令和2年度 顔の見える木材での快適空間づくり事業
NPO法人みなみあいづ森林ネットワーク
事務局所在:福島県実施概要
事業計画
実施概要
実施団体の説明
2012年に地域事業者20社(現在33社)によって「NPO法人みなみあいづ森林ネットワーク」が設立され、川上から川下・行政が一丸となり地域林産業全体の活性化を目指した取組を実践しています。この度、2020年4月より本地域を象徴する資源である広葉樹の魅力を増新し利活用を推進するために、高付加価値な壁面装飾を展開する【Wood Wall Artプロジェクト】を発足しました。本プロジェクトでは木材供給〜製品化・販売までのサプライチェーンの構築と、新商品開発による木材需要の創出の両輪による林産業活性化を目指しています。
事業の目的
本事業では、南会津町の広葉樹と地域の木材加工を支えるものづくり技術によるデザイン性の高い壁面装飾“Wood Wall Art”の開発と普及拡大を目的としました。
デザインの専門家等の地域外メンバーと地域内メンバー協働による「多種多様な資源」×「ものづくり技術」×「デザイン性」の融合となる高付加価値な壁面装飾を提案し、広葉樹の需要拡大と製品価値の最大化を図ることを掲げています。
事業の内容
南会津産広葉樹による高付加価値な壁面装飾の開発と普及のために以下の事業に取り組みました。
- ①事業体制の整備
・「原材料分科会」「加工/製造分科会」「企画/規格分科会」の3つを設定 - ②企画デザイン
・デザイナー3名による壁面装飾デザイン提案 - ③試作品開発
・「スタンダード(サイン)」4種(5製品)の試作
・「セミオーダー(タイル)」3種(6製品提案)の試作
・「フルオーダー(アート)」1種(1製品)の試作・施工検証 - ④市場調査
・インターネット・SNSや書籍を用いた製品調査 - ⑤普及啓発
・パンフレットの作成(2,000部)
事業実施により得られた効果
事業体制の整備
- ①「原材料分科会」「加工/製造分科会」「企画/規格分科会」の3つを設定
:全体会議〜コア会議〜分科会で合意形成を図る - ②勉強会の実施
:デザイン監修の澤山氏と建築・内装デザインに関する勉強会を実施 - (事業の成果)
デザイン監修 澤山氏を中心として、事業アドバイザーに建材商社(株)物林 国産材戦略室 勝田幸仁郎氏、齋藤政子氏への協力依頼を行った。
企画・デザイン
壁面装飾の企画デザイン 3名のデザイナーにデザインを依頼澤山氏は、内装デザイン全体に知見を有し、家具や調度品・雑貨・照明までを網羅しています。湯下氏は澤山氏よりデザインを学び、建築全体から内装との調和を専門としています。齋藤氏は建築が地域・風景に溶けこむことのできる設計や地域文化・環境を象徴したデザインを理念としています。
- ①澤山乃莉子:一般社団法人 英国インテリアデザインビジネス協会 代表理事」
- ②湯下奈津子:アトリエ木工(一級建築士事務所)
一般社団法人 英国インテリアデザインビジネス協会 正会員 - ③齋藤ひかる:株式会社 はりゅうウッドスタジオ(一級建築士事務所)
左から 澤山氏 湯下氏 齋藤氏 |
試作品開発
①「スタンダード(サイン)」、「セミーオーダー(タイル)」、「フルオーダー(アート)」3パターンの試作開発・「スタンダード(サイン)」は規格木製サインで、レーザーやUV印刷でデザインを転写
A レーザー彫刻:レーザーによる木材表面への彫刻加工 2種提案のうち2種試作
B レーザーカット:レーザーによる木材のカット加工 2種提案のうち1種試作
使用樹種:サクラ、ブナ、ナラ
C ミシンカット:糸ノコによる木材のカット加工 1種提案のうち1種試作
使用樹種:サクラ
D UV印刷:木材にイラスト等を転写する印刷加工 3種提案のうち3種試作
使用樹種:ブナ、ヒノキ
・「セミーオーダー(タイル)」は複数の規格タイルの組み・貼り合わせ
A 澤山乃莉子:菱形をモチーフ 基本ピース5種提案のうち6種構成試作
使用樹種:ホオ、スギ、アカマツ
B 湯下奈津子 提案:花型をモチーフ 基本ピース3種提案のうち6種ピース試作
使用樹種:ブナ、ナラ
C 齋藤ひかる 提案:水型をモチーフ 基本ピース4種提案のうち4種構成試作
デザイン概要:曲面加工を施したブロックピースの組み合わせによって、木材による波面をイメージできるデザインにしました。多種多様な広葉樹を使用することで水面の揺らぎを感じることができる自然的なデザインです。
使用樹種:ナラ、サクラ、トチ、ホオ、セン、クリ
・「フルオーダー(アート)」はデザイナー・作家・設計等のオリジナルで企画製作
A 澤山乃莉子 提案:熱海市のホテルへ菱形モチーフを仮施工し経過観察
実施概要:静岡県熱海市のホテルに仮施工を行い、経過を試作に反映する
②樹種の選定
壁面装飾等に適した木材(色合いや強度・加工程度)を5〜10種程度選定
調達可能な木材からサンプルを製造し、木目や強度などをディスカッション。
また関係事業者の在庫調査を行い、供給可能量を検討しました。
③耐性に関する情報収集と塗装の実証検査
塗装(ウレタン・クリア)を行い、木目色・艶等の品質、反りやねじれ等の耐性を
検証しました。
④経年変化の調査
内外装材等の施工済み物件の木材の経年変化を調査し、試作開発に反映
澤山氏の手掛ける熱海市物件で検証。自然光や採光の反射程度なども検証し、木材の厚みや凹凸、樹種、塗装の程度をディカッションしました。
(事業の成果)
澤山氏監修のもとでデザイン性やアート性の高い製品から、大面積を広葉樹の色とりどりの風合いで表現できる製品まで提案することができました。また、広葉樹の魅力や可能性を最大限に引き出すために、製材事業者(原材料調達・1次加工・在庫管理)・製造事業者・建築設計士・デザイナーによる議論を活発的に実施できたことで、デザイン×ものづくり技術×素材の理想的な組み合わせを実現することができました。
市場調査
市場ニーズ調査建材メーカー等へヒアリングを行い、木材製品の需要に関する市場傾向を把握
情報収集は、建築雑誌・ハウスメーカーパンフレット、Instagram・Pinterestを活用
(事業の成果)
木材による内装壁面装飾材の市場調査を行いました。全体的な市場規模は極めて少なく、凹凸程度の加工を施したパネル製品が「建材分野」では大半を占めていました。デザイン性の観点から調査を行うと多くが「特注」であり、そのなかでも角材の端材を活用したものや、丸太を輪切りにしたものを並列施工したものが事例として多々挙げれており、差別化はされていない印象で本事業のビジネスチャンスを見出しました。
普及啓発
パンフレットの作成地域材の特徴、製品ラインナップ等を掲載した販促用パンフレットを作成
事業の報告
報告書の作成本事業の成果に関する報告書の作成と関係事業者へ報告、事業の課題や以降の計画について整理
今後の課題と次年度以降の計画
- 課題-⑴施工方法について
広域的な販路拡大と販売数量の確保を行うために施工方法の「一般化・標準化」が検討課題です。 - 課題-⑵安定供給体制について
販売数量の見通しを立てた上での効率的な原木供給と製材・加工の生産体制、在庫ストックのリスク等を最小限とした販売方法が課題です。
- 計画-⑴製品ラインナップの拡充
製品ラインナップの拡充については、引き続き澤山氏には協力を要請しています。 - 計画-⑵施工方法の確立
工務店等の施工業者の「現場の声」を取り入れ、適切な施工方法の検討を行います。また、建築物に仮施工を行い、現場実践や見栄え等についても検証を行います。 - 計画-⑶広報活動の実施
建材メーカー等への営業活動、自治体への提案、ホームページ・ECサイトの作成等。 - 計画-⑷計画販売の開始
建材代理店、分科会員の工務店施工の一般住宅を対象として計画。