農林水産省は、平成14年6月18日、「バイオマス・ニッポン総合戦略策定プロジェクトチーム」を設置して、環境省等関係府省の協力を得つつ、年内を目途にバイオマスの総合的な利活用に関する戦略(「バイオマス・ニッポン総合戦略」)を策定することとした。
プロジェクトチームには、民間の活力を活用するため、民間・有識者からなる「アドバイザリー・グループ」を設置して、7回の会合を重ねた。
その成果として、バイオマス・ニッポン総合戦略骨子(2002/7/30公表)を策定し、平成14年12月27日には、「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定された。
「バイオマス・ニッポン総合戦略」の趣旨を踏まえ、バイオマスの利活用に係る関係府省の一層の連携と機動的な対応を図るため、総合戦略に掲げる目標の達成状況の確認、関係施策の調整等を行うことを目的として、関係府省の局長レベルで構成するバイオマス・ニッポン総合戦略推進会議(以下「推進会議」という。)を設置し、平成15年2月27日に第一回目の会合を開催した。
当面のスケジュールとしては、3月及び5月にアドバイザリーグループの2回の会合を経て、8月中旬に推進会議の第2回目の会合で平成16年度概算要求に向けて協議が行われる予定。
→ 農林水産省では、バイオマス・ニッポンホームページにより審議経過や活動状況などを含め情報を公開している http://www.maff.go.jp/biomass/index.htm
→ 因みに、平成15年度の概算決定 各省バイオマス関係予算総括表によると、文部科学省(33億円の内数)、農林水産省(219億円)、経済産業省(646億円の内数)、国土交通省(9,321億円の内数。下水処理関係が主体)、環境省(662億円の内数)で、総額10,881億円の内数となっている。
バイオマスのエネルギー利用については、法的な位置付けがなされていなかったが、「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(新エネ法)」の政令改正(平成14年1月25日公布・施行)により、新たに追加(バイオマス発電、バイオマス熱利用、バイオマス燃料製造)され、新エネルギーの中に位置付けられ、エネルギー利用を中心に、国家的な戦略の一つとして、助成措置を含め総合的な推進対策がとられることが期待される。
また、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」が平成14年6月に公布され、新エネルギー等のさらなる普及のため、電気事業者に対して、一定量以上の新エネルギー等を利用して得られる電気の利用を義務付けることにより、新エネルギー等の利用を推進していくこととしている。
経済産業省資源エネルギー庁(新エネルギー対策課)は、平成14年12月27日、新エネルギー利用等の促進に関する基本方針の改定について(概要)公表している。
《問い合わせ先》
経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部
新エネルギー対策課: 濱田 氏
電話:03−3501−4031(内線:4551)
情報掲載URL
http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0003553/
* 3R=廃棄物のReduce(発生抑制)、Reuse(再使用)、Recycle(再資源化)
material recycle(マテリアル・サーマルリサイクル)=機械や化学処理により物質的(素材的)に再資源化(再製品化を含む)
thermal recycle(サーマル・リサイクル)=熱やエネルギー源として物質の再生利用(木材乾燥・発電エネルギー等)
また、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)では、「バイオマスエネルギー導入ガイドブック(313頁)」を作成しているので、事業化に当たっては参考にされたい。内容はNEDOのホームページからダウンロード可能。
木材産業におけるバイマス資源の有効利用の方向としては、例えば、木材乾燥の熱源利用や自家発電、炭化処理・堆肥・バイオトイレ・建設・土木園芸・ガーデニング・緑化資材等への利用(個別、共同)が検討される。その際、共同化や地域内外の先行事業体(販売の共同化を含む)や試験研究機関・異業種・自治体・NPO・地域住民等との有機的な連携を図って展開することが重要である。
バイオマス関連事業の展開においても出口対策(エネルギーや製品の安定的な需要の確保)が基本である。
木質バイオマスエネルギー化、リサイクル化の事例を調査している中で、施設によっては、コンサル、機械メーカー等、あなた任せの構図で進んでしまい、得てして、大型の施設となり、製品の販売先となる出口が少ないまま稼動して、「売れない」仕組みが構築されてしまい施設の稼動に支障を来たしている例も見受けられる。特に、補助事業の場合、必要以上に大型の施設としてしまい、結果として、設備償却費の増大、運転コストの増大を招き、運営が厳しくなっている例もある。
木質バイオマスのエネルギー利用についてもアントレプレナシップが重要であり、優れた事業計画でも、起業家の力量によってはキャッシュフローを生む前に賞味期限を迎えてしまう。
明確な指針と状況変化にあわせて進化する事業体にすることが重要であると思われる。
事業化に当たっては、マーケットの魅力度(マーケット特性・規模・シェア)や優位性、戦略的差別性(技術革新、CS(顧客満足度)、流通チャンネル戦略、コストパフォーマンス)と合せて、財務的要件として、キャッシュフローを生み出すことがポイントになる。
また、リスク管理マネジメントとして、事業には当然リスクが存在するので、計画段階で、できる限り予想されるリスクを抽出し、それに対する施策を事業計画・アクションプログラムの中に織り込むことが望まれる。
そのため、「リスク」は、事業そのものが「仮説−検証のプロセス」であることから、必然的に伴うものである。つまり、事業展開を行っていく上で事前の「前提条件」が変化すると、それがリスクとして顕在化するので、前提条件が、どのように、どのくらい変化したとき、事業に与えるダメージがどの位で、その際にどう対処するかをシュミレーションしておくことが重要である。
木質バイオマス事業を成功裡に推進するためにも。
特に、大型の木質バイオマスエネルギー利用施設では、その規模が大きくなればなるほど安定的にバイオマスを確保できるシナリオでないと施設の持続的運営に大きな支障を来たすことになる。
このような中で、バイオマス・ニッポン総合戦略の閣議決定以降、木質バイオマスエネルギー化が進展していくことが期待されているが、メーカーの中には、新技術を活用した小型プラントでガス化方式によるコージェネレーション(木材乾燥用エネルギー利用+自家発電270kW)がプラント一式で6千万円程度を目標に実用化に向けて展開しているところも出てきている。木質バイオマスは、ローカル性があることを考えると、大規模プラントでなく、地域の状況に応じて小型で低コストのものを複数連結するようなシステムの方が、システムトラブルや点検時のリスク分散の面で優位性があるものと考えられる。