空気=酸素がある状態で有機物を燃焼させると無機物の灰分となるが、空気の供給を制限し、有機物を加熱、燃焼させると蒸し焼き状態になり熱分解により炭化物となる。
木材を炭化すると木炭になり、古くから燃料や製鉄の原料に使われている。木炭は、原料、製法などにより、品質性能が大きく異なることが知られている。一般的な木炭は炭化温度が600〜800℃の黒炭製炭と600〜1,000℃の白炭製炭に分けられる。炭化温度が200〜300℃では表面が炭化する程度で重量の減少も少ないが、防腐効果がある燻薪とか燻材と呼ばれる製品になり、表面を磨くとつやのある黒褐色となるので床柱などに使われている。300〜400℃の温度では炭化の程度が低く、吸湿性能は弱いが、油の吸着がよいため油吸着剤が開発されている。600℃以下での炭化は、化学成分の脱水、分解、縮合等の化学反応により熱分解が進み、600℃以上では揮発成分が少なく、温度が高くなるにつれ、炭素含有率が高くなり、通電性も高まる。1,000℃近辺で炭化した木炭は通電性を利用し、電磁波遮へい材が開発されている。
木炭に脱臭能力があることは以前から知られていたが、近年、エネルギー利用よりも住宅の床下調質、土壌改良、水質浄化、排ガス吸着、脱臭、シックハウス原因物質吸着など様々な物質を吸着する吸着剤としての機能性木炭としての利用が進んでいる。吸着性能は比表面積の大きさにより判断され、黒炭で300〜400m2/g、白炭で200〜300m2/gの比表面積がある。比表面積が大きく、細孔容積の大きい木炭は、土壌の透水性、保水性を改善することから昭和61年に木炭の透水性が認められ、農地土壌改良資材として、地力増進法施行令で指定された。
形状についても通常の木炭の他、チップ状のものや微粒粉末にした木炭と液状高分子系樹脂を混合した木炭塗料、シート状にしたものもある。
炭化させるためには、炭焼き釜を使う伝統的なものは少なくなり、小〜大型炭化装置による炭化が増えてきている。簡易な穴やき法、伏せやき法、ブロックやドラム缶による炭やき法もあるが廃掃法など法律の関係に注意する必要がある。小型で低価格の炭化装置も多く開発され、ユニック付きのトラックで移動可能なものや6ヶ月間のレンタルで現場までの据付、試運転費用込みで100万円〜というものもある。また、炭化は、木材の減量化という視点からも注目すべきで、炭化物の利用のみならず、炭化過程で生成される木酢液も土壌改良、葉面散布等の植物活性、病害中駆除等などに活用できるので、創意工夫した現場還元利用を図るべきである。
なお、木炭の規格については、以前はJAS(日本農林規格)で定められていたが、廃止され、現在では、燃料用の木炭の規準、品評会などへの出品用木炭の規準、新用途木炭の規準として、全国燃料協会、日本木炭新用途協議会、全国木炭協会が定めている。
一方、製炭するとき発生する煙を土管、竹管あるいはステンレス管などで冷却すると、主成分が酢酸であるビール色の焦げ臭いにおいのする「木酢液」が得られる。木酢液は大部分が水分であるが、微量成分を多く含み、分析機器で分類すると約200種類の化合物を含んでおり、炭材の種類、炭化装置、温度、時間、冷却装置、精製法によって液の内容成分が異なる。
この木酢液は、消臭、飼料添加、土壌改良補助材、入浴剤、鳥獣虫忌避などに使われており、日本木酢液協会、日本特用林産振興会が木酢液の規格を定めている。