大分県内の全流域を対象地域としていますが、素材生産、原木流通、製材加工のいずれにおいても中心となるのは日田地域(大分西部流域)です。
取り組みの特徴は、原木市場の集荷能力と選別仕分け機能を積極的に活用することと、独自の乾燥方式による「大分方式乾燥材」をメーン商品として、その製造販売を積極的に展開することです。
日田地域は全国有数の国産材集散地です。地域内には原木市場が8市場あり、100社以上の製材工場がひしめいています。製材工場の多くは中小規模で専業化されており、原木市場の集荷・選別・仕分け機能に対する依存度は非常に大きいです。新生産システムによる取り組みでもこうした市場の機能を活用しつつ、合理的・効率的な原木流通システムの構築を目指します。
加工事業体としては8工場が参画しています。年間原木消費量は1万m3弱から3万m3程度ですが、大分方式乾燥材という同一アイテムの生産で共同歩調を取り、市場開拓に取り組んでいます。
((有)安心院製材所、(株)井上製材所、(株)佐藤製材所、(株)武内製材所、(株)ネクスト、(株)日田十条、(株)ヤマサ、(有)新貝商店
施業の集約化、路網整備、高性能林業機械の活用、列状間伐などの取り組みによって素材生産のコストダウンを図っています。主伐も積極的に行い、生産量の拡大を目指しています。主伐後の伐採跡地については、再造林を適切に行うほか、当該森林の機能を見据えた天然更新による森林再生の技術開発にも取り組んでいます。
素材生産の担い手については、作業効率に見合った報酬を提供することなどによる待遇の改善を図り、人材の確保と育成を進めています。
また、当地域では有力な大規模山林所有者もシステム事業体として参画しており、所有山林において路網整備や機械化、列状間伐の導入などを進めています。
原木市場の集荷能力と選別仕分け機能を積極的に活用します。市場が商流を管理し、山土場で原木を選別して製材工場に直送するシステムも導入を目指していますが、現場での選別は効率ダウンにつながるため、市場で原木の選別仕分けを行うシステムにも取り組んでいます。市場の集荷・仕分け機能を活用する場合は、森林所有者や出荷業者が製材工場と直接取引きをするケースと、市場が商流も管理するケースの2種類のシステムで安定供給を目指しています。前者は一定のロットで原木を出荷することが可能な大規模山林所有者を供給者として想定しています。後者は現在の市場流通に近い形で、原木市場が物流と商流の双方を管理し、付売りの採用などによる合理化を図っています。
データベースは森林簿のデータを基礎に精密調査を実施して構築します。登録されるデータは、林班番号や材積、林齢、樹種、地形、路網状況、利用材積等のほか、皆伐と主伐のどちらを希望するのかも明示します。
参加している8工場において、効率的な製材施設の整備、人工乾燥施設の導入などにより、大分方式乾燥材の生産力を強化しています。
大分方式の乾燥とは大分県が独自に開発した乾燥方法で、表面割れを防ぐ高温セット処理と天然乾燥を組み合わせたものです。最初に高温乾燥機による前処理を2~3日間行い、短時間の高温処理で表面割れを防止します。その後、乾燥機から取り出して数ヵ月間の天然乾燥を行い、含水率20%以下に仕上げます。内部割れがなく、無垢材特有の色艶が失われないのが特長です。この方式によって、スギ・ヒノキ柱角やヒノキ土台角を生産するほか、スギの梁桁や羽柄材の生産にも取り組んでいます。
また、木屑焚きボイラーの導入により、燃料コストの縮減や廃材処理の効率化にも取り組んでいます。
なお、初年度の18年度に8工場のうちの6工場が施設整備を行い、生産力を早期に強化することにしています。
県木連と県森連、日田木材流通センターで組織する大分県産材流通情報センター(事務局=県木連)が大分方式乾燥材を生産する工場を認証し、それらの工場を同一アイテムメーカーとしてグループ化することにより、販売力を強めます。
大分方式乾燥材は、生産期間が長期間にわたることから、市場のニーズに即応するためには見込み生産によって適正在庫を確保することが必要になります。ただし、個別工場による取り組みだけでは、大手のハウスメーカーやプレカット工場と取り引きするのが難しいため、生産在庫情報を県産材流通情報センターに集約し、同センターが流通販売を一元的に管理することによって、大口ユーザーのニーズに対応できる体制を構築します。各工場間の品質のバラつきをなくし、大分方式乾燥材のブランドを確立するため、同センターによる厳密な品質管理も推進します。
地場工務店や地域ビルダーをターゲットとした販売促進活動としては、乾燥材の供給力を強化するとともに多品目少量生産の効率化を推進します。具体的には、CAD設計支援や施工管理支援、住宅部材の展示販売などの活動に取り組む「住宅資材流通センター」構想を推進します。
従来からの原木流通構造を生かすとともに、分業・専業化が進んだ地域の中小製材工場との共存も図りつつ、産地全体の底上げと活性化を図ります。
国産材に対する注目度が高まっていること、周辺産地において合板・集成材工場を含む大規模加工施設の整備が進行していることなどから、原木の生産集荷能力をいかに高めるかが今後は特に重要なポイントとなります。そのため山元の素材生産力を強化するとともに、市場間の連携強化などにも取り組みます。
間伐のほかに主伐も推進することにしているため、伐採跡地の更新方法の検討など、森林整備に関する技術開発にも積極的に取り組みます。