令和元年度 顔の見える木材での快適空間づくり事業
関西広域木造建築普及促進協議会
事務局所在:大阪府実施概要
事業計画
実施概要
実施団体の説明
造建築工法に関する近年の法整備とそれにともなう普及活動により、身近な建築資材である木材が次第に見直され、木造建築物への関心も高まっている。その一方で特に中規模以上の木造建築物の計画においては、建築資材として不安定な品質、防火をはじめとする安全性の確保、流通の問題などの課題は多く、確立された工法による均質な工業材料のように一般化されるには到っていない。
円滑な建築計画・設計・施工を推進するためには、生産者から消費者、つまり山からまちを繋ぐ、木材資源を有効利用するための情報のプラットフォームが不可欠である。
主伐の増加に伴いA材丸太を中心とする国産材とりわけ地元産材の枠組みや特定の工法にとらわれることなく、広く木材利用者が容易に情報交換を行い、協業とコミュニテイの形成により、木造建築の大規模化、広域化を目指し、古来より使い続けてきた木の温もりや伝統の継承発展を目的として別図体制のように国交省近畿整備局との連携のもと、事業主、建築士、ゼネコン、ビルダー、木材関係団体、木材関係工場、木材関係資材、工法会社、審査機関、試験研究機関等と連携して「関西広域木造建築普及促進協議会会長京都大学生存圏研究所五十田博教授」(事務局は一般社団法人大阪府木材連合会が担当)を2017年3月30日に設立した。
昨年度事業の成果と今年度事業の内容
関西広域木造建築普及促進協議会では、2018年度に「A材丸太を原材料とする構造材等の普及啓発事業」により、都市部での木造・木質化需要の創出のため、不動産における木造化/木質化がもたらす価値に関する調査を行い、木材の優位性や不動産における価値として、以下の点について明らかとした。一方で、調査の中では木材利用普及促進に向けた課題も明らかとなった。本年度はそれらの課題意識に基づき、調査を実施した。
昨年度事業の成果 |
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昨年度明らかになった課題と今年度事業の内容
明らかになった課題 | 今年度の事業内容 |
戸建住宅以外の都市での木造・木質化につい、現時点は未だトライ&エラーの状況であり、チャレンジし、ノウハウを蓄積・共有していくことが重要 | (1)今後の建て替え需要等を見据え、商業建築について、木質化の普及促進に向けた調査等の実施 ①商業建築の事例調査による木材利用の把握 ②商業建築設計者へのアンケートによる木材利用の意図やニーズの把握 ③商業建築の設計時に木材利用にあたって参考となる資料の作成 |
供給サイドの川上側と需要サイドの川下側においては、意識や情報についてもギャップがある | (2)川下側が地域産材利用にあたって得られる情報についての現状整理 ①地域産材利用啓発冊子の現況調査による、今後提供すべき事項の整理 |
事業実施により得られた効果
事業実施結果
商業建築の木質化に関する調査
①事例調査商業建築の木質化の実態を把握し、建築用途や利用箇所等の観点から木質化ニーズを分析するため、「商店建築」(㈱商店建築社発行)2018年10月号~2019年9月号の1年間分(計12冊)について調査を実施したところ、以下のこと等が明らかとなった。
一方、リフォーム産業新聞(2019/12/6)によると、無垢床の活用により、賃料が平均16%向上し、入居率もアップし300万円程度の改修コストが2~3年で回収できたとの事例も判明した。
調査結果(一部抜粋)
分析カテゴリ | 分析内容 |
建築用途と木質化箇所 |
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材種と木質化箇所・用途 |
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②設計者意向把握調査
設計者が商業建築において仕上げに木を用いる意図や使用頻度の高い規格材等について把握し、建築用途や利用箇所等の観点から木質化ニーズを分析するため、「商店建築」掲載事例の設計事務所 計135名にアンケート調査を実施したところ、以下のことが明らかとなった。
調査結果(一部抜粋)
分析カテゴリ | 分析内容 |
商業建築の内装等の仕上げに木材を使うことが多い箇所や建築物の用途、用いる理由 |
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商業建築の仕上げに木材を使うことが少ない箇所やその建築物の用途、用いない理由 |
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商業建築の仕上げに木材を利用する際のメーカー既製品等 |
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③専門家等へのヒアリング調査
桜設計集団一級建築士事務所 (防火等に関する専門家) | |
目的 | 木材の特性に関する分析軸に関する視点と、取りまとめ資料に掲載すべき防火等の法律に関する情報等の把握 |
ヒアリング 概要 |
(1)樹種による整理
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タミヤ㈱(木製サッシメーカー) | |
目的 | 事例調査では事例数が確保できなかった木製サッシの商業建築への利用状況等についての把握 |
ヒアリング 概要 |
(1)商業建築へのサッシの利用
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㈱悠設計 (建築士) | |
目的 | 木製サッシの商業建築への利用状況等商業建築の木質化の状況、普及促進に向けて感じている課題について |
ヒアリング 概要 |
(1)商業建築への木の利用
施行者不足
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④都市における木質化の普及促進に向けた資料作成 一部抜粋
- ※状況に応じた判断の成功の経験則を記述したもので、成功している事例の中で繰り返し見られる「パターン」が抽出され、抽象化を経て言語(ランゲージ)化する。クリストファー・アレグザンダーが提唱
記載事項
・法的条件 内装制限
・用途に関連する木の特性
共通箇所 | 含水率の確認・用途に応じた耐久性の選択・その他確認すると良い性能 |
事務所 | 木材の遮音性・吸音性 |
宿泊 | 木のリラックス効果・肌触り |
店舗 | 用途特性による汚れへの対応(主に床) |
医療 | 用途特性による汚れへの対応(主に床・壁) |
事務所 | OAフロアに対応したフローリング |
宿泊 | 壁面に活用できる不燃木材(ツキイタ) |
店舗 | プラスチック樹脂注入、充填した耐久性の高いフローリング |
医療 | 天井に利用できる国交省認定の不燃木材 |
事務所 | 共用部への利用による安らぎの創出 エントランスへの利用による高級感の演出 |
宿泊 | 客室天井への利用によるリラックス効果 |
医療 | 診療前の利用者への安らぎの創出 |
その他 | 木製サッシの紹介 |
木材調達の円滑化に関する調査
今後、中大規模木造等の普及資料を作成するにあたっての、必要な情報等を洗い出すため、設計者が木材利用するにあたって参考とすると考えられる、各都道府県の木材調達に関して情報を提供している冊子や、WEBページ等について記載情報のデータベースを作成し、木材調達についての情報提供の実態について分析を行った。調査結果(一部抜粋)
分析カテゴリ | 分析内容 |
建材の利用用途 |
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情報の種類 |
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都市部での木造木質化の推進に向けて
前述の調査を通じて、都市部での木質化、木造化推進に必要な点について、検討結果を以下にまとめる。(1)木質化手法の可能性の提示
事例調査により、商業建築への木材利用について、建築用途や使用箇所等について一定の傾向が見られる建築用途や使用される箇所等に一定の傾向が見られた。
また、設計者へ木質化手法についてアンケート調査をしたところ、多様な用途や要素への活用の様子がうかがえた。「木質化」も用途や要素で様々な知恵が込められており、細分化して語られることで、その可能性を広げることにつながることが明らかとなった。
(2)樹種の特性に応じた情報の提示・普及
国産材は針葉樹の杉・ヒノキが主流であるが、国内では広葉樹等の取り組みも進みつつある。一方、建築設計の視点から見ると、一材料としての特性情報が必要である。そのため、より川上・川中側は、「地域産材」ではなく、それぞれの「樹種」の特性を踏まえた「一材料」としての情報提供が必要である。
(3)川上と川中、川下をつなぐ情報の必要性
木造木質化のニーズは高まりつつあるものの、設計者が欲しい情報がまだまだ川上・川中から発信されていない様子が明らかとなった。
今後、森林環境譲与税の流れを受けて、木造木質化の普及啓発が進むことが想定されるが、普及啓発資料の作成の際に、設計者の視点も入れた取り組みが必要となる。また、地域にあるストック量を伝えることができれば、森林還元率の高い(歩留まりの高い)設計につながる可能性がある。
(4)木にかかわる人・技術・調達方法等の情報へのアクセシビリティの向上
設計に組み込んでも、施工者がいなかったり、木材調達がうまくいかなかったりという事例が見られる現状である。地域での事例を増やすとともに、設計者が活用したいと思った際に、情報へアクセスが可能となる、公的な情報窓口や交流できる場が必要である。
今後の課題と次年度以降の計画
本事業で得られた知見を広く普及・啓発することにより、これにより、中大規模建築物への木材の利活用の促進によるA材原木を中心とした木材利用の利活用促進に大きく資することが可能となった。本事業の成果を「都市建築物の木質化シンポジウムー設計者から見た木の利用に必要なことー」と称するシンポジウムを3月17日 大阪市中央公会堂で開催することで、幅広く普及させたい。また、今後建築事例のさらなる調査、設計者へのアンケート調査の数を増やし事例のパターン化の精度を高めるとともに、川上、川中、川下がコミュニケーションをとれるツールや場の開発に取り組んでいきたい。