栗山町ドライウッド協同組合

平成30年度 A材丸太を原材料とする構造材等の普及啓発事業

栗山町ドライウッド協同組合

事務局所在:北海道

実施概要

事業計画


事業計画(pdfで表示されます)

 

実施概要

実施団体の説明
 提案者は、(地・独)北海道立総合研究機構(以下、道総研)が開発した「コアドライ材※」を主に生産する目的で、平成26年1月に設立し、公共建築向けを中心にカラマツ構造材708m3、羽柄材503m3(平成28年実績)の乾燥材を供給している。コアドライの生産にあたっては、人工乾燥構造用製材のJASと生産事業者の認定が必要であるが、管柱については、独自に機械等級区分構造用製材JASを取得するなど、品質の明確化に向けた取り組みを行っている。また、提案者は設立当初より、道総研、むかわ町、苫小牧広域森林組合の4者間で連携協定を締結するほか、他の地域でのコアドライ生産業者との連携強化を深めており、道産材の活用・普及促進,安定供給に注力している。

※コアドライ材:カラマツ正角材及び平角材の新たな乾燥技術により、材の内部(コア)までしっかりと乾燥(ドライ)し、割れやねじれの少ない高品質な建築用材
 
事業の目的
 本事業では、A材利用として極めて利用意義の高いコアドライを公共建築向けに供給することを主目的とし、公共建築向けの需要に対応するために、素材生産からの安定供給を各段階で実現する仕組みを構築するほか、木造設計専門家による講習会などを開催し地域材を最大限活かした木造設計能力の向上を図ることを目的とする。
 
事業内容・結果
事業1【内容】
木造公共建築を主たる対象とした、川上から需要者までのSCMの構築および情報共有
現在、提案者においてコアドライを生産する場合には、原木調達から製材・乾燥・仕上げまでに平均6カ月から8カ月の時間を要し、限られた納期への対応には非常に苦慮をしている。通常であれば、提案者が地域の公共建築予定および必要木材の断面寸法・量を知るのは、その施工年度当初に施工を実施する工務店等からの見積り依頼があった時点であるが、それからコアドライ材(特に平角材)の生産を行っても納期に間に合わない。そこで、提案者はできるだけ早い段階で情報を得るよう努力をしているところである。それでも原木の調達、製材工場の選定・製材、乾燥スケジュールの調整に追われることが多く、道産材活用の現状での最大のボトルネックは原木調達となっている。
 今後、地域材の活用を図るためには、製品の品質はもとより納期の厳守が絶対条件となる。他産業で多くが実現しているSCM(サプライ・チェーン・マネージメント)では、各段階が情報共有し連携しあうことで、各段階の在庫を最小にしながらスムーズな物流を可能としているが、本道木材業界ではこの対応が極めて遅れている。そこで、既設の北海道産木材流通促進協議会に、地域材供給・利用にかかるSCM検討部会を設置し、木材供給者(森林所有者、素材生産業者、製材業者、乾燥・加工業者)および工務店、設計者等需要者相互の理解を深め地域材の流通促進を図る仕組みを構築する。
 本検討会では供給サイド各層と建築サイドとの協調の中で、地域特性にかかる情報(地域で供給できる部材の断面寸法や長さ、その供給能力や納期など)を共有し、どのような工夫や仕組みをつくればボトルネックとなっている原木調達時間を短縮させ、かつ需要者への供給安定を図ることができるのか等の協議・検討を行う(3回程度開催)。
事業1【結果】
各市町の建築事業担当者の公共建築物への木材利用に関する考え方を把握するため、「公共建築物の木材利用に関する実態調査」を実施した。 
効率的な地域材供給を実現するため、提案者の所在する空知総合振興局内の各市町村の公共建築物の事業担当者に対し、以下の調査票(図1)によりアンケート調査を実施し、公共建築物への地域材利用の実態を把握した。
      
公共建築物の木材利用に関する実態調査 調査票


 「北海道産木材流通促進協議会」による検討会は、供給サイドと建築サイドとの協調の中で、地域特性にかかる情報を共有し、どのような工夫や仕組みをつくればボトルネックとなっている原木調達時間を短縮させ、かつ需要者への供給安定を図ることができるのか等の協議・検討・調査を3回行った。
 第1回は、木材供給サイドにおける課題や方向性を議題とした検討会を実施
 第2回は、建築・設計サイド における課題と要望について調査を実施
 第3回は、両サイドの議論統合、北海道においてあるべき姿等を議題とした検討会を実施
第3回 開催状況1 第3回 開催状況2
 
事業2【内容】
地域材による木造公共建築セミナーの開催(外部委託)
 地域材を利用し公共建設を建てることに不慣れな市町村担当者は少なからず存在している。そこで、木構造計画、設計、デザイン、公募型プロポーザル等の専門家を招聘し、地域材を最大限利用するための設計上の配慮や工夫などを先進事例・構造計画を講演会、その後のワークショップにおいて木造公共建築推進のノウハウを学ぶ場を創出する(対象:主に市町村建設担当者)。
 
事業2【結果】
 木構造計画、設計、デザイン、公募型プロポーザル等の専門家により、地域材を最大限利用するための設計上の配慮や工夫などを先進事例・構造計画など、木造公共建築推進のノウハウを学ぶ場を創出するため、以下のとおりセミナーを実施した。

「地域材による木造公共建築セミナー」(平成31年1月11日、於:かでる2・7)
講演者1:山田憲明氏(山田憲明構造設計事務所代表)
課題名 :木造公共建築物の構造設計事例
講演内容:
 「木の建築で設計者が取り組むべきこと」として、“木材生産者や施工者との対話”、“専門家からの支援”。“設計者自身の構想と工夫”を上げ、それぞれの内容について、以下のとおり説明があった。“木材生産者や施工者との対話”についてヒアリングによって生産環境の把握に努めるとして、木材生産者と施工者双方へのヒアリング項目に関する説明があった。また、“専門家からの支援”として、木材の乾燥と強度に関する講習会や、学校建設プロジェクトにおける「木材ワークショップ」、防耐火計画を紹介された。さらに、“設計者自身の構想と工夫”では、“広い空間”、“高い空間”、“開放的な空間”の作り方に関する要求項目と設計上の留意点について説明があった。その他、講演者が関わった日本各地の木造建築物の紹介があった。最後に、構造計画・設計・管理のフローを提示し、特に設計については、基本設計、実施設計、工事管理のフローが示された。

講演者2:竹内隆介氏(トピカデザイン代表)
課題名 :コアドライを利用した住宅の試み
講演内容:
 講演者が関わった旭川市内と近郊の一般住宅について、その設計趣旨と主な特徴について、写真を使って講演された。双方の住宅とも「コアドライを全面的に使用し、その質感を楽しむことができる住宅」を設計趣旨としており、地域材をふんだんに使用している物件であった。
開催状況1 開催状況2
 
事業3【内容】
道産針葉樹材の内装材利用にかかる市場調査(外部委託)
 栗山町ドライウッド協同組合で生産している“道産乾燥材(コアドライ)”と、その端材を利用した“カラマツ材内装材”、“トドマツ(圧縮)フローリング材(松原産業㈱)の今後の展開に際しての参考資料とするため、以下の通りニーズ調査を行った。
●カラマツ材による“道産乾燥材(コアドライ)”と“内装材”の普及展開
 コアドライの仕上げ生産過程では、5~10%程度(本数ベース)の割合で丸味や割れの基準を満たさない格外の製品が生じる。現在、それらは短尺にして自社物件で使うようにしているが、多くは燃料材として近隣の乾燥施設に無償で供与している。そこで、今年度よりコアドライ副材利用の高度化を目指すことにし、天井板・羽目板・ドア材などの内装材活用を検討し試作を行った(写真5)。出来上がった内装材には高級感があり、またコアドライ材を利用していることから設置後の変形は極めて小さいなどの特長がある。試作した内装材等は、“コアドライ”とともにJapan Home&Building Show 2018に出展し、これら特長について建材メーカー、設計者、インテリアデザイナーなどから、改善要求、想定される販売価額、適応分野などに関するヒアリングから市場規模を想定する。
●トドマツ(圧縮)フローリング材の普及展開 
 協議会会員企業においてトドマツA材の高付加価値化を狙った圧縮木材の試作を行っている(写真6)。比較的軟材であるトドマツであるが圧縮率50%にすると表面硬度は広葉樹並みとなり、住宅環境より条件が厳しい店舗等のフローリング材としても十分に対応できる。現在、木質のフローリングの主体は外材を厚剥きした単板による複合フローリングであるが、それを国内産に置き換えるのには今後100年単位での時間が必要となる。そこで、本事業では道内においては資源が充実しつつあるトドマツ材を利用し、広葉樹と同等の性能を持った新たな無垢フローリング材の市場性を把握する。上記2製品については、販売促進のためのパンフレットを作成する。
コアドライの端材による「腰壁」 トドマツ材によるフローリング
 
事業3【結果】
 市場調査は、栗山町ドライウッド協同組合で生産している“道産乾燥材(コアドライ)”及び、その端材等を有効利用した“カラマツ材内装材”およびトドマツ材の圧縮フローリング(松原産業㈱)に関するニーズを探り、今後の展開に際しての参考資料とすることを目的として以下のとおり実施した。
市場調査の実施方法:
 コアドライ材の端材による「腰壁」、「ドア」および、トドマツ材による「フローリング材」を「Japan Home&Building Show 2018(於:東京ビッグサイト)」に出展し、当展示会への来場者に対し、以下の項目について聞取り調査を実施した。
 聞取り項目:
 ①コアドライの認知度
 ②コアドライの造作材料「腰壁」の印象・ニーズ
 ③コアドライの造作材料「ドア」の印象・ニーズ
 ④コアドライの造作材料の用途(アイデア)
 ⑤トド松圧縮フローリングの市場調査
実施期間:平成30年10月1日~31年2月10日
当組合の展示ブース 開催期間の様子


 また、「コアドライ材の端材による腰壁・ドア」と「トド松圧縮フローリング」については、販売促進のためのパンフレットを作成した。
「コアドライ材の端材による腰壁・ドア」と「トド松圧縮フローリング」のパンフレット
 

事業実施により得られた効果

木造公共建築を主たる対象とした、川上から需要者までのSCMの構築および情報共有
 木造公共建築への道産材利用について、「北海道産木材流通促進協議会」による「A材丸太を原材料とする構造材等の普及啓発事業」検討会で再認識された主な課題として、以下について顕在化された。
・川上から川下までの情報共有によるサプライチェーンマネージメント(SCM)の構築。 ・一般流通している地域材の種類と納期を把握してプロモーションすることが重要。 ・原木を安定的に調達するための方策として、道有林の協定販売の活用や共同購入等の対策について検討する必要がある。 ・道内の公共建築による需要量を把握し、これらを共同購入したうえで各需要者へ分配すると、地域材の安定供給に繋がると考えられる。ビジネスモデルとして成り立つのかを検討が必要。 ・木造公共建築を地域で支える仕組み作りが必要 ・木材の割れなど、きちんと説明できる営業マンの育成  サプライヤー各層が協力しながらSCMを構築することで、各段階の納期が明確になるとともに生産スケジュールが立てやすくなる。今回、木材商社をサプライヤー側に入れることで、各層が安心してスムーズな取引ができるようになりSCMの実効性が高まる。
 以上から、地域材を利用したことがない工務店にとっても調達にかかる心理的不安の減少やプロジェクト管理の安定性に寄与すると考えられる。
 
地域材による木造公共建築セミナーの開催
公共建築物の建設に携わる事業担当者が、セミナーやワークショップに参加することで、地域材のみで建築可能な物件の条件を理解することが出来た。また、木造公共建築を進めるうえで、他地域の公募型プロポーザルや審査制度などを知ることで、担当者の負担を減らしながら木造公共建築を推進させることができると考えられる。本事業で実施したセミナー等を定期的に行うことで、事業担当者や設計者等の地域材に関するスキルアップを図ることが可能となるため、地域材利用の促進に繋がると考えられる。
 
道産針葉樹材の内装材利用にかかる市場調査
 “道産乾燥材(コアドライ)”と、その端材による「腰壁」や「ドア」、トドマツ材によるフローリング材の市場規模を想定し、今後の本格生産に踏み切るかどうかの判断を得ることができた。
 

今後の課題と次年度以降の計画

 「北海道産木材流通促進協議会」による「A材丸太を原材料とする構造材等の普及啓発事業」検討会で再認識された課題を踏まえた“SCMモデル”を構築し、公共建築物の事業計画に係る情報の共有化を図る。さらに、一般流通している地域材の種類と納期を把握したうえで、近隣の市町村に対し積極的な普及を図る。また、原木を安定的に調達するための方策として、道有林の協定販売や共同購入等の実現可能性について検討する。
 公共建築物の事業担当者や設計者に対し、サイズや納期などの様々な制約がある地域材の利用について、調達ルートやスケジュール管理の手法等の情報を提供する。
 地域材利用に係る定期的なセミナーやワークショップの開催により、木造公共建築物の事業担当者や設計者、地域材による建築部材を提供するメーカー担当者のスキルアップを図る。コアドライ材の端材による「腰壁」や「ドア」については、本事業の「道産針葉樹材の内装材利用にかかる市場調査」の結果を踏まえ、道産材に関心のある設計者・工務店等で構成される研究会等の立ちあげや、ユーザーとのタイアップによる商品開発、道産材のPRとともに新たな用途開発に向けたアイデアの発掘への展開を図る。
 トドマツによるフローリング材については、ホテルや店舗、ダンススタジオ、ペットとの共生を行う住宅等の用途において、フローリング材の適切な表面硬さや強度を求められることから、表面硬さや強度にバラエティを持たせた製品の開発、および販路確立への展開を図る。