住宅 東海

平成26年度 木造住宅等地域材利用拡大事業

岐阜県木材協同組合連合会

その他の記録写真はこちら

実施概要

今回の事業は、次の3つの事業{(A)、(B)、(C)}で組みたてられており、各々その概要を記せば次のようである。

(A)外壁を板張りとした準耐火構造(45分)の試験・研究・開発

板張り外壁が45分間、火災に耐える木造軸組工法は、国内では例がない。板材だけで耐火を考えると厚さは約60mm必要である。厚さ60mmの板は、外壁としての機能には適さないため、下地の材料と組み合わせて耐火時間がクリアできるように考えた。同時に、市場性・施工性・運搬の利便性・コストなどを検討し、市場に商品として受け入れられることを目的に構造を次のように決定した。

  • 外壁側 岐阜県産の杉・桧、厚さは30mm
  • 下地材 構造用合板、厚さは12mm
  • 内壁板 強化石膏ボード、厚さは15mm

また、試験体の継手部分の形状は、燃え抜けがないこと、外部に使用するため雨水処理、施工の容易であることなどを研究し独自の3種の形に決定した。

  • 変形本実加工・下見板張り加工・本実加工、また、試験体に使用する木材は岐阜県JAS工場で製材した東濃地方の杉材。

そして、性能評価試験については、次のように実施した。

  • 試験場所は(公財)日本住宅・木材技術センター(東京都江東区新砂3-4-2)
    試験は1日1体で外壁側2回、内壁側2回
(B)県産材ヒノキを用いた準耐火仕様の木造トラス(組立梁)の試験研究、開発等

ターゲットは公共木造建築物(保育園、老人福祉施設等を含む。以下公共木造。)とし、一般の設計者、施工者が使いやすくかつ安価なシステムを開発する。

(C)板張り外壁材及び木造平行弦トラスの普及宣伝活動

(A)に関しては、防火制限地域内(防火地域・準防火地域・法22条地域)の外壁はサイディング・板張り・モルタル塗等に制限され、準耐板張りの認定は告示を除いて未だないので、今回試験・研究・開発している木質部材を、木材関係業者・住宅建築業者等を対象に普及啓発活動を行った。

(B)に関しては、すでに岐阜県木連が開発した準耐火仕様でない木造平行弦トラスを活用して、木材目材関係業者・住宅建築業者・一般消費者を対象に普及活動を行った。そして、木造平行弦トラスの実物大の設置展示を行い、普及宣伝活動を実施した。

得られた効果

これについても、次の3つの事業{(A)、(B)、(C)}で、各々について記せば次のようである。

(A)外壁を板張りとした準耐火構造(45分)の試験・研究・開発
  • ○板張り準耐火構造(45分)は、試験直後から、特に建築士や工務店の反応が大きく、市場の需要は大きいと感じている。防火規制区域に板張りが実現すれば、RC造や鉄骨造と見分けがつかなかったが、 一見して分かるとともに、街の景観もやすらぎのある空間になる。
  • ○3階建・1500㎡までであれば木造準耐火構造が可能であり、学校や施設・病院・伝統建物の改修どに利用できる。一方、都会の住宅密集地域は敷地が狭い上、重機による工事が困難なことから木造が増加傾向にあり、板張りの防火壁として使われる。以上から、今回の板張り準耐火構造(45分)の認定は、地域木材の需要拡大に大きく貢献できると考えている。
(B)県産材ヒノキを用いた準耐火仕様の木造トラス(組立梁)の試験研究、開発等
  • ○汎用性のある、合理的な仕様設計について、事業主体の県木連に加え、構造設計者、大手金物メーカー、木材供給業者と連携し、様々な面からもっとも合理的な仕様を検討した。また、木質構造、防耐火の有識者からアドバイスを頂いた。また、意匠設計者にも積極的にヒアリングを行い、実際の物件で利用することを想定して仕様設計を行った。現段階では非常に汎用性のある合理的な設計となっていると考えている。
  • ○性能の明確化について
    本事業では、次に示す様々な性能試験を行い、本工法の特性を把握した。
    • 接合部試験 :
        各接合部の引張、せん断に対する構造性能試験。耐力、剛性を評価。結果を構造計算構造解析に用いた。
    • 比較検証試験(接合部):
        一般的な接合方法について試験を行い、比較対象とした。
    • 実大曲げ試験:
        標準的に使用されるであろうスパンの実大試験体を作成。曲げ試験を行った。結果を構造解析結果と照らし合わせ、解析モデルの妥当性を確認した。
    • 比較検証試験(実大曲げ):
        一般的な接合方法で組み立てた試験体について試験を行い、比較対象とした。
  • ○集成材と比較した場合のコスト的な優位性については、標準的と思われる使用条件(スパンなど)を設定しコストを試算した。また同条件の等価な集成材(外国産材、国産材)のコストを算定し比較を行った。
(C)板張り外壁材及び木造平行弦トラスの普及宣伝活動

建築基準法による防火制限のある地域では、従来、外壁材には木材が使用されていなかった部所に、この事業により研究開発された製品を使用できることになる。また、住宅建築の小屋組み等の構造部材として、集成材でない一般製材品でプレカット加工し、この木造平行弦トラスが使われることが可能になる。このため、この種の普及啓発活動、PR活動を広く深く行うことにより、地域材の需要拡大に大きく寄与するものと考えている。

今後の課題

  • ○ 森林を生業としている関係者の材木や山に対する強い思いと市場の需要に答えるために「施工要領書」「講習会の開催」「広報活動(ホームページ・パンフレット)」など体制を整える。
  • ○ 板張り外壁材及び木造トラスの積極的な普及啓発及び広報活動の実施
  • ○ 運用するために次の必要な書類の整備とパンフ等の作成
    • 設計施工マニュアルの整備
    • 木造平行弦トラスにおけるクリープ試験の本格的実施

記録写真

(A)の写真
  • 製材加工工場の調査
  • 含水率検査
  • 板の形状の検討
  • 構造体製作
  • 構造体製作
  • 評価試験(外壁側板張り)
  • 評価試験(外壁側板張り)
  • 評価試験(外壁側板張り)
  • 評価試験(外壁側板張り)
  • 評価試験(内壁側石膏ボード張り)
  • 評価試験(内壁側石膏ボード張り)
  • 評価試験(内壁側石膏ボード張り)
  • 評価試験(内壁側石膏ボード張り)
  • 実物大模型3体
(B)の写真
  • 接合部試験の様子(試験場にて 左:常時を想定した試験 右:火災時を想定した試験)
  • 実大試験体加工の様子(県内プレカット業者にて)
  • 実大曲げ試験の様子(試験場にて)
  • 実大曲げ試験の様子(試験場にて)
(C)の写真