徳島県木材協同組合連合会

令和5年度 顔の見える木材供給体制構築事業

徳島県木材協同組合連合会


事業計画

事業計画(pdfで表示されます)
 


実施概要

(1)実施団体の説明
当会は川上の素材生産、川中の加工・流通、川下の家づくり団体等を会員・賛助会員に持ち、広範な木材事業者を傘下に有する県内唯一の団体である。
県内の森林面積は31万haで、戦後造成された人工林資源が充実し、スギ・ヒノキ人工林は11令級以上の森林が半数を超えている。この豊かな森林資源を背景とし林業・木材加工業が成立してきた。特に徳島小松島港湾に昭和40年代に造成された臨海型の津田木材団地には、最終需要に近いプレカット等の加工体制が充実している。一昨年には徳島南部自動車道のインターチェンジが開通し近畿圏へのアクセスが向上し、今後、外材資源に頼らない、県産材資源を活用した、マーケットインを重視したサプライチェーン構築が可能な地域である。
こうした中、令和3年のウッドショックに対応して、外材資源に頼らない県産材の力強いサプライチェーンを構築するため、令和3年8月に川上から川下からなる「徳島サプライチェーンマネージメント推進フォーラム(以下徳島SCM推進F)」(当会が事務局)を組織化して課題解決にあたってきている。
 
(2)事業の目的
令和3年10月、「都市(まち)の木造化推進法」が制定され、公共部門のみならず民間での木造化等の動きが顕著となり、SDGsの環境意識が高まる中、木材業界に追い風が吹いている。
こうした中、本県では、昨年春に全国初の「あらわし木造4階建県営住宅」や、「私立神山まるごと高専校舎」が竣工した。今後、こうした非住宅分野において、安定的な木材需要を確保し林業生産活動の活性化につなげたいところである。
このため中大規模木造建築物への木材の安定供給体制強化を図るため、①「徳島SCM推進F」で安定供給に向けた合意形成を図ること②設計者等が利用できる情報伝達の仕組みを構築すること③中・大規模木造建築物に関わった工務店等へのヒヤリング等から木材の材料調達について指針を作成することなど、具体的取り組みを進めることとした。
 
4階建県営住宅 徳島市
神山まるごと高専 神山町
 
(3)事業内容・結果
【木材の安定供給システム構築】
 
徳島県において、現状では合板用B材丸太や板挽の4m採材が主流であり、建築構造材、特に中大規模建築物に必要な長尺材の供給が不安定である。このため、安定供給体制に加え、主伐後の木材資源持続性等について川上~川下間の関係者で情報交換会(徳島SCM推進F)を実施し、合意形成を図ることができた。
R5.9.29 第1回情報交換会 徳島市
R6.1.24 第2回情報交換会 徳島市
第1回情報交換会(徳島SCM推進F)
 
【中・大規模木造建築の課題検討】
低迷する住宅市場に変わり非住宅分野での木材需要に期待が高まっていることから、公共・非公共部門で建てられた中・大規模木造建築をケーススタディとして、建築に関わった施主・工務店・設計者・材料供給者・プレカット工場等に対し、特に県産材への意向と材料調達の課題についてヒヤリングを実施した。あわせて「とくしま木造建築学校運営協議会」のメンバーからなる「専門部会」(R5.10.6)を開催し、中大規模木造建築や内装木質化を検討する際の指針ともなる「建築家が考える木造建築 徳島2024」を発刊した。
専門部会(建築設計) R5.10.6

大分木造施設視察 R5.10.30

【市場等の機能強化】
 
製材メーカーと需要者の中間に位置する「製品市場」や「プレカット工場」の機能を活かし、設計者等への情報発信やニーズの把握など仕組みを検討することとした。あわせて、県外大型木造施設(大分レゾナック武道スポーツセンター)を視察し、材料供給や建築構造等の課題を調査。「視察報告会」(R5.11.13)や製品市場やプレカット等からなる「専門分科会(合同)」(R5.12.22)を開催し本県において大型木造施設を建築する際の技術課題について検討した。
視察ツアー報告会 R5.11.13
 

事業により得られた効果

(1)木材の安定供給システム構築について
2回の情報交換会で、県内外における木造建築を巡る状況、特に中大規模木造建築を需要展開する際の技術課題等について意見交換し、川上、川中、川下の関係者が情報共有できたことは大きな成果である。
川上の委員からは、一昨年12月に「徳島伐採搬出・再造林ガイドライン協議会」を設立し、伐採跡の再造林対策について検討を始めているという発言があった。これに関し有識者から、ヨーロッパや国内でもグリーンウオッシュ(見せかけの環境保護対策)が課題になっており、消費者から問題視されない、環境に配慮した再造林促進策を考えなければならないという、フォーラム参加者への重要な問題提起があった。
 
(2)中・大規模木造建築の課題検討について
【設計・施工・材料供給者へのヒヤリング結果】
実際の建築事例について設計・施工・材料供給者・施主等に対してヒヤリングを実施し、県産材を使う際、次のような課題が明らかになった。
①情報の共有化:設計に必要な情報が手に入りにくい状況である。県内で流通
している製品の種類、寸法のほか、プレカット工場等で可能な加工断面や長さ等の情報を知ることのできる仕組みが必要である。
②県産材を検討する場の設定:中大規模木造建築について県産材しばりをはず
すと、流通・納期等の面で他県産材・外材が選択される。早い段階で生産者と設計者双方で県産材について検討する場があると、その事が設計支援にもなる。その上で、苦手分野を近隣県と連携することを考えるべき。
③製品の品質管理:規格をできるだけ標準化することで小規模工場でも分担で
きる仕組みができる。人工乾燥も効率化でき、バラツキも少なくて済む。また中大規模木造となり量が多い場合、乾燥状態を保つことが出来る保管場所の確保が必須条件となる。このため製品市場のストック機能に期待したい。

県営住宅の設計・施工・木材調達のスケジュール
 
【施主へのヒヤリング結果】
 
①設計者からのアプローチ:設計士から提案を受け木造が選択肢となったという声が多かったほか、耐震性・耐火性・耐久性に関して設計士の説明で不安は和らいだようである。木造普及の窓口として、設計者の役割が重要である。

②木材を使うメリット:木材の軽量性を活かせば基礎工事費用が抑えられることや、法定耐用年数が短く、減価償却費等を試算すれば長期的な税負担が抑えられる。直近では木材に限らず建設資材が高騰し、労務費上昇等の影響で建設コストを考えると木造建築は有効であり、そうしたメリットを伝えることが重要。

③地域経済への影響:地域の木材を選択すれば製材、林業者の利益となる。更に利益が域内消費に利用されれば、地域内で経済が循環する。木造を選択した方が地域経済全体にプラスとなるという判断で木造化を選択した事例もあった。

以上のとおり、ヒヤリング結果は「建築家が考える木造建築 徳島2024」に反映。冊子を活用し公共・非公共部門での需要喚起につなげたい。
建築家が考える木造建築
 
(3)市場等の機能強化
レゾナック武道スポーツセンター等の大型木造施設を徳島SCM推進フォーラムのメンバーで視察し、当時建設に携わった大分県、大分大学、県木連、九州大学の方々と意見交換した。参加者と具体的な課題を共有できたことは大きな成果となった。視察後、報告会と専門部会(製品市場・プレカット合同)を開催し、技術的な課題を検討し、県内で大型木造施設を建築する際の設計・施工、材料供給、製材、乾燥、プレカット加工での課題について解決策を検討した。その中で製品市場、プレカットの役割が具体的に見え始めた。
 

今後の課題と次年度以降の計画

  • 中大規模木造建築への需要展開について、業界の機運が盛り上がってきた。今後、川上、川中側と川下側設計者とで、この事業で明らかになった原材料の調達、製品の品質、建築工法等の課題を解決していくこととしたい。
  • 県産材だけでは中大規模木造建築への材料供給が難しい場合、近隣諸県で連携し「相互認証」も視野に入れた協議を関係機関で協議したい。
  • 「建築家が考える木造建築 徳島2024」を標準モデルとして、企業・市町村等が木造建築を検討する際の指針として広くPRしていきたい。
  • 再造林や木材流通体制など、環境に配慮した仕組みを検討したい。