平成27年度 木づかい協力業者による木材利用の促進事業
ナイス(株)、素敵木材倶楽部
実施概要
①国産材を利用した商品開発
1.表層圧密フローリングの開発
【商品開発の背景と概要】桧や杉の国産針葉樹フローリングでは、木材自体の表面硬度が低い為、特に非住宅分野でのフローリングには採用されることが少ないことから、国産針葉樹の硬度あるフローリングの開発が必要である。そこで、本事業では国産針葉樹の圧密無垢フローリング等の内装部材を非住宅及び住宅向けに開発することを目的とした。
表層圧密フローリングとは、原板に熱盤プレスで圧力をかけ、表層部分を圧密化させるものである。また今回の圧密は従来の圧縮方法とは違う表層圧密という技術を活用した。選定樹種はスギ、ヒノキ、カラマツの3種類で実施を行った。なおスギは産地による比較をするために、宮崎県の飫肥スギと徳島県の徳島スギ及び栃木県の八溝スギの比較を実施した。これらの材を比較する事で、表層圧密加工を施すのに最適な原板の含水率、最適な樹種、産地を絞り込む事を目的とした。材を選定したのちに、表層圧密成形を行い、その後性能の評価をするための試験を行った。素材調達には、素適木材倶楽部の全国114社の製材メーカーの中で加工板を専門的に製造しているメーカーと連携し、各地方で産出される特徴ある製材品を活用した。
2.国産ヒノキによる和室キットの開発
【商品開発の概要と背景】和室は一般住宅にて、年々減少傾向にある。和室は日本の文化であり、日本人の心である。新築時には和室がない家も増えてきており、リフォームで和室空間を造りたいという要望、さらに、オリンピック、パラリンピックなど今後は日本の文化を国内外に向けて発信する機会が増えることへの期待に応え、簡単施工の和室部材や和室キットの開発を国産材で行う。開発のポイントは簡単施工かつ部材を施主の趣向に合わせて選べるという点である。さらに、簡単に施工のできる和室空間の提供を目指す。また近年では役物の需要が減少していることもあり、京都北山及び吉野の磨き丸太や桧の造作枠材など役物や国産のい草を使った畳などの新たな利用開発を目指していくこととした。簡易的な和室キットを開発するにあたり、設計図面の作成を実施した。800㎜をモジュールとして設定を行い、施工性を上げるために、正方形にて図面を作成した。また一般的住宅の天井H2400に対応するために土台からの高さを2,378㎜に設定を行い、住宅内での収まりが良い寸法を意識した。また使用する木材に関して柱はヒノキの105角の無垢材を活用することとした。なお梁は150×105を利用するが、無垢材での安定供給が難しいために化粧単板張りにて活用を行うこととした。
②開発商品のマーケティング
2016年1月29日~31日に東京ビッグサイトにて開催した「木と住まい大博覧会」2016東京(来場者数は68,486名)での展示を通してマーケティングを実施した。マーケティングの対象としては、幅広い来場者の中から特に、地域の工務店や(木造)戸建てを扱っている設計事務所等、川上から川下の流通材を扱う関係者の方々を中心にPR活動を行った。会場には表層圧密フローリング及び和室キットの実物展示をした他、説明者を配し、商品開発までのストーリー、特徴等を強くアピールした。得られた効果
①国産材を利用した商品開発
1.表層圧密フローリングの開発
安定した圧密処理を行うには、含水率15%以下を利用する事が重要であるという事が分かった。また、表層圧密化したフローリングの性能試験は、いずれも表層圧密と非圧密を比較した場合、表層圧密が有利になる結果となった。
2.和室キットの開発
パワービルド工法を採用し、施工の簡易性が可能となった商品を開発できた。
②マーケティング
表層圧密フローリング
説明をさせて頂いた方には本商品は概ね好評で、製材メーカーからは地域材対応への問合せも受けた。ゼネコンや設計事務所からの問い合わせもあり、需要への期待も感じる事が出来た。問合せ内容としては、規格や具体的な価格、強度、アフターメンテナンスや、圧密が戻る心配がないか、等と言った事が多かった。なお、今回の展示会での反応を踏まえた内容で、表層圧密フローリングのコンセプトカタログを300部作成した。
和室キット
「日本らしさ、和の心」をイメージした展示の狙い通り、海外からの来場者の反応が非常に高かった。また、エンドユーザーも立ち止まって見学される方が多かった。輸送や組立方法等、具体的な質問を受けることが多く、興味の高さを感じた。国内では、海外で活躍されている設計事務所から、具体的な案件を頂いた。また、実際に1件の受注が得られた。
今後の課題と次年度以降の計画
1.表層圧密フローリングの開発
今回、多産地、多メーカーの材を用いて表層圧密処理を行った結果、圧密された材にワレ等が出るばらつきが出た(表2参照)。これは、樹種や産地の違いよりも、原板そのものの含水率が原因であること分かった。含水率が20%を超えるものはワレが発生しやすく、また、芯や追い柾の材は成形が不均一になる原因となる事が見られた。従って、表層圧密の技術に加えて、含水率15%以下の材の安定調達、木取りの際に芯材部分かつ柾目の際に省く技術の開発が課題となる。また、今回のカラマツのように、早材を多く含む材は、スギやヒノキと同じ圧縮スケジュールでは表層ではなく全体圧縮になってしまった事から、それ用の圧縮スケジュールの確立も課題となる。さらに今後は、表層圧密した材をフローリング以外の商品に展開させていくことも課題となる。非住宅向けや外構材、設備機器等、幅広い商品展開をしていく事で、地域材利用をより一層拡大させていく事が重要となる。2.和室キットの開発
パワービルド工法を採用した事により、施工の簡易化には成功し1日で施工できる設計が確立された。今後のさらなる普及を目指す為には、重量の軽量化とコストダウンが必要となる。また、商品の市場への出し方も、販売だけにこだわらず、例えばレンタルやリースといった、柔軟な形をとる事で、より多くの方に和室キットを手軽に利用して頂ける事が予想される。記録写真
表層圧密フローリング
- 表層圧密(飫肥スギ)
- 木と住まい大博覧会での展示
和室キット
- パワービルド工法
- 和室キット完成品(Cタイプ)
- 和室キット完成品(Aタイプ)