徳島県木の家づくり協会

令和元年度 顔の見える木材での快適空間づくり事業

一般社団法人徳島県木の家づくり協会

事務局所在:徳島県

実施概要

事業計画


事業計画(pdfで表示されます)

 

実施概要

実施団体
 一般社団法人徳島県木の家づくり協会は、林業家から、製材、プレカット、建築家、大工・工務店までに川上から川下に至る幅広い事業者で組織され、徳島すぎを用いた顔の見える家づくりに向けた研究開発・普及活動を行っている団体である。
 今回の事業では、研究機関である徳島県立農林水産総合技術支援センター、徳島県立工業技術センター、九州大学大学院農学研究院環境農学部門、近畿大学産業理工学部の研究者らが参加した検討委員会で企画、検討を行い、新商品の開発・普及を目指した。
 
 
事業の目的
 需要の低迷するスギ大径材の新たな販路拡大を図るため、大径高齢樹に多く含まれる心材成分を新たな付加価値として“見える化”した「ヒーリング・ウッド」の試作とヒーリング・ウッドを活用した「ヒーリング・スペース」の提案を行い、各種イベントで普及・PRした。この事業によって、エンドユーザーの潜在需要を喚起させ、都市部などオフィス空間等での新たな販路を目指している。さらに、今回、着眼したスギ大径材、無垢製材品の成分の価値がユーザーに認められれば、材の付加価値が向上し、山元林家への利益還元が可能となり、持続的な林業経営が図られるものと期待しているところである。
 
事業内容・結果
(1)検討会開催
 検討会を3回、進捗会議を3回、その他打合せを2回実施。一般社団法人徳島県木の家づくり協会のメンバーと協力設計士、また連携機関である徳島県立農林水産総合技術支援センター、工業技術センターのほか、九州大学大学院農学研究院と近畿大学産業理工学部にもインターネット会議でその都度参加して頂き、商品化・試作・商品普及方法等に向けて意見交換を行った。
検討会議 進捗会議
※会議開催実績
R1.8.8「第1回検討委員会」:事業計画等の協議
R1.8.22「材料調達等打合せ」:試作品等の作成手順について打合せ
R1.9.12「第1回事業進捗会議」:協力設計者らとヒーリング・スペース設計
R1.9.30「試験計画等打合せ」:九州大学とのヒト試験等打ち合わせ
R1.11.14「第2回検討委員会」:ヒーリング・ウッドのコンセプト、ネーミングを検討
R1.11.29「第2回事業進捗会議」:九州大学と成分分析、ヒト試験等の進捗確認
R1.12.12「第3回事業進捗会議」:ヒーリング・スペースを検討
R2.1.10「第3回検討委員会」:各事業の報告
 
(2)原料調達から試作・居住快適性評価
 原料となるスギ丸太は当協会会員「TSウッドハウス協同組合」の組会員が所有する山林に生育する70年生スギを伐採し、同会員「ハウスG住宅センター協同組合」の原木市場で丸太選別作業を行った。製材・加工については、同会員「那賀川すぎ共販協同組合」の製材所で行った。そして、これまで当協会が徳島県や九州大学らと開発してきた新型乾燥技術による、スギの無垢乾燥材を使用した床材および壁材を「ヒーリング・ウッド」として試作し、揮発成分の分析、ヒト官能試験による居住環境での快適性評価を九州大学大学院農学研究院で行った。
 
(3)「ヒーリング・ウッド」のネーミングと「ヒーリング・スペース」の設計企画
 ヒーリング・ウッドの成分分析、ヒト官能試験の結果から、ヒトに対する快適感をわかりやすく一般ユーザーに伝えるよう、試験データの“見える化”に取り組んだ。
 また、当会賛助会員である協力設計士が、居住空間としてヒーリング・ウッドの具体的な使い方を提案した設計資料等を作成した。
 
(4)普及PRイベント開催
 ヒーリング・ウッドの普及用パネルやパンフレットを作成し、あすたむらんど徳島での「木づかいフェア2019(R1.10.19〜20)」や、県木材利用創造センターでの「フォレストサイエンスフェスタ(R1.11.10)」等、各種展示会で展示・PRした。
 

事業実施により得られた効果

(1)成分分析・居住快適性評価
 九州大学大学院農学研究院と近畿大学産業理工学部は、新型乾燥で試作した一連の材料から揮発する匂い成分について一般的な市販建材と比較した。その結果、新型乾燥法の条件では複数のスギ由来セスキテルペン類が検出されたが、比較対象とした市販建材を敷いた条件では検出されなかった。
 また、新型乾燥法で加工したスギ材と市販建材を室内の床材に施工し、床材表面から放出される揮発性成分の違いがヒトの生理・心理応答にどのような影響を及ぼすかについて検討した。その結果、新型乾燥法によるものはスギ由来のセスキテルペン類の放出量が多く、血圧が低下するとともに、ネガティブな心理状態を改善させるなど、ヒトの生理・心理面に好ましい影響を及ぼす可能性が示唆された。
居住環境での快適性評価
 
(2)「ヒーリング・ウッド」商品企画
 試作した新型乾燥法によるスギ材料を「ヒーリング・ウッド丹色(にいろ)」とネーミングし、成分分析やヒト官能試験の結果から、匂い成分がヒトに与える快適感を定量化。パンフレットにより“見える化”し、一般消費者にPRできる商品として企画することができた。
 
(3)「快適居住空間」の設計企画
 「ヒーリング・ウッド丹色」から揮発する匂い成分を付加価値とし、オフィスビルの執務環境、休憩場所等での利用を提案することとした。このため、当会賛助会員である建築設計士が担当し、具体的な施設・家具等の利用案を記載した設計資料を作成した。

※提案例
施設カテゴリ・・・・ レンタルオフィスのエントランスホール(EVホール)
改修ポイント・・・・ 小休憩がとれるリフレッシュスペースに転換
改修内容・・・・ 天井にヒーリング・ウッド丹色(t-15)をルーバー状に取付
壁の一部にヒーリング・ウッド丹色(t-15)を張付け
家具として丹色(t-15)を利用したシェルフを間仕切りとして設置


 

今後の課題と次年度以降の計画

  • 展示会、相談会等で「ヒーリング・ウッド丹色」を効果的にPRすることとしたい。その際、スギが本来持つ色・艶・香り・耐久性等の性能をユーザーに理解して頂き、商品の付加価値につながるよう販売戦略をたてていきたい。
  • 「ヒーリング・ウッド丹色」について商標登録し、販売戦略に活かす。
  • 新型乾燥法を普及させ、商品の安定供給につなげることとする。
  • 「ヒーリング・ウッド丹色」の心地良さを体感できるモデル施工を検討したい。