株式会社ワイス・ワイス

平成30年度 A材丸太を原材料とする構造材等の普及啓発事業

株式会社ワイス・ワイス

事務局所在:東京都

実施概要


事業計画


事業計画(pdfで表示されます)

 

実施概要

実施団体の説明
 1996年に“豊かな暮らし”をテーマとするインテリアブランド「ワイス・ワイス」を設立。現在、表参道ショップにてオリジナル家具販売、及びインテリアコンサルティングサービス、東京ミッドタウン(六本木)にて日本の伝統工芸を世界に発信する“暮らしの道具”の専門店WISE・WISE toolsを経営。
 フェアウッド100%による家具づくりを提唱し、国産広葉樹やFSCなどの認証木材を積極的に使う「WISE・WISE GREEN PROJECT」を2008年から展開。更に、より材料産地に入り込み、地域資源と地域の方/地域事業者と共につくる「森をつくる家具」を展開中。
 2015年、宮城県栗駒山のスギを地元の人たちとつくるKURIKOMAシリーズでソーシャル・プロダクツアワード「東北復興」特別賞を受賞ほか受賞多数。
 2015年より「フェアウッド研究部会」を月1回NPOらと主催し、違法伐採木材の抑止と国産材の啓蒙普及、木に関わる企業や個人のネットワークづくりを先導し、37回目を迎え会員130人以上となる。
 
テーマ
地域材を使った「森をつくる家具」の開発・販売・普及
 
事業の背景と目的
背景  日本全国に存在する林業地より、行き場を失ってしまった木々(国産A材)を有効活用し、高付加価値化したいと沢山の相談が弊社に舞い込んでいる。
目的  地域材を使った家具のブランド化によりA材需要の喚起と価値の最大化を目指す。
 
事業の内容
 地域材の生産地まで遡る、つくり手や職人の顔の見える家具 3シリーズの開発と発表をおこなった。
宮崎県諸塚村 スギ・コナラを用いた新作家具「ニューモロツカ」
秋田県角館イタヤカエデを用いた新作オーガニックソファ「スプリング」
三重県尾鷲ヒノキを用いた新作家具「オワセ」


未発表商品のため写真なし
「NEW MOROTSUKA」 「SPRING」 「OWASE」(仮)
 

事業実施により得られた効果

包括的な効果
 地域材・特にA材と呼ばれる稀少な部位を使用する地域資源の活用と、地域の事業者と協働で開発を行った。また、発表に関わる展示や情報拡散の広報についても連携し合う事で、地域の経済・社会・文化に貢献することができた。
 地域の方とただ製品を開発し製造して終わるのではなく、地域との関係性(人間関係や交流、経済的な循環)も視野に入れた商品企画開発と、その背景を大切に伝える広報戦略がそれぞれの事業で違うアプローチを試みた。

 
各事業ごとの内容と効果
「ニューモロツカ」新作発表の効果…                  
 諸塚村は1907年から「林業立村」による村づくりを行っており、林業の歴史の深さとその啓蒙普及活動は日々進化している。弊社が諸塚村に入ったのは2008年。村の主要産業である椎茸づくりの原木栽培に適さなくなってしまった太くて使われなくなったコナラの木を使い家具を開発。その中で、森林組合・製材所・村役場の方など地域の方々や、更に地元小学生との交流が育まれていった。(小学生の弊社への来訪は毎年夏に行われ今回で5回目)
 今回は更なる発展系として、ワイス・ワイス初のFSC認証ファニチャー「ニューモロツカ」展示発表と、諸塚村の小学生による「林業わくわく体験学習/ウッジョブ諸塚」の学習発表とを合わせて、弊社クライアント、行政、林業などの方に向け発表。イベントでは関東台風直撃にも関わらず、50名程参加者が集まった。小学生の発表に感動し涙する人もいた。
 


製造販売構築による効果
・地元建具職人(もっくわーく那須 / 代表 那須 幸雄氏、職人 西山 好氏)による「顔のみえる家具づくり」を行った。建具の技術を応用しながら、座面と背は柔らかいスギの木・フレームは堅いコナラで適材適所に材を使い分ける。また、家具のデザイン・ディレクションは、家具デザイナーとして著名な小泉誠氏を起用した。試行錯誤を繰り返し、商品レベルに達した。組手の部分など随所に建具の技術が応用され、職人の腕の見せ処となるデザインとなった。
・里山のコナラは椎茸原木や薪炭材としてしか用途がなかった。家具用の狂いの少ない、安定した材とするため、村はFSCのFM認証を得た仕組みで、製材/乾燥に更なる工夫を加えながら管理する体制を構築した。森林組合・村役場・木工房/建具職人と製造の連携構築ができ上った。そして、販売側でもFSCのCoC認証を登録し、弊社初のFSC認証商品としてデビューさせることができた。


広報の効果
・FSC ジャパンの主催する『FSCフォレストウィーク2018』大手企業が参画するキャンペーン内のイベントとして、「諸塚祭り in Tokyo/ニューモロツカ展示発表会」を行った。FSCジャパンのプレスリリースやSNS配信など広報の全面バックアップを受けた。展示ではFSCジャパンにも出展いただいた。*参考FSCジャパン報告書(別途添付)
・諸塚村と交流持つ東京の企業(JVCケンウッドデザイン・モアトゥリーズ)との協力展示と共同広報発信。(別途添付資料)
・諸塚村の子どもたちとの共同展示とすることで、大人たちを子ども目線で考えさせることができた。また、家具を通して森や村の未来の環境づくりを展望・議論する場となった。
・展示会イベントにより林野庁の方はじめ参加者120名程の盛会となる。
・展示期間中、約1か月は延べ300人程が来場した。
 
・諸塚村小学生による展示物:映像「林業はヒーロー/児童 甲斐 」「子どもが夢や希望をもって成長する教育、地域社会とは/教諭 田中寿幸・児童 田中凛香」、ウッドジョブ諸塚 学習まとめパネル、村の特産品、FSCジャパン:FSC認証商品、JVCケンウッド:フォレストノート(森のライブ音スピーカー)、モア・トゥリーズ(隈研吾デザインパズル)
・ワイス・ワイスHP イベント掲載  http://wisewise.com/archives/20180817_01/
・発表会の開催(8/22 オープニング 諸塚村小学生を招いての会、9/4 製作者・デザイナーを招いて)
 
「スプリング」の効果…
 ソファはその構造の中に木を使っており、従来のソファでは、外側はウレタン(石油素材)やファブリックなどで張りぐるみ、その中身は見ることができない。そのため、どんな材料が使われているか、使用者は全く意識しない。また、ひどい製作者はごみ屑や段ボールを詰めるなど、見えなければいいと隠すブラックボックス化した時代もあった。
 しかし、今回のソファは、北欧やイギリスをはじめとした貴族が使う西洋家具・宮内庁や迎賓館で使う椅子の伝統的な天然素材を使った家具づくりの技術でできている。
 今、主流のソファの作り方は、カッターや接着剤で容易に成型できるウレタン(石油素材)で、ある程度の訓練をこなせば職人も習得できるが、この天然素材を使った家具づくりは、継承者が少なく絶滅危惧の文化になろうとしています。この技術は、習得するのに日々の仕事の中でこなし、一人前にできるまで5年はかかると言う。
 今回は、その天然素材でつくるソファの中身を敢えて見せるカタログや展示としている。釘を一本も使わない木組みの美しさや、コイルスプリングのシンプルな構造など、自然素材の良さを引き出す職人の技を見える化(デザインの解剖)し、驚きを与えるビジュアルイメージを打ち出しました。また、ソファの一番外側は、鹿革を使うことで、森林破壊の原因ともなる日本の林業における獣害にもフォーカス、社会へのメッセージとして組み込んだ。

       

展示会ポスター

製造販売構築による効果
・明治時代に起きた芝家具の流れを組む家具業界のパイオニア、宮本茂紀氏による伝統技術の継承をしています。職人たちを集めてのこの開発の意義を説明し、そで宮本氏が職人たちへ継承/指導した。
・家具職人のベテランが若い衆に、伝統的工法を仕事の中で継承する機会を持てたと喜んでくれ、工場全体の士気が高まった。
・国産材/東北の広葉樹を昔から多く扱う田鉄産業による製材と乾燥の確かな技術と経験。秋田産のA材イタヤカエデを使うことで、木の構造自体をみせる造りとした。
・木組みを正確にこなす木工職人や、家具の専用コイルスプリングつくる非常に稀少な職人技など、スポットが当たってこなかった裏側の仕事を動画や写真に記録し残した。


広報の効果
・家具業界の神様である家具モデラ―宮本茂紀氏が製造、デザインは日本を代表するグラフィックデザイナー佐藤卓氏による。開発は両名の知名度からも大きな反響・話題を呼ぶ。
・六本木のミュージアム「21_21 DESIGN SIGHT」、同じく六本木の商業施設 「東京ミッドタウン」協力・「ワイス・ワイス tools」による、上質な文化人/富裕層/外国人(観光客)にアプローチできている。
・ワイス・ワイス メール配信9000人、DM送付300名、SNS 約800件 公式HP掲載。佐藤卓デザイン事務所と五反田製作所の主要クライアントへの告知。(約500件)
・21_21 DESIGN SIGHTの全面的バックアップによる告知/公式HP掲載 履歴としても半永久掲載、公式SNS Facebook 27,000件、Twitter 12,000件、プレスメール配信[国内 約1,100 件、海外約300 件] 重要クリエイター[国内 約300 件、海外約50 件]国内の学校・教職員にメール配信[約800 件]。

21_21 DESIGN SIGHT
ギャラリー3
展示会/イベントを4月開催。
「オワセ」の効果…
 ヒノキの椅子は、ヒノキ自体の強度の問題から細い脚のデザインが難しく、名作となった椅子がない。今回の尾鷲のヒノキは、他の地域のヒノキにはない粘りと木目が細かく強度がある。更に今回の出材は、日本で初めてFSC認証を取得した速水林業の尾鷲ヒノキを使い、
 FSC CoC認証の家具工場で加工、ワイス・ワイスが販売し「FSCファニチャー」として世界へデビューさせる。
このFSC CoC認証の家具工場は、日本が世界に誇る最先端の木工技術/3次元ルーターによる、非常に難易度の高い曲面を生み出せる木工の機械/ロボットを有しており、前述した素材による特徴と意匠とを融合できる。(日本最大の木製加工工場でもある)
 一次試作が終わり、2次試作の準備段階(図面修正・工場での対策検討中)まで完了した。

製造/背景による啓蒙効果
・尾鷲ヒノキは、建材や板材としての流通/販路については発展してきた。今回の開発は、A材/家具用材としての流通/販路発展に貢献できる。特に、家具の海外輸出を視野に入れており、他の地域の生産体制ではできない、FSC CoC認証の工場による大量生産が可能である。

広報の効果
・デザイナーに藤森泰司氏を起用。海外のブランド家具メーカーとも契約を結んでおり、ヨーロッパ等への出展や、販路拡大にも知見がある。
・尾鷲ヒノキは、日本で初めてFSCを取得した日本の林業を代表する速水林業による生産体制で、日本中の森林関係者の注目を集める。地域や行政にも話題性を拡散できる。
 

今後の課題と次年度以降の計画

「ニューモロツカ」の課題と次年度以降の計画
・現在、乾燥材があって、製作納期約2カ月、椅子は1種ロット20脚、テーブルは2サイズ10台の生産量となる。
・コントラクトの大量発注やサイズ変更などを受けても対応できるように、生産可能な工場体制・材料の質の管理体制を更に整えていく。
・カタログ商材として、新しい総合カタログに掲載し、営業拡散していく。
・全国自治体の「森の木の出口づくり/農山漁村振興」の成功事例として、他の自治体にも参考にしてもらえるような、持続可能な木のモノづくり/家具づくりを企画していく。
・FSCジャパンの協力を仰ぎながら、FSCファニチャーの認知度を高める。
 
「スプリング」の課題と次年度以降の計画
・展示場所の空きの関係から、4月に展示会/イベントを開催します。(別紙報告書参照)
・また別の展示会場やギャラリーを厳選し、出展を視野に入れ計画を立てる。
・スプリングは非常に高級なソファとなる。そのため、アート市場においても家具のジャンルは存在するので、そういったアートオークションへの出品も考える。
・富裕層へのアプローチとして、例えば、富裕層の会員制度を持つ百貨店・高級ホテル、高所得会員制のメディアなどに営業をかけていく。
・サスティナブルなソファとして弊社理念を象徴するようなブランドシリーズとして
・東京ミッドタウンの「ワイス・ワイスtools」での販売を計画する。
・一例として、ワイス・ワイスの山口県たたらの里プロジェクトでは、富裕層をターゲットとした観光・街づくりを手伝っている。外国人は、日本の職人のものづくりに関心が高く、先日も1本60万円もする高級な玉鋼の包丁が売れた。こういった外国人インバウンドでも高級志向の高い人への接触を増やす。また、それに見合った営業スタイル、アフターケアサービスを確立する。
 
「オワセ」の課題と次年度以降の計画
・2次試作に着手するところ、開発の進行スピードから2019年秋の発表を目指す。
・デザインの微調整が必要、温かな雰囲気と手で触れたくなるアーム形状をつくる。
・量産体制の構築と、販売先の営業戦略立案が必要。
・本プロジェクトの家具工場は、海外展示会(国際家具見本市ミラノサローネ/イタリア)でも、昨年、話題になった。この展示会やその販路を応用しながら、海外進出を視野にいれて計画する。