2月6日(水)17時30分

 

事業実施により得られた効果

試作開発について
 キッチン・洗面台の開発を行った。当初の計画では、壁板や棚板には針葉樹材を使用し、天板には広葉樹の一枚板を使用する計画を立てていたが、協議のなかで①高級志向より木材を使い馴染みのあるもの、②モクコレ(展示会)でお披露目し興味を得る、③全国に普及・展開させたいことが重要であることとなった。それらの条件と、当事業の期間や予算を加味し以下の開発方針とした。
①高級志向より木材を使い馴染みのあるもの→ 入手困難な樹種は使わない
馴染みがあり調達しやすいのはスギやヒノキ
②モクコレ(展示会)でお披露目し興味を得る→ 納期を優先(年内には調達可能な木材)
デザイン性と組立の容易性をウリにしたい
③全国に普及・展開させたい → 各地環境が異なるため均一な木材品質の保持が重要
集成材やCLT材を活用を検討してみる
各地域の木材樹種を生かせる設計(板部の交換が可能など)
 これらを踏まえて開発した製品は以下の通りである。また、内装材の提案も計画していたが協議会参画会員の工務店で内装材に地域材をふんだんに使った住宅を建築予定であり、その住宅展示会も計画されていたため当事業では試作は行わず、展示会での来訪者へのヒアリングのみとした。
 
キッチン(WALL型)
 製品名:APERT0 K2550
  サイズ:W2550 × D680 × H850(mm)
 樹 種:国産ヒノキ 集成材
 フレーム:スチール(粉体塗装)
 塗 料:テリオスコートQH(耐水耐熱液体ガラス)
 器 材:ガスコンロ/リンナイ、シンク/IKEA、混合水栓/IKEA
 

 
キッチン(ISAND型)
 製品名:APERT0 K2400
  サイズ:W2400 × D950 × H850(mm)
 樹 種:国産スギ 集成材
 フレーム:スチール(粉体塗装)
 塗 料:テリオスコートQH(耐水耐熱液体ガラス)
 器 材:ガスコンロ/リンナイ、シンク/IKEA、混合水栓/IKEA
 

 
洗面台
 製品名:APERT0 B1350
  サイズ:W1350 × D650 × H700(mm)
 樹 種:国産ヒノキ CLT材
 フレーム:スチール(粉体塗装)
 塗 料:テリオスコートQH(耐水耐熱液体ガラス)
 器 材:洗面ボウル/サンワカンパニー、混合水栓/サンワカンパニー
 
 
普及啓発について
 普及啓発に関しては当初の計画に基づき、①住宅展示会の開催、②展示会への出展、③広告媒体(リーフレット)の作成を行った。
 住宅展示会では実際の住宅に設置した展示会の開催を予定したが、施主及び施工期間等の都合により見送りとなった。
①住宅展示会について
 期 間:平成30年11月23日(金)〜24日(土)
 場 所:福島県南会津町田島地区
 施 工:関根木材工業㍿(協議会参画会員)
 内 容:一般住宅
     南会津町産材を構造材・内装材・造作材・建具等に使用(約24㎥)
 来訪者:30名
 来訪者に対して口頭でのヒアリングを行った。主な意見としては以下の通りである。

①「木材を使用した住宅についてどう思うか?」
・心地良い気分になるぜひ使いたい(男性・女性)
・木目が素敵(女性)
・カビや湿気、変色が気になる(女性)
・メンテナンスが不安(男性・女性)
・気密性などの性能はハウスメーカーの方がいいのか(女性) など

②「木材を使用した住宅設備についてどう思うか?」
・天板に木を使うのはどうなのか?水廻りのカビや火が気になる(女性)
・煮込んでいた鍋を直接置くこともあるため、焦げなどが不安(女性)
・包丁傷や食器傷が防げなそう(女性)
・お金をかけたくないので長く使いたいが耐久性などはどうなのか?(女性)
・木の方が雰囲気が良い(男性) など

「家」に関して多くの意見は女性からのものであった。内装に「木」を使うことに関しては、非常に前向きな意見を多く得ることができたが、生活をする上で必需となる住宅設備に関しては「木」の使用はマイナス要素が相当大きいようである。マイナスなコメントを頂いた際に、水に強い樹種(例えばクリ)や強度のある樹種(マツや広葉樹全般)の説明も行ったが反応は前向きなものではなかった。キッチン等の使用頻度の高い主婦層の意見を聞けたことでデザインや性能に生かせるものとなった。マイナス意見ばかりではなく、見栄えとして「木」を使うことを評価する意見もあったため、今後はステンレスとのハイブリッドな天板の提案も検討したい。
 


②木製品展示会出展について
期 間: 平成31年1月29日(火)〜30日(水)
場 所: 東京都江東区 東京ビッグサイト 東7・8ホール
内 容: WOODコレクション(モクコレ)2019
日本各地と東京都が連携した木製品展示会
「国産材が育む日本の未来」をテーマに都道府県毎にブースが別れ地域色・企業色を出した展示が特徴。
当事業で製作した試作品3種のお披露目の場とした。
当法人横のブースは同じ南会津地域で活動し、協議会参画会員の㍿芳賀沼製作が木製パネルログの構造材・内装材の展示であったことから協働での「見せ方」を行った。
主なブース訪問者と問い合わせ
・建設(10社): 施工方法の問い合わせ、納期や金額について、木部の反りや捻れなど
・林業(7社): 森林認証材の活用状況について、適正樹種について、原料供給についてなど
・製材(15社): 適正樹種について、加工方法・加工賃について、節や割れなどの状況など
・設計(15社): 納期や金額について、他の樹種使用について、塗装の経過について、
家具やその他の内装材の使用についてなど
・コンサル(5社): 金額について、他の樹種使用について、地域産材の活用状況など
・行政(10団体): 森林認証材の活用状況について、協議会の運営について
計画立案から実行までの経緯について、他のイベント出展要請など
・建材(5社): スチール部材の規格や製造について、納期や金額について、施工方法について 運送について、他の樹種使用についてなど
・機械(2社): 木材加工について、レーザーやNC加工についてなど
・金融(2社): 今後の事業展開について、基金の活用についてなど

 多くの来訪者の方々に興味を持って頂けた。木製品専門の展示会だけあり、多様な専門的な意見を集めることができた。特に、製材や建設関係者といった常日頃から木に触れ扱う事業者の方々は、木材を水廻りに使用することの影響(腐食・変色・反り・捻れ・耐火など)を危惧し、その対応策についても専門的な見地からアドバイスを頂けたことが成果であった。また、「見栄え」を重要視する設計関係者の方々は木材をふんだんに使い木材を見せるデザインへの評価は高く、むしろ品質や性能などの質問は限られていた。このような意見をより精査し、より良い製品開発につなげて行くための大切な機会となった。また行政やコンサル関係者は、当法人が取り組む地域での川上・川中・川下の連携体制構築や、それを用いたものづくり体制への質問が多く、それぞれの自治体での実践を希望されていた。試作製品だけでなく、自分たちの取り組みを再考したり他地域の取り組みを学べる、実りある展示会となった。
 
木製展示会「モクコレ」出展の様子

③リーフレットの作成について
 内 容:試作製品広報のためのリーフレット作成
 規 格:A4/両面4色/アートポスト220/4P
 部 数:500部
 主な配布先
・展示会モクコレ 200部
・南会津行政関係者 50部
・協議会加盟事業者 100部
・その他一般 50部
・予備保管 100部
リーフレット表面 リーフレット裏面
 
勉強会・研修会について
 勉強会・研修会では全国で先進的に木材活用に取り組む地域・事例についての勉強会を行った。対象者は協議会に参画する林産業関係者及び行政関係者とした。他業種の生産現場を見学したいとの要望も協議会内で提案されたため、個別に対応を行った。
 さらには福島県林業祭(主催:福島県)へ参加・出展(本町の木製品の販売)を行い、福島県内の木材活用の現状を学ぶと共に、他の出展者や来訪者との意見交換も行った。

①第1回 勉強会・研修会
 日 時:平成30年8月27日(水)18時〜19時30分
 場 所:南会津町 御蔵入交流館
 テーマ:秋田県由利本荘市「鳥海山 木のおもちゃ美術館」を事例に
 講 師:㍿レストーリエ 富永周平 氏、福島県南会津農林事務所 鈴木比良 氏
 参加者:17名
 主な内容
・秋田県由利本荘市では、平成30年7月に「木のおもちゃ美術館」をオープン
・廃校を地域材をふんだんに使いリノベーションし、地域の産業や文化・木の楽しみを伝える美術館としてスタート
・通常の木育施設ではなく、「秋田杉」や加工技術をみせるため内装づくりとなっている
・新たな観光・教育・文化施設として地域内外からの期待も大きく、産業発信の拠点を目指す
・人材育成にも力を入れ、学芸員や木材産業に携わることのできる人材を積極的に雇用し、また経 や技術習得の場づくりを実践している
・南会津町でも「成長産業化に向け」見習う点が多く、地域のニーズやそこに根ざした取り組みを構想していきたい

②第2回 勉強会・研修会
 日 時:平成30年9月27日(水)18時〜19時30分
 場 所:南会津町役場 会議室
 テーマ:東京都「㍿ワイスワイス」を事例に
 講 師:事務局報告
 参加者:16名
 主な内容
・㍿ワイスワイスのこれまでの取り組みを事務局より報告した
・全国各地の林業地や木材生産地と連携し、地場産材を活かした家具を製作
・都市圏への流通だけでなく地域の公共施設に入れるなどの実績が多々
・地場産材への知見が高い事業者の意見を積極的に取り入れ、木材に適した構造設計やデザイン
・製品のみではなく、地域の周辺産業にもスポットをあてPR動画を作成し広く普及を図る
・課題は価格 木材の品質や構造・デザインによって価格が大きく左右される

③第3回 勉強会・研修会
 日 時:平成30年10月17日(水)18時〜19時30分
 場 所:南会津町役場 会議室
 テーマ:福井県福井市「子どもを育む巣箱 ときなる」を事例に
 講 師:㍿レストーリエ 富永周平 氏、福島県南会津農林事務所 鈴木比良 氏
 参加者:17名
 主な内容
・福井市の駅前商業施設内に木育体験スペースがオープン
・ビルを私有する企業が手がけ、フィットネスジムや身体に良いドリンクを提供するなど「健康な生活」をテーマとして一体型の施設
・由利本荘市同様に地域材をふんだんに使った内装材と加工技術の高さをみせる立体的な木製の造型物が遊び場となっている
・周辺家具にも力を入れ、大人の興味を引く構図となっている
・全国から集めた木製品の販売も展開

④第4回 勉強会・研修会
 日 時:平成30年12月4日(火)18時〜19時
 場 所:南会津町役場 会議室
 テーマ:福島県内の取り組みを事例に
 講 師:事務局報告
 参加者:16名
 主な内容
・福島県林業祭で得た活用状況をもとに事例報告
・特に「建築」の分野では新たな構法やCLT加工などが活発化している 県内だけで4社程度
・木製品の分野では㍿光大産業がデザイナーと連携し、新たな木製生活用品を数多く開発海外市場を視野に入れ活発に展開

⑤福島県林業祭への参加
 日 時:平成30年10月20日(土)〜21日(日)
 場 所:郡山市 福島県林業研究センター
 主な内容
・福島県内の林産業関係者約100団体が出展
・南会津地域の取り組みを周知(出展)すると共に県内の取り組みについて情報収集を実施
 
事業の報告について
 事業の実績報告書作成に加えて、協議会定例会の場にて事業全体の報告を協議会に参画する林産業関係者及び行政関係者へ対して行った。
 日 時:平成31年2月6日(水)17時30分〜19時
 場 所:南会津町役場 会議室
 参加者:15名
  主な内容と意見
・木材の新たな使い途ができたことは喜ばしいが、価格はどうなのか?
・町内の樹種(カラマツや広葉樹)を使った天板等も製作してほしい
・傷や耐火などの心配は?女性目線が必要だと思う
・スチール部分が高い、町内の鉄工所ではもっと高くなる 海外も含めて安く作れるところのリサーチを継続してやるべき
・CLTはあまり使用せずに加工賃を抑えるために無垢板や集成材を重要視したい
・南会津の木材は節が多い(針葉樹)が、消費者はそれでもいいのか?
 

今後の課題と次年度以降の計画

 事業を通して主に3つの課題が挙げられた。
 
天板の使用
 天板はオール木材に対して不安視する声が多く、特に使用頻度の高い女性からである。耐火・防水・腐食・変色・傷・焦げ・反り・捻れなどについてである。これらは今回使用したガラス塗料を用いることで防ぐことはできるが、よりエンドユーザーに対して証明と安心を与えることができるように、経過観察と実証を行いたい。ただし、木材を使うデザイン性に対する評価の声は多かったことを考えると、オール木材だけではなくステンレスと木材を組合わせた天板の製作にも挑戦したい。
 
納期と価格
 納期と価格についてはスチール部分以外は調達しやすく価格を抑えることは可能である。今回スチール部材の製作に関しては製造工場へ「試作の1台のみ」という条件であったため高価格となってしまった。今後量産体制へなった場合、価格を抑えることはできるが納期の課題が危惧される。「モクコレ」時に来訪者より台湾の加工業者が当事業に適しているのではないか?との提案を頂くことができたため、次の課題としてスチール部材の価格抑制を目指して海外を視野に製造業者の選定を進めたい。
 
販路
 販路に関しては①地産地消、②地産外消、③デザイン・設計販売を検討したい。①地産地消については現在本町では地域木材+地域工務店の連携家づくりを強化しており、当法人も関わっているため地域への供給体制を目指す。②地産外消では、デザイナーが有する家具の販路を活かした流通を目指す。③デザイン・設計販売については木部を各地域の木材を生かせるデザインとしているため、モノではなくコトの販売で地域木材使用型の住宅設備展開を検討したい。販売は2020年より本格始動を目標とする。