平成26年度 木造住宅等地域材利用拡大事業
株式会社内田洋行/株式会社良品計画/パワープレイス株式会社
実施概要
「木の暮らしの再生」「豊かな森づくり」を目的に、以下の4つのインプットを受けて、課題と解決方法を検討・実施した。
(図2「4つのインプットと4つのアウトプット」参照)
- (ア) 宮崎県視察
スギ生産量日本一である宮崎県はスギを活用するインフラのレベルが高いと考えた。それは同時に、スギ家具を製作するにあたり、その課題に最も早く気付き対応を考えている「スギを中心とした林業課題先進県」であるとも捉えることが出来ると考えた。 - (イ) 課題の再認識
様々な分野の有識者に、インタビューを実施し、座談会で議論して頂いた。スギの課題を一面から捉えるのではなく、幅広く多面的に捉えることで、我々の理解を深めることが重要であると考えた。 - (ウ) スギ製家具のプロトタイピング
宮崎県内で、地産材を用い家具を製作するという流れを、実際に行ってみた。これにより、流通面や技術面での課題が浮き彫りになると考えた。 - (エ) 素材試験
スギを他の樹種と比較試験することで、スギの素材特性を把握し、課題の糸口が見えるのではないかと考えた。
得られた効果
上記インプットを通して検討した結果、着目すべき大きな課題を以下の4つに絞り込んだ。
- (ア) 川上から川下への流通の課題
- (イ) マーケット販路(出口)の拡大
- (ウ) 利用者(消費者)の意識・啓蒙
- (エ) プロダクトの規格・基準・品質
これらの課題のうち、「(ウ)利用者(消費者)の意識・啓蒙」と、「(エ)プロダクトの規格・基準・品質」は、今回の活動ですぐにとりかかれる課題である。のみならず、残る2つの課題解決の前提条件とも言える。またスギを活用した木製家具の普及に対する最初のボトルネックにもあたる。「(イ)マーケット販路(出口)の拡大」は、次に解決すべき課題である。そこまで流れが出来ると、おのずと、「(ア)川上から川下への流通の課題」に対する取組みは増えてくると考える。そして、この最初のボトルネックは、個々の民間企業には解決が難しい課題でもある。
そこで、私たちはこの2点に対する取組みを実施することにした。
具体的には、4つの情報ツールをアウトプットした。
利用者の意識・啓蒙に関するツールとして「木本」と「木図工」、プロダクトの規格・基準・品質に関するツールとして「木準」を制作した。そして、これら全体の取組みを俯瞰できるツールとしてWeb「木図鑑」を制作した。
(図3「課題の構造と4つの情報ツール」参照)
今後の課題
可能であれば、継続して4つのプロモーションの充実を図っていきたい。林野庁には是非、予算化措置を行って頂き、今後の私たちの活動を応援してもらいたいと考える。
- (ア) 「木本」今回は林業課題先進県である宮崎県を中心とした九州地方への取材を元に編纂した。彼らの取組みは先進的であり、全国の共通の課題を持つ人々にとって共有すべき財産でもある。そして、その他のエリアにも多くの共有すべきノウハウや財産が有り、これらを丁寧に取材することで、日本の林業やそれに携わる産業の底上げになると考えている。
- (イ) 「木図工」今回、九州地方における大消費者圏である福岡市で実施したが、他の地方にも大消費者圏はある。これらの都市を中心に木図工ワークショップを地道に展開していく必要性を強く感じている。
- (ウ) 「木準」スギの特性を把握するための素材試験は多岐にわたる。今回実施できたのは、その中のごく一部である。継続してデータを集める必要性を強く感じるが、そのためには多くの時間と手間と費用が掛かることも懸念される。林野庁主導の元、今後も継続して全国のスギのデータ化を図りたいと考えている。
- (エ) 「木図鑑」各ツールの充実に伴い、俯瞰性・検索性がさらに求められる情報となっていく。利用者の意識向上、啓蒙の為にも広くアクセスできる媒体がますます重要になっていくと感じている。
以上