加工事業体は2社ですが、林業関係者、森林組合、流通業者については県内関係者のほぼすべてが参画しており、全県を挙げての取り組みとなります。最重要課題は山元の素材生産力強化による原木の安定供給体制の構築で、システム事業体による素材生産量を平成17年の21万8,000m3から36万m3に引き上げることを目指します。
このため、施業の集約化や路網整備、リースやレンタル制度も活用した高性能林業機械化などに取り組むほか、原木流通については県森連に原木流通情報センターを設置し、需給情報を一本化して原木を安定供給する新たな流通システムを構築します。
製材加工についてはラインの増強・整備、規模拡大などによって効率的な経営を実現し、県外需要者向けの販売ルートを確保します。
コンサルタントの鹿児島大学が中心となり、適切な全体調整のもとに取り組みを進めます。
南九州の有力林産地にあって鹿児島は資源蓄積量こそ多いが、齢級が若く、所有構造も分散的であることから、生産体制整備がやや立ち遅れています。こうした中で、北薩地域は県内他地域に比べて資源が成熟し、隣接県の業者による活発な素材生産活動の刺激を受けているために、生産性が比較的高いのですが、しかし全般的に素材生産能力の強化が必要なことに変わりはなく、当地域では山元の体制整備を重要課題として取り組んでいます。
施業方式は間伐とし、現在(平成17年)の間伐の生産性2.8m3/人日を5年後には5.3m3/人日にまで引き上げることを目指しています。
そのための方策としては、施業の集約化と高性能林業機械の導入促進、列状間伐の推進などに取り組んでいます。
ただし、素材生産業者の資本力が低いため、機械の導入に当たってはリースやレンタルも検討しています。
また、素材生産業者や森林組合が原価計算に基づく森林所有者への施業提案を行ったり、経費節減のためには何を改善する必要があるのかを把握できるようにするため、損益などに関する経営分析手法を身に付けさせるようにしています。
当地域の原木流通は以前から原木市場を介した流れが主体であり、山元から製材工場への直送方式の導入を図りつつ、原木市場を集積場所として位置づけ、その集荷、仕分け、ストックといった流通機能は従来どおり活用します。具体的には、県森連に設置する原木流通情報センターが各市場の椪積み結果を集約し、原木を協定相手の製材工場向けと市売向けとに仕分けることにより、まとまった量を安定供給する体制を構築します。当初は森林組合系統の共販所によってセンターを立ち上げましたが、民間の市場にも参加を呼びかけ、全県的な体制を整備しています。
立木を安定的に買い付け、山元の事業量を確保するための方策としては、比較的規模の大きな森林所有者を当面のターゲットとした取り組みを展開しています。個人所有林は規模が小さく、効率化が困難ですが、面積がまとまっている森林を核に周辺の個人所有者との一体的な施業といった取り組みも可能性があり、規模拡大を進めやすいと言えます。そこで、まずは公有林や会社有林等を供給源とした集荷販売活動を展開し、山元に利益を還元する事例をつくって所有者の出材意欲を刺激します。このようにまずは生産性を確実に上げることができる林分を確保し、そこを舞台に技術のレベルアップに取り組んで生産コストの引き下げを図っています。その上で、個々の森林所有者を対象とした集約化に取り組んでいます。
なお、民間の大規模森林所有者が林業経営担い手モデル事業の実施主体となっており、自社有林を核とした周辺林地の集約化を進めています。
加工事業体については、①既存の市場システムの維持にこだわらない、②地元業者との競合を避けるために県外向けに製品を出荷する――を条件として選考し、山佐木材(株)と(株)野元を中核事業体として決定致しました。
山佐木材(株)は製材ラインの増強と工場の拡充によって規模拡大を図り、年間原木消費量を5年間で3万m3から10万m3に引き上げています。製品の種類は人工乾燥を施したスギの管柱、間柱、集成材量ラミナ、板類などです。多様なアイテムの製品を製造するため、末口径16cm以上の原木をすべて受け入れることとし、流通の合理化を図っています。
(株)野元は既存の施設を活用し、規模拡大と効率的な生産体制の確立に取り組んでいます。年間原木消費量は現在の1万6,000m3から3万m3への引き上げを図っています。
出荷地は県外とし、主に大消費地の木材流通企業やプレカット工場、大手ハウスメーカーなどとの取り引きを確保します。
当地域の取り組みには県内の主要な林業関係、森林組合、流通業者のほぼすべてが参画しています。業者を選考した加工事業体以外の業態については、参加を希望する事業体をすべて受け入れたという結果によるもので、システム事業体数は60事業体近くという大所帯となっています。そのため、事業体間の意識レベルに差があり、各種の取り組みをスムーズに進めるためには適切な調整が欠かせません。そのため、事務局体制を強化し、連絡調整も密接に行っています。
具体的には、事務局をコンサルタントの鹿児島大学内に置き、常駐の専任スタッフを配置しています。すべてのシステム事業体による運営会議を年2、3回開催するほか、事務局メンバー(専任スタッフ、大学、県庁、県森連、県森林公社で構成)による事務局会議を週1回開催し、日常的に工程を管理しています。このほか関係団体との調整も遅滞なく行うとともにニューズレターを発行し、意識啓発にも努めています。鹿児島大学が中心となって運営している「儲かる林業研究会」の協力も得ております。また、同大では平成19年度から木材の生産~流通~加工の全般にわたる課題解決を研究する社会人向けの大学院講座(修士課程)を開設し、人材の育成に取り組んでいます。