ひょうご木づかい王国学校
ひょうご木づかい王国学校
神戸ハーバーランド umie MOSAIC (ウミエモザイク)2階
http://kidukaioukoku.net
兵庫県木材業協同組合連合会が運営する「ひょうご木づかい王国学校」には、2015年5月のオープン以来、毎日たくさんの家族連れが訪れています。ファッションやグルメを楽しめる神戸ハーバーランド内の大型商業施設「umie MOSAIC(ウミエモザイク)」2階に常設し、来場者数は10月時点ですでに3万人と、大変な賑わいです。
同施設には、木のおもちゃのほかヒノキのボールプール、ツリーハウスなどを設置。木のあたたかさ、やわらかさを肌で感じながら、心地いい杉の床に座って、親子で目線を合わせて遊ぶことができます。壁には、木材を使って暮らす「木づかい王国」の人々がやさしいタッチで描かれています。
こうした、一般市民が親しみやすいネーミングとコンセプトは、民間企業との恊働により生まれました。誰もが気軽に訪れ木と触れあえる空間を提供しながら、週末には専門の森林インストラクターなどを招いてワークショップなどのイベントも開催。魅力的なコンテンツでファンを着実に増やしています。
また木材、特に県産材を取り入れた暮らしの良さを再発見してもらえるよう、木造住宅を建てた方のインタビュー動画をモニターで流したり、木にまつわる書籍を読める図書コーナーを設けているほか、月に2度、建築士による住宅相談会も行っています。
県産材の利用推進事業として大きな成果を上げた「ひょうご木づかい王国学校」。その開校の経緯、そしてお客さんを惹き付けるための秘訣について、お話をおうかがいしました。
松野会長さん
日本は世界で唯一、木の文化を持つ国です。それを絶やしてはいけないし、大工の技術も継承していかないといけません。最近は鉄骨とコンクリートの建物が増えており、子ども達も木に触れる機会が少なくなりました。そこで、マンション住まいの方が多い都市部にこそ、木のやわらかさ・あたたかさを肌で感じれらる場所が必要だ、との想いから「ひょうご木づかい王国学校」が生まれました。
兵庫県には、六甲山を越えれば杉・ヒノキの一大産地があります。輸入材ではなくこうした県産材を利用してもらうことが地域の産業を活発にし、さらに自然環境を守ることにもつながります。木の良さを次の世代に伝える木づかい王国学校は、循環型社会の実現の一歩なのです。
umieに来たら立ち寄ってほっとできる場所、お子さんが木に親しむことができる場所。いい空間を提供できたと自負しているので、今後もぜひ継続していきたいですね。
松田専務さん
これまでも木材利用を啓発する単発のイベントはありましたが、その熱は一過性のもので、イベントが終わると忘れられてしまうことが悩みの種でした。そこで、リピーターを生み、木への興味を深めてもらえるように、「木づかい王国学校」を常設でオープンしました。「あそこに行けば無料で木のことが分かる」という認識がみなさんに定着すれば、木材の利用促進につながるはずです。
大変だったのは、事業開始からオープンまで2週間しかなかったことです。商業施設なので昼間の工事ができず、夜間から朝までの工事を急ピッチで進め、なんとかオープンすることができました。
奥まった場所にあるので最初は来場者も少なかったのですが、新聞広告や口コミの効果で、今では平日でも200人ほどの方が来場しています。半日ほどのんびり遊んで帰る方もいらっしゃっるので、居心地のよい空間を提供できていると思います。
喜多課長さん
オープン当初は木工教室を開催する予定でしたが、工作物を持って帰るのが大変ですし、来られるお子さんの年齢層も低いため、すぐに方針を変えました。今は、色塗りなどの簡単な工作を主に行っています。
本来の目的は県産材の利用促進です。色塗りは一見関係のないイベントに見えますが、まずは親子で楽しんでいただき、木の良さを体感してほしいと思っています。木材利用の押しつけにならないよう、お客さんのほうから来てもらえる工夫をしています。
また、来場者アンケートも行っています。回答してくれた方には、よりステップアップしたイベントの情報提供を行い、参加者にはより深く木材について興味を持っていただく。こうすることで、多数の来場者の中でも特に木に関心を持った方たちを吸い上げることができています。
すぐには効果は現れないかもしれませんが、数年かけて木の良さを広めてくれるインフルエンサーを育成できれば、木造住宅の需要増加につながると思います。
スタッフの皆さん
同じ施設内で買い物や食事を楽しめるので、たくさんの親子連れが遊びに来られます。入り口からは木のいい匂いがして、中をのぞけば子ども達が楽しそうに遊んでいますから、お子さんが大人の手を引っ張って入ってくることもあります。受付が奥にあるので入りやすいのでしょう。遊んでいる様子をフェイスブックで動画配信しているのですが、それを見た親子が「同じ遊びをしたい」と来られることもあります。
学校内では、広いスペースで何百個もの積み木を使えるので、家とは違ったダイナミックな遊びができると好評です。また、木のパズルや絵合わせなど、スタッフ手作りのおもちゃも用意しています。
子育てを経験したスタッフや、ものづくりが好きなスタッフが創意を尽くした学校です。安全第一で、楽しみながら木に親しんでもらって、大人になったときに木造住宅を建てようと思うきっかけになればうれしいです。
土井班長さん
兵庫県では、以前から家具や住宅への木材利用を推進する事業に力を入れています。特に2014年度からは、「ひょうご木づかい王国」という親しみやすいキャッチフレーズをもとに活動を始めました。県産材の端材で作った積み木で子ども達に「夢の家」を作ってもらい、2015年の3月にハーバーランドのスペースシアターで兵庫県の大きな地図の上に家を展示するなど、さまざまな取り組みを行ってきました。
そして今回、もっと多くの方々に県産材の良さを知っていただくため、木材業協同組合連合会と連携して、王国学校という拠点を設けました。
これまでは、木製家具の購入や木造住宅の建築の補助など、「点」としての事業が多かったのですが、常設の拠点ができたことで継続的に木の良さを知っていただく機会を設けることができます。木と触れあえる場所を提供すると同時に、より身近な情報発信拠点となることを期待しています。