岡山県の県北地域は、昔からヒノキの植林をメインに行ってきた地域。この豊富な資源を活かし、地元に根付いてきた林業ですが、近年のコスト削減や安定供給の波に押され、木材市場を介した流通形態も変革を迫られてきました。
そこでこの変革の一助になると期待されているのが、今回の「新生産システム事業」。
その中核を担う参画企業として、製材メーカーでは日本で始めて「天皇杯」を受賞した院庄林業が岡山地域を牽引するリーディングカンパニーとなります。
今回はこの院庄林業株式会社をご紹介いたします。
もともとヒノキの製材からスタートした院庄林業。昭和25年の創業より約60年の歴史を数えます。取り扱っている製品は、ヒノキの柱、土台、通柱をはじめ鴨居・敷居関係の造作などで、100%が乾燥木材製品。反ったり、ねじれたり、カビが生えない、人工乾燥木材をメインに提供していくことをコンセプトとしています。現在では大手ハウスメーカー、分譲系のパワービルダーの指定メーカーともなっています。
院庄林業は、この製材事業のほか、集成材事業、プレカット加工事業、山林育成、住宅事業、関東圏での子会社によるプレカット事業など、関連分野を幅広く網羅する総合木材メーカーです。
「ヒノキ」について
本物のヒノキの香りはとてもいい香りがします。JR院庄駅を降りると瞬間的にとてもいいヒノキの香りがしますが、これは隣接するように存在する院庄林業の本社工場から漂ってくるなんともいえないいい香りです。ヒノキのこの香りには感動すら覚えます。
ヒノキの丸太からは、先ず柱材などになる角材を取り、その周囲から、鴨居・敷居となる厚めの板をとります。更にその外側は床板や野路板などの薄い板材をとります。又、木の皮もボイラー燃料となり、全く捨てるところがなく、しかも木材は再生できる有用な資源です。特に桧は、耐久性の面でも優れた資材であることは周知されているところです。
「山林育成」について
最近の木材価格では、再造林の意欲が出ません。再造林されないと、林業も製材業も将来がありません。世界中でもこのような状況に陥った国も少ないと思います。そこでこの新生産システムモデル事業に取り組み、素材生産コスト、流通コスト、製材コスト、製品流通コストなどあらゆる段階のコストを削減し山元に少しでも多く還元できる仕組みを構築し、山林育成を図ろうとトライしています。
昨年新設の久米の「集成材工場」について
本社工場から少し離れた久米という場所に5年前に製剤工場を、昨年夏に集成材工場を新設しています。製材工場では芯もちの柱材を背割りなしで乾かせる装置を備え業界をリードしています。もう1つは外材を利用した集成材工場(インノショウフォレストリー(株))で、太陽光発電システムが完備された工場で、中四国では最大の発電量を誇っています。これはNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)との共同研究事業ともなっていて、最大出力670kw/hの能力を備えています。現在は70%は外材を原料とした集成材ですが、数年後には50%を国産材の原料を使用する計画です。
「乾太郎」について
院庄林業のメインの商品として挙げられるのは「乾太郎」です。この商品は従来、背割りをしていた角材から、背割りを無くした新しい考えの新乾燥材です。これにより天然木材の欠点を克服し、柱材の使用後の狂いをなくし、集成材と同程度の制度が確保出来る様になりました。
院庄林業の品質管理について
院庄林業では様々な品質管理に関する施策を行っています。一般的な規格であるJASの認定とISO9001の認証、強度表示、トレーサビリティの表示や、集成材ではPEFCの認証(CoC認証)も受けております。
また昨年、ISO14001を全社統一で取得。環境問題にも真正面から取り組もうという姿勢の現われです。
品質管理の向上とともに、昔からの職人の技も大切にしています。院庄林業では昔ながらの職人の技に、現代の経営の観点を盛り込んだ人材育成もしておりますので、新しい視点を持った人材がこれから増えていくことになると思います。
「新生産システム事業」で推進する流通モデル
岡山地域での課題は木材が全て原木市場を介して、提供される点でした。この場合、市場に原木がダブついたり極端に減少すると価格が乱高下し素材の計画的生産や、安定供給もままならない状態でした。そこで院庄林業では、この流通経路における新しい流れを作り、山林所有者と直接契約をし、決められた量を一定の値段で買い付けることで、安定した供給ができるようにする。又これまで原木市場で発生していた経費をそのまま山林所有者へ還元することで、山元にもメリットのある流通システムを構築したいと考えています。また集めた木材は全て院庄林業で消費するのではなく、院庄林業では細すぎる資材などについては、それを必要としているメーカーへ、再び安定的な供給を図っていきたいと考えています。
北欧やドイツなど林業先進国では300年も前から植林をし、いつでも安定供給できる体制を整えてきました。この強力なライバルに勝つためにも、いまやろうとしている流通体制は必要不可欠な事業であるといえます。
石油は使い続ければいつかは無くなってしまいます。しかし木材はきちんと整備し、植林さえしていけば、また数十年後に再生する。そんな流れをきちんと創造することが院庄林業の考えであり、新生産システム事業で実施しようとしているモデル事業でもあるのです。
「新生産システム事業」に期待すること
いちばんの狙いは、原木の安定供給、安定確保です。素材生産業者と山林家とは契約取引になりますので、素材の安定生産につながってくるだろうと考えます。
素材生産業者、山林家が安定した事業を営めるようになると、山林へも還元ができ、山林に活力が戻ってきます。この新生産システム事業によって、地域全体が有機的なつながりを持ち、関わるすべての事業主が共に発展できるのが一番よい形なのではないかと院庄林業は考えます。
但し、この新生産システム事業を推進するということは、既存の流通ルートを一部、壊していくことにもなりますので、その部分に関わっている方々からは多少の反発は予想されます。しかし将来的にはどちらが、この地域の林業のためになるかを考えれば自ずと答えはみえてくるのだと思います。
院庄林業はこれからも、高品質・高性能で、コストも抑えた製品を、安定的に供給していくことができる体系作りの確立に力を注いでいきたいと考えます。昔ながらの技を継承する本社工場の若手の職人さん
出荷直前の新乾燥材「乾太郎」
久米工場(インノショウフォレストリー(株)の集成材工場)の最新人工乾燥機