令和2年度 顔の見える木材での快適空間づくり事業
一般社団法人京都府木材組合連合会
事務局所在:京都府実施概要
事業計画
実施概要
実施団体の説明
一般社団法人京都府木材組合連合会は京都府内の木材関係の11組織(会員118事業者)で組織しており、京都府内産材の需要拡大・木材産業育成強化を主たる目的としている。かねてから、森林・木材産業の課題に連携して取り組んでいる、府森林組合連合会、京都府、府木連の製材・家具グループに加え、今回保育園協会とも連携し、府内産大径材(A材)の普及及び需要拡大に取り組む。
事業の目的
京都府内人工林の約7割が60年生以上となり、今後ますます大径材化が進行するなか、大径材の利用用途の減少等などにより、市場においてはA材として活用できるはずの大径材の多くがバイオマス燃料として利用されている。そのため、府内産材の価値を高め、ひいては林業の活性化につなげるため、大径材の特性を生かした付加価値の高い製品開発と需要拡大に取り組む。
一方、森林環境譲与税の交付が始まり、府内では保育園・幼稚園の統合化に合わせて木質化・木育等への問い合わせ等、関心が高まっているが、京都府産材を活用した家具・遊具のラインナップが少なく、特に幼児用の家具・遊具が不足しているため、木質化・木育等のニーズの高まりに京都府産材の供給側が十分に対応できていない。
そこで、実際に府内保育園との連携により、現場の生の声を聞き、試作、モニタリングを行い、「保育現場等で求められる家具・遊具の開発と製品カタログの作成」に取り組み、京都府産A材を活用した家具・遊具の普及・啓発を行うことで府内産大径材(A材)の需要拡大を図る。 |
事業内容・結果
当プロジェクトの進め方について
プロジェクトの実施体制としては、川上の大径材の供給を担う森林組合連合会、製材加工を担う府内製材所、府木連の会員でつくる家具部会、そして府内保育園の代表5園関係者と連携し、実際に保育現場の声(こんなのがあったらいいなぁを形にする機会)を活かし、大径材の利用拡大に繋がる製品を開発する。具体的な進め方については、府木連家具部会を中心にこれまでに制作した幼児用家具・遊具に加え、保育園に提案ができる新規製品のイメージをエントリーし、保育園関係者と意見交換を反映させた試作開発を行う。試作品は実際に保育園でモニタリングし、その意見等を踏まえた改良点を新たな製品化につなげていく。
提案時には協力が不明であった京都市保育園連盟(265園)も協力頂けることに成り、両組織の代表として5園の園長先生に参加頂くことになった。
第1回保育園関係者との意見交換会(令和2年9月2日)
家具部会において、これまでの幼児家具・遊具に加え、新たな新製品の提案をとりまとめ、意見交換会に提案。 ・京都府保育協会 2園(全体229園) ・京都市保育園連盟 3園(全体265園) ・府木連家具部会4社 ・事務局 京都府木材組合連合会 ・保育園向け、新たなエントリー製品等のイメージ提案により、意見交換を行った。 |
第1回検討会状況
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提案事例のイメージ画等
[ポイント]
- ①手触り・温かさ・音、匂い等、乳幼児期の発達には重要である。
もっと、色や音、曲線を使えたらよい。色は木目が消えない範囲で。 - ②子どもはおもちゃ一つでも大人が思いつかない遊び方をする。子供の創造力や感受性を刺激する子供サイズの本物が欲しい。
- ①家具の下部にある引き出し等は危険(スペースがあると入りたがる)
- ②扉など、動きのあるものは指を挟む恐れあり。扉は無しでオープンの方が良い。
- ③棒は振り回して危険なのでサイズの検討が必要
- ①小屋等の遊具は、大人は入れないけど子供は入れるくらいのスペース感
しっかり組み上げられて、接合できるものが良い。 - ②棚は手前が低く、奥が高いものだと、乳児でも取り出しやすい。
- ③本棚は中の仕切りが斜めになっていると、絵本の表紙が見えやすい。
- ④椅子を収納できるようなカートがあるとよい。⇒椅子の収納
- ⑤上手く片付けて、少しでも部屋のスペースを広く取りたい。
- ⑥おむつ交換台は、物が置ける板が出てくると、おむつ交換時に便利。
- ⑦幼児用ロッカー、フックは目や鼻が当たると危ない。
- ①天秤、虫眼鏡、スライド式の乳児柵、長靴の入る下駄箱(子供は靴が大好き)
- ②乳児用(よちよち歩き時の)の机・椅子でうまくアジャストできるものが欲しい。
- ③おもちゃでなかなか無いもの(缶ぽっくりの木バージョンとか)を作って欲しい。
- ①子供の密を避けられるものを家具で出来ないか。
意見交換会の結果を踏まえ、府内産大径材(A材)の普及・需要拡大について検討
(令和2年9月23日)①大径材の一般的利用方法(木取りとその活用)
平角取り |
正角取り |
割りもの取り (内装材・ラミナ・下地) |
- ・大径材の特徴である柾目を利用した板材(約物)、家具等への利用
- ・無節、上小節は節の少ない内装材、家具への利用
- ・平角、正角、板材、ラミナを集成材、よこはぎ集成材等の利用
- ・家具、遊具、空洞丸太、耳つき遊具等、端材等の部材等、使い方は多様
大径材の天然乾燥例 |
リアルブロック |
浮造り応接ベンチ |
保育関係者との意見交換会(第2回)(令和2年9月28日)
第1回意見交換会の保育園関係者の現場の声をもとに、家具部会各社が製品の再検討を行った結果、家具・遊具66点をエントリーし、第2回の意見交換会で検討を行った。検討会状況写真 | |
新エントリー製品等の画像
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第2回意見交換会での主な意見
- ・保育園は温かい雰囲気を大事にしている。有機的で温かく魅力的な空間を作るのに木製家具・遊具はとてもよい。
台形の机や丸太のまま、曲線、自然のもの、仕口加工の遊具等いろんな物があって混在した空間を目指すキーポイントになる。 - ・色々な形やサイズがあり、出来上がりが見えている物よりも、何が出来るかわからない物の方がよい。子供たちは自由にもの作りをする。
- ・ドアノブ、フックは子供たちが引っかけたり、怪我の原因になることがある。構造・設置位置に配慮が必要。
試作完了後の意見交換会(令和2年12月4日)
試作完了した製品を一同にそろえ、保育関係者と意見交換会を開催今回、モニタリングに附す製品は総数48点となった。
現場の声は一定反映されたが、実際に児童の反応が重要であり、モニタリングに附しその反応と改善事項の検討を引き続き行う事とする。
意見交換状況写真 |
試作製品群写真(製品の一部) |
試作完了後の意見交換会における保育関係者の主な意見
- ・「ナナメ棚」⇒棚の幅が薄いのでは?細いわりに背が高く、倒れそう。
- ・「おえかきボード」⇒アクリルなので絵の具を使用した後は洗いたい。アクリル板だけ取り外しが出来たらよい。下にキャスターがあれば動かしやすい。
- ・「滑り台」⇒階段部分と滑り台部分に分けると移動が楽。下部をトンネルにするとか。
- ・「クライミングウォール」⇒土台が斜めだと子供が落ちた時にホールドで顎等を打つ恐れあり。緩やかな斜めのものにすれば乳児でも遊べそう。
- ・「バランスボード」⇒裏にゴムをつけて、足を挟んでも危なくないようにしてほしい。
面白い形のものがあれば楽しい。
以上の意見を参考にそれぞれ園の特徴を踏まえ、試作品を配分し、モニタリングを依頼した。
モニタリング結果の意見(モニタリング結果)
- ・「コの字型入れ子ラック」⇒幼児用の机・椅子の代用で重宝。様々なサイズで使い方も色々工夫できる。簡単に持ち運び出来て便利
- ・「ログ調収納ボックス」⇒無機質な壁が置くだけで丸みのある暖かな雰囲気に。
- ・「キッズハウス」⇒ハウス内は子供たちの空間。窓から顔や手を出したり、隠れたり。
- ・「空洞丸太」⇒自然に近い形がいい。簡単に持ち運べる。上部が丸いので子供たちの体感が鍛えられる。径の大きさ、安定感等注文に応じて貰えれば是非導入希望。
- ・「一本歯下駄」⇒大人気で取り合いに。バランス感覚が養われる。歯の長さが色々あればバリエーションが広がる。
- ・「クライミングウォール」⇒大人気で順番待ち。登り切った後どうすれば良いか解らない。置き場所等の工夫がいる。
- ・「おえかきボード(アクリル)」⇒高さが1.3m程あったほうが良い。数人で書いていると狭そうなので横は倍ほど欲しい。面が広い方が絵も広がりダイナミックに。
- ・「スタッキング子ども椅子(肘掛付)」⇒背もたれをもう少し高い方が安全。肘掛けは幼児が落ちない。足を開きにくいという効果もあり。
- ・「楽器カホン」⇒2歳児には丁度の大きさ。打面の板を変えるともっと良い音が出る。
- ・「積み木」⇒1歳児で使用。丸穴にはめて、また積んで穴にはめて、集中して遊んでる。
- ・置くだけで一気に雰囲気の変わる物や、楽しいもの、よく考えられたものが沢山あり、新たな発見の機会になった。
京都府産A材を活用した家具・遊具の普及・啓発活動
・カタログ冊子の制作本事業で開発、試作した幼児用家具・遊具に加え、一般用家具をラインナップした。
府内の幼稚園(197)、保育園(494)、小学校(371)をはじめ、公共施設、オフィスなどにカタログを配布し、木質化のニーズを取り込むために、供給側から提案できる環境が整った。
カタログ冊子の表紙及び内容 |
・チラシ配布、Web広報
京都府木材組合連合会では、これまでから木材に関わる何でも相談に応じてきたが、京都府内で生産される大径材を利用し、家具等への活用等で需要を促す取り組みを強化するために、チラシを作り、ホームページやイベント等で府民に呼びかけを行った。
Webチラシ |
・PR活動
- ①訪問説明、イベント出展等による普及・啓発
コロナ禍の中、各種イベントの中止や、保育園への訪問自粛等、出展等の開催が出来なかったが、今回作成したカタログ冊子を府内保育園(494園)の他、小・中学校、高校、公共施設や福祉施設、更には京都府内産材の取扱事業体や緑の事業体等、普及チラシを同封し、普及・啓発を行った。
- ②木製品導入相談窓口の開設
府の府民税等による補助事業(木質化支援事業等)で、これまでからも府内産材の利用について相談窓口を開設し、木造・木質化の普及に取り組んできたが、これに加えて家具・遊具についても相談窓口を追加して、ワンストップで相談、見積もりから納品まで対応し、会員家具部会が連携して供給していくシステムを構築した。
事業実施により得られた効果
保育園、小中学校、高校、福祉施設、市町村含む行政関係施設の木質化については、国の森林環境譲与税、京都府では府民税等が導入されるなか、特に都市部の木質化は一層、推進するべきターゲットになる。この冊子はこれから木質化を図りたいと考えている保育園や福祉施設、小中学校、高等学校等の公共・民間を問わず、木質化導入の足掛かりとなるものと期待している。
今回、京都府内全域を網羅する二つの団体と連携できたことは非常に有意義であった。
協力頂いた、代表の5保育園には木材の良さを理解して頂けたが、今回の連携を機会に保育園団体加入(494園)園にも冊子や木質家具・遊具の情報を発信・共有できることで、自然素材である木材に園児が親しみ、木材への理解を深めて頂く事が可能となった。
その結果、大径材の活用につながり、柾目、板目の特徴を活かした活用方法だけでなく、大径材の節を活かした製品作りや耳付きベンチ、空洞丸太に加工する事で移動にも配慮し、自然素材を活かした遊具を作るなどユニークな発想も生まれ、大径材(A材)の利活用の幅が広がったことは成果である。
今後の課題と次年度以降の計画
森林環境譲与税の交付が本格化する中、特に都市部での木質化が大きな焦点にもなってきており、木質化に向けた様々な提案がいま求められている。木材組合連合会としては、大径材のさらなる需要拡大のため各団体と連携しながら、モニタリング結果を活かした木製遊具をはじめ製品の開発と改良を継続して行い、発注者のニーズに近づけることが課題である。
次年度以降は、今回作成した冊子を活用し、大径材を活用した家具・遊具を広くPRし、需要拡大につなげるとともに、家具等導入相談や見積依頼対応、家具納品までをワンストップで対応する。
また、今回協力頂いた5園とは、今後も連携を図りながら、保育園現場からの意見をしっかり反映した製品づくりと、大径材の利用促進につなげていきたい。