当地域は人工林面積が22万7,000ha(民有林18万ha、国有林4万7,000ha)に達し、1ha当たりの蓄積量も400m3を超えるなど資源も成熟しています。ただし、素材生産の現場では事業量の安定確保が課題であり、年間の生産量も27万m3にとどまっています。
そこで、山元の施業を集約化し、高密路網と機械化をセットにした生産性向上を図りつつ、原木の直送体制の構築、輸送コストの削減などを実現しています。それらの取り組みを進めるためための基礎的条件整備として、森林組合の経営能力を高めるための経営指導に力を入れています。
製材加工については、国内有数の集成材メーカーである銘建工業(株)(岡山県真庭市)が参画する新たな協同組合による製材工場を核とし、乾燥の行き届いた無垢の板材製品と集成材用ラミナを製造しています。また、既存の中小工場の能力アップを図り、競争力を強化しています。
仁淀川森林組合、池川木材工業(有)、土佐材板挽専用製材協同組合(仮称)、嶺北林材協同組合、森昭木材(株)、レイホク木材工業協同組合、山下木材(株)
非皆伐を前提とし、将来的に間伐で10m3/人日(4,500円/m3)の生産性実現を目指します。ただし、この目標は間伐2順目(50年生程度)で達成することとして、当面は6m3/人日(7,500円/m3)を目標とします。生産システムとしては、当初は高密路網の整備とプロセッサによる造材を基本とする傾斜地モデル(傾斜30~35度)の開発・普及に取り組みますが、当地域は急傾斜地(傾斜35度以上)が多いことから、事業開始2年目以降は架線集材を中心とする急傾斜地の作業システムの開発を積極的に進めています。
間伐を効率的に行うためには森林組合による施業の集約化が欠かせません。そのためにはそれぞれの森林組合が経営能力を身に付けることが絶対条件となります。具体的には、人件費や間接費を正確に把握し、原価計算を行えるようにしなければなりません。それができて初めて森林所有者に適切な見積もりを提示することができ、集約化を図ることができます。さらに組織としてのレベルアップを図り、施業や経営を適切に行うためには職員の士気を高めることも必要です。そうしたことを踏まえ、参加森林組合への経営指導に力を入れています。
当地域の原木流通は原木市場を経由するものがほとんどであり、その中でも最大の取り扱い業者は高知県森連です。原木市場の取扱量は年間34万m3で、その6割近くに当たる21万m3が県森連共販所で取り扱われています。木材チェーン全体を最適化するためには、県森連共販における改革が不可欠であり、県森連では複数の仮説を検証しながら共販所改革に取り組むことにしています。ただ、地形条件などから山土場から製材工場への直送が困難な場合は、原木市場のストックヤード機能や選木機能を活用する可能性を探っています。
流通の合理化対策としては、まとまった量の原木を製材工場に直送するシステムを構築し、輸送コストを1,000~1,500円に、流通仲介機能関係コストを1,000円以下にそれぞれ引き下げることを目指しています。
データベース設置事業は高知県森連が実施し運営しています。森林所有者への説明やデータの収集は森林組合が担当し、そうした働きかけを通じて施業集約化につなげています。
中核となる加工施設は新たに設立する土佐材板挽専用協同組合(仮称)が大豊町に新設する製材工場です。年間原木消費量は5万2,000m3を予定し、山元の素材生産力が向上して原木の安定供給がある程度見込めるようになる平成20年度に工場建設に着手します。
同協組には国内有数の集成材メーカーである銘建工業(株)が中心メンバーとして参加し、スギの間柱など板類を製造するほか、一部は同社が集成材用ラミナとして引き取ります。含水率はすべてD15レベルとし、無垢の板材もラミナも同等の乾燥品質を実現します。製材設備、木取りなどについても技術的なアプローチを試み、高能率、高品質の製材ラインを実現します。
また、池川木材工業(有)でもKDモルダーがけの間柱を製造するほか、各加工事業体で品質向上に取り組むとともに、ある程度の規模拡大によるコストダウンを図ります。
全体的には大規模工場と中小規模の工場がそれぞれの強みを活かして並存するような林産業モデルの構築を目指します。
土佐材板挽専用製材協同組合(仮称)が製造する製材品については、銘建工業(株)の販売ルートを活用してプレカット工場などへの販売を促進します。
既存工場については、「れいほく規格材」や「高知県梁桁ネットワーク」など、独自に作成した産地規格のもとに複数の工場が連携して一定品質の製品を出荷しようという取り組みが動き出しています。こうした横のネットワークを生かしつつ、品質管理能力や加工・乾燥技術の改善、コストの削減などを通じて競争力の向上を図ります。また、DIY市場向けの商品開発と販売促進にも取り組んでいます。
加工施設の能力アップ、品質向上、販売促進等、すべての取り組みのベースになるのは原木の安定供給です。そのため、まずは山元の生産力を強化し、原木の大量安定供給システムを構築することを最重要課題として取り組みを進めています。具体的には、施業の集約化などで中核的な役割を担う森林組合に対する経営指導に力を入れています。そのため、専門の経営コンサルタントによる経営分析や指導を行うほか、現場作業については、施業の集約化や効率的な施業で実績のある日吉町森林組合(京都府)と高知大学が指導を行っています。
新たに設立する土佐材板挽専用製材協同組合(仮称)は、中心メンバーの銘建工業(株)による意思決定が明確に働く組織とし、責任体制の明らかな民間企業に近い形の運営を図ります。